22件 不当と認める国庫補助金 1,819,058,507円
地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)は、地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)制度要綱(平成25年府地活第125号、総行応第50号等。以下「制度要綱」という。)、地域の元気臨時交付金交付要綱(平成25年総行応第252号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、地域経済の活性化と雇用の創出を図ることを目的として、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月閣議決定)の迅速かつ円滑な実施ができるよう、地方公共団体が作成した地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)実施計画(以下「実施計画」という。)に基づき実施する事業に要する費用のうち、実施計画を作成した地方公共団体が負担する経費に充てるために、国が交付するものである。
制度要綱によれば、交付金の交付対象事業は、既存の国の補助事業の対象とはならない地方単独事業においては、上記閣議決定の後に地方公共団体の平成24年度予算又は25年度予算に計上されたものなどとされている。交付金の交付に関しては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)のほか交付要綱等に定めるところによるとされている。補助金適正化法等によれば、補助事業者等は、補助事業等が完了したときは補助事業等の成果を記載した実績報告書を各省各庁の長に提出しなければならないこととされている。そして、総務省は、交付金事業が工事に係るものにあっては、交付金事業の成果は当該工事の25年度末の工事の出来高であるとしている。
また、制度要綱によれば、交付金の交付対象事業は、地方単独事業については「建設地方債の発行対象経費であるもの」などとされている。そして、地方財政法(昭和23年法律第109号)によれば、同法第5条に掲げる公共施設又は公用施設の建設事業費の財源とする場合等においては、地方債をもってその財源とすることができることとされている。
本院が24道府県及び403市町村において会計実地検査を行ったところ、11県及び11市町において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 交付金事業者 (事業主体) |
交付金事業 | 年度 | 交付対象事業費 | 左に対する交付金交付額 | 不当と認める交付対象事業費 | 不当と認める交付金相当額 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(38) | 総務本省 | 群馬県 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈道路整備等〉 |
25 | 5,479,488 | 5,249,188 | 510,364 | 500,568 | 過大交付 |
(39) | 同 | 埼玉県 | 同
〈地方特定道路(改築)整備費等〉 |
25 | 15,106,111 | 6,087,292 | 466,972 | 354,354 | 同 |
(40) | 同 | 千葉県 | 同
〈県単道路改良等〉 |
25 | 3,140,105 | 3,048,000 | 122,701 | 122,701 | 同 |
(41) | 同 | 神奈川県 | 同
〈座間高校耐震化等〉 |
25 | 2,857,593 | 690,000 | 2,176,143 | 284,518 | 同 |
(42) | 同 | 長野県 | 同
〈県単独公共等〉 |
25 | 2,791,300 | 2,786,530 | 7,669 | 7,669 | 同 |
(43) | 同 | 大分県 | 同
〈県立学校施設整備等〉 |
25 | 2,218,110 | 1,827,000 | 85,816 | 54,322 | 同 |
(44) | 神奈川県 | 横浜市 | 同
〈地域ケアプラザ整備等〉 |
25 | 660,870 | 650,000 | 134,183 | 124,778 | 同 |
(45) | 同 | 相模原市 | 同
〈民間保育所整備〉 |
25 | 47,322 | 47,322 | 14,367 | 14,367 | 同 |
(46) | 同 | 平塚市 | 同
〈地区公民館整備(大野公民館)〉 |
25 | 87,995 | 65,680 | 29,808 | 7,492 | 同 |
(47) | 京都府 | 亀岡市 | 同
〈公共土木施設(道路等)の整備〉 |
25 | 105,822 | 84,879 | 9,965 | 9,965 | 同 |
(48) | 広島県 | 三原市 | 同
〈リージョンプラザ整備〉 |
25 | 89,007 | 77,574 | 40,043 | 40,043 | 同 |
(49) | 福岡県 | 筑紫野市 | 同
〈共同調理場施設整備〉 |
25 | 196,860 | 115,200 | 121,893 | 111,873 | 同 |
(50) | 佐賀県 | 神埼市 | 同
〈太陽光発電施設整備〉 |
25 | 23,016 | 23,000 | 19,797 | 19,781 | 同 |
(51) | 宮崎県 | 東諸県郡綾町 | 同
〈単独分農山漁村地域整備交付金〉 |
25 | 87,492 | 60,190 | 81,128 | 53,826 | 同 |
(38)―(51)の計 | 32,891,095 | 20,811,856 | 3,820,856 | 1,706,263 |
これらの交付金事業は、14事業主体が、地方単独事業として、施設整備の工事等を実施したものであり、これらの交付金事業の交付対象事業費を計32,891,095,670円であるとして総務本省及び京都府、神奈川、広島、福岡、佐賀、宮崎各県に実績報告書を提出し、総務省から計20,811,856,315円の交付金の交付を受けていた。
しかし、交付金事業の成果である工事の出来高を超えて交付金が交付されているなどしていたため、交付金計1,706,263,950円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、14事業主体において交付金事業が完了したときに提出する実績報告書に記載すべき交付金事業の成果についての理解が十分でなかったこと、総務本省及び6府県において交付金の額の確定の際の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
群馬県は、平成25年度に、地方単独事業として、道路整備事業等5事業を事業費計8,641,165,900円(交付対象事業費計5,479,488,867円、交付金交付額5,249,188,000円)で実施していた。同事業において実施した工事のうち単独公共単独道路改築事業等62工事について、同県は、交付対象事業費を計615,973,480円であるとして、総務本省に実績報告書を提出して計606,177,001円の交付金の交付を受けていた。
しかし、上記の62工事は工期が複数年度にわたる契約に基づくものであり、これに係る交付対象事業費は、同県が工事の各契約相手方に対して25年度に支払った前払金等の額を計上していて、この交付金事業の成果である工事の同年度末における出来高は計105,608,632円であった。
したがって、前記62工事の適正な交付対象事業費は上記出来高の計105,608,632円となることから、前記の交付対象事業費計615,973,480円は510,364,848円過大となっており、これに係る交付金500,568,369円が過大に交付されていた。
(52) | 総務本省 | 兵庫県 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈県有施設新増改築等〉 |
25、26 | 1,737,458 | 1,737,458 | 20,472 | 20,472 | 補助の対象外 |
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(53) | 同 | 奈良県 | 同
〈地域・経済活性化基金積立金〉 |
25 | 11,884,480 | 10,884,480 | 3,572 | 3,572 | 同 |
(54) | 同 | 和歌山県 | 同
〈南紀白浜空港管理〉 |
25 | 54,096 | 54,096 | 54,096 | 54,096 | 同 |
(55) | 同 | 鳥取県 | 同
〈警察施設整備等〉 |
25 | 270,736 | 270,736 | 6,738 | 6,738 | 同 |
(56) | 同 | 香川県 | 同
〈高校老朽施設改築〉 |
25 | 1,831,539 | 1,786,000 | 15,989 | 7,387 | 同 |
(57) | 埼玉県 | 坂戸市 | 同
〈低公害車導入〉 |
25 | 14,437 | 14,437 | 5,571 | 5,570 | 同 |
(58) | 大分県 | 宇佐市 | 同
〈環境対策推進〉 |
25 | 13,908 | 13,900 | 13,908 | 13,900 | 同 |
(52)―(58)の計 | 15,806,656 | 14,761,107 | 120,349 | 111,739 |
これらの交付金事業は、7事業主体が、地方単独事業として、車両の購入、建設事業と一体として整備される備品であって建設される施設等と一体不可分的な機能を有するものの購入等を実施したものであり、これらの交付金事業の交付対象事業費を計15,806,656,142円であるとして総務本省及び埼玉、大分両県に実績報告書を提出し、総務省から計14,761,107,882円の交付金の交付を受けていた。
しかし、交付対象事業費に交付の対象とならない経費を含めていたため、交付金計111,739,127円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、7事業主体において交付金の制度に対する理解が十分でなかったこと、総務本省及び両県において交付金の額の確定の際の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
和歌山県は、実施計画に基づき、地方単独事業として平成25年度を事業実施期間とする南紀白浜空港管理事業を事業費54,096,000円(交付対象事業費同額)で実施したとして、総務本省に実績報告書を提出して、交付金54,096,000円の交付を受けていた。同事業は、南紀白浜空港の安心安全を図るために空港用化学消防車を購入するものである。
しかし、上記の消防車は、実施計画で定めた事業実施期間の25年度ではなく、事業実施期間外の27年3月に納入されたものであった。
したがって、前記の事業費54,096,000円(交付対象事業費同額)は交付対象とは認められず、これに係る交付金54,096,000円が過大に交付されていた。
(59) | 和歌山県 | 田辺市 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈道路新設改良〉 |
25 | 142,164 | 142,164 | 1,055 | 1,055 | 設計不適切 |
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この交付金事業は、田辺市が、地方単独事業として、台風により被災した既存市道の復旧及び歩行者等の安全確保のために、擁壁工、法面工等を実施したものである。
このうち、擁壁工は、歩行者等の転落防止を目的として、谷側の道路端部の区間にガードパイプ延長54.5mを設置等するものである。
同市は、上記のガードパイプについて、「防護柵の設置基準・同解説」(社団法人日本道路協会編)に基づき設計しており、それによれば、ガードパイプの高さは、成人男子の重心高さなどから歩行者等の転落を確実に防止できる1.1mを標準とすることとされている。
しかし、同市は、前記の区間における既存のガードレールが0.8mの高さで設置されていたことなどから、ガードパイプの高さも0.8mとして設計して設置していた(参考図参照)。
したがって、前記区間のガードパイプ(工事費相当額1,055,430円)は、その設計が適切でなかったため、歩行者等の転落を確実に防止できるとされている高さより低いものとなっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額1,055,430円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、歩行者等の転落防止を目的とするガードパイプの設計に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
ガードパイプの設置状況の概念図
(38)―(59)の計 | 48,839,916 | 35,715,128 | 3,942,260 | 1,819,058 |
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