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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 総務省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(3) 地域公共ネットワーク等強じん化事業費補助金により整備した設備の施工が適切でなかったため、補助の目的を達していなかったなどのもの[総務本省](60)(61)


2件 不当と認める国庫補助金 21,585,711円

地域公共ネットワーク等強じん化事業費補助金は、地域における情報通信基盤の強じん化を図るための事業を行う事業主体に対して、事業の実施に要する経費の一部について、国が補助するものである。その補助対象事業費は、無線アクセス装置、伝送路設備等の設置等に要する経費となっている。

本院が5県、50市区町村、1一部事務組合及び31会社において会計実地検査を行ったところ、1町及び1会社において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金相当額 摘要
          千円 千円 千円 千円  
(60) 総務本省 三重県多気郡明和町 観光・防災Wi―Fiステーション整備 27、28 50,126 25,063 38,105 19,052 目的不達成

この補助事業は、明和町が、平時には観光客に観光情報を提供するとともに、災害時には停電が発生しても住民等が広く情報を収集できる状態を確保することなどを目的として、通信記録を管理するなどのためのサーバ等の設備及び無線LAN接続のアンテナとなるアクセスポイント(以下「AP」という。)1台を同町役場の屋内に、7台をいつきのみや歴史体験館(以下「歴史体験館」という。)に、また、鉄柱等にAP等を搭載した設備(以下「Wi―Fiステーション」という。)8基を明和町内の広場及び公園に設置したものである。

同町は、8基のWi―Fiステーションのうち3基にルータ及び回線終端装置を設置して既存のケーブルテレビの通信網と接続することによりインターネット通信を行う設計とし(以下、この設計のWi―Fiステーションを「親機」という。)、親機以外のWi―Fiステーション(以下「中継機」という。)5基及び歴史体験館に設置されたAP(以下「子機」という。)7台にはルータ等を設置せずに近くの親機を経由してインターネット通信を行う設計としていた。また、同町は、災害等により停電が発生した場合でも72時間は無線LAN通信等の提供が可能となる容量の蓄電池、太陽光パネル等(以下、これらを合わせて「非常用電源」という。)を各Wi―Fiステーションに搭載する設計として、これにより施工させる請負契約を締結していた。

しかし、親機3基において、請負人は、APとケーブルテレビの通信網との間に設置されたルータを非常用電源に接続する工事を実施しておらず、停電発生時にはルータの機能が停止して、APとケーブルテレビの通信網との接続が切断される状況となっていた。そして、親機3基を経由してインターネット通信を行う中継機5基及び子機7台も、停電発生時にはインターネットと接続できない状況となっていた。

したがって、補助事業において整備したWi―Fiステーション8基及び子機7台(これらに係る事業費相当額38,105,454円)は、親機3基に係る施工が適切でなかったため、災害等により停電が発生した場合にはインターネット通信が切断されて、住民等に広く情報を提供することができない状態となっていて、補助の目的を達しておらず、これらに係る国庫補助金相当額19,052,711円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において、請負人が粗雑な施工を行っていたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

      (注)            
(61) 総務本省 株式会社ジェイコム中野 地域ケーブルテレビネットワーク整備 25、26 148,036 49,345 7,595 2,533 精算過大
(注)
平成26年6月30日以前は株式会社JCNシティテレビ中野

この補助事業は、株式会社ジェイコム中野(以下「会社」という。)が、災害時に伝送路が切断されても放送、通信等を継続できるよう、代替ルートを新設するなどして複線化を行ったものである。

地域ケーブルテレビネットワーク整備事業実施マニュアル(平成25年総務省作成)によると、事業主体が補助事業と単独事業を合わせて実施する場合には、補助事業と単独事業で共用される施設・設備に係る費用については合理的な方法で案分することとなっている。合理的な案分方法として、補助事業と単独事業で共用される伝送路に係る費用の場合は、補助事業と単独事業でそれぞれ利用する光ケーブルの心数(以下「利用心数」という。)による案分を基本とすることとなっている。そして、費用のうち、区間ごとの費用を個々に示せない工事費等については、各区間の補助事業と単独事業それぞれの利用心数の割合を区間ごとのケーブル長に乗じた合計値により、全区間に係る補助事業と単独事業の割合(以下「心線全体の案分率」という。)を算出して案分することとなっている。

会社は、補助事業の実施に当たり、補助事業と単独事業で伝送路を共用することとして、複線化のために必要となる心数(区間ごとに2心~68心)を上回る心数(区間ごとに36心、100心又は300心)の光ケーブルを敷設した上で、複線化のために必要となる心数を補助事業の利用心数、残りの心数を単独事業の利用心数として、費用を案分して補助対象事業費を算定していた。

しかし、会社は、工事費のうちの交通誘導員費等について、区間ごとの費用を個々に示せない工事費等であることから心線全体の案分率により案分すべきところ、誤って伝送路工事に要した費用に占める補助対象事業費の割合により案分したり、工事費のうちの材料費等について、案分の基礎となる補助事業の利用心数を過大に計上したりなどしていて、補助対象事業費を過大に算定していた。

したがって、交通誘導員費等について心線全体の案分率により案分するなどして適正な補助対象事業費を算定すると計140,440,594円となり、補助対象事業費148,036,261円との差額7,595,667円が過大に精算されていて、これに係る国庫補助金相当額2,533,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において補助対象事業費の算定についての理解が十分でなかったこと、総務本省において補助事業の審査及び確認並びに会社に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(60)(61)の計 198,162 74,408 45,701 21,585