ページトップ
  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 総務省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(4) 情報通信利用環境整備推進交付金により整備した光ケーブルの架設工事の施工が適切でなかったもの[総務本省](62)


1件 不当と認める国庫補助金 4,678,989円

情報通信利用環境整備推進交付金は、地域における情報通信の格差の是正に資する超高速ブロードバンド基盤の整備を促進することを目的として、地理的な制約から民間事業者の投資による整備が困難な市町村等に対して、事業の実施に要する経費の一部について、国が交付するものである。

本院が都及び7市町村において会計実地検査を行ったところ、1町において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 交付金事業者
(事業主体)
交付金事業 年度 交付対象事業費 左に対する交付金交付額 不当と認める交付対象事業費 不当と認める交付金相当額 摘要
          千円 千円 千円 千円  
(62) 総務本省 徳島県那賀郡那賀町 情報通信利用環境整備推進交付金(情報通信利用環境整備推進) 28 183,446 61,148 14,036 4,678 施工不良

この交付金事業は、那賀町が、地域間の情報格差の是正と地域の活性化を図ることなどを目的として、同町役場庁舎等2か所を拠点とした既存の通信設備の機能を超高速ブロードバンドに対応できるように増強する装置の設置等を行うとともに、伝送路として光ケーブルを架空方式により延長40,847mにわたって架設したものである(以下、架空方式による光ケーブルの伝送路を「架空光ケーブル」という。)。このうち10,113mは、災害時等に既存のルートに通信障害が発生した際にも通信を確保するために、新たに別ルートに架設(以下、このルートを「災害時通信ルート」という。)したものである。そして、同町は、鋼製の吊(ちょう)架用線に光ケーブルを吊り下げる工法等により、架空光ケーブルを架設していた。

有線電気通信設備令(昭和28年政令第131号)、有線電気通信設備令施行規則(昭和46年郵政省令第2号)等において、架空光ケーブル等の吊架用線は、安全性の点から、避雷機能等の保安機能を持たせるために、接地(注)しなければならないとなっている。また、光ファイバケーブル施工要領・同解説(国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室監修)、CATVエキスパート技術者テキスト(施工)(一般社団法人日本CATV技術協会発行)等(以下「要領等」という。)において、架空光ケーブルの吊架用線の接地箇所はおおむね500mごとに1か所とすることとなっている。

同町は、これらに基づき、落雷に起因する吊架用線及び光ケーブルの破断、その周辺設備の破損等を防ぐために、吊架用線500mごとに1か所接地するとした設計図書を作成して、これにより請負人に施工させることとしていた。

しかし、現地の状況を確認したところ、災害時通信ルートにおいて、2,306m及び1,913mにわたって吊架用線が接地されていない区間があり、それぞれ、要領等で定める接地の間隔500mを大幅に上回っていた。

したがって、架空光ケーブルのうち、上記2区間の吊架用線については、災害時等の対策として架設されたにもかかわらず、施工が適切でなかったため、落雷等に対する所要の保安機能が確保されておらず、落雷発生時等に災害時通信ルート(工事費相当額14,036,968円)に通信障害が発生するおそれがある状態となっており、これに係る交付金相当額4,678,989円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において、請負人が設計図書等に対する理解及び現地の確認が十分でないまま施工していたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
接地  落雷によって生ずる過電流等を安全に大地へ放流して、過電流等から機器等を守るなどのために、電気設備機器、電路等を電気伝導体の導線により電気的に大地と接続すること