法務省は、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)等に基づき、有効な旅券を所持していないなどのため収容令書が発付されるなどした外国人を、地方支分部局である地方入国管理局に設置した収容場等に収容している。そして、収容場等において、入国警備官が行う警備業務の中には監視室での監視カメラモニターによる監視、目視による収容室内等の動静監視等の業務(以下「監視等業務」という。)があり、一部の地方入国管理局等は、民間事業者と契約を締結して監視等業務を委託している。
名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)は平成28年4月に名古屋入国管理局収容場監視等業務契約(以下「通年契約」という。)を、また、同年9月に被収容者数の一時的な増加に対応するなどのため臨時収容場監視等業務契約(以下「臨時契約」といい、通年契約と合わせて「監視等業務契約」という。)を、いずれも豊警備保障株式会社(以下「会社」という。)と締結して契約金額計96,846,192円を支払っている。
監視等業務契約において、会社は、監視室等の配置場所ごとに配置時間別に定められた警備員の人数を配置すること、毎日の業務終了後に警備員ごとの勤務実績を記載した記録(以下「警備日誌」という。)を作成し、名古屋入管に提出すること、警備員の使用者として労働基準法(昭和22年法律第49号)等の責任を負うことなどが定められている。そして、労働基準法によれば、労働者の休憩時間について、使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないこととされている。
名古屋入管は、会計法(昭和22年法律第35号)、監視等業務契約等に基づき、提出を受けた警備日誌の記載内容について、業務の履行を確認するとともに、毎月、給付の完了を確認するための検査を行い、支払を行うこととなっている。
本院は、合規性等の観点から、監視等業務契約は仕様書どおりに適切に履行されているかなどに着眼して、監視等業務契約(通年契約の契約金額96,612,912円、臨時契約の契約金額233,280円、契約金額計96,846,192円)を対象として、名古屋入管において、契約書、仕様書、警備日誌等の関係書類を検査するとともに、名古屋入管の関係職員から業務の履行状況等について聴取するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
名古屋入管は、会社が監視等業務契約の仕様書により警備員を配置することとされていた時間(注)計66,548時間30分(通年契約66,388時間30分、臨時契約160時間)の監視等業務を行ったとして、契約金額の全額を支払っていた。
しかし、会社は、監視等業務契約の履行に当たり、警備員に休憩時間を取得させるなどしている間、警備員を配置していなかった。このため、仕様書に定めたとおりに警備員を配置していない時間(以下「業務不足時間」という。)が計3,099時間45分(通年契約3,083時間45分、臨時契約16時間)生じていた。
このように、業務不足時間があるのに契約金額の全額を支払っていたことは適切ではなく、業務不足時間に係る支払額計4,510,180円(通年契約の支払額4,486,852円、臨時契約の支払額23,328円)が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、名古屋入管において、業務の履行の確認及び検査が適切でなかったことなどによると認められる。