4件 不当と認める国庫補助金 28,214,000円
へき地児童生徒援助費等補助金(以下「補助金」という。)は、離島振興法(昭和28年法律第72号)、へき地児童生徒援助費等補助金交付要綱(昭和53年文部大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、へき地等における初等中等教育の円滑な実施に資することを目的として、都道府県又は市町村が負担する離島高校生修学支援費、遠距離通学費等について、国がその一部を補助するものである。
補助金の交付額は、交付要綱等によれば、離島高校生修学支援費及び遠距離通学費を補助する事業については、補助対象経費の2分の1を限度とすることとされている。そして、離島高校生修学支援費に係る補助対象経費は、高等学校等が設置されていない離島から本土又は別の離島の高等学校等へ進学する生徒(以下「離島高校生」という。)の通学に要する交通費及び居住費について、都道府県及び市町村が負担した額とされている。このうち居住費については、高等学校等へ通学するために、自宅がある離島を離れて本土又は別の離島の民間アパートや寄宿舎等に居住している離島高校生のアパート代、下宿費、寮費等とされている。
また、遠距離通学費に係る補助対象経費は、学校統合に伴って児童・生徒の住居から学校所在地までの通常の通学経路による片道の通学距離が児童にあっては4km以上、生徒にあっては6km以上等となる小学校又は中学校の遠距離通学児童・生徒の通学の用に供するために運行するスクールバスに係るバス会社等との運行委託契約に基づく委託料(以下「委託料」という。)等について、市町村が負担した額とされている。そして、学校統合後に当該統合校に転入してきたり、学校統合はあったものの通学する学校の所在地が変わらなかったりするなど遠距離通学することになった原因が学校統合ではない児童・生徒等は補助対象とならないこととされている。また、補助対象とならない児童・生徒に係る経費が委託料に含まれている場合は、スクールバスを利用する児童・生徒の総数(以下「利用総数」という。)に対する補助対象となる児童・生徒数の割合(以下「利用人数割合」という。)を当該委託料に乗じて補助対象経費を算定することなどとされている。
本院が、4県及び20市町村、計24地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、2県の4市町において、補助対象経費の算定に当たり、離島高校生修学支援費について、保護者の持ち家等に居住し通学していて居住費が生じていない離島高校生等を対象に市が独自に補助した額を含めていたり、遠距離通学費について、遠距離通学することになった原因が学校統合ではない生徒を補助対象となる生徒としていたり、補助対象とならない児童・生徒を利用総数に含めずに利用人数割合を算出していたりなどしていたため、補助金計28,214,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、4市町において交付要綱等に基づいて補助対象経費を算定することについての認識が欠けていたこと、補助対象経費の算定についての理解が十分でなかったこと、2県において4市町から提出された実績報告書等に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
山口県萩市は、萩市離島高校生修学支援費補助金交付要綱(平成24年制定)等に基づき、離島高校生を対象に萩市離島高校生修学支援費補助金(以下「市補助金」という。)を交付している。そして、市補助金の額は、離島高校生が本土から通学を行う場合は保護者の持ち家等に居住して通学する場合であっても、居住に係る経費を月額20,000円(平成24年度以前は12,500円)として算定することなどとなっており、同市は、26年度に、離島高校生32人を対象に市補助金7,680,000円を交付し、同額を補助対象経費として、補助金3,840,000円の交付を受けていた。
しかし、同市は、補助対象経費の算定に当たり、保護者の持ち家等に居住し通学していて居住費が生じていない離島高校生等を対象に同市が独自に補助した市補助金5,462,100円を含めていた。
したがって、上記の5,462,100円を除いて適正な補助対象経費を算定すると、2,217,900円となり、適正な補助金交付額は1,108,000円となることから、補助金2,732,000円が過大に交付されていた。
また、24、25、27、28各年度においても同様の事態が見受けられた。
<事例2>
鹿児島県熊毛郡屋久島町は、平成23年4月及び25年4月に同町内の中学校4校を統合して設置した同町立中央中学校(以下「中央中学校」という。)に通う生徒の通学の用に供するなどのために、バス会社との間で契約を締結して、スクールバスの運行を委託していた。そして、同町は、27年度に、当該スクールバスを利用して中央中学校に通う遠距離通学生徒を57人、このうち補助対象となる生徒を49人として算出した利用人数割合に基づくなどして遠距離通学費に係る補助対象経費を13,913,052円と算定して、補助金6,956,000円の交付を受けていた。
しかし、同町は、補助対象経費の算定における利用人数割合の算出に当たり、当該スクールバスを利用する児童等156人を利用総数に含めておらず、また、学校統合後に中央中学校に転入するなどしていて補助対象とならない生徒7人を補助対象に含めていた。
したがって、適正な利用人数割合に基づくなどして補助対象経費を算定すると、6,030,760円となり、適正な補助金交付額は3,015,000円となることから、補助金3,941,000円が過大に交付されていた。
また、25、26、28各年度においても同様の事態が見受けられた。
以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対す る国庫補 助金交付 額 |
不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金交付額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(79) | 山口県 | 萩市 | 離島高校生修学支援費 | 24~28 | 30,752 | 15,376 | 17,716 | 8,860 | 離島高校生を対象に市が独自に補助した額を補助対象経費に含めていたもの |
(80) | 鹿児島県 | 曽於市 | 遠距離通学費 | 27、28 | 38,285 | 19,141 | 10,776 | 5,387 | 誤った利用人数割合に基づいて補助対象経費を算定していたもの |
(81) | 同 | 曽於郡大崎町 | 同 | 27、28 | 38,559 | 19,279 | 10,029 | 5,015 | 同 |
(82) | 同 | 熊毛郡屋久島町 | 同 | 25~28 | 50,197 | 20,266 | 27,566 | 8,952 | 誤った利用人数割合に基づいて補助対象経費を算定するなどしていたもの |
(79)―(82)の計 | 157,795 | 74,062 | 66,088 | 28,214 |