2件 不当と認める国庫補助金 3,725,000円
国宝重要文化財等保存整備費補助金は、文化財保護法(昭和25年法律第214号)の趣旨にのっとり、文化財の適正な保存管理とその活用を図り、もって文化財保護の充実に資することを目的として、重要文化財又は登録有形文化財建造物の修理を行う所有者等に対して、文化財保存事業費関係補助金交付要綱(昭和54年文化庁長官裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき事業に要する経費の一部を国が補助するものである。
交付要綱等において、補助事業の補助対象経費は、①重要文化財(建造物・美術工芸品)修理、防災事業については重要文化財建造物の修理工事経費等、②登録有形文化財建造物修理事業については登録有形文化財建造物の修理工事に係る設計監理に要する経費等となっている。
本院が、15府県、56市町村、87法人等計158事業主体において会計実地検査を行ったところ、2事業主体において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(87) | 大阪府 | 宗教法人積川神社 | 重要文化財(建造物・美術工芸品)修理、防災 | 26、27 | 89,530 | 76,100 | 2,734 | 2,324 | 塗装工事に係る塗装面積の算定を誤っていたもの |
この補助事業は、宗教法人積川(つがわ)神社が、平成26、27両年度に重要文化財積川神社本殿の修理事業を実施し、これに係る屋根葺(ふき)替、塗装工事等を行ったものである。
しかし、同法人は、塗装工事のうち、組物廻(まわ)り部分に係る塗装面積の算定に当たり、塗装の範囲内に部材の接合箇所があり部材が重なっていて塗装することができない部分があるのにこれを控除しなかったため、塗装面積が26、27両年度共に3.838m2過大になっているなどしていた。
したがって、上記の塗装することができない面積を除くなどして適正な塗装面積により補助対象経費を算定すると、計86,796,000円となり、本件補助対象経費計89,530,000円はこれに比べて計2,734,000円過大となっていて、これに係る国庫補助金相当額計2,324,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同法人において塗装工事に係る塗装面積の確認が十分でなかったこと、大阪府教育委員会において実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。
(88) | 大阪府 | 通天閣観光株式会社 | 登録有形文化財建造物修理 | 26 | 37,845 | 18,922 | 2,803 | 1,401 | 仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったもの |
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この補助事業は、通天閣観光株式会社が、平成26年度に登録有形文化財通天閣の修理工事に係る設計監理業務を行ったものである。そして、当該補助事業においては、補助対象経費に本件補助事業で外注した設計監理に係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)額が含まれていた。
消費税の課税事業者である事業主体が補助の対象となる登録有形文化財建造物の修理工事に係る設計監理業務を外注することは課税仕入れに該当することから、確定申告の際に課税売上高に対する消費税額から当該設計監理業務の外注に係る消費税額を仕入税額控除(注)した場合には、事業主体はこれに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、交付要綱において、事業主体は、補助事業完了後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県教育委員会に報告し、当該金額を返還しなければならないこととなっている。
しかし、同社は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、本件補助事業に係る消費税額2,803,360円を仕入税額控除していたのに、これに係る国庫補助金相当額1,401,000円について報告及び返還を行っておらず、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同社において補助事業における消費税の取扱いに対する理解が十分でなかったこと、大阪府教育委員会において補助事業における消費税の取扱いについての指導及び審査が十分でなかったことなどによると認められる。
(87)(88)の計 | 127,375 | 95,022 | 5,537 | 3,725 |
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