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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(6) 義務教育費国庫負担金が過大に交付されていたもの(89)―(93)


5件 不当と認める国庫補助金 58,169,842円

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。

算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部(以下「小中学部」という。)の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。

このうち、算定基礎定数は、当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注1)等を基礎として教職員の定数(以下「標準定数」という。)を算定し、更に「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)により臨時的に任用される者(以下「産休代替教職員」という。)等の実数を加えるなどして算定することとなっている。

そして、標準定数のうち、特別支援学校の自立活動担当教員(注2)に係る定数は、標準法によれば、各特別支援学校が視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者のいずれに対する教育を主として行うものであるかによって区分して、当該区分に応じて異なる算定方法に基づいて算定することとされている。そして、この区分については、「特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正について」(平成18年文部科学事務次官通知)により当該特別支援学校の学級数が最も多い障害種別に区分することとされている。

また、特別支援学校については、義務教育である小中学部のほかに幼稚部と高等部を置く学校があるため、特別支援学校に勤務する全ての教職員の給与及び報酬等に要する経費を算定し、これに義務制率(注3)を乗ずるなどして小中学部に係る実支出額を算定することとなっている。

(注1)
標準学級数  標準法に規定する学級編制の標準により算定した学級数
(注2)
自立活動担当教員  特別支援学校において、小中学校等と同様の各教科等のほかに、個々の障害による学習上又は生活上の困難を改善、克服するための指導として行われる自立活動の指導を担当する教員
(注3)
義務制率  「小中学部の標準学級数の合計」を「小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計」で除して求めた率

本院が、22府県において会計実地検査を行ったところ、5府県において、算定基礎定数の算定に当たり、誤って、標準学級数を1学級とすべきところを2学級としたり、学級数が最も多い障害種別ではない区分に基づいて自立活動担当教員に係る定数を算定したり、当該年度の5月1日現在において産休代替教職員に該当していなかった者を含めたりなどしていた。また、1県において、特別支援学校の小中学部の実支出額の算定に当たり、誤って、標準学級数を1学級とすべきところを2学級とするなどして算定した義務制率を乗じていた。これらの結果、負担金計58,169,842円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5府県において、算定基礎定数の算定方法についての理解及び算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪府は、平成26、27両年度において、教職員の算定基礎定数を26年度の小中学校43,214人、特別支援学校の小中学部2,623人、27年度の小中学校43,295人、特別支援学校の小中学部2,788人とし、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に26年度94,974,750,712円、27年度95,831,649,787円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同府は、上記算定基礎定数の算定に当たり、誤って、特別支援学校の自立活動担当教員に係る定数の算定において、特別支援学校1校を、学級数が最も多い知的障害者に対する教育を主として行う特別支援学校に区分すべきところ肢体不自由者に対する教育を主として行う特別支援学校に区分して特別支援学校に係る標準定数を算定するなどしていた。

そこで、適正な算定基礎定数を算定すると26年度小中学校43,213人、特別支援学校の小中学部2,618人、27年度小中学校43,294人、特別支援学校の小中学部2,784人となり、また、基礎給料月額等を過大に算定するなどしていたことが同府自身の見直しにより判明していたことから、これによる修正額26年度69,322,547円、27年度348,627,205円も考慮して適正な負担金の額を算定すると26年度94,892,670,731円、27年度95,472,415,969円となる。したがって、算定基礎定数の算定が過大となっていたことによる修正額26年度12,757,434円、27年度10,606,613円、計23,364,047円を含む、前記の負担金交付額と適正な負担金の額との差額26年度82,079,981円、27年度359,233,818円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
年度 算定総額又は実支出額 左に対する負担金交付額 不当と認める算定総額又は実支出額 不当と認める負担金交付額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(89) 岩手県 岩手県 25~27 188,194,288 62,730,239 53,241 17,747 算定基礎定数の算定及び実支出額の算定が過大となっていたもの
(90) 神奈川県 神奈川県 27 264,255,680 88,085,226 19,309 6,436 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの
(91) 大阪府 大阪府 26、27 572,428,973 190,806,400 70,092 23,364
(92) 兵庫県 兵庫県 27、28 385,806,306 128,602,102 12,513 4,171
(93) 福岡県 福岡県 27 180,608,663 60,202,887 19,349 6,449
(89)―(93)の計 1,591,293,912 530,426,856 174,507 58,169