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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(8) 学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの[文部科学本省、9府県](95)―(104)


10件 不当と認める国庫補助金 675,689,000円

学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。

交付金の交付額は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定)等によれば、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額の合計額と、交付対象事業に要する経費の額(以下「交付対象工事費」という。)に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することとされている。このうち、配分基礎額については、配分基礎額を算定する際の基礎となる面積(以下「配分基礎面積」という。)を算定して、これに交付対象事業の種別に応じて定められた単価を乗ずるなどの方法により算定することとされている。

本院が、26道府県及び136市町村、計162地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、北海道及び9府県の9市町において、配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定したり、施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算して配分基礎額を算定したり、施設の解体及び撤去費等を契約後の金額に応じて再計算せずに配分基礎額を算定したりするなどしていたため、配分基礎額及び交付対象工事費が過大に算定されており、交付金計675,689,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、北海道及び9市町において交付金の交付額の算定方法についての理解又は算定についての確認が十分でなかったこと、文部科学省及び9府県において北海道及び9市町から提出された実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。

ア 配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定していた事態

交付対象事業のうち、小学校、中学校等の建物で構造上危険な状態にあるもの(危険建物)の改築事業(以下「危険改築事業」という。)及び教育を行うのに著しく不適当な小学校、中学校等の建物で特別の事情のあるもの(不適格建物)の改築事業(以下「不適格改築事業」といい、危険改築事業と合わせて「改築事業」という。)に係る配分基礎面積は、事業を行う年度の5月1日における学級数に応ずる必要面積に基づくなどして算定することとなっている。

そして、「学校施設環境改善交付金に係る施設整備計画の様式について」(平成24年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によれば、事業全体面積のうち配分基礎面積を交付対象面積とすること及び事業全体面積から交付対象面積を差し引いた残りの面積を交付対象外面積とすることとされている。また、工事費についても、面積の考え方と同様の取扱いをすることなどとされている。したがって、改築事業において、配分基礎面積を超える面積の建物を建築する場合、配分基礎面積を超える面積分の工事費を交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外する必要がある。

3県の3市町において、改築事業の実施に当たり、配分基礎面積を超える面積の建物を建築していたのに、これを超える面積分の工事費を交付対象外工事費として除外していなかったため、交付対象工事費が過大に算定されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

愛媛県今治市は、平成24年度から26年度までの間に、乃万小学校の危険改築事業等を実施し、交付金計153,201,000円の交付を受けていた。

同市は、乃万小学校の危険改築事業の実施に当たり、配分基礎面積計1,531m2を超える2,272m2の校舎を建築し、交付対象工事費に単独事業により整備することとしていた面積を除いた2,082m2分の建築工事等に要した経費を計上していた。

しかし、交付対象工事費の算定に当たっては、配分基礎面積を超える面積分の工事費を交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外する必要があった。

したがって、当該交付対象外工事費を除外して配分基礎面積計1,531m2に基づく適正な交付対象工事費により交付金の交付額を算定すると計130,148,000円となることから、交付金計23,053,000円が過大に交付されていた。

イ 施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算して配分基礎額を算定していた事態

交付対象事業のうち、改築事業等に併せて施設の解体及び撤去事業を実施する場合には、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した解体及び撤去費を配分基礎額に加算することとなっている。そして、改築事業等を複数年度にわたって実施する場合には、施設の解体及び撤去事業を実施する年度にのみ解体及び撤去費を配分基礎額に加算することができることになっている。

3県の3市町において、複数年度にわたる不適格改築事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算して配分基礎額を算定していたため、配分基礎額が過大に算定されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

青森県青森市は、平成23、24両年度に、東中学校の不適格改築I期事業等を実施し、交付金338,655,000円の交付を受けていた。

同市は、東中学校の不適格改築I期事業の実施に当たり、配分基礎額に施設の解体及び撤去費の見積額42,475,000円を加算していた。

しかし、実際には、施設の解体及び撤去事業は、不適格改築I期事業においては実施されておらず、25年度の不適格改築II期事業において実施されていた。そして、不適格改築II期事業の配分基礎額には適正な施設の解体及び撤去費が加算されていた。

したがって、不適格改築I期事業について、解体及び撤去費の見積額を除いた適正な配分基礎額により交付金の交付額を算定すると310,586,000円となることから、交付金28,069,000円が過大に交付されていた。

このほか、同市については、28年度に、ウの事態により交付金31,897,000円が過大に交付されており、計59,966,000円が過大に交付されていた。

ウ 施設の解体及び撤去費等を契約後の金額に応じて再計算せずに配分基礎額を算定していた事態

前記のとおり、改築事業等に併せて施設の解体及び撤去事業を実施する場合には、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した解体及び撤去費を配分基礎額に加算することとなっている。そして、平成26年12月に改正された交付金の実績報告書等の記入要領によれば、交付申請時に配分基礎額に加算した解体及び撤去費等については、実績報告時に契約後の金額に応じて再計算することとされている。

3県の3市において、施設の解体及び撤去事業を併せて実施する改築事業等の実施に当たり、交付申請時に、事業箇所の実情に即して算定した解体及び撤去費等を配分基礎額に加算していたのに、実績報告時に、当該解体及び撤去費等を契約後の金額に応じて再計算していなかったため、配分基礎額が過大に算定されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

鹿児島県奄美市は、平成27、28両年度に、小湊小学校の危険改築事業等を実施し、交付金計166,178,000円の交付を受けていた。

同市は、小湊小学校の危険改築事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去事業を併せて実施することから、交付申請時に、過年度に実施した同種事業の実績を参考にするなどして算定した解体及び撤去費21,000,000円を配分基礎額に加算しており、実績報告時も同様としていた。

しかし、配分基礎額に加算した解体及び撤去費については、実績報告時に、契約後の金額に応じて再計算する必要があった。

そこで、前記の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算すると14,971,000円となる。

したがって、配分基礎額に加算する解体及び撤去費を14,971,000円に修正するとともに他の1事業において見受けられた同様の誤りを修正して交付金の交付額を算定すると計161,762,000円となることから、交付金計4,416,000円が過大に交付されていた。

エ その他の事態

ア、イ及びウ以外の事態で配分基礎額及び交付対象工事費が過大に算定されていた事態は次のとおりである。

  • ① 不適格改築事業の実施に当たり、交付対象となる建物の条件を誤認するなどして条件を満たさない建物を含めていたため、配分基礎額及び交付対象工事費が過大に算定されていた事態 1県の1町
  • ② 補強事業の実施に当たり、別の事業に係る工事費として除外すべき金額を過小に計算していたため、交付対象工事費が過大に算定されていた事態 1府の1市
  • ③ 補強事業の実施に当たり、補強を要する建物の補強工事に要する経費を交付対象とすることとなっているのに、補強工事に該当しない改築工事に要した経費を含めていたため、交付対象工事費が過大に算定されていた事態 1県の1市
  • ④ 社会体育施設の耐震化事業の実施に当たり、補強後に必要とされる耐震性能を誤認して交付要件を満たさない建物を含めていたため、配分基礎額及び交付対象工事費が過大に算定されていた事態 1県の1市
  • ⑤ 特別支援学校の用に供する既存施設の改修事業の実施に当たり、交付対象面積は当該特別支援学校の必要面積を限度とすることとなっているのに、実際に改修工事を実施した建物の面積を交付対象面積としていたため、配分基礎額及び交付対象工事費が過大に算定されていた事態 1道

エの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4(①の事態)

長野県埴科郡坂城町は、平成26、27両年度に、南条小学校の不適格改築事業を実施し、交付金計265,781,000円の交付を受けていた。

同町は、上記事業の実施に当たり、Is値(建物の構造耐震指標を示す数値)が0.3未満、CTU・SD値(建物の強度指標を示す数値)が0.5未満等に該当する建物を対象として、配分基礎面積を計4,441m2としていた。

しかし、不適格改築事業の対象となる建物の条件は、Is値がおおむね0.3未満、CTU・SD値がおおむね0.15未満等に該当する耐震力不足建物であることなどとなっており、同町が対象とした建物のうち3棟(CTU・SD値0.40~0.45)は対象となる建物の条件を満たさない建物であった。

そこで、上記の3棟を対象から除外するなどして配分基礎面積を算定すると計115m2となる。

したがって、配分基礎面積を計115m2に修正して交付金の交付額を算定すると計12,593,000円となることから、交付金計253,188,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
交付対象事業の種別 年度 交付金の交付額 不当と認める交付金の交付額 摘要
          千円 千円  
(95) 文部科学本省 北海道 特別支援学校の用に供する既存施設の改修事業 27 992,711 101,846 必要面積を超える面積を含めて改修の対象としていたもの(エ⑤の事態)
(96) 青森県 青森市 危険改築事業、不適格改築事業 23、24、28 493,152 59,966 施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算していなかったなどのもの(イ及びウの事態)
(97) 福島県 耶麻郡磐梯町 不適格改築事業 24~26 585,128 70,862 配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外していなかったなどのもの(ア及びイの事態)
(98) 群馬県 桐生市 社会体育施設の耐震化事業 28 23,678 4,872 交付要件を満たさない建物を含めて耐震化の対象としていたもの(エ④の事態)
(99) 千葉県 松戸市 補強事業 27 1,361,259 20,797 補強工事に該当しない工事に要した経費を含めていたもの(エ③の事態)
(100) 長野県 埴科郡坂城町 不適格改築事業 26、27 265,781 253,188 交付対象となる建物の条件を満たさない建物を含めて改築の対象としていたもの(エ①の事態)
(101) 大阪府 東大阪市 補強事業 26 3,376,655 120,777 別の事業に係る工事費として除外すべき金額を過小に計算していたもの(エ②の事態)
(102) 島根県 浜田市 不適格改築事業、大規模改造(質的整備)事業 25~27 150,422 15,912 施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算していたなどのもの(ア、イ及びウの事態)
(103) 愛媛県 今治市 危険改築事業 24~26 153,201 23,053 配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外していなかったもの(アの事態)
(104) 鹿児島県 奄美市 27、28 166,178 4,416 施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算していなかったもの(ウの事態)
(95)―(104)の計 7,568,165 675,689