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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 文部科学省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 中期目標期間終了時の会計処理の結果として、国立大学法人に留保されている資金の取扱いについて


平成28年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

文部科学省は、国立大学法人に対して、業務の財源に充てる資金として、運営費交付金を交付しており、国立大学法人会計基準等によれば、国立大学法人が運営費交付金を受領したときは、その相当額を運営費交付金債務として整理し、業務の進行に応じて収益化を行うこととされている。そして、運営費交付金債務は、中期目標期間終了時の会計処理において全額収益に振り替えなければならない(以下、当該処理を「精算収益化」、当該処理により振り替えられた運営費交付金債務の額を「精算収益化額」という。)こととされている。また、毎事業年度の損益計算において生じた利益の残余は積立金として整理しなければならないこととされており、中期目標期間終了時に積立金の整理を行った後、積立金があるときは、次の中期目標期間の業務の財源に充てるために当該積立金の額から文部科学大臣の承認を受けた額を繰り越すことができるとともに、繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫に納付しなければならないこととされている。一方、上記積立金の整理を行った後、積立金がない場合等には、精算収益化額に相当する額等の資金は次の中期目標期間への繰越等の対象にはならないことになる。しかし、国立大学法人岐阜大学(以下「岐阜大学」という。)及び国立大学法人島根大学(以下「島根大学」という。)において、中期目標期間終了時の会計処理上の積立金がないこととなり、精算収益化額に相当する額等の資金が次の中期目標期間への繰越等の対象とならなかったため、当該資金は岐阜大学及び島根大学に留保されており、退職手当の支払等の業務の財源に充てられることなく有効かつ効率的に活用されていない事態が見受けられた。

したがって、文部科学省において、国立大学法人の中期目標期間終了時における運営費交付金債務等の精算収益化等の会計処理の結果、精算収益化額に相当する額等の資金が次の中期目標期間への繰越等の対象とならずに国立大学法人に留保された場合に有効かつ効率的に活用されるよう、その資金が特定の業務の財源等であったことを踏まえて、その取扱いを明確にして各国立大学法人に周知するとともに、岐阜大学及び島根大学に留保されている資金が、その取扱いに沿って退職手当の支払等の特定の業務の財源等になることとなるよう、文部科学大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

本院は、文部科学本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、文部科学省は、本院指摘の趣旨に沿い、30年2月に各国立大学法人に対して事務連絡を発して、精算収益化額に相当する額等の資金が次の中期目標期間への繰越等の対象とならずに国立大学法人に留保された場合については、その資金が特定の業務の財源等であったことを踏まえて当該業務の財源に充てるなど、その取扱いを明確にして周知した。そして、同月に岐阜大学及び島根大学に対して事務連絡を発して、両大学に留保されている資金については、上記の取扱いに従って特定の業務の財源等になることとなるようにする処置を講じていた。