和歌山労働局(以下「和歌山局」という。)は、若者が充実した職業生活を送り、我が国の将来を支える人材となるよう一人でも多くの若者を就職に結び付けるとともに、就労後のフォローアップを通じて早期離職を防ぐことを目的として、支援対象者の就職に向けた支援を行う地域若者サポートステーション事業(以下「サポステ事業」という。)を民間団体等(以下「事業実施者」という。)に委託して実施している。
サポステ事業の支援対象者は、原則として、15歳から39歳までであり、仕事に就いておらず、家事も通学もしていない者のうち、就職に向けた取組への意欲が認められるなどした者等となっている。そして、サポステ事業には、キャリア・コンサルタント等のキャリア形成支援を行う者等により、支援対象者に対して相談を行うための窓口を設置して就職に向けた支援を行う本体事業、サポステ事業により就職した者に就労後の職場定着のためのフォローなどを実施する定着・ステップアップ事業等がある。
厚生労働省が定めた「平成28年度地域若者サポートステーション事業実施要綱」、「「平成28年度地域若者サポートステーション事業」に係る企画書募集要項」(以下「募集要項」という。)等によれば、サポステ事業について国の委託費の対象とすることのできる経費(以下「対象経費」という。)は、人件費、活動事務費、一般管理費等とされている。このうち、人件費に関して、サポステ事業以外の業務を兼務する職員については、業務日報等によりサポステ事業に専ら従事したことが明確に確認できる部分に限り対象とすることとされている。そして、事業実施者は、事業が終了したときは、対象経費の実績額等を記載した委託費精算報告書(以下「精算報告書」という。)を都道府県労働局に提出しなければならないこととされており、都道府県労働局は、精算報告書の提出を受けたときは、遅滞なくその内容を審査して、適正と認めたときは、対象経費の実績額と委託契約額のいずれか低い額を委託費の額として確定して、委託費を支払うことなどとされている。
和歌山局は、平成28年度に「わかやま地域若者サポートステーション事業」(以下「わかやまサポステ事業」という。)及び「きのかわ地域若者サポートステーション事業」(以下「きのかわサポステ事業」という。)の両事業の事業実施者として株式会社キャリア・ブレスユー(以下「会社」という。)との間で、28年4月に、それぞれ委託契約(委託契約額わかやまサポステ事業22,300,000円、きのかわサポステ事業18,000,000円)を締結して上記の両事業を実施させて、事業終了後に委託費の額をそれぞれ21,232,177円、17,778,958円と確定して、委託費計39,011,135円を会社に支払っている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、上記の2委託契約を対象として、和歌山局において、契約書、精算報告書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
会社は、前記の2委託契約に係る対象経費として、会社の取締役及び人材派遣業務を統括している管理職の計2名が前記の両事業に専ら従事した時間に係る分として人件費計3,078,856円を含めて、精算報告書を和歌山局に提出して、和歌山局は、これに基づいて委託費の額を確定して委託費を支払っていた。
しかし、募集要項によれば、サポステ事業以外の業務を兼務する職員については、業務日報等によりサポステ事業に専ら従事したことが明確に確認できる部分に限り対象とすることとされているのに、会社は、サポステ事業以外の業務を兼務する上記の取締役等について、業務日報等により同事業に専ら従事した部分を明確にしておらず、また、同事業に専ら携わっていたことを示す資料もない状況であった。
したがって、前記の人件費3,078,856円は対象経費として認められず、対象経費からこれを除くなどして適正な委託費の額を算定すると計35,423,187円となり、前記の委託費支払額計39,011,135円との差額3,587,948円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、会社においてサポステ事業に従事したことが明確に確認できない部分に係る人件費を精算報告書に含めていたことにもよるが、和歌山局において精算報告書に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。