建設労働者確保育成助成金(平成30年4月以降は人材開発支援助成金。以下「建設助成金」という。)は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく雇用安定事業及び能力開発事業の一環として、同法、建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)等に基づき、建設業における若年労働者の確保及び育成並びに技能継承を図るなどのための取組を実施する建設事業主等に対して必要な助成を行うものであり、建設助成金の対象となる取組の一つとして認定訓練コース(賃金助成)がある。
認定訓練コース(賃金助成)は、中小建設事業主が雇用する建設労働者の賃金に対して助成を行うものである。そして、雇用関係助成金支給要領(平成29年3月31日職発0331第7号等。29年3月30日以前は平成28年9月職発0916第1号等。以下「支給要領」という。)によれば、その支給対象者は、雇用する建設労働者に認定訓練を受けさせること、キャリア形成促進助成金(注1)(29年4月以降は人材開発支援助成金)又はキャリアアップ助成金(注2)(いずれも、中小建設事業主が認定訓練を行う施設(以下「認定訓練施設」という。)に建設労働者を派遣する場合(以下「Off―JT」という。)に係るものに限る。以下、これらの助成金を合わせて「キャリア形成促進助成金等」という。)の支給を受けるものであることなどの要件に該当する中小建設事業主であることとされている。
また、認定訓練コース(賃金助成)の支給額は、算定対象となる認定訓練の受講者1人につき、日額5,000円に、認定訓練を受けた日数(認定訓練を実施した日数のうち、キャリア形成促進助成金等の支給の対象となった日数に限る。)を乗じて得た額とされている。
そして、支給要領によれば、認定訓練コース(賃金助成)の支給を受けようとする中小建設事業主は、認定訓練修了後に、支給申請書等を都道府県労働局に提出すること、支給申請書等の提出を受けた都道府県労働局は、キャリア形成促進助成金等の支給決定通知書又は支給申請書の写し(添付書類を含む。以下、これらを「支給申請関係書類等」という。)により、キャリア形成促進助成金等の支給を受けるものであることや受講日数を確認するなどして、申請内容が認定訓練コース(賃金助成)の支給要件を満たしているかを確認した上で、その支給を行うこととされている。
本院は、合規性等の観点から、中小建設事業主に対する認定訓練コース(賃金助成)の支給が適正に行われているかに着眼して、宮城労働局において、28、29両年度に認定訓練コース(賃金助成)の支給を受けた27事業主について、その支給の適否について検査した。
検査に当たっては、事業主から提出された認定訓練コース(賃金助成)の支給申請書等及びキャリア形成促進助成金等の支給申請関係書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、1事業主において、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
宮城労働局は、事業主Aから、28年5月及び29年5月に、雇用する建設労働者計13名に認定訓練を受講させたとする認定訓練コース(賃金助成)の支給申請書等が提出されたことから、キャリア形成促進助成金の支給申請関係書類等に基づき、認定訓練の受講日数をそれぞれ1,714日、1,505日であるとして、認定訓練コース(賃金助成)28年度分8,570,000円、29年度分7,525,000円、計16,095,000円を29年4月及び同年12月に支給決定し、同額を同労働局及び厚生労働本省から事業主Aに支給していた。
しかし、同労働局は、前記のとおり、認定訓練コース(賃金助成)はOff―JTに限って支給対象となるのに、誤って、認定訓練施設に派遣するのではなく労働者に仕事をさせながら行う職業訓練(以下「OJT」という。)を実施した日数を含めて支給決定しており、OJT分を除くと適正な受講日数はそれぞれ1,353日、1,201日であった。
したがって、適正な認定訓練コース(賃金助成)の支給額は日額5,000円に上記の受講日数をそれぞれ乗じた6,765,000円、6,005,000円、計12,770,000円となり、前記の支給額8,570,000円、7,525,000円、計16,095,000円との差額1,805,000円、1,520,000円、計3,325,000円は支給の対象とならなかったもので支給が適正ではなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主Aが制度を十分に理解していなかったことにもよるが、宮城労働局において、制度を十分に理解していなかったため、キャリア形成促進助成金の支給申請関係書類等の調査確認を適切に行っていなかったことなどによると認められる。
なお、この適正でなかった支給額については、本院の指摘により、返還の処置が執られた。