1件 不当と認める国庫補助金 129,658,967円
緊急雇用創出事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「基金」という。)を造成するために国が交付するものである。
そして、各都道府県及び各市町村等(以下「都道府県等」という。)は、同省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号。以下「実施要領」という。)等に基づき、基金を財源として失業者に対する原則として1年以内の短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業(以下「基金事業」という。)を実施している。
基金事業には、東日本大震災による被災地域の被災求職者の安定的な雇用機会を創出することなどを目的とする生涯現役・全員参加・世代継承型雇用創出事業(以下「雇用復興推進事業」という。)等がある。
基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等に委託して、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」といい、また、公募により雇用された失業者を「新規雇用者」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業等を実施する場合には、委託費相当額等を基金から取り崩して受託者に支払い、市町村等が委託事業等を実施する場合には、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10以内)を交付している。
実施要領等によれば、基金事業の対象となる経費は、新規雇用者、既に受託者等に雇用されている者等が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。
本院が、4県(注)において、4県及びこれらの県から補助金の交付を受けた34市町村が実施した基金事業を対象に会計実地検査を行ったところ、1県が実施した基金事業において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 基金造成額 | 左に対する交付金交付額 | 不当と認める基金使用額 | 不当と認める交付金相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(168) | 厚生労働本省 | 福島県 | 緊急雇用創出事業臨時特例基金 | 20~28 | 162,808,135 | 162,808,135 | 129,658 | 129,658 |
福島県は、雇用復興推進事業に係る委託事業として、平成24年度から26年度までに、若者・女性・高齢者の新規雇用者がそれぞれの適性能力をいかし、農業団体及び地元加工業との連携を図りながら「会津伝統のソースかつ丼」オフィシャルソースの開発、製造及び普及活動を行う「会津ソース開発による地域雇用再生業務」を契約金額24年度48,000,000円、25年度43,200,000円、26年度40,800,000円、計132,000,000円でA社に委託していた。そして、A社は、本件委託事業に要した経費を24年度45,659,008円、25年度43,200,000円、26年度40,799,959円、計129,658,967円とする実績報告書を同県に提出し、これにより同県は、委託費の額を当該実績報告書記載の金額で確定し、基金を財源としてA社に同額を支払っていた。
しかし、本件委託事業において新規雇用者を29名としていたことから、この29名の業務への従事状況を確認したところ、29名全員が、本件委託事業に係る業務ではなくA社が従前から実施している学校給食等の業務に従事するなどしており、本件委託事業における新規雇用者には該当せず、本件委託事業は基金事業の対象とならないものであった。
したがって、前記委託費の支払額計129,658,967円(交付金相当額同額)が基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において受託者から提出された委託事業に係る実績報告書等の審査が十分でなかったこと、厚生労働省において同県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。