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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(15) 医療介護提供体制改革推進交付金により造成した基金を活用して実施した事業(介護施設等の整備に関する事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの[厚生労働本省](191)(192)


2件 不当と認める国庫補助金 7,057,333円

医療介護提供体制改革推進交付金(以下「交付金」という。)は、「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」(平成元年法律第64号)等に基づき、都道府県の地域における医療及び介護の総合的な確保のための事業の実施に関して作成した計画(以下「都道府県計画」という。)に定める事業を支援するために、都道府県が行う基金の造成に必要な経費の3分の2に相当する額等を国が交付するものである(以下、造成された基金を「確保基金」という。)。

都道府県は、厚生労働省が定めた「地域医療介護総合確保基金管理運営要領」(以下「管理運営要領」という。)に基づき、都道府県計画の範囲内で、必要に応じて、確保基金を活用して行われる事業(以下「基金事業」という。)に必要な経費を確保基金から取り崩して、基金事業を実施する事業主体に対して助成するなどしている(以下、確保基金から取り崩して助成したものを「県助成金」という。)。

基金事業の対象は、管理運営要領により介護施設等の整備に関する事業等の5事業とされており、このうち、介護施設等の整備に関する事業の対象は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所(以下「定期巡回事業所」という。)等の介護施設等の開設時等に必要な初度経費を支援する介護施設等の施設開設準備経費等支援事業(以下「開設準備支援事業」という。)等とされている。

都道府県は、管理運営要領に基づき、県助成金の交付申請の事務手続等に関する助成要綱(以下、管理運営要領と助成要綱を合わせて「管理運営要領等」という。)を定めて、管理運営要領等に基づき、市町村が事業主体の実施する開設準備支援事業等に対して助成金(以下「市助成金」という。)を交付する事業を対象として、県助成金を交付している。

開設準備支援事業に係る県助成金の交付額は、管理運営要領等に基づき、介護施設等の区分ごとに所定の額の範囲で都道府県知事が定める額に施設数等を乗じて得た額と、対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額とすることなどとなっていて、開設準備支援事業の対象経費は、初度経費に該当する備品購入費等とされている。また、開設準備支援事業を実施する事業主体は、事業実績報告書を市町村を経由して都道府県に提出することとなっている。

本院が、3県(注1)において県助成金を財源とする市助成金の交付を受けた12市の23事業主体が実施した開設準備支援事業を対象に会計実地検査を行ったところ、2県(注2)の2市(注3)の2事業主体が実施した開設準備支援事業において、初度経費に該当しない経費を含めて対象経費の実支出額を算定していたため、県助成金計10,586,000円(交付金相当額7,057,333円)が2県の確保基金から過大に取り崩されて使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2事業主体において対象経費を適切に計上することについての認識が欠けていたこと、2市において事業主体から提出された市助成金の事業実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったこと、2県において市から提出された県助成金の事業実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
3県  埼玉、千葉、神奈川各県
(注2)
2県  埼玉、千葉両県
(注3)
2市  和光、千葉両市

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

埼玉県は、平成28年度に、定期巡回事業所に係る開設準備支援事業として、和光市に対して県助成金10,300,000円(交付金相当額6,866,666円)を交付しており、同市は、県助成金を財源として事業主体である長谷川介護サービス株式会社に対して定期巡回事業所の開設時に必要な初度経費について、同額の市助成金を交付していた。

そして、同社は、29年3月に同市に提出した事業実績報告書において、29年2月の定期巡回事業所の開設時に必要な初度経費に該当するとして、定期巡回事業所等に設置する緊急通報装置の購入及び設置工事に係る経費を含めて、対象経費の実支出額を10,666,571円と算定していた。

しかし、同社は、緊急通報装置の実際の使用開始時期を30年5月以降と見込み、開設から1年後の30年2月の会計実地検査時点においても、当該装置を納入業者に保管させたまま、設置工事も実施していなかったことから、これらに係る経費は初度経費には該当しないと認められるのに、事業実績報告書において、29年1月に当該装置を定期巡回事業所に納品させ、設置工事を実施したとする事実と異なる納品書等に基づき、当該装置の購入及び設置工事に係る経費等7,669,352円を対象経費の実支出額に含めていた。

したがって、適正な対象経費の実支出額により県助成金の交付額を算定すると2,997,000円となり、前記県助成金の交付額との差額7,303,000円(交付金相当額4,868,666円)が確保基金から過大に取り崩されて使用されていた。

以上を補助事業者別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者 間接補助事業者等 補助事業者等 年度 基金使用額 左に対する交付金相当額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額 摘要
            千円 千円 千円 千円  
(191) 厚生労働本省 埼玉県
和光市
長谷川介護サービス株式会社
(事業主体)
医療介護提供体制改革推進交付金 28 10,300 6,866 7,303 4,868 補助の対象外
(192) 千葉県
千葉市
有限会社鎌野
(事業主体)
27 10,278 6,852 3,283 2,188
(191)(192)の計 20,578 13,718 10,586 7,057