【是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求したものの全文】
国民年金等事務取扱交付金による協力・連携事務の実施について
(平成30年10月22日付け 厚生労働大臣宛て)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。
記
貴省は、国民年金法(昭和34年法律第141号)第3条等に基づき市町村(特別区を含む。以下同じ。)が行っている基礎年金及び福祉年金に係る事務、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)第6条等に基づき市町村が行っている特定障害者に対する特別障害給付金の支給に係る事務(以下、これらを合わせて「法定受託事務」という。)の処理に必要な費用に対して、これらの法律に基づき、市町村に対して国民年金等事務取扱交付金(以下「交付金」という。)を交付するほか、法定受託事務に付随して、市町村が国と協力・連携して実施する事務(以下「協力・連携事務」という。)に係る費用に対して、国民年金等事務費交付金等交付要綱(昭和57年庁発第4号。以下「交付要綱」という。)に基づき、交付金を交付している。
法定受託事務は、市町村において、国民年金保険料(以下「保険料」という。)の免除・納付猶予申請書及び学生納付特例申請書(以下「免除申請書等」という。)を受理し、その内容を審査し、免除申請書等を日本年金機構(以下「機構」という。)の年金事務所等に送付するなどするものである。法定受託事務に係る具体的な事務処理の内容については、旧社会保険庁が地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第3項に基づいて定めた国民年金市町村事務処理基準(平成12年庁保発第3号社会保険庁運営部長通知。以下「事務処理基準」という。)に規定されている。
また、協力・連携事務は、平成12年4月に地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)が施行された際に、それまで市町村が機関委任事務として実施してきた事務のうち、法定受託事務として整理されなかったもので、被保険者に対するサービス低下を来さないよう、国と市町村とが協力・連携の下に、市町村において、資格取得時の納付督励、年金制度に関する広報業務等を実施しているものである。
交付金のうち、協力・連携事務に係る交付金(以下「協力・連携交付金」という。)の交付額は、交付要綱によれば、市町村が協力・連携を行う場合に各市町村において現に要した費用の額(以下「現要額」という。)を上限として、各市町村が、交付年度の前年度の2月から当年度の1月までの間に、次の(ア)及び(イ)の事項等について行った協力・連携事務の件数(以下「算定基礎件数」という。)に所定の単価を乗ずるなどして算定した額(以下「算定額」という。)とされている。そして、各市町村は、交付要綱、交付要綱に基づき貴省が毎年定める「国民年金事務に係る市町村との協力・連携算定基礎表」等(以下、これらを合わせて「交付要綱等」という。)に基づき、算定額を算定している。
交付要綱等によれば、市町村が、年金制度等に関する被保険者等からの来訪による相談(以下「来訪相談」という。)、電話による相談(以下「電話相談」という。)及び文書による相談に対応した件数を算定基礎件数とすることとされている。そして、貴省は、市町村が実際に上記の相談に対応した実績件数を算定基礎件数として計上することとしている。
また、事務処理基準によれば、市町村が国民年金保険料免除・納付猶予申請書の提出を受けた場合には、全額免除、一部免除等のいずれを希望するのか確認することなどとされており、保険料学生納付特例申請書の提出を受けた場合には、申請理由及び所属大学等について在学証明書等により確認することとされている。貴省は、これらの確認においては、免除等に係る制度説明が必須であるとして、市町村が免除申請書等の提出を受けた際に免除等に係る制度説明を行った場合の相談は法定受託事務の範囲に含まれることから、協力・連携事務の相談件数として計上しないこととしている。
交付要綱等によれば、市町村が、機構へ提供した所得情報、電話番号等の情報提供件数を算定基礎件数とすることとされている。
このうち、所得情報については、「国民年金保険料未納者対策及び社会保険料控除の適正化について」(平成16年庁保険発0906001号社会保険庁運営部年金保険課長通知)に基づく機構からの依頼に対して回答した件数を算定基礎件数とすることとされている。
機構は、日本年金機構法(平成19年法律第109号)、国民年金法等に基づき、貴省の監督の下に、貴省から委任又は委託を受けた保険料の徴収等に係る事務を行っている。そして、上記事務の一環として、一定の所得があり保険料を納付することが可能と思われる者に対して強制徴収を行うなどの保険料の未納者対策を実施していて、この対策の対象者として抽出した未納者(以下「対象者」という。)について、所得情報の提供を市町村に依頼して、提供を受けている。この所得情報の提供依頼について、機構本部は、27年4月に「国民年金保険料収納対策にかかる平成27年度行動計画」(国年指2015―135)、28年4月に「国民年金保険料収納対策にかかる平成28年度行動計画及び適用対策にかかる重点目標」(事推指2016―12、国年指2016―69)をそれぞれ発出して、これらの中の行動計画策定手順書において、各年金事務所が市町村に対して年に複数回依頼を行う場合には、2回目以降の提供依頼(以下「追加依頼」という。)は、機構のシステムに所得情報が収録されていない者(以下「未収録者」という。)を対象者として行うことなどと指示している。
また、市町村から機構に対する電話番号の提供については、交付要綱等によれば、「一覧表等による電話番号の情報提供」を行った件数を算定基礎件数とすることとされている。
交付要綱等によれば、交付金の交付について、市町村は、国民年金事務費交付金等交付申請書(以下「交付申請書」という。)に「国民年金事務に係る市町村との協力・連携算定基礎表」(以下「算定基礎表」という。)を添付の上、厚生労働大臣に提出することとされており、厚生労働大臣は、申請の内容について確認し、交付すべき交付金の額を確定した後に、交付金を精算交付することとされている。
地方厚生(支)局は、毎年度、市町村国民年金等事務費決算審査要綱(昭和54年庁保発第20号社会保険庁年金保険部長通知)等に基づき、現要額を超えた交付の有無等を確認する審査を行うことなどとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
各市町村に交付される交付金の交付額は毎年度多額に上っている。そして、年金制度の改正に伴う被保険者等からの相談件数の増加等により、協力・連携交付金の交付額は増加傾向にある。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、市町村における協力・連携交付金の算定額の算定は適切に行われているか、年金事務所が市町村に対して所得情報の提供を依頼している対象者の範囲は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、20都道府県(注1)の128市区町が27、28両年度に実施した協力・連携事務について、27、28両年度に交付された協力・連携交付金27年度23億1758万余円、28年度23億3039万余円、計46億4797万余円を対象として、厚生労働本省、7厚生局(注2)、20都道府県の128市区町、機構本部及び12都府県(注3)の27年金事務所において、算定基礎表等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。((1)と(2)の事態には重複しているものがある。)
前記のとおり、貴省は、市町村が実際に来訪相談、電話相談等に対応した実績件数を算定基礎件数として計上することとしている。
そこで、128市区町が算定基礎件数として計上していた来訪相談及び電話相談件数についてみたところ、表1のとおり、84市区は、来訪相談及び電話相談の実績件数を記録して、これを計上していたが、残りの44市区町が計上した27年度2,066,883件、28年度2,101,422件、計4,168,305件は、実績件数ではなく、一定期間の相談件数をサンプル調査した結果を基に算出したり、資格取得届等や免除申請書等の届出の件数や相談窓口に設置した発券機から発券した番号札の枚数に一定の率を乗じたり、根拠が明確でない1日当たりの相談件数に開庁日数を乗じたりなどして推計により算出した相談件数となっていた。
表1 相談件数及び算定額
区分 | 平成27年度 | 28年度 | 計 | ||||||||
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市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
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算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
|||||||||
来訪相談 | 相談件数を計上していた市区町 | 128 | 4,260,524 | 1,533,788 | 128 | 4,318,218 | 1,554,558 | 128 | 8,578,742 | 3,088,347 | |
うち実績件数を計上していたもの | 102 | 2,809,571 | 1,011,445 | 102 | 2,822,693 | 1,016,169 | 102 | 5,632,264 | 2,027,615 | ||
うち推計件数を計上していたもの | 26 | 1,450,953 | 522,343 | 26 | 1,495,525 | 538,389 | 26 | 2,946,478 | 1,060,732 | ||
電話相談 | 相談件数を計上していた市区町 | 127 | 1,270,087 | 457,231 | 127 | 1,233,759 | 444,153 | 127 | 2,503,846 | 901,384 | |
うち実績件数を計上していたもの | 85 | 654,157 | 235,496 | 85 | 627,862 | 226,030 | 85 | 1,282,019 | 461,526 | ||
うち推計件数を計上していたもの | 42 | 615,930 | 221,734 | 42 | 605,897 | 218,122 | 42 | 1,221,827 | 439,857 | ||
計 | 実績件数を計上していたもの | 84 | 3,463,728 | 1,246,942 | 84 | 3,450,555 | 1,242,199 | 84 | 6,914,283 | 2,489,141 | |
推計件数を計上していたもの | 44 | 2,066,883 | 744,077 | 44 | 2,101,422 | 756,511 | 44 | 4,168,305 | 1,500,589 |
したがって、上記の44市区町が推計により算出した相談件数を基に算定した算定額27年度7億4407万余円、28年度7億5651万余円、計15億0058万余円は、実績件数に基づいて算定されておらず、適切とは認められない。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
堺市は、協力・連携交付金として平成28年度に7201万余円の交付を受けている。同市は、被保険者等の来訪相談及び電話相談に応じたとして、来訪相談件数130,984件(算定額4715万余円)及び電話相談件数51,840件(同1866万余円)を算定基礎件数として計上していた。
しかし、上記の来訪相談件数は、同市が、被保険者等が相談に訪れた場合に窓口に設置した発券機から発券した受付番号札の枚数に1.7を乗ずるなどして推計により算出したものであり、また、電話相談件数は、過去の経験等から1日当たりの電話相談件数を推計により算出したものとなっていて、いずれも実績件数を計上していなかった。なお、上記の1.7の数値について、同市は、窓口において配偶者等の相談も併せて行う場合が多いことを考慮したとしているが、その根拠は不明なものであった。そして、27年度についても同様の事態となっていた。
前記のとおり、貴省は、事務処理基準に基づき、免除申請書等を受理する際に、免除等に係る制度について説明を行った場合の相談は法定受託事務の範囲に含まれることから、協力・連携事務の相談件数として計上しないこととしている。しかし、上記の取扱いについては、交付要綱等に明記されていない。
そこで、128市区町のうち(ア)の来訪相談について推計により算出していた26市区町を除いた残りの102市区が来訪相談に係る算定基礎件数として計上していた相談件数についてみたところ、表2のとおり、83市区が計上した27年度2,336,364件、28年度2,348,937件、計4,685,301件は、被保険者等から免除申請書等を受理する際に免除等に係る制度について説明を行った件数を含めて計上しており、その中の免除等に係る制度についての説明のみを行った件数は算定基礎件数から除く必要があったのに除いていなかった。
表2 来訪相談件数及び算定額
区分 | 平成27年度 | 28年度 | 計 | |||||||
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市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
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算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
||||||||
来訪相談件数として実績件数を計上していた市区町 | 102 | 2,809,571 | 1,011,445 | 102 | 2,822,693 | 1,016,169 | 102 | 5,632,264 | 2,027,615 | |
うち免除等に係る制度についてのみ説明を行った件数を除いていたもの | 19 | 473,207 | 170,354 | 19 | 473,756 | 170,552 | 19 | 946,963 | 340,906 | |
うち免除等に係る制度についてのみ説明を行った件数を除いていなかったもの | 83 | 2,336,364 | 841,091 | 83 | 2,348,937 | 845,617 | 83 | 4,685,301 | 1,686,708 |
したがって、上記の83市区が免除等に係る制度についての説明のみを行った件数を含めて計上した算定基礎件数を基に算定した算定額27年度8億4109万余円、28年度8億4561万余円、計16億8670万余円は、法定受託事務となる場合を算定基礎件数から除外せずに算定されており、適切とは認められない。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
島根県松江市は、協力・連携交付金として平成28年度に783万余円の交付を受けており、被保険者等の来訪相談に対応したとして、来訪相談件数10,163件(算定額365万余円)を算定基礎件数として計上していた。
しかし、同市は、免除申請書等を受理する際に免除等に係る制度についての説明のみを行っていた件数を算定基礎件数から除く必要があったのに除いていなかった。したがって、同市が上記の免除等に係る制度についての説明のみを行った件数を含めていた算定基礎件数を基に算定した算定額365万余円は適切に算定されていなかった。そして、27年度についても同様の事態となっていた。
前記のとおり、交付要綱等によれば、「一覧表等による電話番号の情報提供」を行った件数を算定基礎件数とすることとされている。
一方、事務処理基準によれば、市町村は、免除申請書等を受理した場合、法定受託事務として免除申請書等を年金事務所等に送付することとされており、免除申請書等に記載された被保険者の電話番号についても、この際に提供されている。この場合に提供される電話番号は、協力・連携事務として別途提供されているものではないが、交付要綱等では、この場合の取扱いについては明記されていない。
そこで、年金事務所等に対して電話番号の情報提供を行ったとしていた27年度103市区町、28年度102市区町が算定基礎件数として計上していた電話番号の情報提供件数についてみたところ、表3のとおり、27年度68市区町、28年度70市区町が計上した27年度1,427,196件、28年度1,530,130件、計2,957,326件には、法定受託事務として年金事務所等に送付した免除申請書等に記載された電話番号をもって情報提供を行ったとしているものが含まれていた。そして、このうち、免除申請書等の送付件数の記録が残っていた27年度64市区町、28年度68市区町においては、これに該当するものが27年度741,648件、28年度812,699件、計1,554,347件あったため、これに係る算定額27年度8528万余円、28年度9346万余円、計1億7874万余円が過大となっていた。
また、免除申請書等の送付件数の記録が残っていなかった27年度4市、28年度2市が算定した算定額27年度1094万余円、28年度800万余円、計1894万余円には、法定受託事務となる電話番号の提供件数を基に算定した分が含まれていて、適切とは認められない。
表3 電話番号の情報提供件数及び算定額
区分 | 平成27年度 | 28年度 | 計 | |||||||||
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市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
市区町数 | 算定基礎件数 (件) |
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算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
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電話番号の情報提供件数を計上していた市区町 | 103 | 1,782,732 | 205,014 | 102 | 2,040,965 | 234,710 | 107 | 3,823,697 | 439,725 | |||
免除申請書等に記載された電話番号を含めていたもの | 68 | 1,427,196 | 164,127 | 70 | 1,530,130 | 175,964 | 74 | 2,957,326 | 340,092 | |||
うち免除申請書等の送付件数の記録が残っていたもの | 64 | 1,332,050 | 153,185 | 68 | 1,460,543 | 167,962 | 72 | 2,792,593 | 321,148 | |||
うち法定受託事務となる電話番号 | 741,648 | 85,289 | 812,699 | 93,460 | 1,554,347 | 178,749 | ||||||
うち免除申請書等の送付件数の記録が残っていなかったもの | 4 | 95,146 | 10,941 | 2 | 69,587 | 8,002 | 4 | 164,733 | 18,944 |
そして、ア及びイについて、7厚生局は、交付申請書等の審査に当たって、算定額と現要額を比較して低い方の額を交付することとなっているのに、算定額については、算定基礎表の根拠資料の確認等を十分に行っていなかった。
前記のとおり、機構に対する所得情報の提供について、市町村は、機構からの依頼に対して回答した件数を算定基礎件数として計上することとされている。そして、機構本部は、同一の者を対象者として追加依頼を行っても、修正申告等がない限り前回と同じ所得情報しか得られないこと、短期間に修正申告等が行われるケースは限定されると想定されることなどから、各年金事務所に対して、行動計画策定手順書において、市町村に対して追加依頼を行う場合には、未収録者を対象者として行うことなどと指示している。
そこで、機構本部において、128市区町を管轄区域としている121年金事務所における所得情報の提供依頼の状況について検査したところ、27年度78年金事務所、28年度80年金事務所、計84年金事務所(両年度の重複を除外している。以下同様。)は、27年度83市区町、28年度85市区町、計92市区町に対して追加依頼(1回~6回)を行っており、そのうち27年度22年金事務所、28年度25年金事務所、計31年金事務所は、追加依頼の対象者を未収録者に限定せずに、既収録者を含めて所得情報の提供依頼を行っていた。
そして、追加依頼の対象者を未収録者に限定していた残りの27年度56年金事務所、28年度55年金事務所、計62年金事務所について、1回目と2回目の依頼の対象者数を比較すると、2回目の依頼の対象者数は、既収録者分が除かれるため、1回目より27年度平均61.4%、28年度平均62.6%減少していた(以下、このような割合を「減少率」という。)。一方、上記の31年金事務所について、同様の比較をすると、追加依頼の対象者数は、既収録者分が含まれるため、減少率は27年度平均0.5%、28年度平均-3.0%となっていた。
31年金事務所について、行動計画策定手順書により未収録者のみを対象者として所得情報の提供を管轄区域の38市区町に対して依頼したとして、上記を踏まえて対象者の減少率を60.0%として追加依頼分の算定基礎件数を試算すると、表4のとおり、27年度282,185件、28年度360,934件となることから、これを基に算定額を算定すると、27年度1101万余円、28年度1641万余円、計2743万余円過大となっていた。
表4 所得情報の提供依頼件数の試算
区分 | 平成27年度 | 28年度 | 計 | ||||
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算定基礎件数 (件) |
算定基礎件数 (件) |
算定基礎件数 (件) |
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算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
算定額 (千円) |
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追加依頼の対象者を未収録者に限定せずに依頼していたもの A=B+C |
1,128,416 | 33,852 | 1,584,824 | 47,544 | 2,713,240 | 81,397 | |
うち初回依頼分 B | 478,905 | 14,367 | 676,633 | 20,298 | 1,155,538 | 34,666 | |
うち追加依頼分 C | 649,511 | 19,485 | 908,191 | 27,245 | 1,557,702 | 46,731 | |
試算したもの D=B+E | 761,090 | 22,832 | 1,037,567 | 31,127 | 1,798,657 | 53,959 | |
うち試算した追加依頼分 E=B×0.6 |
282,185 | 8,465 | 360,934 | 10,828 | 643,119 | 19,293 | |
過大となっていたもの F=A-D | 367,326 | 11,019 | 547,257 | 16,417 | 914,583 | 27,437 |
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例3>
大手前年金事務所は、大阪市に対して、平成28年7月に、26年5月から28年4月までの間に1か月以上保険料の未納期間がある被保険者250,690人を対象者として所得情報の提供を依頼し、また、同年10月に、26年9月から28年8月までの24か月の間に1か月以上保険料の未納期間がある被保険者271,510人を対象者として、追加依頼を行っていた。そして、同市は、上記の対象者に係る所得情報計522,200件(算定額1566万余円)を同年金事務所に提供して、この件数を所得情報の提供に係る算定基礎件数として計上していた。
しかし、同年金事務所は、10月の追加依頼の対象者に、7月の提供依頼により既に所得情報の提供を受けている既収録者分を含めて所得情報の提供依頼を行っていた。
追加依頼の際に未収録者のみを対象者として所得情報の提供を同市に対して依頼したとして、対象者の減少率を用いて、追加依頼分の算定基礎件数を試算すると100,276件となることから、これを基に算定額を算定すると1052万余円となり、前記の算定額1566万余円との差額513万余円が過大となっていた。
(1)及び(2)の各事態について重複しているものを整理すると、128市区町のうち、いずれの事態にも該当しない市区町は6市のみとなっていて、120市区町については、算定基礎件数を実績に基づかずに計上するなどしたため、協力・連携交付金に係る算定額が適切に算定されていなかったり、過大に算定されていたりしており、また、38市区町については、年金事務所が市区町に対して所得情報の提供依頼を適切に行っていなかったため、協力・連携交付金に係る算定額が過大に算定されていた。
(是正改善及び改善を必要とする事態)
このように、市区町において、算定基礎件数を実績に基づかずに計上していて、協力・連携交付金に係る算定額が適切に算定されていない事態及び地方厚生局において、交付申請書の審査に当たって、算定額について算定基礎表の根拠資料の確認等を十分に行っていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、法定受託事務となる事務を算定基礎件数に含めていて、協力・連携交付金に係る算定額が適切に算定されていなかったり、過大に算定されていたりしている事態及び年金事務所において、市区町に対して重複した対象者について所得情報の提供依頼を行っていたため、協力・連携交付金の算定額が過大となっている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。
貴省は、国民年金事務の実施に当たり、市町村との協力・連携は重要であり、今後も、協力・連携事務を行っていくとしている。
ついては、貴省において、協力・連携交付金の算定が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求する。