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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 役務

木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業の実施に当たり、算出の対象から除外することとなっている超過勤務手当を含めるなどして人件費単価を算出し、これに基づき委託費を支払っていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[林野庁](197)


所管、会計名及び科目
内閣府、文部科学省、経済産業省及び環境省所管
エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)
(項)エネルギー需給構造高度化対策費
部局等
林野庁
契約名
(1) 平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業(新たな利用システムの実証2号契約(福島県いわき・南相馬地域))
(2) 平成26年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業(新たな利用システムの実証2号契約(福島県いわき・南相馬地域))
契約の概要
放射性物質による汚染で停滞している未利用木質バイオマスエネルギーの利用を促進するなどのために、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の20km圏外の比較的低線量地域の森林から原木を伐採し、放射性物質に汚染された樹皮を除去した上で破砕し、乾燥させるなどしてチップを製造して、これを燃料として発電の実証等を行うもの
契約の相手方
株式会社ネオナイト
契約
(1) 平成25年9月 随意契約
(2) 平成26年5月 随意契約
支払額
(1) 214,488,015円(平成25年度)
(2) 177,247,362円(平成26年度)
計 391,735,377円
過大となっていた支払額
(1) 3,469,569円(平成25年度)
(2) 559,778円(平成26年度)
計 4,029,347円

1 委託事業の概要等

(1) 委託事業の概要

林野庁は、環境省からの委任を受けて、森林資源をエネルギーとして有効活用し、低炭素社会の実現等を図ることを目的として、福島県において、放射性物質による汚染で停滞している未利用木質バイオマスエネルギーの利用を促進するなどのために、平成25、26両年度に「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業(新たな利用システムの実証2号契約(福島県いわき・南相馬地域))」を、株式会社ネオナイト(以下「会社」という。)と、それぞれ委託契約を締結して、委託費214,488,015円、177,247,362円、計391,735,377円で実施している。

本件事業は、委託契約書等によれば、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の20km圏外の比較的低線量地域の森林から原木を伐採し、放射性物質に汚染された樹皮を除去した上で破砕し、乾燥させるなどしてチップを製造して、これを燃料として発電の実証等を行うこととされている。

(2) 委託費の額の確定等

委託契約書によれば、林野庁は、本件事業が終了して会社から実績報告書の提出を受けたときは、遅滞なく、その実施した事業の内容が委託契約の内容に適合するものであるかどうかについての検査を行い、適合すると認めたときは、本件事業の実施に要した経費の実支出額と委託契約書に定める委託費の限度額(以下「支払限度額」という。)のいずれか低い額を委託費の額として確定し、その支払を行うこととされている。

本件事業の終了後、林野庁は、会社から実績報告書等の提出を受け、検査を行った結果、実施した事業の内容が委託契約の内容に適合すると認定し、本件事業の実施に要したとする人件費、直接経費、間接費及び再委託費の各実支出額を合計した25、26両年度の実支出額215,124,938円及び178,749,422円が、支払限度額214,488,015円及び177,247,362円をそれぞれ上回ることから、委託費の額を214,488,015円及び177,247,362円とそれぞれ確定して、それらの支払を行っている。

委託契約書等において、上記実支出額のうちの人件費については、「委託事業における人件費の算定等の適正化について」(平成22年22経第961号農林水産省大臣官房経理課長通知。以下「適正化通知」という。)を参照することとなっており、委託事業に従事した者(以下「従事者」という。)ごとに、本件事業の前年における給与、賞与、社会保険料等の実績に基づき、1時間当たりの単価等(以下「人件費単価」という。)を算出し、これに本件事業に従事した時間数等を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、人件費単価の算出に当たり、超過勤務手当等はその算出の対象から除外することとなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、本件事業の委託費の算定は適正に行われているかなどに着眼して、会社に支払われた委託費を対象として、林野庁において、実績報告書等の関係書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

会社は、実支出額のうちの人件費について、従事者ごとに、前記のとおり、本件事業の前年における給与、賞与、社会保険料等の実績に基づき、人件費単価を算出し、これに本件事業に従事した時間数等を乗ずるなどして、25、26両年度の人件費の実支出額を13,885,225円及び20,621,717円と算定していた。

しかし、会社は、人件費単価の算出に当たり、適正化通知において算出の対象から除外することとなっている超過勤務手当を含めるなどしていた。

このため、超過勤務手当を除外するなどした適正な人件費単価を算出し、これに基づき本件事業に係る25、26両年度の人件費の適正な実支出額を算定すると、11,831,979円及び19,590,798円となる。

したがって、上記により、25、26両年度の適正な委託費の額を算定すると、211,018,446円及び176,687,584円となり、前記25、26両年度の委託費の支払額214,488,015円及び177,247,362円との差額の3,469,569円、559,778円、計4,029,347円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において委託費の算定に対する理解が十分でなかったこと、林野庁において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによるものと認められる。