(1件 不当と認める国庫補助金 92,075,800円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(198) | 中国四国農政局 | 高知県 | 高岡郡四万十町 (事業主体) |
農業用施設災害復旧 | 27、28 | 97,331 | 92,075 | 97,331 | 92,075 |
この補助事業は、四万十町が、四万十町若井地区において、豪雨災害により決壊したため池を復旧することを目的として、堤体等を築造したものである。
同町は、本件ため池の堤体の設計を「農地・農業用施設・海岸等災害復旧事業の復旧工法」(農林水産省農村振興局防災課監修。以下「標準工法」という。)等に基づき行っており、標準工法によれば、堤体断面は被災前の原形に合わせることを原則とするが、この原則により難い場合は、設計洪水位に余裕高を加えて堤頂の標高を決定することとされている。そして、余裕高は、設計洪水時の貯水が堤頂を越流することがないよう十分な高さとしなければならないこととされており、本件ため池のように、波の打上げ高さが1.0m以下の場合は、設計洪水位と基礎地盤の標高差に0.05を乗じたものに1.0mを加えた高さとすることとされている。
同町は、本件ため池の堤体の設計に当たり、従前の堤体が決壊しており、原形に復旧することが著しく不適当な場合に該当することから、原形復旧に代えて必要最小限度の断面の拡大等の工事を実施することとして、本件ため池の設計洪水位の標高229.23mと基礎地盤の標高219.40mを上記の計算方法に当てはめて、設計洪水時において所要の安全度を確保するために必要とされる余裕高を1.49mと算出していたが、堤頂の標高については、上記設計洪水位の標高に余裕高1.49mを加えた230.72mとするのではなく、原形に合わせる必要があると考えて、従前の堤体と同じ229.50mとして設計し、これにより施工していた。
しかし、堤体断面は被災前の原形に合わせることが原則とされているものの、本件はこの原則により難い場合に該当するため、上記の計算のとおり堤頂の標高を230.72mとして設計する必要があったのに、従前の堤体と同じ229.50mとしていたことから余裕高が0.27mとなっており、必要な余裕高1.49mと比べて1.22m不足していた(参考図参照)。
したがって、本件ため池の堤体等(工事費97,331,760円)は、設計が適切でなかったため、設計洪水時において所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金92,075,800円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、災害復旧事業における設計についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
ため池の堤体の概念図