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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

頭首工及び護岸工の設計が適切でなかったもの[中国四国農政局](201)


(1件 不当と認める国庫補助金 9,267,264円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(201) 中国四国農政局 鳥取県 西伯郡南部町
(事業主体)
農業用施設災害復旧 25、26 9,342 9,267 9,342 9,267

この補助事業は、南部町が南部町騂牛(あごうじ)地区において、平成25年7月に発生した豪雨により被災した頭首工(注)の機能回復を図るために頭首工、護岸工等を実施したものである。このうち、頭首工はえん体(延長4.3m)を従前の箇所より16.6m上流に設置し、護岸工は、えん体の上下流の河岸にコンクリートブロック積による護岸(上流側の左右両岸の延長計20.0m、下流側の左右両岸の延長計32.2m。以下「ブロック積護岸」という。)を設置したものである。

同町は、本件工事の設計を「農地・農業用施設・海岸等災害復旧事業の復旧工法2005年版」(農林水産省農村振興局防災課監修。以下「基準」という。)等に基づいて行っている。

基準等によれば、頭首工及び護岸工の設計に当たっては、将来予想される流水による河床の洗掘等の影響を考慮して河床からえん体底面及びブロック積護岸基礎部底面までの深さ(以下「根入れ深さ」という。)を決定することとされており、基礎地盤の土質が軟岩である場合には、根入れ深さを50cm以上確保して、えん体底面及びブロック積護岸基礎部底面を基礎地盤と一体化させることとされている。

同町は、本件頭首工及び護岸工の設計に当たり、基礎地盤に軟岩の層があると推定して、えん体については必要な根入れ深さを50cm確保し、また、ブロック積護岸については、岩盤線まで埋戻コンクリートを打設することにより、基礎地盤と一体化させた基礎部の根入れ深さを50cm確保することとして設計し、これにより施工していた。

しかし、現地において基礎地盤の土質を確認等したところ、実際の岩盤線が当初設計で推定されていた岩盤線より低い位置にあり、えん体底面及びブロック積護岸基礎部底面が岩盤線に十分達しておらず、基礎地盤の土質は当初設計で推定した軟岩ではなく土砂となっていた(参考図参照)。そして、同町は、本件頭首工及び護岸工の施工時に、この基礎地盤の状況を確認することができたのに、当初設計どおりに施工していて、根入れ深さを再検討したり、洗掘を防止するための対策を検討したりして設計変更を行うなどの適切な措置を執っていなかった。

このため、えん体底面及びブロック積護岸基礎部底面は全延長にわたり岩盤線まで十分達しておらず、岩盤と一体化していないことなどから、河床の洗掘が進行すると、えん体及びブロック積護岸に損傷が生ずるおそれがある状況となっていた。現に、下流側のブロック積護岸は基礎地盤の洗掘が進行したことにより、左岸側の一部が崩壊していた。

したがって、本件工事(工事費9,342,000円)は、設計が適切でなかったため、えん体及びブロック積護岸が河床の洗掘に対応できない構造となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金9,267,264円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において、えん体及びブロック積護岸の基礎地盤の岩盤線が当初設計と異なっていた際に、根入れ深さを再検討するなどして設計変更を行うなどの適切な処置を行う必要性に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。

(注)
頭首工  河川から必要な農業用水を用水路に引き入れるための施設で、えん体等の取水堰(ぜき)、取水口等から構成される。

参考図

えん体(断面図)の実際の施工概念図

えん体(断面図)の実際の施工概念図 画像

下流側ブロック積護岸(断面図)の実際の施工概念図

下流側ブロック積護岸(断面図)の実際の施工概念図 画像