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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
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  • 補助金|
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

騒音対策工事の設計が適切でなかったもの[東北農政局](203)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,118,044円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(203) 東北農政局 山形県
(事業主体)
農業競争力強化基盤整備等2事業 28、29 430,261 236,643 3,850 2,118

この補助事業は、山形県が最上郡戸沢村戸沢地区内に平成27年度に建設した揚水機場の近辺において、揚水ポンプ等の稼働に伴い平均49.5デシベル(最大値52.6デシベル)の騒音値が計測されたことから、これを低減することを目的として、28年度に揚水機場の換気扇を低騒音型の換気扇に交換する工事、29年度に吸音効果のあるグラスウール(厚さ50mm)を揚水ポンプ、配電盤等が設置されている建屋の地下及び地上階の壁面に設置する工事(以下、これらの工事を合わせて「騒音対策工事」という。)を、それぞれ同地区内の用排水路等の整備を実施する工事の一環として実施したものである。

揚水機場の騒音対策については、「土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「ポンプ場」」(農林水産省農村振興局監修)、騒音・振動対策ハンドブック(社団法人日本音響協会。以下、これらを合わせて「設計指針」という。)等によれば、騒音源とその特性、騒音の伝播経路等を明らかにした上で、各機器の騒音の低減を図るなどするとともに、設計段階で把握できない諸条件による騒音が発生した場合には発生原因を究明して、適切な処置をする必要があるなどとされている。同県は、揚水機場の建設に当たっては、近隣に民家があることから、設計指針等に基づき、騒音規制法(昭和43年法律第98号)に規定されている第二種区域に準ずるなどとして、揚水機場に設置されている揚水ポンプ等の稼働により発生する各種音源等を合成して算出した騒音値が建屋外において1日を通じて45デシベル(以下、この騒音値を「設計騒音値」という。)以下となるようにすることとして揚水機場の設計を行っていた。そして、同県は、揚水機場の設計段階では把握できなかった騒音が揚水ポンプ等の稼働に伴って計測されたことから、28、29両年度に騒音対策工事を実施することとし、換気扇の交換とグラスウールの設置を行えば騒音値を設計騒音値以下に低減できるとして設計し、これにより施工していた。

しかし、同県は、騒音対策工事の設計において、騒音源とその特性、騒音の伝播経路等の騒音の発生原因を究明した上で騒音値が換気扇の交換とグラスウールの設置によってどれだけ低減できるか見積もるなどの十分な検討を行っていなかった。その結果、騒音対策工事後の30年6月に計測した騒音値は平均49.6デシベル(最大値55.6デシベル)となっていて従前の騒音値から低減しておらず、設計騒音値を上回っていた。

したがって、騒音対策工事(工事費相当額計3,850,987円)は、その設計が適切でなかったことから、騒音値が設計騒音値以下に低減されていない状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金等相当額計2,118,044円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、騒音対策工事の実施に当たり、揚水機場から発生する騒音を低減するために必要な処置についての検討が十分でなかったことなどによると認められる。