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  • 平成29年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 生産した丸太の数量等を確定させるために実施する毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算に当たり、集積された丸太の量に応じて毎木検知を効率的に実施できる土場について、作業量の実態を積算基準に反映させて、経済的な積算を行うよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)林野庁
(項)国有林野産物等売払及管理処分業務費
(項)森林整備事業費
東日本大震災復興特別会計
(組織)林野庁
(項)東日本大震災復興事業費
部局等
林野庁、5森林管理局、29森林管理署等
毎木検知の概要
生産した丸太の材積の計測、樹種別区分、品等・品質の区分格付けなどを人が1本ごとに行う業務
検査の対象とした毎木検知による検知業務の請負に関する契約件数及び契約額
247件 6億2270万余円(平成28、29両年度)
上記のうち集積された量に応じて毎木検知を実施していた契約件数及び低減できた積算額
152件 9690万円

【是正改善の処置を求めたものの全文】

毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算について

(平成30年10月10日付け 林野庁長官宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 事業の概要

(1) 国有林材の販売の概要

貴庁は、国有林野の管理経営に関する法律(昭和26年法律第246号)等に基づき、国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、林産物を持続的かつ計画的に供給することなどを目標として、国有林野の適切かつ効率的な管理経営を行うこととしている。

そして、貴庁は、国有林野の産物売払規程(昭和25年農林省告示第132号)に基づき、国有林材を立木の状態で販売する立木販売又は森林管理署等が製品生産事業により立木の伐採等を行い製品(以下「丸太」という。)を生産して販売する製品販売のいずれかの方法により販売している。

(2) 毎木検知による検知業務の概要

森林管理署等は、製品販売を行う場合に、生産した丸太の数量等を確定させる検知業務を行っており、主に、一般材については、生産した丸太の材積の計測、樹種別区分、品等・品質の区分格付けなどを人が1本ごとに行う検知(以下「毎木検知」という。)又は自動選別機による検知を、低質材については、丸太をまとめて集積した状態で体積を計測する層積検知又はトラックに積んだ状態で重量計により重さを計測して体積に換算する重量検知を、それぞれ検知業務の請負者等に請け負わせるなどして実施している。上記検知業務のうち毎木検知は、素材等検知業務請負要領準則(平成4年林野業一第25号)等に基づき、検知業務の請負者が丸太の生産現場である山元土場又は生産された丸太が運搬され集積された最終土場(以下、山元土場と最終土場を合わせて「土場」という。)に赴き、それぞれの土場において、丸太1本ごとに、樹種別区分、日本農林規格に基づく丸太の長さ及び直径の測定並びに品等・品質の区分格付けを行い、これらを検知野帳に記録して、検知野帳の記載内容と丸太を照合できるように木材チョーク等で丸太の木口に直径及び品等を表示するものである。

貴庁は、検知業務の請負に係る費用の積算に当たり、各森林管理局に管内の実情を加味した素材等検知業務請負要領等(以下「積算基準」という。)を定めさせており、積算基準については、実情に合わせて適宜、見直すよう指示している。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

本院は、経済性等の観点から、毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算に当たり、積算基準に示された1日当たりの作業量が実態に即したものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

検査に当たっては、平成28、29両年度に四国森林管理局及び6森林管理局(注1)の40森林管理署等(注2)が実施した毎木検知による検知業務の請負に関する契約計247件(契約金額計6億2270万余円)を対象として、貴庁、7森林管理局及び40森林管理署等において、毎木検知の実施状況に関する調書を徴するとともに、検知業務に係る作業日報等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
6森林管理局  北海道、東北、関東、中部、近畿中国、九州各森林管理局
(注2)
40森林管理署等  空知、胆振東部、日高北部、留萌南部、上川中部、上川南部、根釧東部、青森、下北、三陸北部、盛岡、宮城北部、米代東部、秋田、福島、棚倉、茨城、塩那、群馬、吾妻、静岡、天竜、富山、北信、中信、木曽、飛騨、岐阜、鳥取、岡山、長崎、熊本、大分西部、大分、宮崎北部、屋久島各森林管理署、西紋別、湯沢、白河各支署、愛知森林管理事務所

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算については、各森林管理局が定めた積算基準において、生産する丸太の数量と1日当たりの毎木検知の標準作業量から検知業務に要する人日数を算定して、これに労務賃金を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、中部、近畿中国、四国、九州各森林管理局の積算基準においては、1日当たりの毎木検知の標準作業量について、丸太が土場に搬入された日の当日内に検知業務を行うことを前提として、1日当たりの生産現場から検知業務を行う土場までの丸太の運搬作業量と同量としたり、1日当たりの検知業務を行った後に行われる丸太の積上作業量と同量としたりしていて、毎木検知の作業量の調査結果に基づいて設定していなかった。また、北海道、東北、関東各森林管理局においては、積算基準の改正の時期が古いことなどから、1日当たりの毎木検知の標準作業量の調査方法や作業量を設定した根拠が残っておらず、積算基準が長期間にわたって見直されていなかった。

一方、製品生産事業については、貴庁が政策的に進めている森林作業道等の路網及び土場の整備が進むなど作業状況が変化してきている。したがって、土場に一定程度の量の丸太を集積でき、かつ、土場に搬入された日の当日内に毎木検知を行う必要がない場合には、数日分の運搬又は積上げを要する作業量について、1日で毎木検知を実施するなどすれば、1日当たりの毎木検知の作業量が増えることが見込まれる。

そこで、前記の毎木検知による検知業務の請負に関する契約247件について、森林管理署等を通じて、検知業務の請負者による毎木検知の実施頻度を調査したところ、四国、九州両森林管理局における契約32件については、実際に丸太が土場に搬入された日の当日内に検知業務を行わせていたが、残りの北海道、東北、関東、中部、近畿中国各森林管理局(以下「5森林管理局」という。)の34森林管理署等における契約215件のうち、29森林管理署等(注3)における契約152件については、一定程度の量の丸太が集積できる土場等の場合には、検知業務を丸太が土場に搬入された日の当日内に行っておらず、一定程度の量の丸太が土場に集積されてから数日分をまとめて適時に行うなど、集積された丸太の量に応じて効率的に毎木検知を行っていた。そして、集積された丸太の量に応じて毎木検知が実施されていた検知業務について、森林管理署等を通じて、作業日報、検知業務の請負者からの聴取等により把握した実際に検知業務に要した人日数をみると、のとおり、5森林管理局が定めた積算基準に示された標準作業量を基に算出された人日数の22.1%から89.5%(5森林管理局の平均74.0%)となっていた。

そこで、上記の152件について、上記の調査で把握した作業量の平均値を標準作業量とみなして毎木検知による検知業務の請負に係る費用を試算すると、のとおり、28、29両年度の積算額はそれぞれ28年度計1億5415万余円、29年度計1億2088万余円となり、29森林管理署等が積算していた積算額28年度計2億1052万余円、29年度計1億6148万余円は、28年度計約5630万円、29年度計約4050万円、合計約9690万円が低減できたと認められる。

(注3)
29森林管理署等  空知、胆振東部、日高北部、上川中部、上川南部、根釧東部、下北、盛岡、宮城北部、福島、棚倉、茨城、塩那、群馬、吾妻、静岡、天竜、富山、北信、中信、木曽、飛騨、岐阜、鳥取、岡山各森林管理署、西紋別、湯沢、白河各支署、愛知森林管理事務所

表 5森林管理局における毎木検知の実施状況及び毎木検知による検知業務の請負に係る費用の試算額(平成28、29両年度)

(単位:件数、人日、%、千円)
森林管理局名 森林管理署等数 当局の積算状況 実際の作業状況 修正計算
年度 契約件数 標準作業量を基に算定した毎木検知に要する人日数 毎木検知に係る費用の積算額 検知業務請負業者からの聴取等により把握した実際に検知業務に要した人日数 標準作業量を基に算出した人日数に対する実際の人日数の割合 実態の作業量を用いて積算した毎木検知に係る費用の積算額 低減できた積算額
(A) (B) (C) (C)/(A) (D) (B)-(D)
北海道 7 平成28年度 33 3,648.5 80,163 3,082.3 71,325 8,837
29年度 23 2,373.2 53,843 2,254.3 47,636 6,207
56 6,021.7 134,006 5,336.6 88.6 118,961 15,044
東北 4 28年度 10 720.2 15,998 538.0 13,564 2,434
29年度 7 390.3 8,471 424.0 7,956 515
17 1,110.5 24,469 962.0 86.6 21,520 2,949
関東 9 28年度 23 1,459.4 39,501 1,267.5 35,495 4,006
29年度 25 1,420.0 38,225 1,310.0 34,339 3,886
48 2,879.4 77,727 2,577.5 89.5 69,834 7,893
中部 7 28年度 9 1,952.8 52,298 818.0 28,628 23,669
29年度 8 1,996.2 53,282 1,339.0 29,215 24,067
17 3,949.0 105,580 2,157.0 54.6 57,843 47,737
近畿中国 2 28年度 10 1,007.7 22,567 234.0 5,137 17,430
29年度 4 339.6 7,663 64.0 1,743 5,920
14 1,347.3 30,231 298.0 22.1 6,880 23,350
合計 29 28年度 85 8,788.6 210,528 5,939.8 154,150 56,377
29年度 67 6,519.3 161,486 5,391.3 120,889 40,596
152 15,307.9 372,014 11,331.1 平均 74.0 275,040 96,974

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

中部森林管理局飛騨森林管理署は、同署が指定する土場において、毎木検知等による検知業務について、平成29年度に、一般競争契約により契約を締結して、A社に請け負わせて実施している。そして、同署は、毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算に当たっては、同局が制定した積算基準に基づき、毎木検知の1日当たりの標準作業量(丸太の積上作業の1日当たりの作業量と同量)28.4m3/日、丸太の数量13,921.9m3などから、検知業務に要する人日数を497.4人日と算出し、毎木検知に係る費用を1408万余円と積算していた。

しかし、上記契約の業務実施箇所の土場は広大であり、数日分の搬入量の丸太を集積しておくことが可能であることなどから、実際には、同署は、A社に土場の作業や販売契約に支障が生じない範囲で、数日分の搬入量の丸太の毎木検知を1日にまとめて実施させており、A社は、上記の数量13,921.9m3の毎木検知を116人日で実施していて、積算基準に示された標準作業量を基に算出した人日数497.4人日と比べて少なくなっていた。

同様に、同局管内で実施した毎木検知のうち、森林管理署等が数日分の搬入量の丸太の毎木検知を1日にまとめて実施させていた検知業務の請負に係る契約について、作業日報、検知業務の請負者から聴取等により実際に要した作業量を調査したところ、延べ10万4947.0m3の毎木検知を延べ2,157.0人日で実施しており、これから計算される1人日当たりの作業量48.6m3を、数日分の搬入量の丸太を1日にまとめて毎木検知を実施することが可能な土場における実態に即した標準作業量とみなして、前記の毎木検知に係る検知業務の請負に係る費用の積算額を試算すると、811万余円となり、前記の積算額1408万余円を約590万円低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算に当たり、5森林管理局が定めた積算基準が実態に即しておらず、経済的なものとなっていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、5森林管理局において毎木検知による検知業務の実態を把握して、これを積算基準に反映させて作業状況の変化等に応じた積算を行うことについての理解が十分でないこと、貴庁において5森林管理局に対して、集積された丸太の量に応じて毎木検知を効率的に実施できる土場において検知業務の実態を把握して、これを積算基準に反映させて経済的な積算を行うことの必要性についての指示が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

貴庁は、今後も引き続き、生産した丸太の数量等を確定するために、毎木検知による検知業務を実施していくことが見込まれている。

ついては、貴庁において、5森林管理局に対して、毎木検知による検知業務の請負に係る費用の積算に当たり、集積された丸太の量に応じて毎木検知を効率的に実施できる土場について、毎木検知に要する作業量の実態を把握して、これを積算基準に反映させて、経済的な積算を行わせるよう是正改善の処置を求める。