(1件 不当と認める国庫補助金 12,511,940円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(245) | 山口県 | 萩市 | 河川等災害復旧 | 26、27 | 47,079 (46,479) |
39,647 | 15,267 (14,668) |
12,511 |
この補助事業は、萩市が、萩市大字弥富上地内において、豪雨により被災した橋りょうを新橋(橋長15.0m、幅員4.2m)に架け替えるために、下部構造として橋台2基(以下、右岸側の橋台を「A1橋台」、左岸側の橋台を「A2橋台」という。)の築造、上部構造として橋桁の製作、架設等を実施したものである。そして、本件橋りょうは、橋軸と支承の中心線とのなす角(以下「斜角」という。)が55度の斜橋となっている(参考図1参照)。
同市は、本件橋りょうの設計を「道路橋示方書・同解説」(平成24年版。社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行うこととしている。
示方書によれば、橋りょうの耐震設計において、橋りょうの複雑な地震応答等により、上部構造と下部構造との接合部である支承部が破壊された場合においても、上部構造の落下を防止できるように適切な対策を講じなければならないとされている。そして、橋りょうが所定の判定式(注1)により斜角の小さい斜橋であると判定される場合には、地震発生時に支承部が破壊された際、上部構造が回転することにより下部構造の頂部から逸脱して橋軸直角方向に落橋する可能性があることから、これを防止するために、横変位拘束構造(注2)を設置することとされている。
同市は、本件橋りょうを上記の判定式により斜角の小さい斜橋であると判定し、横変位拘束構造として、鉄筋コンクリート製の突起(橋軸方向の長さ1,587mm、支承の中心線方向の長さ488mm又は578mm、高さ1,174mm。参考図2参照)を、A1橋台の上流側の側面に1個、A2橋台の下流側の側面に1個、計2個設置していた。そして、同市は、横変位拘束構造の設計に当たり、部材の水平方向の断面(参考図3参照)について耐力の照査を行い、地震発生時に支承部が破壊された際に、上部構造が回転することにより横変位拘束構造に作用する曲げモーメント(注3)が最大抵抗曲げモーメント(注3)を下回ることなどから、応力計算上安全であるとし、これにより施工していた。
しかし、本件横変位拘束構造の設計においては、部材の水平方向の断面だけでなく鉛直方向の断面(参考図3参照)についても耐力の照査を行う必要があったのに、同市はこれを行っていなかった。
そこで、改めて部材の鉛直方向の断面について耐力の照査を行ったところ、横変位拘束構造に作用する曲げモーメントは、A1橋台では126.06kN・m、A2橋台では186.43kN・mとなり、最大抵抗曲げモーメント78.25kN・mを大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件横変位拘束構造は設計が適切でなかったため、同構造、上部構造等(これらの工事費相当額計15,267,600円、国庫補助対象額計14,668,200円)は、地震発生時において所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額計12,511,940円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
橋りょう概念図
(参考図2)
下部構造及び横変位拘束構造の概念図
(参考図3)
横変位拘束構造の概念図(断面図)