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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

一般国道等の路面下空洞対策において、調査業務に要した費用について、指針等を整備することなどにより、占用企業者に応分の負担を求めるよう意見を表示したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通省
(項)社会資本総合整備事業費 等
部局等
直轄事業 10地方整備局等
交付金事業 19都道府県
事業及び交付の根拠
道路法(昭和27年法律第180号)等
事業主体
直轄事業 10技術事務所等
交付金事業 道、府1、県11、市39、区5、町3
計 70事業主体
調査業務の概要
道路の陥没の発生を未然に防止することを目的として、陥没の原因となる空洞を早期に発見するためレーダー技術を用いるなどして路面下の状況を調査するもの
調査業務の件数及び金額
直轄事業 22件 25億1885万円(背景金額)
(平成28、29両年度)
交付金事業 132件 16億9338万余円(平成28、29両年度)
(交付金交付額 7億7210万円)(背景金額)

【意見を表示したものの全文】

一般国道等の路面下空洞対策に係る費用の負担について

(平成30年10月17日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 一般国道等の路面下空洞対策の概要

(1) 一般国道等の路面下空洞対策

貴省は、道路法(昭和27年法律第180号)等に基づき、道路を常時良好な状態に保つようにその維持・修繕を実施することとして、トンネル、橋りょう、舗装等の道路を構成する施設等の別に維持又は修繕に関する技術的基準を定めており、道路管理者である貴省及び地方公共団体は、これらの技術的基準に基づくなどして道路の状況を点検している。

道路では地下水等が原因で道路の路面下に空洞が発生することがあり、発生した空洞が拡大するなどして路面近くにまで進行すると、交通荷重等の影響により道路が陥没するなどして、事故につながるおそれがある。貴省が公表している「道路の陥没発生件数とその要因」によると、国が管理する国道で発生した道路の陥没は平成27年度153か所、28年度116か所、計269か所となっている。

貴省は、上記のような状況を踏まえて、道路の陥没の発生を未然に防止することを目的に、国が実施する直轄事業又は地方公共団体が実施する交付金事業として、陥没の原因となる路面下の空洞を早期に発見するための路面下空洞調査業務(以下「調査業務」という。)を実施している。

一方、道路の路面下には、地方公共団体や民間企業等が道路管理者の許可を受けて上水道管、下水道管、ガス管等(以下「路面下占用物件」といい、路面下占用物件を設置している地方公共団体や民間企業等を「占用企業者」という。)が多数埋設されている。路面下占用物件の破損等が原因で路面下に空洞が発生するなどしている事例もあることから、貴省は、道路管理者による占用物件の安全確認を徹底することとして、26年3月に、地方整備局等に対して「道路管理者による占用物件の安全確認の徹底について」(平成26年国道利第28号国土交通省道路局路政課長通知。以下「通知」という。)を発している。通知によれば、道路の占用許可に当たっては、「道路占用者は、占用物件を常時良好な状態に保つように管理し、もって道路の構造又は交通に支障を及ぼさないよう努めなければならないこと」や「その損傷により特に道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある占用物件については、占用許可後、5年が経過する時期を基本として、道路管理者による占用物件の安全確認のため、占用物件の現状について、道路管理者あて書面等により報告しなければならないこと」を占用許可の条件に付すことを徹底することとされている。なお、通知において、路面下占用物件の安全性についての具体的な確認方法が規定されていないことから、占用企業者は、下水道法(昭和33年法律第79号)等の関係法令等に基づき路面下占用物件の安全確認を行い、その結果を道路管理者に報告することとなる。

(2) 調査業務

調査業務は、直轄事業においては、地方整備局(13年1月5日以前は建設省地方建設局)ごとに設置されている技術事務所、北海道開発局(13年1月5日以前は総理府北海道開発庁)及び沖縄総合事務局(13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁。以下、これらを合わせて「技術事務所等」という。)が、2年度から地方整備局等管内の国道事務所等が管理している道路を対象として実施している。また、交付金事業においては、25年2月に貴省が主として市町村が路面陥没危険箇所調査等を実施する際の参考資料として作成した「総点検実施要領(案)【舗装編】(参考資料)」を公表したこと、平成24年度一般会計補正予算において、事前防災・減災対策等の取組を集中的に支援するために防災・安全交付金事業が創設されたことなどを契機として、多くの地方公共団体が25年度以降に調査業務を実施している。28、29両年度に調査業務に要した事業費は、直轄事業で計25億1885万余円、交付金事業で計16億9338万余円(交付金交付額計7億7210万余円)、合計42億1223万余円となっている。

調査業務は、レーダー技術を用いるなどして路面下の状況を調査するものであり、一般的に、次のような手順により実施されている。

① 技術事務所等又は地方公共団体から調査業務を受託した調査会社(以下「受注者」という。)は、一次調査として、対象となる道路の全延長を地中レーダーを搭載した探査車で走行移動しながら探査データを取得し、技術事務所等又は地方公共団体は、その探査データを基に、空洞が発生している箇所及びその可能性のある箇所を判定する。

② 受注者は、①において空洞が発生している可能性があると判定された箇所を対象として、ハンディ型地中レーダーを用いるなどして二次調査を行い、空洞が発生している可能性が高いと判定した場合には、削孔してスコープ等で空洞の有無、土被り、空洞の大きさなどを確認する。

③ 受注者は、上記の調査結果を取りまとめて、技術事務所等又は地方公共団体に報告する。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

貴省及び地方公共団体は、道路の路面下で発生した空洞が拡大するなどすることによる道路の陥没の発生を未然に防止することを目的とした調査業務を、国においては2年度以降、多くの地方公共団体においては25年度以降毎年度実施しており、その費用は多額に上っている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、調査業務に要する費用について占用企業者に応分の負担を求めているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

検査に当たっては、10技術事務所等(注1)、13道府県(注2)及び47市区町(注3)の計70事業主体が28、29両年度に実施した調査業務計154件(直轄事業22件、交付金事業132件)、契約金額計42億1223万余円(直轄事業計25億1885万余円、交付金事業計16億9338万余円(交付金交付額計7億7210万余円))を対象として、貴省本省及び上記の70事業主体において契約書、特記仕様書、成果品等の書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、事業主体から調書の提出を受けるなどして検査した。

(注1)
10技術事務所等  北海道開発局、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各技術事務所、沖縄総合事務局
(注2)
13道府県  北海道、大阪府、千葉、神奈川、山梨、山口、愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎各県
(注3)
47市区町  登別、市川、我孫子、武蔵野、調布、小平、福生、多摩、横浜、相模原、藤沢、茅ヶ崎、秦野、綾瀬、新潟、三条、甲府、名古屋、豊橋、蒲郡、尾張旭、堺、東大阪、宝塚、和歌山、下関、岩国、長門、周南、高知、北九州、久留米、飯塚、柳川、古賀、佐世保、熊本、宮崎、沖縄各市、新宿、江東、品川、渋谷、杉並各区、岩内郡岩内、中郡大磯、泉南郡熊取各町

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

70事業主体が実施した調査業務154件の結果についてみると、調査業務106件(直轄事業17件、交付金事業89件)において、のとおり、1,309か所の空洞が発見されていた。そして、上記1,309か所の空洞の発生原因についてみると、空洞の発生原因となった施設(以下「原因施設」という。)が特定されていない箇所が調査業務84件(直轄事業14件、交付金事業70件)において828か所あり、発見された空洞の箇所数に対する割合は63.3%となっている一方、原因施設が特定されている箇所は調査業務63件(直轄事業11件、交付金事業52件)において481か所、同36.7%となっていた。なお、この63件のうち41件については、原因施設が特定されていない空洞も発見されており上記の調査業務84件と重複している。

原因施設が特定されている箇所を原因施設別に分類すると、道路排水施設等の道路施設が210か所、同16.0%、路面下占用物件が193か所、同14.7%となっており、路面下占用物件が原因施設である空洞が一定割合で発見されている。なお、前記の「道路の陥没発生件数とその要因」における国が管理する国道で発生した道路の陥没計269か所のうち、路面下占用物件の破損等が発生原因である陥没は、計44か所と全体の16.4%となっており、陥没の発生原因についても路面下占用物件が一定割合を占めている。

表 発見された空洞と原因施設の状況

区分 発見された空洞数  
原因施設が特定されているもの   原因施設が特定されていないもの
道路施設
路面下 
占用物件
河川施設 その他
(か所) (か所) (か所) (か所) (か所) (か所) (か所)
直轄事業 259 73 25 6 0 42 186
交付金事業 1,050 408 185 187 15 21 642
合計 1,309 481
(36.7%)
210
(16.0%)
193
(14.7%)
15
(1.1%)
63
(4.8%)
828
(63.3%)
(注)
括弧書きは、発見された空洞数に対する割合である。

そこで、調査業務に要した費用の占用企業者の負担状況についてみると、70事業主体のうち、関東技術事務所、横浜、名古屋両市の計3事業主体は、調査業務の対象となった路面下占用物件の延長に応ずるなどした割合に基づき調査業務に係る費用の一部を占用企業者に負担させていたが、68事業主体は、調査業務に要する費用を全く負担させていなかった(注4)

しかし、占用企業者は、路面下占用物件を常時良好な状態に保つよう管理し、もって道路の構造又は交通に支障を及ぼさないように努めなければならないことなどが占用許可の条件とされているのに、前記のとおり、事業主体が実施している調査業務において路面下占用物件が原因施設である空洞が一定割合で発見されていること、貴省は路面下占用物件の破損等が原因となる空洞や陥没の発生対策として調査業務を実施することが有効であるとしていること及び事業主体が既に直轄事業又は交付金事業として調査業務を実施していることに鑑みると、調査業務は占用許可の条件の適切な履行に資することとなることから、事業主体は、占用企業者に応分の負担を求める必要があると認められる。

(注4)
関東技術事務所は、調査業務を実施している道路のうち、東京、横浜両国道事務所が管理している道路の全部又は一部については、調査業務に係る費用の一部を占用企業者に負担させているが、その他の道路については、調査業務に係る費用を占用企業者に全く負担させていないことから、68事業主体にも含めている。

(改善を必要とする事態)

占用企業者に、調査業務に要した費用について応分の負担を求めていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、路面下占用物件の破損等が原因となる空洞や陥没の発生対策として調査業務を実施することが有効であるとしているのに、調査業務に要する費用について、占用企業者に応分の負担を求める必要性についての検討が十分でないため、事業主体に対して、占用企業者に応分の負担を求めるための指針等を整備し、これを周知又は助言していないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

上水道管、下水道管等の路面下占用物件の老朽化が進む中、路面下占用物件の破損等が原因となる空洞や陥没の発生は今後も増加することが想定される。このため、調査業務は、今後も引き続き多数実施されることが見込まれる。

ついては、貴省において、調査業務に要した費用について、占用企業者に応分の負担を求めるための指針等を整備して、これを技術事務所等及び道路の占用許可を行っている国道事務所等に対して周知することにより、国道事務所等が指針等に基づき関係者との合意形成を図り、占用企業者に応分の負担を求めるよう、また、地方公共団体に対しても同様な助言をするよう意見を表示する。