国土交通省は、高速自動車国道(以下「高速道路」という。)の整備を図り、自動車交通の発達に寄与するために、高速道路として建設すべき路線のうち東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社による有料道路として整備・管理することが難しいと見込まれる区間について、高速自動車国道法(昭和32年法律第79号。以下「法」という。)等に基づき、国の直轄事業により通行料金が無料の道路として高速道路及びインターチェンジを整備している(以下、国土交通省が直轄事業により整備する高速道路を「新直轄道路」という。)。新直轄道路は、法等に基づき、高速道路の新設に関する整備計画(以下「整備計画」という。)に適合するよう整備が行われており、整備計画には車線数等の事項が定められている。ただし、整備計画で4車線とされていても、当面の間、交通量の少ないと見込まれる道路の場合は、2車線で供用を開始することとされている。
新直轄道路とこれに近接する道路を接続するためのインターチェンジのうち、地域活性化インターチェンジ(以下「地域インター」という。)は、新直轄道路への効率的なアクセスを確保することにより、地域経済の浮揚、雇用創出の促進、周辺道路の渋滞緩和等を図り、地域の活性化に寄与することを目的として、法等の規定に基づき、新直轄道路に近接する県道等の道路管理者である地方公共団体が連結許可の申請を行い、国土交通大臣の許可を受けて、地方公共団体が主体となって費用を負担して設置するものである。
地域インターは、参考図1のとおり、変速車線、インターチェンジ本体等から構成されている。このうち、変速車線は新直轄道路の本線を走行している車両の走行を乱さないよう安全に減速又は加速するために設けられるものであり、また、インターチェンジ本体は変速車線と新直轄道路に近接する県道等とを接続するために設けられるものである。
国土交通省が定めている「地域活性化インターチェンジ制度(直轄高速)実施要綱」(平成26年国道高第77号。平成26年6月以前は平成17年国道有第75―2号。以下「実施要綱」という。)によれば、変速車線の建設費は国の負担とするとされ、インターチェンジ本体の建設費は地方公共団体の負担とするとされており、これらの建設費の負担については、地方公共団体と地方整備局等との間で協定を締結することとされている(参考図1参照)。そして、当該協定に基づき、国道事務所等は、国が負担する部分について直轄事業として工事を実施するとともに、地方公共団体が負担する部分については、地方公共団体から工事を受託して工事を実施するなどしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、地域インターの建設費が国と地方公共団体との間で適切に負担されているかなどに着眼して、4地方整備局(注1)及び9国道事務所等(注2)において、25年度から29年度までの間に設置された地域インター15か所(工事費(注3)計236億2108万余円)を対象として、協定書、契約書、工事図面等の書類や現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の提出を受けるなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、15か所の地域インターは、全て整備計画における車線数が4車線のところを2車線で供用が開始された新直轄道路の上り線側及び下り線側に接続するように設置されていたものであり、このうち9か所については上り線側及び下り線側の両方のインターチェンジ本体の建設費を5県1市2町が負担していた(参考図2参照)。一方、残りの6か所については、表及び参考図3のとおり、上り線側又は下り線側のどちらか一方のインターチェンジ本体の建設費を国が負担している事態となっていた。
表 上り線側又は下り線側のどちらか一方のインターチェンジ本体の建設費を国が負担していたもの
インター チェンジ名 |
地方整備局 | 国道事務所等 | 地方公共団体 (連結申請者) |
協定締結の有無 | 国が負担していたインターチェンジ本体の建設費
(千円) |
---|---|---|---|---|---|
米沢中央 | 東北地方整備局 | 山形河川国道事務所 | 山形県 | 無 | 11,186 |
東根北 | 東北地方整備局 | 山形河川国道事務所 | 山形県 | 無 | 5,650 |
大石田村山 | 東北地方整備局 | 山形河川国道事務所 | 山形県 | 無 | 9,211 |
佐久臼田 | 関東地方整備局 | 長野国道事務所 | 長野県 | 有 | 10,397 |
佐久穂 | 関東地方整備局 | 長野国道事務所 | 長野県南佐久郡佐久穂町 | 有 | 108,295 |
すさみ | 近畿地方整備局 | 紀南河川国道事務所 | 和歌山県 | 有 | 4,725 |
6か所 | 3地方整備局 | 3国道事務所等 | 3県1町 | / | 149,467 |
上記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。
佐久臼田インターチェンジ等3か所の地域インターについては、2地方整備局は、新直轄道路の本線を将来2車線から4車線化した場合には上り線側又は下り線側のどちらか一方のインターチェンジ本体の盛土部分は本線の盛土部分に含まれることになるなどとして、当該部分の盛土工等の費用を国の負担とし、舗装工等の費用のみを地方公共団体の負担とする協定を2県1町と締結していた。そして、2国道事務所等は、当該協定に基づき、将来本線の盛土部分に含まれることとなる部分の盛土工等の費用を国が負担することとして、2県1町からインターチェンジ本体の工事を受託して実施していた。
しかし、前記のとおり、地域インターは、地域の活性化に寄与することを目的として、地方公共団体が主体となって費用を負担して設置するものであることから、2車線で供用が開始された新直轄道路に設置された地域インターについて将来4車線化した際に本線盛土となる場合等においても、当該盛土工等の費用(計1億2341万余円)も含めたインターチェンジ本体の建設費全額を2県1町の負担とすべきであったと認められた。
米沢中央インターチェンジ等3か所の地域インターについては、東北地方整備局は、地方公共団体が負担することとした部分については山形県が自ら工事を実施することとしていたことから、実施要綱に基づく協定を締結する必要はないと判断して、これを締結していなかった。そして、山形河川国道事務所は、(1)の事態と同様に、新直轄道路の本線を将来2車線から4車線化した場合には上り線側(下り線側)のインターチェンジ本体の盛土部分は本線の盛土部分に含まれることになるとして、当該部分の盛土工等を直轄事業として実施しており、下り線側(上り線側)のインターチェンジ本体については同県が自ら工事を実施していた。これらのことから、同局は、直轄事業として実施した上り線側(下り線側)のインターチェンジ本体の建設費の負担を同県に求めていなかった。
しかし、前記のとおり、実施要綱によれば、地域インターの建設費の負担については地方公共団体と地方整備局等との間で協定を締結することとされており、地域インターは、地域の活性化に寄与することを目的として、地方公共団体が主体となって費用を負担して設置するものであることから、工事を実施する前に協定を締結した上で当該建設費(計2604万余円)を同県の負担とすべきであったと認められた。
このように、地域インターの設置に当たり、インターチェンジ本体の建設費を国が負担していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、地域インターの設置前に協定を締結して、当該協定に基づき工事を実施することについての地方整備局及び国道事務所等に対する指導が十分でなかったこと、2車線で供用される新直轄道路について将来4車線化した際に本線盛土となる場合等においても、インターチェンジ本体の建設費については地方公共団体が負担すべきであることについて、地方整備局に対して明確に示していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、30年9月に地方整備局等及び国道事務所等に対して事務連絡を発して、地域インターの設置前に協定を締結して、当該協定に基づき工事を実施することについて指導したり、2車線で供用される新直轄道路について将来4車線化した際に本線盛土となる場合等においても、インターチェンジ本体の建設費については地方公共団体が負担することについて明確に示したりする処置を講じた。
(参考図1)
地域インターの建設費の概念図
(参考図2)
上り線側及び下り線側の両方のインターチェンジ本体の建設費を地方公共団体が負担していた例(横断図)
(参考図3)
下り線側のインターチェンジ本体の建設費を国が負担していた例(横断図)