国土交通省は、空港法(昭和31年法律第80号)、空港整備事業費補助金等交付要綱(昭和48年空管第272号の(1)。以下「交付要綱」という。)等に基づき、国が設置して地方公共団体が管理する特定地方管理空港、地方公共団体が設置して管理する地方管理空港等(以下、これらを合わせて「地方管理空港等」という。)において滑走路、照明施設等の新設又は改良の工事(以下、新設又は改良の工事を合わせて「整備工事」という。)を空港整備事業として実施する地方公共団体に対して、空港整備事業費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
交付要綱等によれば、補助の対象となる事業は、滑走路、照明施設等の整備工事等とされており、このうち、照明施設の整備工事については、進入灯、滑走路灯、電源設備等の照明施設に係る新増移設又は改良の工事に要する経費が補助の対象とされている。そして、補助金の額は、空港法等によれば、地方管理空港等の種類や所在地に応じて、交付対象となる費用の100分の40以内から100分の90以内までとされている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、交付要綱等に従って適切に補助金の交付が行われているかなどに着眼して、平成25年度から29年度までの間に17道県市(注1)が24地方管理空港等で実施して完了している照明施設の整備工事計106件(事業費計52億6651万余円、補助対象事業費計51億5563万余円、補助金交付額計32億0436万余円)を対象に検査した。検査に当たっては、4県(注2)において、補助金等交付申請書、補助事業完了実績報告書、仕様書等の書類及び現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、残りの13道県市については、上記と同様の書類の提出を受けてその内容を確認するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
検査の対象とした106件の照明施設の整備工事のうち、14地方管理空港等(注3)で実施された11道県市(注4)の23件においては、照明施設の整備工事が完了し、供用が開始された後に障害等が発生した場合に備えて用意しておくリレー、変換器、基板、ヒューズ等の部品、点検や保守に用いる工具等(以下、これらを合わせて「予備品等」という。購入費計3406万余円、補助金相当額計2140万余円)の購入に要する費用を補助対象事業費に計上して、これに係る分を含めて補助金の交付を受けていた。
しかし、交付要綱等によれば、照明施設の整備工事に係る補助の対象となる事業は、照明施設の新増移設又は改良工事とされている。そして、供用後の維持管理において使用する予備品等が補助の対象とならないことは交付要綱等に明記されていないものの、補助金の交付は照明施設の整備工事を対象とするものであることから、照明施設の整備工事が完了し、供用が開始された後の維持管理において使用するこれらの予備品等の購入費を補助の対象とすることは適切ではないと認められた。
このように、空港整備事業のうち照明施設の整備工事において、供用後の維持管理において使用する予備品等の購入費を補助の対象に含めて補助金が交付されていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、地方公共団体に対して、供用後の維持管理において使用する予備品等の購入費は空港整備事業に係る補助の対象とならないことを明確に示していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、30年8月に、地方管理空港等を管理する地方公共団体に対して事務連絡を発して、空港整備事業で照明施設を整備する場合、供用後の維持管理において使用する予備品等の購入費は補助の対象とならないことを明確に示して、これを周知するなどの処置を講じた。