(4件 不当と認める国庫補助金 115,465,697円)
再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金及び再生可能エネルギー等導入推進基金は、環境省が東日本大震災による被災地域の復旧・復興や、原子力発電施設の事故を契機とした電力需要のひっ迫への対応の必要性に鑑み、再生可能エネルギー等を活用したエネルギーシステムの導入等を支援し、環境先進地域の構築に資する事業を実施することなどを目的として、都道府県及び政令指定都市(以下「事業主体」という。)に対して、平成23年度に地域環境保全対策費補助金(前者の基金に係るもの)を、24年度から26年度までの各年度に二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(後者の基金に係るもの)をそれぞれ交付して造成させたものである(以下、両基金を合わせて「基金」という。)。
事業主体は、「平成23年度地域環境保全対策費補助金(再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金)及び災害廃棄物処理促進費補助金(災害等廃棄物処理基金)交付要綱」(平成23年11月環境事務次官通知)等(以下、これらを合わせて「要綱等」という。)に基づき、基金を財源として、地震等の災害時に避難所、災害対策本部等の防災拠点となる施設等(以下「防災拠点施設等」という。)において、太陽光発電設備等を設置するなどする事業(以下「基金事業」という。)を自ら実施するほか、基金事業を実施する市町村等に対して、基金を取り崩して補助金(以下、事業主体からの補助金を「県補助金」という。)を交付している。
要綱等によれば、基金事業により設置される太陽光発電設備等は、地震等の災害が発生して電力会社から供給される商用電力が遮断された際(以下「災害等による停電時」という。)に、防災拠点施設等において必要とされる最低限の機能を維持することを目的とすることとされている。
本院が事業主体である19都道府県及び3政令指定都市並びに県補助金の交付を受けた155市区町村等において会計実地検査を行ったところ、茨城、群馬、福井各県の3市町村(注1)において、基金事業により実施した設備の設置工事において設計が適切でなく所要の安全度が確保されていないなどしていたり、群馬県吾妻郡中之条町において、基金事業により実施した設備の設置工事において施工が適切でなく地震時における所要の機能が維持できないおそれがあったりしていたため、取り崩された基金計115,465,697円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、3市町村において設備の設計に当たり所要の安全度等についての検討が十分でなかったこと、中之条町において設備の施工に対する監督及び検査が十分でなかったこと、茨城、群馬、福井各県において市町村に対する助言が十分でなかったことなどによると認められる。
以上を事業主体別・間接補助事業者等別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
間接補助事業者等 | 補助事業等 | 実施年度 | 基金使用額 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める基金使用額 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(262) | 環境本省 | 茨城県 | 鹿嶋市 | 再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金 | 24 | 65,424 | 65,424 | 29,800 | 29,800 |
茨城県は、鹿嶋市に対して県補助金を交付しており、同市は、地震等の災害時に防災拠点施設等となる大野ふれあいセンター及びまちづくり市民センターの屋上等に、それぞれ太陽光発電設備等を設置する工事を工事費計70,161,000円(県補助金65,424,000円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。
本件太陽光発電設備は、大野ふれあいセンターについては防水保護層が敷かれた屋上にコンクリート基礎を据え置き、また、まちづくり市民センターについては屋根にモルタルを敷きH形鋼等から構成される基礎を据え置き、それぞれの基礎の上に架台及び太陽光パネルを設置するものである。
同市は、本件太陽光発電設備の設計を「太陽電池アレイ用支持物設計標準」(財団法人日本規格協会発行。以下「基準」という。)等に基づいて行うこととしており、これにより同設備を設置していた。
しかし、基準等によれば、太陽光発電設備の基礎の設計に当たっては、地震時等において基礎底面に作用する水平力が、基礎底面と接地面との摩擦により生ずる滑動抵抗力を下回ることなどを検討することとされているのに、同市は、この検討を行っていなかった。
そこで、基準等に基づき本件太陽光発電設備の基礎の安定計算を行ったところ、大野ふれあいセンターについては、地震時において基礎底面に作用する水平力は31.44kNとなり、基礎底面と接地面(防水保護層)との摩擦により生ずる滑動抵抗力17.28kNを大幅に上回っていた。また、まちづくり市民センターについても、地震時において基礎底面に作用する水平力は98.99kNとなり、基礎底面と接地面(モルタル)との摩擦により生ずる滑動抵抗力48.10kNを大幅に上回っていて、それぞれ安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件太陽光発電設備(工事費相当額30,028,680円、国庫補助金相当額29,800,213円)は、基礎の設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
(263) | 環境本省 | 群馬県 | 多野郡上野村 | 再生可能エネルギー等導入推進基金 | 27 | 88,358 | 88,358 | 71,115 | 71,115 |
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群馬県は、上野村に対して県補助金を交付しており、同村は、災害等による停電時に、防災拠点施設等となる上野村学校給食センター(以下「給食センター」という。)及び上野村へき地保育所(以下「保育所」という。)に電力を供給するために、上野小学校(以下「小学校」という。)、新羽村営住宅(以下「村営住宅」という。)及び保育所に太陽光発電設備、蓄電池設備等を設置する工事を工事費89,640,000円(県補助金88,358,425円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。
同村は、本件太陽光発電設備等の設計に当たり、その導入規模については、災害等による停電時に、防災拠点施設等の機能を確保するために必要な電力量(以下「必要電力量」という。)を基にするなどして次のとおり決定し、これにより施工することとしていた。
① 太陽光パネルについては、昼間の必要電力量の計143.43kWh(給食センター140.36kWh、保育所3.07kWh)に昼間に蓄電池設備への充電をするために必要な電力量の計79.55kWh(給食センター74.93kWh、保育所4.62kWh)を加えた電力量の合計(以下「昼間必要量」という。)222.98kWh(給食センター215.29kWh、保育所7.69kWh)を、出力1kWの太陽光パネルが日中の曇天等を考慮した1日に発電できる電力量2.774kWhで除した必要な出力80.38kWを確保するために、85kW程度の出力のものとする。
② 蓄電池設備については、夜間の必要電力量(以下「夜間必要量」という。)の計79.55kWh(給食センター74.93kWh、保育所4.62kWh)を確保するために、80kWh程度の容量のものとする。
同村は、給食センターと保育所の太陽光発電設備等をそれぞれ独立した系統として設置することとし、給食センターに電力を供給するために小学校及び村営住宅に計7系統の太陽光発電設備等(太陽光パネルの出力は計65.75kW、蓄電池設備の容量は計67.20kWh)を、保育所に電力を供給するために保育所に計2系統の太陽光発電設備等(太陽光パネルの出力は計18.78kW、蓄電池設備の容量は計19.20kWh)をそれぞれ設置していた。
しかし、給食センターと保育所の太陽光発電設備等の系統をそれぞれ独立させると、給食センターの系統と保育所の系統との間で電力を相互に融通することができなくなることから、それぞれの必要電力量を確保できているか検討する必要があったのに、同村は、この検討を行っていなかった。
そこで、電力の供給先である給食センターと保育所について、それぞれの太陽光パネルの出力及び蓄電池設備の容量から供給できる電力量を算定したところ、給食センターにおいて、太陽光パネルから供給できる電力量は182.40kWh、蓄電池設備から供給できる電力量は67.20kWhとなり、いずれも昼間必要量215.29kWh、夜間必要量74.93kWhを下回っていた。
したがって、本件太陽光発電設備等のうち、給食センターに電力を供給するために小学校及び村営住宅に設置した太陽光発電設備等(工事費相当額71,115,551円、国庫補助金相当額71,115,068円)は、設計が適切でなかったため、必要電力量が確保されていない状態になっていた。
(264) | 環境本省 | 群馬県 | 吾妻郡中之条町 | 再生可能エネルギー等導入推進基金 | 26 | 17,409 | 17,409 | 2,505 | 2,505 |
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群馬県は、中之条町に対して県補助金を交付しており、同町は、地震等の災害時に防災拠点施設等となる中之条中学校校舎に、太陽光パネル、パワーコンディショナ(注2)等で構成される太陽光発電設備等を設置する工事を工事費18,576,000円(県補助金17,409,000円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。
本件工事は、同町が作成した設計図書等に基づき、請負人が詳細な設計を行うなどした上で施工することになっていた。そして、請負人は、パワーコンディショナの設計について、パワーコンディショナを搭屋の床面に直接据え置き、その底面をアンカーボルト4本で床面に固定することとして、「建築設備耐震設計・施工指針2005年版」(独立行政法人建築研究所監修)等に基づいて、アンカーボルトの耐震設計計算を行い安全であることを確認していた。
しかし、請負人は、本件工事を施工する際に、塔屋内の貯水槽から水があふれることにより、パワーコンディショナが浸水するおそれがあることから、パワーコンディショナの底面と床面との間に空間(0.12m)を確保するため、パワーコンディショナを床面に直接据え付けないこととして、パワーコンディショナをアンカーボルトにより固定していた(参考図1参照)。このため、アンカーボルトの耐震設計計算では、パワーコンディショナを床面に直接据え付けることにより安全性を確保することとしているのに、上記のような施工方法では、パワーコンディショナの底面と床面との間が密着していないことから、地震時に発生する水平力によりアンカーボルトが損傷しパワーコンディショナが転倒するなどのおそれがある状態となっていた。
したがって、本件パワーコンディショナ(工事費相当額2,505,373円、国庫補助金相当額2,505,277円)は、据付工事に係る施工が適切でなかったため、地震時における所要の機能が維持できないおそれのある状態になっていた。
(参考図1)
パワーコンディショナの概念図
(265) | 環境本省 | 福井県 | 南条郡南越前町 | 再生可能エネルギー等導入推進基金 | 28 | 61,914 | 61,914 | 12,045 | 12,045 |
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福井県は、南越前町に対して県補助金を交付しており、同町は、地震等の災害時に防災拠点施設等となる今庄中学校及び南条保健福祉センターに、それぞれ太陽光発電設備等を設置する工事を工事費計62,635,680円(県補助金61,914,506円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。このうち、太陽光発電設備は、H形鋼(高さ100mm、幅100mm、ウェブ肉厚6mm、フランジ肉厚8mm)、溝形鋼(高さ100mm、幅50mm、厚さ3.2mm)等を組み立てた下地に太陽光パネルを取り付けたものを鋼管の支柱と緊結して据え付けるものであり、今庄中学校及び南条保健福祉センターにそれぞれ2基ずつ計4基設置するものである(参考図2参照)。
同町は、本件太陽光発電設備の設計を「通信鉄塔設計要領・同解説」等(国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室監修。以下「要領等」という。)に基づいて行うこととしており、これにより同設備を設置していた。
しかし、要領等によれば、太陽光パネルの下地は、常時、暴風時及び地震時のそれぞれの場合における固定荷重、積雪荷重等を考慮して部材に生ずる曲げ応力度(注3)が許容曲げ応力度(注3)を下回らなければならないことなどを検討することとされているのに、同町は、この検討を行っていなかった。
そこで、要領等に基づき太陽光パネルの下地について構造計算を行ったところ、常時におけるH形鋼及び溝形鋼に生ずる曲げ応力度は、それぞれ835N/mm2及び584N/mm2となり、いずれも許容曲げ応力度157N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。また、地震時におけるH形鋼に生ずる曲げ応力度は372N/mm2となり、許容曲げ応力度235N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件太陽光発電設備(工事費相当額12,045,398円、国庫補助金相当額12,045,139円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
(参考図2)
太陽光パネルの下地の概念図
(262)―(265)の計 | 233,105 | 233,105 | 115,465 | 115,465 |
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