沖縄防衛局(以下「局」という。)は、我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊に対して我が国政府が提供している沖縄県国頭郡国頭村及び東村にまたがって所在する北部訓練場の過半の返還に伴い、返還区域に設置されているヘリコプター着陸帯7施設のうち1施設を同訓練場内の別の場所に移設する工事(以下「移設工事」という。)を実施するために、平成27年1月に、「北部(H26)着陸帯移設工事」契約を仲程土建株式会社(以下「元請業者」という。)と締結している。そして、局は、28年8月に締結した第5回変更契約において、移設工事を安全に実施するための警備に係る業務(交通誘導員による雑踏警備等を除く。以下「警備業務」という。)を特記仕様書に定めて追加するなどして、29年3月に移設工事が完了した時点での最終的な契約金額1,426,032,000円全額を同年4月までに元請業者に支払っている。
局は、上記の変更契約を締結するに当たり、警備業務に要する費用(以下「警備費」という。)については、一般的な施設警備とは異なることから、公表されている積算基準を適用できないとして、元請業者から見積書を徴取して算出している。また、特記仕様書において、警備費の一部の費用については、後日、警備員の実際の宿泊数等に基づいて精算することなどとされている。
警備費は、警備員の配置に要する費用のほか、警備員の宿泊に要する費用(以下「宿泊費」という。)、警備員のために加入した国内旅行傷害保険等の保険料(以下「保険料」という。)等で構成される直接費に諸経費を加えたものとなっており、局は、最終的な警備費に係る精算金額(以下「精算金額相当額」という。)を計519,100,000円と算定している。
そして、元請業者は、28年7月20日から同年9月14日までの間(以下「警備期間」という。)の警備業務をテイケイ株式会社(以下「警備業者」という。)に下請けさせて実施している。
本院は、合規性等の観点から、警備費が適切に精算されているかなどに着眼して、前記の契約を対象として、局において、精算に当たり、元請業者を通して警備業者から警備費の実績として提出を受けた見積書(以下「実績見積書」という。)、局を通して警備業者から提出を受けた外注経費に係る請求書等の精算の根拠となる資料(以下「根拠資料」という。)を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、元請業者に対して会計検査院法第23条第1項第7号の規定により検査することを決定して、会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
局は、宿泊費について、実績見積書を基に84,977,000円を精算金額相当額としていた。
しかし、実績見積書に記載された宿泊費の内訳を警備業者が外注した業者から提出を受けた請求書を基に精査したところ、警備期間外の28年9月15日から同月30日までの間の宿泊費11,200,000円が含まれていて、当該16日分は本件警備業務に要する費用とは認められないものであり、これを基に警備期間全体に係る適正な宿泊費を算出すると73,777,000円となる。
また、局は、保険料について、実績見積書を基に6,000,000円を精算金額相当額としていた。
しかし、実績見積書に記載された保険料の内訳を保険証券を基に精査したところ、そのうち国内旅行傷害保険に係る保険料2,000,000円については、保険期間が28年7月22日から29年7月21日までの1年間分となっており、警備期間外の期間に係る保険料1,698,630円が含まれていて、当該期間に係る分は本件警備業務に要する費用とは認められないものであり、これを基に警備期間全体に係る適正な保険料を算出すると4,301,370円となる。
したがって、警備費について、上記に基づき、諸経費を考慮するなどして適正な精算金額を算出すると計504,876,625円となる。そして、これを基に適正な工事請負金額を算定すると、計1,412,193,175円となり、前記の支払額1,426,032,000円との差額13,838,825円が過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、警備業者が実績見積書に警備期間外の費用を含めて報告していたことにもよるが、局において、実績見積書の内容について根拠資料に基づく審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。