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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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ソフトウェアを使用するためのライセンス及びソフトウェアのアップグレード等を行う権利の調達数量の算定に当たり、ソフトウェアを使用するパーソナルコンピュータの台数の把握が適切でなかったため、調達数量が過大となっていたもの[海上幕僚監部](272)


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等
海上幕僚監部
契約名
ソフトウェア(統合ライセンス)売買契約
契約の概要
パーソナルコンピュータで文書作成等を行うなどのソフトウェアを使用するために必要な権利を調達するもの
契約の相手方
株式会社大塚商会
契約
平成29年9月 一般競争契約
支払
平成30年4月
支払額
1,017,506,765円(平成29年度)
不当と認める支払額相当額
17,649,173円(平成29年度)

1 契約等の概要

海上自衛隊は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)で文書作成等を行うソフトウェアや、各種システムへの接続等を行う際に必要となるソフトウェア(以下、これらを合わせて「業務用ソフトウェア」という。)を使用している。

海上自衛隊における業務用ソフトウェアを使用するためのライセンス及び業務用ソフトウェアのアップグレード等を行う権利(以下「アップグレード権」といい、ライセンスと合わせて「ライセンス等」という。)の調達について、平成28年度までは海上自衛隊補給本部が行っていたが、29年度は、防衛装備庁(以下「装備庁」という。)が、陸上、海上、航空各自衛隊を含む防衛省内の各機関(以下「各機関」という。)の分を一括して行っている。すなわち、各機関が算定した調達要求数量について、統合幕僚監部がこれらを取りまとめた上で装備庁に調達要求書を提出しており、装備庁は、当該調達要求書を基に、29年9月に、株式会社大塚商会と30年3月1日から31年2月28日までを使用期間としたライセンス等の売買契約を契約金額1,017,506,765円で締結して、30年4月に同額を支払っている。

本件契約では、業務用ソフトウェアを新たに調達する場合についてはライセンス等(以下、この場合において調達するライセンス等を「新規調達分」という。)を、本件契約の締結より前に業務用ソフトウェアのライセンスを既に調達していてそれを継続して使用する場合についてはアップグレード権(以下、この場合において調達するアップグレード権を「継続使用分」という。)のみを、それぞれ調達している。

また、調達されるライセンス等の数量が各機関の調達要求数量を取りまとめた大きなものとなっていることなどから、本件契約では、使用期間開始後に、新たに業務用ソフトウェアを使用するPCの台数が増加して必要となるライセンス等の数量が増加しても、31年3月1日以降も業務用ソフトウェアを継続して使用する場合には、当該増加分を前記の使用期間中は無償で使用できることとなっている。そのため、ライセンス等は、使用期間開始時点で業務用ソフトウェアを使用するPCの台数(以下「開始時点台数」という。)に基づいて算定された数量を調達すれば足りることとなる。

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、ライセンス等の調達数量は、業務用ソフトウェアを使用するPCの台数に基づいて適切に算定されているかなどに着眼して、本件契約を対象として、防衛省内部部局、統合、陸上、海上、航空各幕僚監部、装備庁等において、契約書、仕様書、各機関が算定したライセンス等の調達要求数量に関する書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、海上幕僚監部において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

海上幕僚監部は、海上自衛隊分のライセンス等の調達要求数量の算定に当たり、各部隊等に依頼して業務用ソフトウェアを使用するPCの所要台数を調査させ、計39,578台と報告を受けていた。そして、海上幕僚監部は、調査時点から使用期間開始時点までの間に海上自衛隊全体で新たに使用が見込まれる台数(以下「見込台数」という。)315台を上記の39,578台に加えた計39,893台を開始時点台数として、これに基づいてライセンス等の調達要求数量を新規調達分4,883本、継続使用分107,875本とそれぞれ算定し、同数が海上自衛隊分として調達されていた。

しかし、各部隊等が報告した所要台数を確認したところ、海上幕僚監部が調査時点において業務用ソフトウェアを使用しているPCの台数を報告するよう明確に指示していなかったため、各部隊等は、調査時点より後に新たに業務用ソフトウェアの使用を希望するPCの台数(以下「希望台数」という。)を含む台数を所要台数として報告していた。このため、各部隊等が報告した所要台数には、①調査時点から使用期間開始時点までの間の増加台数であって見込台数と重複する台数や、②調達要求数量の算定に当たり考慮する必要のない使用期間開始後の増加台数が含まれていると認められるが、海上幕僚監部は、これらが含まれていることを考慮せずにライセンス等の調達要求数量を算定していた(図参照)。

図 各部隊等が報告した所要台数等の概念図

図 各部隊等が報告した所要台数等の概念図 画像

そして、各部隊等において所要台数の内訳の記録が残っていないなどのため、所要台数から希望台数を除くなどして開始時点台数を算定することができない状況となっていた。そこで、使用期間開始時点である30年3月1日に各部隊等が現に使用していたPCの台数38,892台を開始時点台数として、これに基づいて改めてライセンス等の調達要求数量を算定すると、新規調達分は2,888本、継続使用分は107,223本となる。

したがって、本件契約で海上自衛隊分として調達したライセンス等のうち、新規調達分1,995本、継続使用分652本、計2,647本が過大に調達されていて、これに係る支払額相当額計17,649,173円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部において、ライセンス等の調達要求数量の算定に当たり、開始時点台数の把握を適切に行うことの重要性についての認識が欠けており、各部隊等に依頼した調査に係る指示が明確でなかったことなどによると認められる。