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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 製品として民生品と同一の交換用の無停電電源装置(UPS)を調達するに当たり、民生品であることを明示するよう技術指令書を改正するなどして、随意契約による製造請負契約により調達していた交換用のUPSを一般競争契約等による売買契約により調達するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等
航空自衛隊補給本部
契約名
UPS UNIT等28件
契約の概要
性能の低下が見受けられた場合等に交換するためのUPSを調達するもの
契約の相手方
6会社
契約
平成25年9月~29年9月 随意契約
契約金額
5億2641万余円(平成25年度~29年度)
上記のうち節減できた額
2891万円

1 無停電電源装置の概要等

(1) 無停電電源装置の概要

航空自衛隊は、航空機の運用等のために必要となる気象レーダー装置等の装備品を運用しており、当該装備品の中には、停電が発生した際にも電力を供給し続けるために、無停電電源装置(以下「UPS」という。)をその構成品としているものがある。UPSは時間の経過とともに劣化が進行することから、航空自衛隊は、性能の低下が見受けられた場合等にUPSを交換している。

(2) 技術指令書の概要

航空自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)は、新規の装備品等の運用を開始するに当たり、航空自衛隊技術指令書規則(昭和43年航空自衛隊達第26号)に基づき、装備品等の整備等を適正かつ効率的に実施するために必要な技術指令事項等を内容とする技術指令書を制定している。そして、技術指令書には、整備等に利用するため装備品等を構成する各部品の部品番号等が示されている。

技術指令書の制定に当たり、補給本部は、当該装備品等の製造会社等(以下「装備品製造会社」という。)に技術指令書草案(以下「草案」という。)の起草を依頼するとともに、その記述内容を調整している。また、技術指令書の改正に当たっては、補給本部等が草案を作成している。

(3) 交換用UPSの調達について

防衛省は、「民生品等の活用のためのガイドラインについて(通達)」(平成18年防管装第3278号)により、装備品等の調達価格の低減等を図るため、装備品等の調達プロセスにおける民生品(一般向けに販売等される製品であり、市場や特定ユーザーの要求に合わせ若干の修正を施したものも含むとされている。)等の活用の検討のための標準プロセスの導入を促進し、もって民生品等の適切な活用を促進することとしている。

航空自衛隊第3補給処(以下「第3補給処」という。)は、基地等から補給請求を受けるなどして、交換用UPSを調達している。そして、交換用UPSの調達に当たり、第3補給処は、技術指令書に示されている部品番号等を確認するなどして、交換用UPSが民生品である場合は売買契約により、契約相手方に製造させる製造請負品である場合は製造請負契約により、それぞれ調達している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、交換用UPSの調達は適切かつ経済的に実施されているかなどに着眼して、平成25年度から29年度までの間に第3補給処が締結した交換用UPS52品目計460台の調達に係る74契約(契約金額計5億8459万余円。交換用UPS以外の補用部品の調達を含む。以下同じ。)を対象として、航空幕僚監部、補給本部、第3補給処等において、契約書等の関係書類を確認したり、第3補給処に納入されるなどした交換用UPSを確認したりするなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

交換用UPSの調達に当たり、第3補給処は、技術指令書に示されている部品番号等を確認した上で、民生品の部品番号等が示されていた30品目計208台については、一般競争契約等による売買契約(39契約、契約金額計4103万余円)により民生品を調達していた。一方、残りの22品目計252台については、技術指令書に民生品の部品番号等ではなく装備品製造会社が付与した自社の部品番号等が示されていたことから、装備品製造会社に当該部品番号等を確認の上、製造請負品であると判断して、品目ごとに製造請負契約の希望者を公募したが、公募の結果、希望者がそれぞれの品目の装備品製造会社1者のみであったとして、随意契約による製造請負契約(35契約、契約金額計5億4355万余円)により調達していた。

しかし、上記の35契約により調達した交換用UPSを確認したところ、そのうち28契約(契約金額計5億2641万余円)により調達した20品目計189台は、装備品製造会社が民生品を調達して、必要な機能の確認をした後に、自社の部品番号等を記載した銘板を貼り付けるなどしたものであって、製品として民生品と同一のものであった。したがって、上記20品目計189台の交換用UPSは、一般競争契約等による売買契約により調達することが可能であったと認められた。

このように、交換用UPSの調達に当たり、製品として民生品と同一のものである場合は、一般競争契約等による売買契約により調達することが可能であるのに、製造請負品であると判断して、製造請負契約により調達していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた契約金額)

製品として民生品と同一のものであった前記20品目計189台の交換用UPSについて、製造請負契約による契約単価と該当する民生品の市場価格とを比較したところ、その全てにおいて契約単価が市場価格より高額となっており、これらを市場価格で調達したとして前記28契約の契約金額を修正計算すると計4億9749万余円となり、2891万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、補給本部において、技術指令書の制定に当たり、装備品製造会社と草案の記述内容について調整する際に、UPSが民生品と製造請負品のいずれであるかを確認することとしていなかったため、交換用UPSが製品として民生品と同一のものであるのに技術指令書に民生品の部品番号等を示していなかったり、第3補給処に対して売買契約による調達が可能であるか確認させることの検討が十分でなかったりしたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、補給本部は、30年8月に、今後調達する交換用UPSが製品として民生品と同一のものとなる場合は、一般競争契約等による売買契約により調達するよう、次のような処置を講じた。

ア 前記20品目のうち、装備品の運用を終了したことなどにより今後調達されない2品目を除く18品目の交換用UPSについて、民生品であることを明示するなど技術指令書を改正した。

イ 第3補給処に対して、交換用UPSの調達に先立ち、売買契約による調達が可能であるかを確認させ、補給本部に対してその情報を提供させることなどとし、補給本部において技術指令書の改正を行うことなどとした。そして、これらについて周知した。

ウ UPSを構成品とする装備品の技術指令書の制定に当たり、製品として民生品と同一のUPSを使用し、かつ、売買契約による調達が可能である場合、民生品であることを草案に明示するよう装備品製造会社と調整することについて周知した。