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健康保険の傷病手当金の支給において、労働者災害補償保険の休業補償給付との併給調整が適正でなかったもの[全国健康保険協会5支部](283)


科目
保険給付費
部局等
全国健康保険協会5支部
傷病手当金の概要
療養のため労務に服することができず、事業主から報酬の全部又は一部を受けることができない被保険者に対して支給するもの
支給の相手方
10人
傷病手当金の支給額
19,556,946円(平成24年度~29年度)
不当と認める支給額
14,797,194円(平成24年度~28年度)

1 傷病手当金等の概要

(1) 健康保険法に基づき支給される傷病手当金の概要

全国健康保険協会(以下「協会」という。)は、健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく保険給付の一環として、業務災害以外の疾病等による療養のため労務に服することができず、事業主から報酬の全部又は一部を受けることができない健康保険の被保険者(以下「対象者」という。)に対して傷病手当金を支給している。傷病手当金の支給期間は、対象者が労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日、すなわち4日目を初日として、それ以降労務に服することができなかった期間(以下「休業日数」という。)とすることとなっている。ただし、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病の場合は、その支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間とすることとなっている。

対象者は、傷病手当金の支給を受けようとするときは、健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)に基づき、傷病名及びその原因並びに発病又は負傷の年月日、休業日数等を記載した「健康保険傷病手当金支給申請書」(以下「申請書」という。)等を協会に提出しなければならないこととなっている。

傷病手当金の支給に係る申請書等の受付及び内容の審査、確認、支給決定等の事務は、協会の各支部が行っており、各支部による支給決定に基づき、協会本部は、対象者に傷病手当金を支給することとなっている。

(2) 労働者災害補償保険法に基づき支給される休業補償給付の概要

労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく保険給付のうち、休業補償給付は、業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができない労働者に対して、賃金を受けていない日について支給するものである。

(3) 傷病手当金と休業補償給付等との併給調整

健康保険法等においては、対象者が傷病手当金と同一の疾病等により休業補償給付の支給を受けることができるとき又は休業補償給付と支給期間が重複するときなどは、協会は、傷病手当金を支給しないか、又は減額して支給することとなっている(以下、この取扱いを「併給調整」という。)。

そして、協会は、既に支給している傷病手当金について併給調整を行う必要があると判断した場合は、傷病手当金の全部又は一部について対象者から返還させることとしている。

協会は、併給調整を行うために、対象者が提出する傷病手当金の支給に係る申請書に、休業補償給付の受給の有無について確認する項目(以下「労災確認項目」という。)を設けており、対象者に対して、「今回の申請は労災保険から休業補償給付を受けている期間のものですか。」との問いに「はい」、「労災請求中」、「いいえ」のいずれか一つを選択して回答させることとしている。

そして、労災確認項目において「はい」と回答した対象者については、協会本部が各支部に発出した事務連絡(以下「事務連絡」という。)等に基づき、申請書に「休業補償給付支給決定通知書」の写しを添付させて、これにより各支部は、休業補償給付の支給対象となった期間等を確認するとともに、申請書等の記載内容から業務災害等の所見が見受けられた場合には、対象者から協会支部が休業補償給付等の支給状況等を労働基準監督署に確認することがあることなどについての同意を得て、併給調整の要否について確認することとなっている。

また、労災確認項目において「労災請求中」と回答した対象者については、事務連絡に基づき、①休業補償給付等は支給決定に時間を要することから、休業補償給付等の請求の結果が判明した後で、速やかに協会支部に連絡すること、②協会支部が休業補償給付等の支給状況等を労働基準監督署に確認することがあることなどについての同意書(以下「同意書」という。)等の提出を受けた上で、傷病手当金の支給を決定することとなっている。そして、各支部は、支給決定後に、労働基準監督署に対して、休業補償給付等の支給状況等を確認することとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、傷病手当金の併給調整が適正に行われているかなどに着眼して、協会の26支部(注1)において、平成26、27両年度に傷病手当金の支給決定を行った対象者のうち3,995人に支給された傷病手当金を対象として、申請書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
26支部  北海道、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、和歌山、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、福岡、長崎各支部

(2) 検査の結果

検査したところ、5支部において、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

ア 休業補償給付と同一の疾病等により傷病手当金が支給されていた事態

対象者6人 支給額計10,840,290円

4支部(注2)は、管内の事業所に勤務していた対象者計6人から申請書の提出を受け、傷病手当金24年度計156,480円、25年度計3,569,700円、26年度計3,673,230円、27年度計3,440,880円、合計10,840,290円の支給決定を行っており、協会本部は、これに基づき同額の傷病手当金を支給していた。

しかし、上記の6人は、申請書の労災確認項目に「労災請求中」と回答しており、同意書も提出していた。4支部は、これに基づき、休業補償給付等の支給状況等を確認する必要があったのに、適切に確認を行っておらず、併給調整の要否を確認しないまま支給決定を行っていた。そして、今回、協会を通じて各労働基準監督署に休業補償給付等の支給状況を確認したところ、上記の6人はいずれも、傷病手当金と同一の疾病等により休業補償給付の支給を受けていた。

したがって、前記の傷病手当金計10,840,290円の支給が適正でなかったと認められる。

(注2)
4支部  埼玉、神奈川、大阪、広島各支部

上記の事態について、事例を示すと次のとおりとなる。

<事例1>

埼玉支部は、管内の事業所に勤務していた対象者Aから平成27年10月28日から28年1月29日までの間に、同一の疾病等について休業期間ごとに計3回の申請書の提出を受け、27年7月19日から28年1月15日までの間の休業日数計181日分に係る傷病手当金計1,046,180円の支給決定を行い、協会本部は、これに基づきAに対して同額の傷病手当金を支給していた。そして、Aは、申請書の提出に当たり、労災確認項目には「労災請求中」と回答しており、同意書も提出していた。

一方、Aは、27年9月7日から30年2月7日までの間に労働基準監督署に対して、傷病手当金と同一の疾病等により、27年7月16日から29年11月15日までの間に係る休業補償給付計4,176,978円の請求を行い、同額の支給を受けていた。

しかし、同支部は、Aについて休業補償給付の支給状況等を確認する必要があったのに適切に確認を行っておらず、併給調整の要否を確認しないまま支給決定を行っていた。

したがって、前記の傷病手当金計1,046,180円の支給が適正でなかったと認められる。

イ 休業補償給付の支給期間と重複しているのに、傷病手当金の併給調整が行われていなかった事態

対象者4人 支給額計3,956,904円

2支部(注3)は、管内の事業所に勤務していた対象者計4人から申請書の提出を受け、傷病手当金26年度計2,662,349円、27年度計4,832,521円、28年度計1,155,609円、29年度計66,177円、合計8,716,656円の支給決定を行っており、協会本部は、これに基づき傷病手当金を支給していた。

しかし、上記の4人は、申請書の労災確認項目に「はい」(1人)又は「労災請求中」(3人)と回答しており、同意書も提出するなどしていた。2支部は、これに基づき、休業補償給付等の支給状況等を確認する必要があったのに、適切に確認を行っておらず、併給調整の要否を確認しないまま支給決定を行っていた。そして、今回、協会を通じて各労働基準監督署に休業補償給付等の支給状況を確認したところ、上記の4人はいずれも、傷病手当金の支給期間と重複して休業補償給付の支給を受けていた。

したがって、重複していた支給期間について併給調整を行って、改めて適正な支給額を計算すると、26年度計377,673円、27年度計3,288,694円、28年度計1,027,208円、29年度計66,177円、合計4,759,752円となり、上記の支給額との差額26年度計2,284,676円、27年度計1,543,827円、28年度計128,401円、合計3,956,904円の支給が適正でなかったと認められる。

(注3)
2支部  三重、広島両支部

上記の事態について、事例を示すと次のとおりとなる。

<事例2>

広島支部は、管内の事業所に勤務していた対象者Bから平成27年7月13日から28年1月14日までの間に、業務災害以外の同一の疾病等について休業期間ごとに計9回の申請書の提出を受け、26年4月4日から27年11月30日までの間の休業日数計515日分に係る傷病手当金計3,439,115円の支給決定を行い、協会本部は、これに基づきBに対して同額の傷病手当金を支給していた。そして、Bは、申請書の提出に当たり、労災確認項目に「はい」と回答するなどしており、同意書も提出していた。

一方、Bは、26年5月7日から27年8月26日までの間に、労働基準監督署に対して、傷病手当金と期間を重複して、25年12月20日から27年3月31日までの間に係る休業補償給付計3,003,924円の請求を行い、同額の支給を受けていた。

しかし、同支部は、申請書に添付された「休業補償給付支給決定通知」から、26年4月4日から同年7月3日までの間に休業補償給付が重複して支給される傷病手当金については、不支給決定を行ったものの、その後の期間については、休業補償給付の支給状況等を確認せず、併給調整の要否を確認しないまま支給決定を行っていた。

したがって、改めて適正な支給額を計算すると、計1,677,073円となり、前記の支給額との差額1,762,042円の支給が適正でなかったと認められる。

ア及びイのとおり、5支部に係る対象者計10人が労災確認項目に「はい」又は「労災請求中」と回答しており、同意書も提出するなどしていたのに、5支部は、休業補償給付等の支給状況等を十分に確認せず、併給調整の要否を確認しないまま傷病手当金の支給決定を行い、協会本部は、これに基づき同額の傷病手当金を支給しており、計14,797,194円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5支部において対象者に係る休業補償給付等の支給状況等について、労働基準監督署への照会等の確認を行うことについての理解が十分でなかったこと、協会本部において5支部に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

これらの適正でなかった支給額を支部ごとに示すと次のとおりである。

支部名
併給調整を行う必要があった対象者数 左の対象者に支給した傷病手当金の額 左のうち不当と認める傷病手当金の額 摘要
  千円 千円  
埼玉
2 6,415 6,415
神奈川
1 1,742 1,742
三重
2 4,104 1,456
大阪
2 844 844
広島
3 6,449 4,338 ア、イ
10 19,556 14,797