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(1) 地方公共団体情報システム機構に対する本人確認情報の照会について、月次照会により提供を受ける本人確認情報を活用することにより、年次照会の対象者の範囲を限定して、情報提供手数料支払額の節減を図るよう是正改善の処置を求めたもの


科目
業務経費
部局等
日本年金機構本部
本人確認情報の照会の概要
日本年金機構が、受給権者の生存等を確認するために、地方公共団体情報システム機構に対して受給権者の本人確認情報を照会するもの
検査の対象とした本人確認情報の照会に係る情報提供手数料支払額
35億1947万余円(平成28、29両年度)
上記のうち年次照会に係る情報提供手数料支払額
6億7337万余円
節減できた情報提供手数料支払額
6億3373万円(平成28、29両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

日本年金機構による地方公共団体情報システム機構に対する本人確認情報の照会に係る情報提供手数料の支払について

(平成30年10月10日付け 日本年金機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 本人確認情報の照会の概要等

(1) 本人確認情報の照会の概要

貴機構は、日本年金機構法(平成19年法律第109号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)等に基づき、厚生労働省から委任又は委託を受けた各種年金の支給に係る事務を行っている。各種年金は、年金の給付を受ける権利を有する者からの請求に基づいて、裁定(注1)により支給されることとなっており、この請求は、必要事項を記載した請求書(以下「年金請求書」という。)を貴機構に提出することにより行われることとなっている(以下、年金の給付を受ける権利を有する者のうち裁定を受けた者を「受給権者」という。)。

(注1)
裁定  厚生労働大臣が年金の給付を受ける権利があることを確認すること

貴機構は、上記各種年金の支給に係る事務の一環として、受給権者の生存等を確認するために、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)等に基づき、地方公共団体情報システム機構(以下「J―LIS」という。)に対して、住民票に記載されている受給権者の住所、氏名、性別、生年月日、住民票の記載の事由、記載の修正の事由及び消除の事由(転入、転出、死亡等。以下「異動事由」という。)、異動事由が生じた年月日(以下「異動年月日」という。)等の情報(以下「本人確認情報」という。)の照会を実施してその提供を受けている。

(2) 月次照会及び年次照会の概要

上記のJ―LISに対する本人確認情報の照会には、受給権者を対象として、毎月実施している月次照会と、死亡を確認したことにより年金の支払を保留する処理(以下「死亡保留」という。)がされた者等を除く受給権者を対象として、原則として年1回(毎年2月下旬から3月上旬)実施している年次照会がある。

ア 月次照会

平成23年4月の国民年金法等の改正及び同年7月の国民年金法施行規則(昭和35年厚生省令第12号)等の改正により、貴機構は、J―LISから本人確認情報の提供を受けることができる受給権者については、死亡の届出及び住所変更の届出の提出を受けることを省略できることとされたことから、同年7月以降、月次照会を実施している。

そして、貴機構は、受給権者の死亡、住所変更等の異動状況を確認するために、毎月、J―LISから、受給権者のうち前月の照会日から当月の照会日の前日までの間に本人確認情報に変更があった者について、その変更に係る本人確認情報の提供を受けることにしている。また、貴機構は、提供を受けた本人確認情報を貴機構で管理している個人番号管理サブシステム(注2)(30年2月以前は年金給付システム(注3))に収録するとともに、受給権者の死亡を確認した場合には、死亡保留を行っている。

イ 年次照会

貴機構は、18年10月の国民年金法施行規則等の改正により、J―LISから本人確認情報の提供を受けることができる受給権者については、現況届(受給権者の生存確認を行うために、受給権者が貴機構に提出することとされている届書)に代えて、本人確認情報により生存確認を行うこととなったことから、同月以降、年6回、J―LISに対して本人確認情報の照会を実施していた。その後、23年7月の月次照会の開始に伴い、上記の年6回行っていた照会を年1回行うことにして、年次照会を実施している。

そして、貴機構は、受給権者の生存確認を行うために、年1回、死亡保留がされた者等を除く全ての受給権者を対象として、照会日の前日時点における対象者の状況について「死亡」、「不明」又は「生存」のいずれかで示した情報等の提供を受けることにしている。また、貴機構は、提供を受けた情報を個人番号管理サブシステムに収録するとともに、受給権者の死亡を確認した場合には、死亡保留を行っている。

(注2)
個人番号管理サブシステム  基礎年金番号と個人番号の紐(ひも)付管理や本人確認情報に基づく記録の管理等を行うシステムで、平成30年3月以降、月次照会及び年次照会によりそれぞれ提供を受けた本人確認情報の収録を行っている。
(注3)
年金給付システム  公的年金業務を行う社会保険オンラインシステムを構成するシステムの一つで、受給権者の年金の裁定、給付等を行うためのシステム

(3) J―LISに対する情報提供手数料の支払状況

貴機構、厚生労働省及びJ―LISの三者は、本人確認情報の提供に関して、その提供方法、手数料、管理等について協定を締結している。貴機構は、この協定に基づき、J―LISに対して、月次照会及び年次照会に係る情報提供手数料を支払っており、この金額は、月次照会については1件当たり3円、年次照会については1件当たり10円(1回の照会で1000万件を超える部分は1件当たり8円)とされている(以下、月次照会及び年次照会に係る情報提供手数料の支払対象となる情報の提供件数を「情報提供件数」という。)。

そして、貴機構は、のとおり、28、29両年度に、J―LISに対して情報提供手数料として、月次照会については計28億4610万余円(28年度14億1868万余円、29年度14億2742万余円)、年次照会については計6億7337万余円(28年度3億3434万余円、29年度3億3902万余円)、合計35億1947万余円(28年度17億5303万余円、29年度17億6644万余円)を支払っている。

表 情報提供手数料の支払状況

(単位:千件、千円)
区分
年度
月次照会 年次照会 合計
年1回実施している照会 補足的に実施している照会
情報提供件数 金額 情報提供件数 金額 情報提供件数 金額 情報提供件数 金額 情報提供件数 金額
平成28年度 472,896 1,418,688 39,222 333,780 56 567 39,279 334,348 512,175 1,753,036
29年度 475,807 1,427,421 39,821 338,571 45 450 39,866 339,021 515,673 1,766,443
948,703 2,846,109 79,044 672,352 101 1,017 79,145 673,370 1,027,849 3,519,479
  • 注(1) 「補足的に実施している照会」とは、年1回(毎年2月下旬から3月上旬)実施している年次照会の対象者の抽出時期の関係から当該照会の対象者に含まれなかった受給権者について、別途、補足的に実施している照会
  • 注(2) 単位未満を切り捨てているため、各項目を集計しても計欄とは一致しないものがある。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、効率性等の観点から、月次照会及び年次照会の対象者の範囲は適切なものとなっているかなどに着眼して、28、29両年度における月次照会に係る情報提供手数料支払額計28億4610万余円(情報提供件数計9億4870万余件)、年次照会に係る情報提供手数料支払額計6億7337万余円(情報提供件数計7914万余件)、合計35億1947万余円を対象として、貴機構本部において会計実地検査を行った。

検査に当たっては、貴機構本部において、月次照会及び年次照会に係る関係資料の提出を受け、その内容を確認するなどして検査を行った。また、J―LISから、月次照会及び年次照会に関する事務の内容等に係る関係資料の提出や説明を受けるなどして調査した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴機構が年次照会により提供を受けている「死亡」、「不明」及び「生存」の情報について、J―LISがどのように判定しているかを確認したところ、本人確認情報のうちの異動事由及び異動年月日により、次のとおり判定していた。

  • ア 「死亡」は、異動事由が死亡であり、異動年月日が特定できる場合
  • イ 「不明」は、異動事由が職権消除等(注4)である場合、又は、異動事由が死亡であるが異動年月日が特定できない場合
  • ウ 「生存」は、ア、イ以外の場合
(注4)
職権消除等  転出及び死亡以外の事由に基づき住民票の消除を行った場合に住民票に記載される異動事由

しかし、上記の異動事由及び異動年月日は、月次照会によって貴機構が提供を受けて個人番号管理サブシステムに収録している情報であり、貴機構においてこれを活用することにより、J―LISに対して年次照会を実施することなく、自ら「死亡」、「不明」及び「生存」を判定し把握することが可能である。ただし、例えば、年金請求書を提出して新たに年金の裁定を受けた新規裁定者が、裁定後初めて実施される月次照会によって本人確認情報を得ることができる期間より前に死亡するなどしている場合には、当該月次照会では死亡等の状況に変更がないため死亡等を把握することができない(図参照)。したがって、年次照会の対象者の範囲を新規裁定者等に限定することにより、本人確認情報の照会に係る事務を経済的かつ効率的に行う必要があると認められる。

図 月次照会では受給権者の死亡等を把握することができない例

図 月次照会では受給権者の死亡等を把握することができない例 画像

そこで、厚生労働省が作成している「厚生年金保険・国民年金事業状況(事業月報)」の統計資料に計上された28年3月から30年2月までの新規裁定者数を用いるなどして、28、29両年度において年次照会を実施する必要があったと認められるものに係る情報提供手数料の支払額を試算すると、計3963万余円(28年度1657万余円、29年度2306万余円)となり、前記の28、29両年度における実際の支払額計6億7337万余円を計6億3373万余円(28年度3億1777万余円、29年度3億1595万余円)節減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

月次照会により提供を受けた本人確認情報を活用することにより、年次照会により提供を受けている「死亡」、「不明」及び「生存」の状況を把握することができ、年次照会の対象者の範囲を新規裁定者等に限定することができるのに、死亡保留がされた者等を除く全ての受給権者を対象者として年次照会を行い、情報提供手数料を支払っている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴機構において、月次照会により提供を受ける本人確認情報を活用することにより、年次照会の対象者の範囲を新規裁定者等に限定することを検討する必要性についての認識が欠けていることなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

年金の適正な支給のために、貴機構において、受給権者の本人確認情報による生存等の確認を行うことは重要である。また、J―LISに対する本人確認情報の照会に係る情報提供手数料の支払額は多額に上っている。

ついては、貴機構において、受給権者の本人確認情報の照会に係る事務をより経済的かつ効率的に行うために、月次照会により提供を受ける本人確認情報を活用することにより、年次照会の対象者の範囲を新規裁定者等に限定して、情報提供手数料支払額の節減を図るよう是正改善の処置を求める。