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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 国立研究開発法人防災科学技術研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

実大三次元震動破壊実験施設を利用した実験終了後に保管されている試験体について、再利用する具体的な予定のないものを処分するなどして保管場所を集約するとともに、今後は、具体的な再利用計画を明確に策定するなどした上で試験体の管理及び処分を適切に実施することにより、保管場所に要する費用を節減するよう改善させたもの


科目
経常費用
部局等
国立研究開発法人防災科学技術研究所(平成27年3月31日以前は独立行政法人防災科学技術研究所)本所
実験終了後に保管されている試験体の概要
震動実験で利用された後も、別の実験で再利用される予定等があるとして解体撤去されなかった各種構造物等
試験体の保管場所として追加で借り上げていた土地の面積
6,317.7m2
上記の土地に係る賃借料相当額
7811万余円(平成20年度~29年度)
節減できた賃借料相当額
5374万円(平成23年度~29年度)

1 実験終了後に保管されている試験体及びその保管場所等の概要

(1) 実大三次元震動破壊実験施設を利用した実験及び実験終了後の試験体の取扱い

国立研究開発法人防災科学技術研究所(平成27年3月31日以前は独立行政法人防災科学技術研究所。以下「研究所」という。)は、国立研究開発法人防災科学技術研究所法(平成11年法律第174号。27年3月31日以前は独立行政法人防災科学技術研究所法)に基づき、防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等の業務を行っている。

研究所は、耐震技術・設計等に関する研究を進めるために、実物大規模の構造物に対して実際の地震と同じ複雑な三次元の揺れを再現することが可能な実大三次元震動破壊実験施設(以下「E―ディフェンス」という。)を兵庫耐震工学研究センター(以下「センター」という。)に設置して、17年度から供用を開始している。E―ディフェンスは、搭載重量最大1,200t、搭載面積300m2の震動台を有しており、研究所は、6階建て相当の鉄筋コンクリート構造物を始め、木造建物、道路橋脚等の各種構造物等(以下「試験体」という。)を震動台上に設置して、震動実験を毎年度実施している。

そして、研究所は、試験体のうち、将来別の実験で再利用する予定等があるとしているものについては、実験終了後も解体撤去せずにセンターの庁舎等の用地内で保管している(以下、このようにして保管している試験体を「仮置試験体」という。)。

(2) 仮置試験体を保管するための土地の概要

研究所は、センターの庁舎等の用地として、E―ディフェンスの供用を開始した17年度から、兵庫県(17年度のみ兵庫県土地開発公社)との間で賃貸借契約を締結して県有地を借り上げており、29年度までに賃借料計10億6015万余円を支払っている。その借上面積は17年度から19年度までは59,642.9m2であったが、20年度からは仮置試験体の保管場所の不足を理由に、隣接する県有地6,317.7m2を追加して65,960.6m2としており(以下、17年度から借り上げている土地59,642.9m2を「センター用地」といい、20年度から追加で借り上げている土地6,317.7m2を「仮置場」という。)、仮置場に係る賃借料相当額は、20年度から29年度までの間で計7811万余円となっている。

そして、研究所は、28年度末現在で、センター用地に点在する空きスペースに18体、仮置場に8体、計26体の仮置試験体を保管している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、仮置試験体を保管するために仮置場に係る賃借料が20年度以降追加的に発生し続けていることを踏まえ、仮置試験体の保管場所の確保が適切に行われているかなどに着眼して、前記17年度から29年度までの間の賃貸借契約を対象として、研究所本所及びセンターにおいて、仮置試験体の管理状況や実験計画等に関する書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、研究所は、別の実験で再利用する予定があるとしていた仮置試験体について、再利用の可能性を毎年度具体的に見直していなかった。そのため、28年度末現在で保管している仮置試験体26体のうち16体(センター用地内の18体のうち10体、仮置場内の8体のうち6体)は、検査において確認できた23年度以降においては再利用する具体的な予定のない状態のまま保管が継続されており(参考図1参照。以下、これら16体の仮置試験体を「不用試験体」という。)、実際に再利用されていなかった。また、センター用地内の不用試験体10体に係る保管面積は約1,050m2であるのに対し、仮置場内の不用試験体以外の仮置試験体2体に係る保管面積は約385m2であり、不用試験体を処分すれば、仮置試験体の保管場所をセンター用地のみに集約することが可能な状態となっていた(参考図2参照)。

このように、研究所において、不用試験体が多数存在している状況で、仮置場に係る賃借料が追加的に発生し続けているにもかかわらず、賃貸借契約を見直していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた土地の賃借料)

仮置試験体について再利用の可能性を具体的に見直した上で不用試験体を処分して、仮置試験体の保管場所をセンター用地のみに集約していれば、23年度から29年度までの間の仮置場に係る賃借料相当額計5374万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、研究所において、仮置試験体について再利用の可能性を毎年度具体的に見直しておらず、その結果、仮置試験体の保管場所に要する費用についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、研究所は、不用試験体を処分するなどして、30年4月から仮置場を借り上げないよう賃貸借契約を見直すとともに、同年7月に、関係部署に通知を発して、今後、実験終了後に試験体を保管するに当たっては、具体的な再利用計画を明確に策定するなどした上で、毎年度、再利用の可能性等の見直しを行い、仮置試験体の管理及び処分を適切に実施することにより、保管場所に要する費用を節減するための処置を講じた。

(参考図1)

仮置試験体の保管状況(概念図)
(処分集約前)

仮置試験体の保管状況(概念図) 画像

(参考図2)

仮置試験体の保管状況(概念図)
(処分集約後)

仮置試験体の保管状況(概念図) 画像