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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
61省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
49省庁等、411件 10,213,970,889円
(検査報告 昭和21年度~平成28年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
49省庁等、398件 9,891,981,180円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

  • ① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
  • ② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
  • ③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
  • ④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成28年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する61省庁等における30年7月末現在の是正措置の状況を対象として、30省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの31省等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

昭和21年度から平成28年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものが49省庁等における411件10,213,970,889円(注1)ある。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが49省庁等における398件9,891,981,180円、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注2)における5件2,083,667円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが4省(注3)における9件319,906,042円ある。これを、平成28年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、平成27年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注1)
411件10,213,970,889円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても411件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
(注2)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注3)
4省  農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省

(1) 平成28年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況

検査の結果、平成28年度決算検査報告に掲記した不当事項333件(指摘金額の合計13,718,217,979円)のうち、310件12,690,059,408円(注4)については30年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの23件1,028,158,571円については30年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが19件767,773,265円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが4省(注5)における4件260,385,306円ある。

(注4)
310件12,690,059,408円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが258件8,826,761,545円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが5件118,512,190円、手直し工事等による是正措置が完了したものが42件2,442,049,064円、再発防止策による是正措置が講じられたものが14件1,302,736,609円ある。
(注5)
4省  農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省

表1 平成28年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(内閣府本府) 15 273,391,453 15 273,391,453
総務省 26 1,942,359,831 22 1,908,674,831 4 33,685,000 4 33,685,000
法務省 2 478,736,000 1 6,090,000 1 472,646,000 1 472,646,000
財務省 1 487,885,464 1 487,885,464
文部科学省 44 957,501,284 44 957,501,284
厚生労働省 127 3,762,809,950 119 3,630,266,472 8 132,543,478 7 99,040,567 1 33,502,911
農林水産省 14 61,466,481 12 52,056,036 2 9,410,445 2 9,410,445
経済産業省 8 300,743,500 8 300,743,500
国土交通省 8 675,795,939 8 675,795,939
環境省 12 268,764,400 12 268,764,400
防衛省 8 159,345,641 7 159,146,810 1 198,831 1 198,831
省庁計 265 9,368,799,943 249 8,720,316,189 16 648,483,754 1 472,646,000 14 142,334,843 1 33,502,911
日本私立学校振興・共済事業団 8 47,928,000 8 47,928,000
全国健康保険協会 1 16,331,644 0 11,325,274 1 5,006,370 1 5,006,370
独立行政法人造幣局 1 83,599,441 0 154,841 1 83,444,600 1 83,444,600
独立行政法人国立病院機構 1 6,240,718 1 6,240,718
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 1 71,635,064 0 40,796,523 1 30,838,541 1 30,838,541
団体計 12 225,734,867 9 106,445,356 3 119,289,511 1 83,444,600 2 35,844,911
合計 277 9,594,534,810 258 8,826,761,545 19 767,773,265 2 556,090,600 16 178,179,754 1 33,502,911

(注) 平成30年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。

(2) 平成27年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から平成27年度までの検査報告に掲記した不当事項において、29年7月末現在で是正措置が未済となっていた456件10,514,483,695円のうち、68件1,328,671,377円(注6)については30年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの388件9,185,812,318円については30年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが379件9,124,207,915円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注7)における5件2,083,667円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが2省(注8)における5件59,520,736円ある。

(注6)
68件1,328,671,377円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが52件957,418,475円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが37件551,334,709円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが1件1,111,352円、手直し工事等による是正措置が完了したものが10件234,615,051円、再発防止策による是正措置が講じられたものが7件135,526,499円ある。
(注7)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注8)
2省  農林水産省、国土交通省

表2 平成27年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
裁判所 1 350,000 1 350,000 1 350,000
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
総務省 1 1,391,360 0 155,840 1 1,235,520 1 1,235,520
法務省 9 347,384,112 9 347,384,112 8 347,057,112 1 327,000
外務省 2 22,844,049 2 22,844,049 1 11,914,499 1 10,929,550
財務省 15 386,145,352 3 20,516,230 12 365,629,122 6 319,602,736 6 46,026,386
厚生労働省 143 2,215,621,718 11 269,989,694 132 1,945,632,024 11 137,725,113 111 1,627,684,394 10 180,222,517
農林水産省 14 414,625,147 2 120,558,718 12 294,066,429 10 287,490,556 2 6,575,873
経済産業省 11 101,044,804 2 1,315,098 9 99,729,706 1 11,979,284 7 86,293,631 1 1,456,791
国土交通省 6 90,884,237 6 90,884,237 5 86,971,927 1 3,912,310
環境省 3 228,933,000 0 18,556,000 3 210,377,000 3 210,377,000
防衛省 8 76,041,099 0 829,147 8 75,211,952 6 70,504,077 2 4,707,875
省庁計 214 3,887,478,878 18 431,920,727 196 3,455,558,151 40 988,318,748 136 2,232,630,836 20 234,608,567
株式会社日本政策金融公庫 1 4,759,000 1 4,759,000 1 4,759,000
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
日本私立学校振興・共済事業団 4 7,354,000 4 7,354,000
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
中日本高速道路株式会社 2 230,281,464 1 38,340,983 1 191,940,481 1 191,940,481
全国健康保険協会 1 8,245,618 0 2,981,309 1 5,264,309 1 5,264,309
独立行政法人国際交流基金 1 3,709,227 1 3,709,227 1 3,709,227
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 10,950,000 0 5,475,000 1 5,475,000 1 5,475,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 809,000 0 435,000 1 374,000 1 374,000
独立行政法人自動車事故対策機構 1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
独立行政法人国立病院機構 2 26,388,109 0 107,590 2 26,280,519 1 856,408 1 25,424,111
独立行政法人中小企業基盤整備機構 1 578,061 1 578,061 1 578,061
国立研究開発法人国立がん研究センター 3 31,423,181 3 31,423,181 3 31,423,181
国立研究開発法人国立成育医療研究センター 1 824,170 1 824,170
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 1 2,286,630 0 1,786,630 1 500,000 1 500,000
国立大学法人弘前大学 1 8,437,069 1 8,437,069 1 8,437,069
国立大学法人岩手大学 1 5,212,218 1 5,212,218 1 5,212,218
国立大学法人筑波大学 2 15,973,310 0 510,000 2 15,463,310 1 10,401,079 1 5,062,231
国立大学法人埼玉大学 1 6,773,704 1 6,773,704 1 6,773,704
国立大学法人東京医科歯科大学 1 9,058,338 1 9,058,338 1 9,058,338
国立大学法人金沢大学 1 3,320,981 1 3,320,981 1 3,320,981
国立大学法人浜松医科大学 1 4,166,396 1 4,166,396 1 4,166,396
国立大学法人三重大学 1 3,577,011 1 3,577,011 1 3,577,011
国立大学法人京都大学 1 17,888,650 0 720,000 1 17,168,650 1 17,168,650
国立大学法人大阪大学 1 300,000 0 100,000 1 200,000 1 200,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,257,000 0 133,000 1 8,124,000 1 8,124,000
国立大学法人島根大学 1 1,015,322 1 1,015,322
国立大学法人広島大学 1 40,308,942 1 40,308,942 1 40,308,942
国立大学法人山口大学 1 120,179,462 1 120,179,462 1 120,179,462
国立大学法人佐賀大学 1 5,415,150 1 5,415,150 1 5,415,150
国立大学法人長崎大学 1 10,253,020 1 10,253,020 1 10,253,020
国立大学法人宮崎大学 1 3,517,494 1 3,517,494 1 3,517,494
日本放送協会 1 44,546,640 1 44,546,640 1 44,546,640
東日本電信電話株式会社 1 34,963,995 0 60,000 1 34,903,995 1 34,903,995
日本郵便株式会社 7 787,387,721 1 3,335,194 6 784,052,527 4 710,668,940 2 73,383,587
株式会社ゆうちょ銀行 98 3,298,661,959 1 35,511,101 97 3,263,150,858 97 3,263,150,858
株式会社かんぽ生命保険 94 1,416,310,973 29 426,199,849 65 990,111,124 65 990,111,124
独立行政法人農業者年金基金 4 3,450,400 1 608,600 3 2,841,800 3 2,841,800
団体計 217 6,194,147,512 34 525,497,748 183 5,668,649,764 152 5,096,838,583 25 441,580,302 6 130,230,879
合計 431 10,081,626,390 52 957,418,475 379 9,124,207,915 192 6,085,157,331 161 2,674,211,138 26 364,839,446
  • 注(1) 平成29年8月1日から30年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、30年7月31日現在の名称としている。
  • 注(2) 日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
  • 注(3) 是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人国際交流基金、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から平成27年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので30年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、379件9,124,207,915円ある。これらに対する直近1年間(29年8月1日から30年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注9)

(注9) 債務者等が複数存在するため1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は379件と一致しない。
(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの省庁

126件 2,215,668,475円
団体 125件 3,881,697,589円

これらは、分割納付等が行われているものであるが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注10)は、省庁222,749,813円、団体31,946,410円となっている。

(注10)
直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの省庁

82件 1,107,907,716円
団体 80件 1,779,851,928円

これらは、是正措置の完了に向けて督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における59件1,282,323,795円に係る債権は、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁 16件 131,981,960円
団体 4件 7,100,247円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているため、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。