会計検査院は、平成29年3月6日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月7日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
財務省、国土交通省
学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する次の各事項
本件要請に係る大阪府豊中市の国有地は、豊中市野田町に所在する面積8,770.43m2の土地(以下「本件土地」という。)であり、国土交通省所管自動車安全特別会計空港整備勘定(20年度から25年度までは社会資本整備事業特別会計空港整備勘定、19年度以前は空港整備特別会計。以下「空港整備勘定」という。)に所属している。本件土地は、28年6月20日に学校法人森友学園(以下「森友学園」という。)に売却されていたが、買戻権の行使により、29年6月29日に国有地となっている。
豊中市野田町周辺地区は、昭和49年に「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(昭和42年法律第110号。以下「騒防法」という。)等に基づき、大阪国際空港周辺における航空機の騒音により生ずる障害が特に著しい区域として指定されており、同周辺地区には、国土交通省(平成13年1月5日以前は運輸省)が、騒防法に基づいて騒音対策として土地の所有者からの申出に応じて買い入れた土地(以下「移転補償跡地」という。)が散在していた。これらの移転補償跡地は、行政目的に直接供用される行政財産として、国土交通省大阪航空局(以下「大阪航空局」という。)が管理していた。そして、航空機のエンジンの低騒音化等により、元年に同周辺地区の指定が解除されたことを受け、大阪航空局は、「大阪国際空港周辺の移転跡地の取り扱いに関する運用方針」(平成2年9月28日付け運輸省航空局環境整備課。以下「運用方針」という。)等に基づき、同周辺地区内の移転補償跡地について、5年に行政財産の用途を廃止し、処分が可能な普通財産に分類変更して大阪航空局が引き続き管理していた。その後、豊中市野田町では、8年度から21年度にかけて豊中市が野田土地区画整理事業(以下「野田区画整理事業」という。)を施行していた。本件土地は、野田区画整理事業の施行区域(以下「野田地区」という。)内に散在していた上記の大阪航空局が管理していた移転補償跡地のうち213筆、21,606.95m2に代えて、17年6月に大阪航空局が換地処分により取得した土地18,262.85m2の一部である。
その後25年に、大阪航空局は、「各省各庁所管特別会計所属普通財産の処分等に係る事務取扱要領について」(平成23年財理第3002号。以下「委任要領」という。)に基づき、財務省近畿財務局(以下「近畿財務局」という。)に対し本件土地の売払処分を依頼していた。近畿財務局は、この依頼を受けて、25年6月に大阪府及び豊中市に対して取得等要望の有無を確認するとともに、ホームページ上で、公用・公共用利用のための取得等要望を受ける財産として公表したところ、同年9月に森友学園から小学校用地としての取得等要望書が提出された。そして、近畿財務局は、27年5月に買受特約を付した貸付期間10年間の定期借地権を設定する国有財産有償貸付合意書(以下「貸付合意書」という。)等を森友学園と締結した。貸付合意書では、24年までに行われた土壌汚染等に係る複数回の調査で判明した土壌汚染及び地下埋設物の撤去を森友学園が行うこと、森友学園が土壌汚染及び地下埋設物の撤去を実施して、これにより本件土地の価値が増加した場合の撤去費用は、有益費(注1)として、森友学園が支出した費用のうち国と森友学園が合意した額又は財産価格増加額のいずれかを国が選択の上、森友学園へ返還することなどが定められている。そして、27年6月から同年12月までの間に森友学園が土壌改良工事等を実施したことから、近畿財務局、森友学園及び大阪航空局の三者による合意に基づき、大阪航空局は、28年4月に当該工事等に係る有益費として空港整備勘定から1億3176万円を森友学園へ支払っていた。
28年3月に、森友学園から近畿財務局に対して、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物が小学校建設工事中に発見された旨の連絡があり、また、同月、森友学園から本件土地を購入したい旨の提案があった。これを受け、近畿財務局は大阪航空局に対して、本件土地の売却価格の算定のために、地下埋設物の撤去・処分費用についての見積りの依頼を行い、大阪航空局は、同年4月に当該費用を8億1974万余円とする見積りを近畿財務局へ提出した。近畿財務局は、上記の撤去・処分費用を考慮することなどを条件とした鑑定評価業務を不動産鑑定業者に委託するなどして算定した1億3400万円を売却価格として、同年6月20日に本件土地を森友学園へ売却していた。
本院は、財務省及び国土交通省が実施した森友学園に対する国有地の売却等について、正確性、合規性、経済性等の観点から、次の点に着眼して検査を実施した。
① 移転補償跡地の取得や換地処分を受ける際に、地下埋設物等の確認は適切に行われているか、野田区画整理事業における換地処分は適切に行われているか、国有財産台帳への記載等は適切に行われているか。
② 大阪航空局から近畿財務局への事務委任、公用・公共用の取得等要望の受付、予定価格の作成、貸付け及び売買契約の締結、有益費の支払、地下埋設物等の確認、延納に係る審査・担保権の設定、売払い結果の公表等は法令等に基づいて適切に行われているか。
③ サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)(以下「サステナブル事業」という。)の補助金の申請、交付及び審査は適切に行われているか。
① 貸付価格及び売却価格は法令等に基づき適切に算定されているか。特に、新たに発見されたとされている地下埋設物の撤去費用は適正な手続に従い適切に算定されているか。
② 契約相手方との見積合わせは法令等に基づき適切に行われているか。
③ 有益費の対象となった工事内容及び費用の検証は適切に行われているか、土地の価値の増加額は適切に算定されているか。有益費として支払われた額は適切に算定されているか。
本件土地の貸付け又は売払いに係る会計経理の妥当性の検証に必要な資料は、法令等に基づき適切に作成され、保存されているか。
本院は、森友学園に対する本件土地の貸付け、有益費の支払、売却等について、財務本省、国土交通本省、3財務局(注2)、大阪航空局、一般社団法人木を活かす建築推進協議会(以下「木活協」という。)等において、114人日を要して会計実地検査を行った。
検査の実施に当たっては、主に、近畿財務局、大阪航空局及び木活協において、決裁文書、各種報告等の関係書類の提出を受け、その内容を確認するとともに、財務本省及び近畿財務局の文書管理の状況についてデータが保存されているシステムの仕様等を確認したり、本件土地の現況を確認したりするなどして検査した。また、財務本省及び3財務局において、本件土地と類似の事例との売却手続等の比較を行うとともに、近畿財務局管内の6財務事務所等(注3)からも調書を徴するなどして同様の比較を行った。
さらに、会計検査院法第28条の規定により、工事関係者等から資料の提出等を受けるなどして調査した。
本件土地を含む野田町周辺地区は、騒防法等に基づき、昭和49年以降、航空機の騒音の障害に応じて第2種区域(注4)の指定を受けていた。そして、大阪航空局は、騒防法に基づき、第2種区域及び第3種区域の指定を受けた区域において、航空機の騒音により生ずる障害の防止、航空機の離着陸の頻繁な実施により生ずる損失の補償等のため、土地の所有者からの申出に応じて土地の買入れを実施して、買い入れた土地を行政財産として管理していた。
上記土地の買入れについて、大阪航空局は、「国土交通大臣の設置する特定飛行場周辺の移転補償等実施要領」(昭和46年空管第2号)等に基づき実施していたとしている。そして、大阪航空局は、引渡しを受ける土地における地下埋設物等の調査については、①土地買入金等の額の算定に係る地下埋設物に関する規定は特にないこと、②移転補償跡地は、大阪航空局が原則として更地のまま管理することとしており、また、特定の利用用途を定めていないなど、地下埋設物があっても特にその後の管理に影響を及ぼさないことなどの理由により、行っていなかったとしている。
平成元年3月31日から第2種区域の指定を受けていた区域が大幅に縮小された。そして、大阪航空局は、運用方針等に基づき、第2種区域の指定が解除された区域にある移転補償跡地について、行政財産から普通財産へ分類変更し、原則として有償貸付け又は売払いを行っていた。
野田町周辺地区は、昭和49年の第2種区域の指定以降、移転補償により空地化が進んでいたことから、豊中市は、自らが施行者となって、公共施設の整備改善、国有地の集約化等による土地の再編を行い、土地の高度利用を図ることなどを目的として、野田区画整理事業を平成8年6月28日から22年3月31日までの間に施行していた。
大阪航空局が野田区画整理事業により17年6月28日に換地を受けた土地は、本件土地を含む2筆計18,262.85m2(以下「換地後の土地」という。)となっていた。そして、換地後の土地においては、従前豊中市が所有していた道路用地の舗装、道路の地下に埋設された上下水管やガス管、また、過去に豊中市が大阪航空局より移転補償跡地を無償で借り受けて整備した児童遊園内のコンクリート構造物等(以下、これらを合わせて「地下構造物等」という。)が残置されたままとなっていた。しかし、地下構造物等が残置されたまま換地が行われたことなどに係る正確な経緯については、確認することができなかった。
野田区画整理事業の事業計画における土地利用計画等によれば、豊中市は、換地後の土地を全て公園として整備する計画としていた。そして、大阪航空局は、19年10月23日に豊中市に対し「売払処分予定国有地の買受要望の調査について」を発出した。しかし、豊中市は、財政状況が厳しいことなどの理由により換地後の土地を全て買い取ることが困難であるとして、20年3月28日に換地後の土地のうちの半分程度の面積となる東側の9,492.42m2(以下「公園用地」という。)について買受けを要望する旨の回答を大阪航空局へ送付していた。
大阪航空局は、換地後の土地に関し、その処分を近畿財務局へ依頼するためには、換地後の土地における瑕疵等を明らかにすることが必要であるとして、21年7月に「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土地履歴等調査」を、同年10月に「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務」(以下「地下構造物調査」という。)を実施していた。その結果、換地後の土地について、汚染された土壌が存在するおそれはないと評価されるとともに、地下埋設物として地下構造物等及び廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ(以下「廃材等」という。)が土砂と混ざった状態の土(以下「廃棄物混合土」という。)が確認されていた。
豊中市は、21年9月11日に、公園用地の買受けを要望するとした普通財産買受要望書を大阪航空局へ提出していた。これを受けた大阪航空局は、同月15日に近畿財務局へ公園用地に係る売払処分依頼を行った。
処分依頼を受けた近畿財務局は、21年12月に不動産鑑定業者へ公園用地の不動産鑑定評価を委託し、その結果を受けて評価調書を作成して、22年2月24日に豊中市と見積合わせを実施していた。その結果、近畿財務局は、同年3月10日に地下埋設物が存在することを買受人である豊中市が了承したとする特約条項を付して瑕疵を明示した国有財産売買契約により、公園用地9,492.42m2を豊中市に14億2386万余円で売却していた。
このため、換地後の土地のうち本件土地8,770.43m2が大阪航空局に残されることになった。本件土地に残置されている地下構造物等の取扱いについて、公園用地の売却時期や豊中市から本件土地の取得等要望は無いとする回答を受けた時期等に、大阪航空局と豊中市の間で協議等が行われたかどうか両者に確認したところ、協議を行ったとする記録等はなく、事実関係を確認することができなかった。
豊中市は、売買契約書に公園用地に廃棄物混合土を含む地下埋設物等があることが明示されていたことなどから、22年11月に調査会社へ発注して公園用地における土壌汚染等の調査を実施していた。調査の結果、土壌汚染が確認されたため、豊中市は、23年3月23日に近畿財務局に土壌汚染対策により増額した費用負担について、協議申入れの事前通知を行っていた。そして、公園整備後の27年3月4日に、豊中市は、土壌汚染対策費用の負担について、近畿財務局及び大阪航空局に協議の申入れを行っていた。協議の結果、同月13日に近畿財務局、豊中市及び大阪航空局は、公園用地に係る瑕疵担保の処理についての合意書を締結し、この合意書に基づき、大阪航空局は同月26日に賠償金として2328万余円を豊中市へ支払っていた。
公園用地において土壌汚染が確認されたことから、大阪航空局は、本件土地についても23年9月に「大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染概況調査業務」を、同年12月に「大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務」を実施した結果、2か所において砒(ひ)素及びその化合物の溶出量基準に不適合、3か所において鉛及びその化合物の含有量基準に不適合、計5か所において土壌汚染が見受けられるとされた。そして、基準に不適合な5か所において、汚染深さが地下1mから3mまでの層にあるとし、その除去の方法については、対象土量が比較的少ないことから掘削による除去が適しているとされていた。
大阪航空局は、24年1月20日に森友学園とは別の学校法人から提出された買受要望書を受理したことから、委任要領に基づき、同年3月13日に本件土地に係る売払処分依頼を近畿財務局へ行っていた。しかし、同学校法人は、経済状況の悪化による学生の減少等を踏まえて、24年7月25日に買受要望を取り下げており、これを受けて大阪航空局は、同年8月7日に近畿財務局への本件土地の売払処分依頼を取り下げていた。
24年7月1日に関西国際空港と大阪国際空港が経営統合されることとなり、国土交通大臣の所管に属する土地等のうち国土交通大臣が財務大臣に協議して指定するものに関する権利及び義務については、新関西国際空港株式会社(以下「新関空会社」という。)へ承継されることとなった。そして、「新関西国際空港株式会社が承継する権利及び義務にかかる指定について」(平成24年国官会第606号国土交通大臣通知。以下「承継指定通知」という。)によれば、大阪航空局が管理していた大阪国際空港に係る移転補償跡地等は、新関空会社へ承継することとされている。しかし、本件土地については、上記のとおり、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」(平成23年法律第54号)が施行される前から、売却に係る協議等が進められていたことから、例外的に新関空会社に対して承継させずに、国が引き続き保有し、処分の手続を進めることとしていたため、承継指定通知において、承継する権利及び義務として指定されていなかった。
本件土地の売払いなどの処分に関する契約事務は、国土交通大臣から近畿財務局長に委任されており、委任事務の範囲は、委任要領に明記されている事務のほか、契約に関する事務の対象となる事務について、委任者と受任者の間で協議を行い、有益費の支払を大阪航空局長が行うことなどを決定し、会計行為を実施していた。
近畿財務局長が、25年4月30日に大阪航空局長から本件土地の処分依頼を受けたことから、近畿財務局は、同年6月3日から3か月間ホームページで取得等要望を受け付けるなどしていた。そして、同年9月2日に森友学園から小学校用地としての取得等要望書が提出され、審査等を行い、27年2月20日に処分等相手方を森友学園に決定していた。この間に近畿財務局は、大阪府に対し、小学校設立の認可等に関する照会を行うなどしていた。
この審査等の間に、森友学園は、本件土地の一部について、26年10月21日から31日まで一時貸付けを受け、小学校校舎等の設計等のための地盤調査を実施していた。
近畿財務局は、27年2月2日に国有財産近畿地方審議会に対して、本件土地を小学校敷地として森友学園に貸付け及び売払いを行うことを諮問していた。そして、同月10日の第123回国有財産近畿地方審議会において、森友学園が大阪府から小学校設置の正式認可を得られることを条件として、貸付け及び売払いを行うことは適当であるとする答申が近畿財務局に対して行われていた。
近畿財務局は、本件土地の取得に当たり当初の8年間は本件土地の貸付けを受けたいとの森友学園の要望を受け、①森友学園が3年以内に購入することが困難であること、②定期借地とすることにより10年間をもって確実に契約期間を終了させ、将来的な売払いを確実に担保することなどを理由として、27年2月4日に「普通財産貸付事務処理要領」(平成13年財理第1308号。以下「貸付要領」という。)により処理することが適当ではないと認められる場合に理財局長の承認を得て行う別途処理(以下「特例処理」という。)の承認申請を行い、同年4月30日に財務本省の承認を得て、同年5月29日に、森友学園と、売払い前提の10年間の定期借地権を設定する貸付合意書を締結していた。
なお、24年度から28年度までの間に3財務局及び6財務事務所等が、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第5項及び予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)第99条第21号の規定に基づき、公共用、公用又は公益事業の用に供するために必要な物件を直接に地方公共団体又は事業者に売り払うなどの場合等に該当する随意契約(以下、この場合による随意契約を「公共随契」という。)により売払いを行った契約118件についてみたところ、売払い前提の定期借地とする特例処理を行った事例は本件以外に見受けられなかった。
近畿財務局は、特例処理により定期借地とすることに伴い、「社会福祉施設等の整備を目的とした社会福祉法人等に対する定期借地権の設定について」(平成23年財理第1539号)を準用して公租公課相当額が控除されて、貸付料予定価格が低額となることを考慮せずに特例処理の承認申請を行っており、また、財務本省は、申請に対する検証が十分ではないものとなっており、いずれも慎重な検討を欠いていたと認められる。
近畿財務局と森友学園は、借地借家法(平成3年法律第90号)に基づき、27年6月8日に貸付合意書と同内容の公正証書を作成していた。
近畿財務局は、貸付合意書において、指定期日である28年3月31日までに小学校敷地に供さなければならないなどとした内容の用途指定の特約条項を付していた。なお、近畿財務局は、名神高速道路からの雨水が本件土地に流入していたことなどを踏まえ、28年3月10日に指定期日を29年3月31日とする変更を認めていた。
本件土地には、土壌汚染や地下埋設物等の存在が判明していることから、貸付合意書において、森友学園が地下埋設物等を撤去した場合には、有益費として、その費用を国が負担することとしていた。そして、有益費は、森友学園が支出した費用のうち国の基準による検証を踏まえて森友学園と合意した額又は貸付財産価格の増加額のいずれかを国が選択の上、森友学園へ返還することとしていた。なお、有益費の返還に当たり、森友学園と合意した額又は貸付財産価格の増加額のいずれを有益費とするかは国が選択できるが、経済性を考慮してより低額となる方を選択する方が国に有利となる。
近畿財務局によれば、撤去費用を必要費として処理せざるを得ない可能性があったことから、撤去費用は有益費として処理するものの、当該有益費は、予算措置ができれば早期に支払う意向を森友学園に示しており、実際に、契約終了時よりも早い時期に有益費を支払ったとしている。
また、貸付財産価格の増加額は、国の基準による鑑定評価方法によって定めることとされているが、近畿財務局によれば、貸付財産価格の増加額を算定する基準等を定めた規定はないとしている。
貸付契約後、森友学園は、貸付料について、2回支払を延滞していた。なお、延滞の理由は、国に早期の有益費の支払を求めて意図的になされたものであるとしている。
27年5月29日に本件土地の貸付けを受けた森友学園は、(仮称)森友学園小学校新築工事に伴う土壌改良他工事及び(仮称)森友学園小学校新築工事に伴う敷地南側地中埋設物撤去工事(以下、これらを合わせて「対策工事」という。)を同年6月30日から12月15日までの間に実施していた。対策工事の報告書によれば、対策工事では、汚染された土壌及び地下構造物等を撤去したとしている。しかし、同報告書によると廃棄物混合土の処分量(以下「処分量」という。)は9.29tにとどまっており、廃棄物混合土はほとんど撤去していなかったと思料される。そして、対策工事が終了した後の28年2月18日に森友学園は、近畿財務局及び大阪航空局へ貸付合意書第6条第6項に基づく有益費に関する領収書等の資料を提出していた。また、森友学園は、対策工事で支出したとする費用計131,760,000円について、同条第2項に基づき国が返還する有益費の金額の検討を願い出ていた。そして、近畿財務局は、同月25日に森友学園へ返還する有益費に関して大阪航空局へ意見照会を行っていた。
これを受けて大阪航空局は、国が森友学園に返還する有益費について検証を行い、①対策工事が本件土地の価値を向上させる内容であるため、国において適正と認められた金額については、森友学園へ償還する義務が生ずる、②対策工事に要した費用(以下「対策費用」という。)は妥当であるとし、対策費用と本件土地の価値の増加額を比較した結果、対策費用の方が安価であるためこれを有益費とする、としていた。そして、大阪航空局は、これらの意見を同年3月8日に近畿財務局へ回答していた。
近畿財務局は、大阪航空局から上記の回答を得て、同月30日に近畿財務局と森友学園において有益費として合意した額を131,760,000円と定めること、合意した金額を大阪航空局が自らの予算において森友学園へ支払うことなどについて、近畿財務局、森友学園及び大阪航空局の3者において合意し、合意書を締結し、この合意書等に基づき、大阪航空局は、同年4月6日に同額を森友学園へ支払っていた。
なお、近畿財務局は、当該回答の内容については、計数の確認等を行ったにとどまり、本件土地の価値の増加額の算定根拠等の詳細な確認等までは行わなかったとしている。
また、有益費の確認及び支払に当たり、合意書において森友学園と有益費を131,760,000円と定めることに合意した近畿財務局と、有益費の支払のため支出負担行為決議及び支出決定決議を行った大阪航空局の間において、有益費の確認、支払等に関する責任の所在等をどのように取り決めていたのか、保存されている行政文書では確認することができなかった。
森友学園は、28年3月11日に、近畿財務局に対して、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物が発見されたと連絡していた。
近畿財務局及び大阪航空局は、同月14日に現地確認を行った。また、近畿財務局は、同月30日に、新たな地下埋設物の確認のため小学校校舎の建設工事の工事業者(以下「校舎建設工事業者」という。)が試掘した箇所について現地で確認し、廃棄物混合土があったことを確認したとしている。さらに、近畿財務局と大阪航空局は、同年4月5日に現地の確認を行っており、その際、大阪航空局は、校舎建設工事業者が地下1.6mから4mまで新たに試掘した8か所について確認し、廃棄物混合土があったことを確認したとしている。
そして、近畿財務局は、27年11月24日の対策工事の現場確認時点では、本件土地の地表面には陶器片やガラス片等しか見受けられなかったことから、今回確認された廃棄物混合土は、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない、地下3m以深にある新たな地下埋設物であると判断したとしている。
また、大阪航空局は、杭工事の施工写真により、廃棄物混合土が排出されていたり、廃材等が掘削機の先端に付着していたりしていることなどを確認したとしている。そして、大阪航空局は、①今回確認した廃棄物混合土は、長さ9.9mの杭工事の過程で発見されたものであること、②新たに試掘した箇所において地下3.8mの地点に廃棄物混合土が見受けられたこと、③21年10月の地下構造物調査では、地下3m程度までに確認されたと記載されているが、この基となる一部の試掘データには地下3.3mまで廃棄物混合土が確認されていたこと、④本件土地は、昭和40年代初頭まで池沼であり、埋立てにより造成された土地であることなどから、今回確認した廃棄物混合土は、新たな地下埋設物であると判断したとしている。
本件土地について、平成28年3月14日の現地確認後、近畿財務局は、大阪航空局と協議を開始するとともに、財務本省にも現地確認の状況等を報告しており、同月15日に、財務本省は森友学園から地下埋設物の撤去等に関する要請を受けた。その後、同月24日に森友学園からの購入要望があったとされている。そして、近畿財務局は、森友学園の要望に応じ、本件土地を売却する方向で事務を進めたとし、詳細な日付等は不明であるものの森友学園側と数回やり取りをしたとしているが、具体的な資料はなく、その内容は確認することができなかった。また、近畿財務局は、森友学園から損害賠償請求を受ける可能性があったことなどを踏まえて、既に締結済の売買予約契約で定めた売買契約書に、本件土地に関する「一切の瑕疵について、瑕疵担保責任を免除する」旨を新たな特約条項として契約内容に加えるために、売買予約の予約完結権の行使ではなく、新たな売買契約の締結として整理することとしたとしている。なお、財務本省は、把握している範囲では同様の特約条項を付した事例はないとしている。
近畿財務局長は、森友学園からの購入要望を受けて、28年3月30日に、本件土地を所管し、専門的知見を有するとして、大阪航空局に地下埋設物の撤去・処分費用について見積もることなどを依頼した。大阪航空局は、見積りに当たり、客観的な判断をするために必要な森友学園側の工事関係者が所有する地下埋設物等に関する工事関係資料を提供することを依頼するよう近畿財務局に求めた。これを受けて、近畿財務局が工事関係者に資料の提供を依頼し、大阪航空局は、工事関係者から提供を受けた資料等も用いて見積りを行った。
そして、大阪航空局は、同年4月14日に、近畿財務局に対して売払処分依頼を行うとともに、「不動産鑑定評価について(依頼)」を提出して地下埋設物撤去・処分概算額及び軟弱地盤対策費を本件土地の不動産鑑定評価に反映することを求めた。
近畿財務局は、本件土地を森友学園に売り払うため、森友学園との間で、21年度の地下構造物調査報告書等に記載された地下埋設物等の瑕疵の存在を了承した上で土地を買い受けるとした条項及び売買物件に関する一切の瑕疵について国の瑕疵担保責任を免除するなどとした特約条項を付した売買契約を28年6月20日に締結するなどしていた。当該売買契約において、近畿財務局は、森友学園が指定期日までに指定用途に供さなかったときは本件土地の買戻しをすることができる特約条項や、森友学園に対して違約金を支払わせる特約条項も付していた。なお、近畿財務局は、当該売買契約により、大阪航空局が算定した地下埋設物撤去・処分費用を踏まえた時価で本件土地を売却したことから、実際の撤去状況及び撤去費用の確認並びに事後的な精算を行う必要はないなどとしている。
森友学園は、28年6月9日に近畿財務局に対して期間10年での延納の申請を行った。近畿財務局は、本件土地の貸付申請時に、大阪府が小学校設置の認可に当たり活用した財務諸表、収支計画、借入返済計画及びこれらの根拠資料の提出を森友学園から受けており、延納申請の際にも、最新の財務諸表、収支計画及び借入返済計画の提出を受けて検証を行い、売払代金を一時に納付することの困難性、延納代金の納付の確実性があったとして延納を認めていた。しかし、収支計画をみると、27年度の営業収支の中に貸付合意書締結時の契約保証金が支出として計上されておらず、資料の記載に不備が見受けられた。キャッシュフローベースで示されている借入返済計画をみると、貸付申請時の計画ではプラスであった法人全体の最終的な次年度繰越額がマイナスとなっているのに、近畿財務局は、森友学園に対して、変更された内容等について確認していなかった。また、借入返済計画における小学校建設工事費等については、見込額でしかない貸付申請時と異なり、延納申請時には既に着工済みであることを近畿財務局は把握していたことから、契約書等の根拠資料を徴するなどして実際の建設工事費を確認すれば計画の妥当性をより正確に検証できた可能性があるのに、近畿財務局はこれを行っていなかった。
近畿財務局は、延納に当たり、本件土地の売払代金の8割の金額1億0720万円が、延納代金と1年分の利息との合計額1億0719万余円を上回ることから、本件土地に抵当権者を国土交通省とする抵当権を設定していた。
なお、24年度から28年度までの間に3財務局及び6財務事務所等において、一般会計及び空港整備勘定所属の普通財産を公共随契により売却を行った契約96件についてみたところ、本件以外に延納の特約を付して売却した事例は見受けられなかった。
財務省は、公共随契により売払いをした財産にあっては契約金額等を、契約後原則として1か月以内に財務局等のホームページに公表することとしている。本件の公表に当たり、近畿財務局は、森友学園が以前から契約金額等について非公表としたい旨を要請していたことから、売買契約締結時に確認したところ、森友学園から、風評リスクが懸念されるので、契約金額を公表しないよう要請があったとして、契約後1か月を経過しても契約金額を公表していなかった。
また、25年度から28年度までの間において、3財務局及び6財務事務所等が公共随契により売払いを行った契約104件についてみたところ、契約金額を非公表にした事例は本件以外になかったが、関東財務局において公共随契により売払いを行った契約の中で契約した事実そのものを公表していない事例が2件見受けられた。そして、財務本省で確認したところ、上記以外に、同様に公共随契により売払いを行った契約の中で契約した事実そのものを公表していない事例が3件見受けられた。
森友学園は、29年3月10日に小学校設置認可の申請を取り下げ、4月21日に民事再生法(平成11年法律第225号)に基づく再生手続の開始を申し立て、同月28日に再生手続の開始が決定されて管財人が選任された。近畿財務局は、6月29日に買戻権を行使して所有権移転の登記手続を行い、7月12日に本件土地を原状に回復して国に返還するよう求めることを森友学園に通知した。また、国土交通省及び近畿財務局は、森友学園の再生手続に伴う再生債権の届出に当たり、国が森友学園に対して有する債権である有益費過払分等と、国が森友学園に対して負う債務である本件土地の買戻しに伴い返還する納付済みの売払代金とを相殺し、相殺した後の差額8,636,327円及び再生手続開始後の延滞金等1,213,311円並びに本件土地の返還に係る原状回復請求権985,540,826円を再生債権として裁判所に届け出ていた。そして、10月10日に、管財人から再生計画案が裁判所へ提出されている。
森友学園は、本件土地に小学校を設置するに当たり、防火地域に新築される小学校校舎及び体育館の木質化について、27年度から28年度にかけて事業費21億8000万円で実施するとした事業計画を策定して、サステナブル事業に応募していた。これに対し国土交通省は、審査の結果、27年9月4日に、補助限度額61,944,000円として事業採択を行い、森友学園へ採択の結果の通知を行っていた。
サステナブル事業の採択を受けて森友学園は、「平成27年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)補助金交付規程」(以下「補助金交付規程」という。)等に基づき、27年10月2日に、小学校の建設に係る費用内訳書等を添付して、27年度分の工事の予定出来高を90%として補助金申請額を56,448,000円として補助金交付申請書を木活協に提出していた。交付申請書の提出を受けた木活協は、申請内容に不備がないとして、同月8日に、森友学園に対し、同額の補助金額で交付決定を行っていた。
森友学園は、採択に係る審査において、28年1月に本体工事着工、予定工期が11か月の予定と回答していた。このため、本体工事着工の3か月後の27年度末に工事の予定出来高を90%とすることは困難な状況となっていた。しかし、木活協は、サステナブル事業の実施者が交付申請年度末までに出来高を踏まえて業者への支払に必要とする費用についても出来高相当とみなす運用をしていたことから、交付申請どおりに交付決定していた。また、木活協は、交付申請書の審査に当たり、年度計画について、森友学園が27年度末までに必要とする費用に関する資料を徴取して確認するなどの十分な審査を行っていなかった。
木活協から補助金の交付決定を受けた森友学園は、27年12月3日に校舎建設工事業者と契約を締結し、小学校校舎の建設工事に着手していた。そして、28年3月15日に中間実績報告書を木活協へ提出し、併せて交付決定を受けた補助金56,448,000円のうち48,298,000円(約85.5%)を請求していた。中間実績報告書の提出を受けた木活協は、不備がないとして同額の補助金を同月22日に森友学園へ交付していた。
また、森友学園は、補助金交付規程等に基づき、29年1月20日に、27年度分の実績報告書を木活協へ提出し、併せて27年度分の補助金残額8,150,000円の請求を行っていた。これを受けた木活協は、同日に27年度分の補助金について額の確定を行い、同年2月21日に請求額と同額の8,150,000円の補助金を森友学園へ交付していた。
しかし、補助金交付規程によれば、補助金の支払は、実績報告書の提出を受け、交付すべき補助金の額を確定した後に支払われるものとするとされているが、木活協は額の確定を行わずに、森友学園から提出された中間実績報告書に基づき、28年3月に森友学園に48,298,000円の補助金を交付していた。このように、木活協が補助金交付規程に定める手続に基づかずに補助金を交付していたことは適切を欠くと認められる。
なお、補助金の交付に当たり、木活協は、募集要領及び補助金交付規程において、支払実績を確認するための資料を提出させることとなっていなかったことなどから、森友学園から領収書の写しを提出させるなどしておらず、校舎建設工事業者への支払状況については、契約書や口頭による聞き取りなどにより確認したとしている。
森友学園は、補助限度額61,944,000円から27年度交付決定額56,448,000円を除いた残りの5,496,000円について、28年度分の補助金交付申請書を、28年4月1日に木活協へ提出しており、同日付けで木活協から同額の補助金の交付決定を受けていた。
森友学園は、29年3月16日に、小学校の設置認可申請取下げを理由に事業の中止承認書を木活協へ提出しており、これを受けた木活協は、同月21日付けで事業の中止を承認していた。
そして、森友学園が事業を中止したことから、木活協は、27年度分の補助金について、補助金交付規程等に基づき、交付決定の取消しを行うとともに、森友学園へ補助金の返還命令を行っており、これを受けた森友学園は、同月28日に交付を受けていた補助金額の全額56,448,000円を返還していた。
なお、国土交通省によれば、(イ)及び(ウ)の事態については、森友学園に限らず、サステナブル事業を実施した他の事業者においても同様の事態が見受けられているとしている。
大阪航空局は、移転補償跡地について、国有財産法(昭和23年法律第73号)第32条の規定等に基づき、行政財産として国有財産台帳に記載していた。
元年3月31日に大阪国際空港の周辺地域における第2種区域が大幅に縮小されたことから、大阪航空局は、第2種区域から外れた移転補償跡地について、順次用途廃止を行い、行政財産から普通財産へ分類変更し、普通財産として国有財産台帳に記載していた。本件土地に係る野田地区の移転補償跡地については、5年1月29日に行政財産から普通財産へ分類変更しており、同日付けで普通財産として国有財産台帳に記載していた。そして、11年11月から15年2月までの仮換地後の土地の売却、17年6月の換地処分、22年3月の豊中市への公園用地の売払いについて、それぞれ国有財産台帳から数量及び価格が増減されていたが、仮換地後の土地の売却において、国有財産台帳から減とする数量又は異動年月日を誤って記載している事態が見受けられた。また、新関空会社へ出資された移転補償跡地についても、出資が行われた24年7月に国有財産台帳から数量及び価格が減とされていた。
そして、本件土地については、28年6月20日に森友学園へ売却されたことから国有財産台帳において、同日を異動年月日として数量及び価格が減とされていた。また、買戻権の行使により大阪航空局所管の土地となったため、所有権移転の登記が29年6月29日に行われ、同日を異動年月日として国有財産台帳へ新たに記録されている。
近畿財務局は、本件土地の貸付料予定価格の決定を2回行っている。1回目は、10年間の定期借地を前提とした鑑定評価書による賃料42,043,000円/年から公租公課相当額9,184,403円/年を控除した32,858,597円/年を貸付料予定価格としていた。しかし、27年3月26日に森友学園から本件土地が地耐力の劣る地盤であることを示すボーリング調査結果が提出されたことなどの理由から、同年4月16日に軟弱地盤及び50年の定期借地を前提とする価格等調査業務を委託し、これによる賃料36,040,000円/年から公租公課相当額8,871,294円/年を控除するなどして、2回目は、27,251,706円/年を貸付料予定価格としていた。
近畿財務局は、貸付合意書締結に係る見積合わせを27年4月28日に行い、1日に8回の見積合わせを行って、27,300,000円/年の貸付価格としていた。
大阪航空局は、28年2月25日に近畿財務局から貸付合意書第6条第2項に基づき国が森友学園に返還する有益費に関して意見の照会を受け、対策工事の内容及び金額の妥当性の検証を行っていた。
大阪航空局は、28年2月に近畿財務局を通じ、対策工事を実施した業者(以下「対策工事業者」という。)から実施平面図、工事写真、産業廃棄物管理票、契約内訳書等の書類の提供を受けて、施工範囲、地下埋設物の撤去及び処分状況、土壌汚染対策の実施状況等を確認し、対策工事の内容は土地の価格を向上させる内容であるとしていた。また、大阪航空局は、対策費用として森友学園が支出したとする計131,760,000円の妥当性の検証に当たっては、対策工事業者以外の2者から見積金額を徴取し、2者の見積金額がいずれも対策費用を上回っていることを確認していた。
そして、大阪航空局は、貸付料の算定の根拠となった鑑定評価書に基づき、対策工事前の土地の評価額(以下「対策前評価額」という。)923,658,000円と対策工事後の土地の評価額(以下「対策後評価額」という。)1,055,609,000円との差額131,951,000円を対策工事による本件土地の価値の増加額としていた。
上記により、大阪航空局は、森友学園が対策費用として支出したとする131,760,000円について、工事内容は本件土地の価格を向上させる内容であること、対策費用は、2者から徴取した見積金額よりも安価であり妥当であること、また、本件土地の価値の増加額より安価であったことから、対策費用131,760,000円を有益費とするとしていた。そして、大阪航空局は、28年3月8日に「有益費支払いに関する意見について(回答)」において、対策工事の内容及び金額が妥当であること並びに対策費用131,760,000円を有益費とすることを近畿財務局へ回答していた。
対策費用として森友学園が支出したとする131,760,000円について、近畿財務局及び大阪航空局から提出を受けた資料等を確認したり、森友学園から対策工事業者に支払われた実際の金額について確認したりしたところ、森友学園からの支払完了後、森友学園から返金要求があったため、対策工事業者は、27年12月3日の森友学園からの返金請求書に基づき、同月9日に21,060,000円を森友学園へ返金していた。
したがって、森友学園が対策工事で実際に支出した額は、131,760,000円から上記21,060,000円を差し引いた110,700,000円となっていた。このため、森友学園は、実際に支出した額より21,060,000円過大であった131,760,000円を、対策工事で支出した費用であると偽って国に報告していたことになる。
さらに、対策工事後の個別的要因のうち地盤改良について、大阪航空局は、整地により改善されたとして1.00としていた。しかし、対策工事の報告書等を確認したところ、対策工事では地表面の整地しか行われておらず、地盤の地耐力を改善させるような工事を実施したことは確認できなかったことから、対策工事後の地盤改良に係る個別的要因を1.00に改善したとして評価していることについては、十分な根拠が確認できないものとなっている。
地盤改良に係る個別的要因を対策工事前から変更せずに0.97として対策後評価額を試算すると、本件土地の価値の増加額は105,561,000円となる。
また、対策前評価額923,658,000円については、大阪航空局において、貸付料の根拠となった鑑定評価書に準じて、標準的画地の価格に個別的要因の相乗として0.69を乗ずるなどして算定していたものであった。そして、大阪航空局は、対策費用として森友学園が支出したとする131,760,000円の契約内訳書等から、土壌汚染対策に係る費用を45,056,120円、地下埋設物の撤去に係る費用を86,703,880円とそれぞれ算定し、これらの費用を基に、土壌汚染の個別的要因を0.96から0.97へ、地下埋設物の個別的要因を0.95から0.93へ変更し、個別的要因の相乗を0.69としたとしている。
しかし、前記のとおり、対策工事において森友学園が支出した額は実際には110,700,000円となることから、これにより土壌汚染及び地下埋設物の個別的要因を算定するとそれぞれ0.97及び0.95となる。
大阪航空局は、森友学園が支出したとする額を用いて地下埋設物の撤去に係る費用を86,703,880円と算出しているが、この対策工事では、廃棄物混合土はほとんど撤去されていなかったと考えられる。
しかし、廃棄物混合土の撤去・処分に係る費用を正確に算定するには、算定に必要な情報を把握して条件を全て確定する必要があるが、このことは困難であるため、仮に大阪航空局の算定方法に沿って、森友学園が実際に支出した対策費用に基づき対策工事前の個別的要因を算定するとともに、前記のとおり対策後評価額を個別的要因のうち地盤改良について対策工事前から変更せずに0.97として試算すると、本件土地の価値の増加額は79,171,000円となる。
これらのことから、対策費用として認められる額は110,700,000円となり、また、本件土地の価値の増加額を大阪航空局の算定方法に沿って試算したところ、地盤改良に係る個別的要因が改善されていない点を反映すると105,561,000円、これに加えて対策費用を森友学園が実際に支出した110,700,000円とすると79,171,000円となる。このため、大阪航空局が有益費として森友学園に支払った131,760,000円は、これらに比べて26,199,000円から52,589,000円が多く支払われていることになる。
以上のことから、国が森友学園へ返還する有益費の額の算定に当たり、対策工事の内容が土地の価値を増加させるものとなっているかなどの確認を十分に行うとともに、本件土地の価値の増加額の妥当性について十分な検討を行うなどする必要があったと認められる。
これについて、国土交通省は、貸付財産価格の増加額を算定する基準等を定めた規定はないとされていること、一般的には土壌汚染・地下埋設物による減価額と工事実費とが一致するようにすることなどから、大阪航空局が行った本件土地の価値の増加額の算定については、本来これを行う必要はなく、工事実費を有益費とすべきであったことから、工事実費を有益費として支払ったこと自体は不適切ではないとしている。
なお、財務省及び国土交通省は、貸付合意書第6条第2項については、仮に森友学園側から工事実費を超えた土地の価値の増加額の請求がなされるなどした場合に備え、国側に適正な支払額を決定する権利を明示的に付与しておくためであるとしている。
森友学園から連絡を受けた近畿財務局は、大阪航空局とともに、28年3月14日に現地の確認をして、今回確認した廃棄物混合土は貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物であると判断したとしている。そして、近畿財務局は、大阪航空局に地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを口頭により依頼し、その額を本件土地の評価において反映させることとした。また、本件土地に関する隠れた瑕疵も含む一切の瑕疵について国の瑕疵担保責任を免除し、森友学園は売買契約締結後、損害賠償請求等を行わないとする特約条項を契約に加えることとした。一方、大阪航空局は、同月30日に近畿財務局から地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを行うよう口頭による依頼を受けて、地下埋設物撤去・処分概算額を8億1974万余円と算定し、近畿財務局へ提出した。
地下埋設物撤去・処分費用の算定における対象面積についてみると、杭工事においていずれの杭から廃棄物混合土が確認されたかを特定することができないことや、過去に池等であった土地の地歴等を勘案しているとする範囲と本件土地のうち北側の計5,190m2(以下「北側区画」という。)とが一致しているかを確認することができないことから、対象面積の範囲を妥当とする確証は得られなかった。
杭部分を除く部分に設定された深度3.8mについてみると、大阪航空局が確認したとしている工事写真には3.8mを正確に指し示していることを確認することができる状況は写っていない。また、近畿財務局及び大阪航空局の職員が現地で確認した際等に、別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はないことも踏まえると、廃棄物混合土を3.8mの深度において確認したとしていることの裏付けは確認することができなかった。そして、ボーリング調査等を実施した箇所付近において、深度3.8mに廃棄物混合土が確認されていないのに、大阪航空局が森友学園小学校新築工事において工事関係者が北側区画で試掘した5か所のうち1か所の試掘において深度3.8mに廃棄物混合土が確認された結果をもって敷地面積4,887m2に対して深度3.8mを一律に適用して処分量を算定しているのは、過去の調査等において廃棄物混合土が確認されていなかったとの調査結果と整合しておらず、この算定方法は十分な根拠が確認できないものとなっている。
杭部分に関し、深度9.9mまで廃棄物混合土の存在を見込んでいることについては、森友学園が行った対策工事において廃棄物混合土は撤去されていないため、近畿財務局及び大阪航空局が現地や施工写真等で確認したとしている廃棄物混合土が既知の地下3m程度までの深度のものなのか、杭先端部の地下9.9mの深度のものなのかなどについては確認することができなかった。
そして、杭工事において新たに確認されたとする廃棄物混合土は、(仮称)M学園小学校新築工事地盤調査報告書等においておおむね地下3m以深は沖積層等が分布しているとされていることなどから、既知の地下3m程度までに存在するものであることも考えられ、新たに確認されたとする廃棄物混合土がどの程度の深度に埋まっていたかについては、十分な確認を行う必要があったと認められる。
以上のように、深度3.8mについて、廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができず、敷地面積4,887m2に対して一律の深度として用いたことについて十分な根拠が確認できないこと及び深度9.9mを用いる根拠について確認することができないこと、また、大阪航空局は、廃棄物混合土が確認されていない箇所についても地下埋設物が存在すると見込んでいることとなることなどから、地下埋設物の撤去・処分概算額の算定に用いた廃棄物混合土の深度については、十分な根拠が確認できないものとなっている。
また、21年度の地下構造物調査時の試掘箇所における掘削土量に占める廃棄物混合土の割合(以下「混入率」という。)の47.1%は、地下構造物調査において北側区画内で試掘した42か所のうち廃棄物混合土の層が存在すると判断された28か所の混入率を平均して算定されているが、28か所以外の14か所についても北側区画での試掘であり、うち13か所では廃棄物混合土が確認されていない。このため、14か所を混入率の平均の算定から除外していることに合理性はなく、混入率の平均値が試掘した42か所の平均より高めに算定されていることも考えられる。このように、対象面積全体に乗ずる平均混入率として、廃棄物混合土が確認された箇所に限定した混入率の平均値を用いていることについては、十分な根拠が確認できないものとなっている。
さらに、本件土地の地下埋設物撤去・処分費用の算定における処分費(以下「本件処分費」という。)の単価22,500円/tがどのような条件下で提示された単価であるのかなどを示す資料はなく、単価がどのような項目から構成されているかなど、単価の詳細な内容について確認することができなかった。
一方、27年6月から実施された対策工事で汚染されていない土壌に入れ替えるなどして掘削除去されている土壌は地下埋設物の撤去・処分費用の算定における北側区画の範囲内であり、その土壌は、処分量として算定された計19,520tの一部と重複していることから、処分量から控除する必要があったと認められる。
共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の算定に当たっては、直接工事費に事業損失防止施設費(注5)等を加えた額(以下「共通仮設費対象額」という。)に事業損失防止施設費に相当する費用を加えているが、国土交通省制定の「空港土木請負工事積算基準」(以下「工事積算基準」という。)によれば、共通仮設費対象額に事業損失防止施設費に相当する費用として直接工事費の3%を乗じて加えることとはされていないことから、直接工事費に3%を乗じた事業損失防止施設費に相当する費用を共通仮設費対象額に加える必要性があるとは認められない。
また、共通仮設費対象額に本件処分費全額が含まれているが、工事積算基準では、処分費の共通仮設費対象額等に占める割合が3%を超える場合は、3%を超える処分費の金額は共通仮設費対象額に算入しないこととなっていることを踏まえると、仮に本件処分費から処分に係る労務費等を区分することができた場合には、その額を共通仮設費対象額にそのまま加えることは可能であると認められるとしても、外注が必要となる処分費について共通仮設費対象額等の3%を超える金額を共通仮設費対象額に含める必要があるとは認められない。
地下構造物調査報告書等の既存のデータのみを用いて処分量を求めるためには、何らかの仮定に立って推計せざるを得ない。そして、仮定の仕方によって処分量の推計値が変動すると考えられるが、例えば、限られた期間で見積りを行わなければならないという当時の制約された状況を勘案し、大阪航空局が適用した地下埋設物撤去・処分費用の価格構成や工事積算基準等を用いた上で、算定要素ごとに一定の条件を設けて混入率法として試算を行ったところ、処分量19,520tは、①廃棄物混合土の深度を過去の調査等において試掘した最大深度の平均値に修正した場合は9,344t、②混入率を北側区画の全試掘箇所42か所の混入率の平均値に修正した場合は13,120t、③処分量に含まれていた対策工事で掘削除去している土壌の量を控除した場合は19,108t、これらの①~③の算定要素が全て組み合わされた場合は6,196tと算出された。
一方、上記の混入率法を用いずに、廃棄物混合土が確認された最大深度の平均値2.0mと最小深度の平均値0.6mの差となる1.4mの範囲全てに、廃棄物混合土が存在する層があるとみなして算定する層厚法も考えられる。
層厚法により、地下構造物調査等を行った位置が対象面積に対して偏っていないと仮定した上で、更に廃棄物混合土が存在する層の全てが廃棄物混合土のみであるとみなして、対策工事で掘削除去している土壌の量を控除して機械的に試算を行ったところ、処分量は13,927tと算出された。
このように、処分量を求めるための仮定の仕方によって、処分量の推計値は大きく変動する状況となっており、また、いずれも大阪航空局が算定した処分量19,520tとは大きく異なるものとなっていた。
以上のように、大阪航空局が算定した本件土地における処分量19,520t及び地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、また、仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえると、大阪航空局において、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたと認められる。
近畿財務局は、大阪航空局から売払処分依頼を受けて、不動産鑑定評価基準(平成14年7月3日国土交通事務次官通知)に基づく正常価格(注6)を求めることとし、大阪航空局からの依頼文書で示された地下埋設物撤去・処分概算額及び軟弱地盤対策費を考慮して不動産鑑定評価を行うことを条件とした仕様書により鑑定評価業務を発注した。委託を受けた不動産鑑定業者の不動産鑑定士は、近畿財務局が考慮することを依頼した地下埋設物撤去・処分概算額について、不動産鑑定評価基準における「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかったとし、近畿財務局の同意を得て、地下埋設物の存在を不動産の価格を形成する要因(以下「価格形成要因」という。)から除外する想定上の条件を設定して鑑定評価を行い、本件土地の鑑定評価額を9億5600万円とした。さらに、近畿財務局が提示した地下埋設物撤去・処分費用を控除し、更に地下埋設物の撤去に要する期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益相応の減価を講じて意見価額を1億3400万円であると付記していた。
当該意見価額について、上記の不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準において、想定上の条件が設定された場合に、「必要があると認められるときは、当該条件が設定されない場合の価格等の参考事項を記載すべきである」とされていることによるものであるなどとしている。そして、参考事項として記載された意見価額は、鑑定評価額を定める場合のように中立性や信頼性の水準を確保することが求められるものではない。また、地下埋設物撤去・処分概算額を活用できなかった理由は鑑定評価書に記載されていないが、上記の不動産鑑定士に確認したところ、依頼者側の推測に基づくものが含まれていて、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であることなどから、他の専門家が行った調査結果等としては活用できなかったとするとともに、不動産鑑定評価上、地下埋設物を全て撤去することが合理的であることを保証したものではないとしている。
また、軟弱地盤対策費5億8492万余円の算定根拠について大阪航空局に確認したところ、大阪航空局は、近畿財務局からの依頼に基づき、森友学園側の工事関係者から提供された見積書を内容の検証を行わないまま近畿財務局に提出したとしている。そして、近畿財務局は、当該見積書が契約相手方である森友学園側の工事関係者から提供されたものであることを知りながら、その事実を説明せず、また、内容を十分に確認しないまま、不動産鑑定士に判断を委ねることとして、これを考慮することを条件とした鑑定評価業務を委託していた。このようなことから、近畿財務局及び大阪航空局において、予定価格の決定に関連した事務の適正な実施に対する配慮が十分とはいえない状況となっていた。
そして、近畿財務局は、9億5600万円が鑑定評価額であること、地下埋設物撤去・処分概算額を反映した場合の意見価額が1億3400万円であることの審査を了したが、評価調書の作成を失念したとし、「国有財産評価基準について」(平成13年財理第1317号。以下「国有財産評価基準」という。)の手続に従って評価が行われた適正な対価(以下「評定価格」という。)を定めないまま、1億3400万円を予定価格として決定していた。
予定価格と意見価額が同額である点に関して、近畿財務局は、本件鑑定評価において、地下埋設物の存在が価格形成要因から除外されたことから、地下埋設物の影響を踏まえた判断が必要になるとし、近畿財務局が明らかとなっている瑕疵に対応しない場合には森友学園が小学校建設を断念して損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえ、意見価額を参考として、鑑定評価額9億5600万円から大阪航空局が合理的に見積もった地下埋設物撤去・処分費用を控除するなどしたものであるとし、国有財産評価基準に沿った取扱いであるとしている。
しかし、予定価格の決定に当たり、森友学園から損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえたとされているところ、当該個別事情を勘案したことは予定価格の決定における重要な要素であるのに、決裁文書にこの点に関する特段の記述がないなど、具体的な検討内容は明らかではなかった。そして、鑑定評価額と大きく異なる額を予定価格として決定していたのに、国有財産評価基準で求められている評価調書の作成を失念し、評定価格を定めておらず、評価内容が明らかになっていないため、評価事務の適正を欠いていると認められた。
また、3財務局及び6財務事務所等が、27、28両年度に特約条項を付して地下埋設物等の瑕疵等明示売却を行った167契約についてみたところ、本件のように意見価額が付記されていた事例はなく、また、地下埋設物等の存在は、価格形成に影響がないと判断されるものなどを除き、不動産鑑定評価において減価要因とされており、鑑定評価額から、別途に財務局及び財務事務所等が地下埋設物等の撤去費用等を控除していた事例は見受けられなかった。なお、財務本省は、把握している範囲で鑑定評価額から土壌汚染対策費及び地下埋設物撤去費用を別途控除していた事例が、22年度に1件あるとしている。
さらに、近畿財務局は、有益費の返還に係る地下埋設物撤去工事を行った実績等がある森友学園に対して、地下埋設物撤去・処分費用の見積りを短期間で行うのは難しいと考えられたとして見積合わせを行っていなかった。予定価格よりも有利な価格で契約する可能性を追求するためには、予決令第99条の6及び「公共随契にかかる売払価格の決定方法について」(事務連絡管総2第265号)に基づき、適切に見積合わせなどを行うことについて更に検討すべきであったと認められた。なお、24年度から28年度までの間に近畿財務局及び6財務事務所等が締結した公共随契66件についてみたところ、見積合わせを行うことなく売払価格を提示したものが本件以外に1件見受けられた。
財務省は、「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)に基づき、財務省行政文書管理規則及び財務省行政文書管理規則細則(以下、これらを「文書管理規則等」という。)を定め、行政文書の管理等を行っており、歴史資料として重要な公文書その他の文書(以下「歴史公文書等」という。)に該当する行政文書の保存期間は、文書管理者が標準文書保存期間基準において定め、歴史公文書等に該当しない行政文書の保存期間は原則として1年未満とされている。売払決議書等の決裁文書の作成に当たっては、経緯も含めた意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証できるよう、保存期間を1年未満とした行政文書の内容も、必要に応じて管理処分調書等として決裁文書に集約して保存しているとしている。そして、近畿財務局は、本件土地の売却等に係る決裁文書の作成に当たり、主な経緯等を記載した管理処分調書等を作成しており、1年未満とした行政文書の内容も決裁文書に集約したとしている。しかし、管理処分調書等を含む本件土地に係る決裁文書等の行政文書では、本件土地の売却に至る森友学園側との具体的なやり取りなどの内容や、有益費の確認、支払等に関する責任の所在が明確となっていないなど、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた。
そこで、更に本件土地の処分等に係る協議記録等について提出を求めたところ、近畿財務局は、本件土地の処分等に係る大阪航空局や森友学園との協議記録等については、保存期間を1年未満としており、協議記録等を作成していたとしても、本件土地の森友学園との売買契約終了後等に廃棄することとしていたことから確認することができなかったとしている。
なお、29年9月20日に開催された内閣府の公文書管理委員会において、行政文書の管理に関するガイドライン(以下「行政文書ガイドライン」という。)の見直しの方向性が議論されており、歴史公文書等の範囲の明確化や、保存期間1年未満の行政文書の取扱いなどについて、引き続き検討されているところである。
近畿財務局は、文書管理規則等により、電子ファイル等の行政文書について、財務局行政情報化LANシステム(以下「財務局システム」という。)等に保存することとしており、本件土地の処分等に係る協議記録等の電子ファイルについても、保存期間満了までは財務局システムのファイルサーバに保存されていたとしている。そして、保存期間の満了した行政文書の電子ファイルについては、文書管理規則等に基づき財務局システムから削除したとしている。また、近畿財務局は、28年10月に財務局システムを更新しており、旧システムのサーバのハードディスクについては物理的に破壊されていることなどから、28年10月以前に保存期間の満了に伴い、又は、1年未満の保存期間とされ旧システムのファイルサーバから削除された行政文書の電子ファイルのデータについては、復元することはできないとしている。
国土交通省は、国土交通省行政文書管理規則(平成23年国土交通省訓令第25号)に基づき、文書管理者が標準文書保存期間基準を定めることとなっている。また、大阪航空局では、歴史公文書等に該当せず、標準文書保存期間基準に定めがない行政文書については、保存期間を1年未満として運用している。
本件土地の取得から売却に関係する文書については、主に大阪航空局補償課が文書を管理している。そして、補償課の文書管理者により定められた標準文書保存期間基準(以下「補償課文書基準」という。)によると、移転補償事業の実施に関する事項のうち、事業の実施に関する事項についての関係行政機関等との協議又は調整に関する文書や事業を実施するための決裁文書については、保存期間が10年とされており、土地区画整理事業の換地に関する事項のうち、同意のための決裁文書等については、保存期間が10年とされている。また、国有財産の財産取得に関する事項に関する文書については保存期間が30年とされており、いずれも保存期間満了後の措置は廃棄とされている。
このため、移転補償跡地の取得に関する協議文書等や野田区画整理事業の換地に関する協議文書等は、保存期間を経過し、保存されていないことから、土地取得時における経緯等を確認することができず、地下構造物等が残置されたままとなった経緯について確認することができなかった。
また、有益費に関する決裁文書や売却時における地下埋設物撤去費用等についての近畿財務局への回答に関する決裁文書には、有益費として支払う額の確認や売却時における地下埋設物の取扱いに関して近畿財務局や森友学園との間でどのような協議が行われていたのかが記載されていなかった。そこで、更に協議記録等について提出を求めたところ、空港場外用地等に関する処分依頼関係文書については、補償課文書基準において保存期間が5年となっているものの、大阪航空局は、本件土地の処分依頼に係る近畿財務局や森友学園との協議記録については、処分依頼関係文書に含まれないとして、保存期間を1年未満とし、本件土地の森友学園との売買契約終了後等に廃棄することとしていたことから確認することができなかったとしている。このため、近畿財務局や森友学園とどのような協議が行われていたのかなどを確認することができず、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた。
さらに、大阪航空局は、本件処分費の単価がどのような条件下で提示された単価であるのかなどを示す資料は、地下埋設物の撤去・処分概算額の算定過程における検討資料であり処分依頼関係文書には含まれないものであるとして、保存期間を1年未満とし、売買契約終了後に廃棄することとしていたことから保存していなかったとしている。このため、本件処分費の単価等について詳細な内容を確認することができず、会計経理の妥当性について検証が十分に行えない状況となっていた。
国民共有の貴重な資産である国有財産は、適正に管理及び処分を行う必要があり、国有地の売却等に当たっては、財政法(昭和22年法律第34号)第9条第1項等の規定の趣旨を踏まえ、定められた手続を適正に実施して公平性、競争性、透明性等を確保し、かつ、十分な説明責任を果たすことが求められている。
本件土地の売却等をめぐっては、国会で質疑が行われ、報道等も頻繁に行われており、国民の関心が極めて高いものとなっている。
今回、本院が検査したところ、検査の結果に示したように、国有地の売却等に関し、合規性、経済性等の面から、必ずしも適切とは認められない事態や、より慎重な調査検討が必要であったと認められる事態等が見受けられた。
ついては、財務省及び国土交通省においては、今後の本件事案への対応に万全を期すとともに、次の点に留意するなどして、今後の国有財産の管理及び処分を一層適切に行っていくことが必要である。
本件土地に係る決裁文書等の行政文書では、売却に至る森友学園側との具体的なやり取りなどの内容や、有益費の確認、支払等に関する責任の所在、地下埋設物の撤去・処分費用における本件処分費の単価の詳細な内容等が確認できず、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた。このため、財務省及び国土交通省において、公文書管理委員会において議論されている行政文書ガイドラインの見直しの方向性についての内容等を踏まえ、国有地の売却等に関する会計経理の妥当性の検証が十分に行えるよう、必要な措置を講ずること
本院としては、国有地について、売却等を通じて国の財政に貢献するとともに、地域や社会のニーズに対応した有効活用を図っていく必要があるとされていることから、その重要性に鑑み、今後とも、国有地の管理及び処分について、引き続き検査していくこととする。