日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊(以下「合衆国軍隊」といい、日本国に駐留する合衆国軍隊を「在日米軍」という。)は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(昭和35年条約第6号。以下「日米安全保障条約」という。)に基づき、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために、日本国における施設及び区域(以下、これらを合わせて「施設等」という。)を使用することを許されることとなっている。
個々の施設等の提供及び返還に関する協定については、日本国政府及びアメリカ合衆国政府(以下「合衆国政府」といい、日本国政府と合衆国政府とを合わせて「日米両政府」という。)が、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(昭和35年条約第7号。以下「日米地位協定」という。)第2条第1項(a)の規定に基づき、日米両政府の相互間の協議を行う機関である合同委員会(以下「日米合同委員会」という。)における合意を経て締結することとなっている。日米合同委員会には、必要な補助機関及び事務機関を設けることとなっており、補助機関には施設の提供に関する機関(以下「施設分科委員会」という。)等が設置されている。
上記の協定に基づき日本国政府が合衆国政府に提供している施設等(以下「提供施設等」という。)のほか、日米地位協定第2条第4項(b)の規定に基づき、日本国政府が管理する施設について、在日米軍が一定の期間を限って使用することができることとなっている。
また、日米両政府は、日米地位協定第2条第2項の規定に基づき、日米両政府のいずれか一方の要請があるときは、個々の提供施設等に関する協定を再検討しなければならず、日米両政府の合意により、提供施設等を日本国政府に返還すべきこと又は新たに施設等を合衆国政府に提供することができることとなっている。
これらの制度の下で、平成28年度末現在の提供施設等の土地の面積は、2億6434万余m2となっており、このうち国有財産は1億1460万余m2と43%を占めている。
在日米軍は、提供施設等において在日米軍に所属して事務、施設管理、通訳等に従事する従業員や、在日米軍の構成員、家族等の利用に供するために提供施設等に設置される売店、食堂等(以下、これらを合わせて「諸機関」という。)において販売等に従事する従業員(以下、これらの従業員を合わせて「駐留軍等労働者」という。)を必要としている。
日米地位協定第12条第4項の規定によれば、在日米軍及び諸機関の労務の需要は、日本国政府の援助を得て充足されることとされており、日本国政府(防衛省)と合衆国政府(在日米軍)との間で、職種の別に基本労務契約、船員契約及び諸機関労務協約の3種類の労務提供契約が締結されている。これらの労務提供契約に基づき、日本国政府は、駐留軍等労働者を雇用している。
駐留軍等労働者の勤務条件については、「日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律」(昭和27年法律第174号)において、国家公務員及び民間企業の従業員の給与等を考慮して防衛大臣が定めることとなっている。そして、雇用された駐留軍等労働者に係る勤務時間、休暇、給与等の勤務条件については、労務提供契約において定められている。
また、駐留軍等労働者に係る労働契約の締結、給与の支払等の業務については、防衛省地方防衛局(以下「地方防衛局」という。)が行い、給与の計算、福利厚生等の業務については、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(以下「機構」という。)が行っている。
日米地位協定第24条第1項の規定によれば、日本国において在日米軍を維持することに伴う全ての経費は、同条第2項の規定に基づき日本国が負担すべきものを除くほか、日本国に負担をかけないでアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)が負担することとされている。そして、同項の規定によれば、日本国は、提供施設等を合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には提供施設等の所有者及び提供者に補償を行うこととされている。
これに基づき、日本国政府は、提供施設等として国有財産を無償で在日米軍に使用させたり、国有財産以外の提供施設等の所有者及び提供者に対する賃借料を負担したりしている。「施設の借料」(後出図表2参照。以下、本報告において、図表2において表示されている各経費を示す場合、かぎ括弧付きで表記する。)は、この賃借料が大半を占めている経費である。
一方、日米地位協定第24条第1項に基づき、駐留軍等労働者に対して支払う給与等(以下「労務費」という。)については、昭和52年度までは合衆国政府がその全額を負担してきた。
その後、日本国政府は、「労務費(福利費等)」(労務費のうち福利費、管理費、格差給(注1)、語学手当及び退職手当の一部)や、「提供施設整備(FIP)」(合衆国政府に負担をかけないで提供することとされている提供施設等の整備(Facilities Improvement Program)に係る経費)について自主的に負担することとした。
また、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(以下、累次締結された各協定を「特別協定(注2)」という。)を締結し、日本国政府は、「労務費(基本給等)」(労務費のうち調整手当(注3)等8手当、基本給、地域手当等の経費)や、在日米軍の駐留に要する「光熱水料等」、訓練移転費(注4)について負担することとなった。これらの「在日米軍駐留経費負担」(日本国政府による在日米軍の駐留に要する経費の負担)に係る経緯を時系列で示すと、図表1のとおりである。
図表1 在日米軍駐留経費負担に係る経緯
年度 | 経緯 |
---|---|
昭和
53年度 |
40年代後半以降の日本国での物価、賃金の高騰等の影響に伴う労務費等の上昇が在日米軍の維持に係る懸案になっていることを勘案して駐留軍等労働者の雇用の安定を図るために、労務費のうち福利費及び管理費について、合衆国に負担義務がある経費に該当しないものとして、自主的に負担することとした。 |
54年度 | 上記と同様の理由により、労務費のうち格差給、語学手当及び退職手当の一部並びに「提供施設整備(FIP)」に係る経費を自主的に負担することとした。 |
62年度 | 急激な円高及び合衆国の財政赤字等の経済情勢が安定的な雇用を損なうおそれがあることなどに留意して、特別協定の締結(62年6月)により、労務費のうち調整手当等8手当について2分の1に相当する額を限度として負担することとした。 |
63年度 | 62年の特別協定を改正(63年6月)することにより、調整手当等8手当の全額を負担することとした。 |
平成
3年度 |
特別協定の締結(3年4月)により、労務費のうち基本給、地域手当等及び「光熱水料等」を負担することとした。 |
8年度 |
特別協定の締結(7年12月)により、訓練移転費を負担することとした。 |
また、日本国政府は、在日米軍の行為等により生ずる障害を防止し又は軽減するために必要な措置を実施するための「周辺対策」に関する経費を負担するなどしてきている。
さらに、日本国政府は、平成8年度補正予算以降、「SACO関係経費」について、平成18年度補正予算以降、「米軍再編関係経費」について、それぞれ負担することとなった(両経費の内容については、後述1(3)ア及びイ参照)。
在日米軍の駐留等に関する経費については、毎年度、防衛省所管一般会計予算の(組織)防衛本省に、(項)在日米軍等駐留関連諸費、(項)独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構運営費及び(項)防衛力基盤整備費(平成26年度予算以前は(項)防衛施設安定運用関連諸費)の3項が計上されている。
そして、防衛省は、平成21年度以降毎年度、在日米軍の駐留等に関する経費に対する日本国政府の負担を国民に分かりやすく示すことを目的として、経費の構成を公表している(図表2参照)。この経費の構成においては、上記の3項から(項)防衛力基盤整備費に計上されている自衛隊施設の設置、運用に伴って生ずる経費(以下「自衛隊施設に関連する経費」という。)を除いた経費が示されている。そして、これらの経費は、平成29年度当初予算額で、「在日米軍の駐留に関連する経費」3836億円(うち「在日米軍駐留経費負担」1946億円)、「SACO関係経費」28億円及び「米軍再編関係経費」2011億円から成っている(以下、図表2で示されている経費のうち、防衛省所管の毎年度の経費を「在日米軍関係経費」という。21年度以降の在日米軍関係経費に係る当初予算額の推移については、別表1参照)。なお、図表2においては、他省庁所管の国有提供施設等所在市町村助成交付金等の他省庁所管の経費についても示されている。
図表2 在日米軍関係経費(防衛省資料を基に作成。平成29年度当初予算の例)
図表3 在日米軍の配置(平成28年度末現在)
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律」(昭和27年法律第110号)によれば、日本国政府は、日米地位協定を実施するために国有の財産である施設等を在日米軍の用に供する必要があるときは、無償で当該施設等の使用を許すことができるとされている。
また、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(昭和27年法律第140号)によれば、在日米軍の用に供するため民有地及び公有地(以下、これらを合わせて「民公有地」という。)等を必要とする場合において、当該民公有地等を在日米軍の用に供することが適正かつ合理的であるときは、使用又は収用することができることとされている。
そして、施設等を在日米軍の用に供するために、日米両政府は、日米合同委員会において施設等に係る工事の実施を合意(以下、この合意を「工事の実施に係る合意」という。)することとなっており、その後の施設等の在日米軍への受渡しまでの手続は次のとおり行われている。
国有財産法(昭和23年法律第73号)等によれば、国有財産は、国の事務、事業等の用に供することなどを目的とした行政財産と行政財産以外の普通財産に分類することとされている。
提供施設等は、国の事務、事業等の用に供するものではないことから、原則として国有財産のうち普通財産に分類されるが、行政財産に近い性格を有するものとされている。
そして、合衆国政府に対する国有財産の提供等に関する手続については、「在日合衆国軍隊の用に供する国有財産の取扱について」(平成13年財理第1322号)等により、おおむね次のとおり行うものとされている。すなわち、施設等の工事の実施に係る合意を経た後に、地方防衛局が当該施設等に係る工事を発注し、当該施設等の工事完了後、当該施設等を提供することについて現地の在日米軍と合意が整った後、地方防衛局から防衛省内部部局に対する上申を経て、当該施設等の合衆国政府への提供について、日米合同委員会において合意(以下、この合意を「施設等の提供のための合意」という。)することとされている。
施設等の提供のための合意の後、日本国政府は、合衆国政府と施設等の提供に係る協定を締結し、同協定の締結後、防衛省地方防衛局長及び地方防衛支局長(長崎防衛支局長を除く。以下、これらを合わせて「地方防衛局長等」という。)が財務省財務局長(以下「財務局長」という。)に対して施設等の引継ぎを行う。地方防衛局長等は、当該施設等について、在日米軍のための使用の承認を財務局に申請し、財務局長の承認を得ることとされている。また、他省が所管する国有財産についても、地方防衛局長等は、在日米軍のための使用の承認を当該財産を所管する部局等に申請することなどとされている。そして、上記の施設等に係る財産の異動及び現況を常に明らかにし、財産管理の適正を期さなければならないことなどとされている。
在日米軍の用に供する民公有地等については、「駐留軍の用に供する土地等の買収等の手続に関する訓令」(平成19年防衛省訓令第98号)によれば、①買収を条件として提供に応じたものに係る土地等の提供を決定したとき、②将来返還となった場合においても、防衛施設等の国の施設として活用が可能な土地等で買収することが妥当であると認められるときなどの場合は、地方防衛局長等が当該民公有地等を買収することとされているが、それ以外の場合は、借り上げることとされている。
そして、賃貸借契約の締結後、提供施設等として在日米軍の用に供されることとなっている。
日米地位協定第2条等の規定によれば、日本国政府が施設分科委員会に対して提供施設等の返還を要請した後、合衆国政府が提案する返還条件に係る調整や施設分科委員会から付託を受けた日米合同委員会において返還の合意(以下「提供施設等に係る返還の合意」という。)が行われることとされている。なお、当該提供施設等が民公有地等の場合は、所有者等から返還申請書の提出を受けた上で提供施設等の返還を要請することとなっている。
「駐留軍から返還された民公有土地等の引渡し等に関する訓令」(平成19年防衛省訓令第75号)によれば、日米合同委員会において提供施設等に係る返還の合意が行われたときは、地方防衛局が、当該民公有地等の土壌汚染の蓋然性及び実弾、演習弾等の危険物の有無の調査並びに発見された土壌汚染等の処理を行った上で、提供施設等として使用されていた当該民公有地等を所有者等に引き渡すこととされている。そして、返還から引渡しまでの間、当該民公有地等の使用ができなかったことによる損失については、所有者等にその期間における賃借料相当額(以下「補償金」という。)が支払われることとなっている。
また、提供施設等の多くが所在する沖縄県内の土地の返還に当たっては、「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」(平成7年法律第102号)によれば、日米合同委員会における当該土地に係る返還の合意が行われた場合、事前に沖縄県知事及び関係市町村の長の意見を聴取した上で、返還実施計画を定めることとされている。そして、当該土地の所有者等に対して、補償金が支払われるほか、引渡日以降、所有者等が当該土地を使用せず、かつ、収益していない場合に、所有者に対して3年間を限度として給付金が支給されることなどとされている。なお、沖縄県及び関係市町村は、返還後の跡地の有効かつ適切な利用を推進するため必要な跡地の利用に関する整備計画(以下「跡地利用計画」という。)の策定その他の措置を講ずるように努めなければならないこととされている。
沖縄に駐留する在日米軍(以下「在沖縄駐留米軍」という。)に関する沖縄県民の負担の軽減及び在日米軍の再編の取組に関する日米両政府における主な合意の内容は、次のとおりである。
在沖縄駐留米軍に関する沖縄県民の負担を軽減し、これにより日米同盟関係を強化することを目的として7年11月に設置された「沖縄に関する特別行動委員会」(Special Action Committee on Okinawa。以下「SACO」という。)は、8年12月に、日米両政府の合意に基づく報告書(以下、同時に公表された普天間飛行場に関する附属文書を含めて「SACO最終報告」という。)を公表した。
SACO最終報告には、①普天間飛行場に代わる提供施設等(以下「普天間飛行場代替施設」という。)の検討を行い、十分な代替施設が完成し運用可能になった後に同飛行場を返還すること、②北部訓練場等10提供施設等について条件が満たされた後に全部又は一部を返還すること、③在沖縄駐留米軍が実施する沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練を沖縄県外へ移転すること、④パラシュート降下訓練を伊江島補助飛行場へ移転すること、⑤普天間飛行場に配備されている空中給油機KC-130を岩国飛行場へ移駐すること、⑥嘉手納飛行場の海軍駐機場を同飛行場内の別の箇所に移転することなどの事項が盛り込まれた。
この結果、SACO最終報告に基づき返還されることとなる提供施設等の土地面積は、国有財産及び民公有地を合わせて計約50km2となり、昭和47年の沖縄の復帰から平成8年のSACO最終報告の公表までの24年間に返還された提供施設等の土地面積の累計約43km2を上回ることとなるとされている。
そして、これらの措置に必要となる経費については、同年12月の閣議決定「沖縄に関する特別行動委員会の最終報告に盛り込まれた措置の実施の促進について」において「経費面を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずること」とされ、「SACO関係経費」として平成8年度補正予算以降の予算に計上されている。
大量破壊兵器を用いたテロ攻撃等、従来にない脅威の増大等の世界情勢の変遷に伴い、合衆国軍隊の再編等の検討が進められて、在日米軍も再編されることとなった。そして、18年5月に、日米両政府は、在日米軍の再編に関して在日米軍との連携が期待される自衛隊を含めた具体的な計画について合意した上、「再編実施のための日米ロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)を公表した。
ロードマップには、①普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ区域に設置すること(SACO最終報告の事項①)、②普天間飛行場代替施設を設置するために、キャンプ・シュワブの施設及び隣接する水域の再編成等の必要な調整が行われること(以下「キャンプ・シュワブ再編成」という。)、③在沖縄米海兵隊の第3海兵機動展開部隊の要員約8,000名及び家族約9,000名を沖縄からグアムに移転すること(以下、この移転に係る一連の計画を「グアム移転計画」という。)、④キャンプ桑江等6提供施設等について、条件が満たされた後に全部又は一部を返還すること(SACO最終報告の事項①及び②の一部)、⑤航空自衛隊航空総隊司令部等を同自衛隊府中基地から横田飛行場に移転すること、⑥普天間飛行場に配備されている空中給油機KC-130を岩国飛行場へ移駐すること(SACO最終報告の事項⑤)、⑦空母艦載機部隊であるアメリカ合衆国海軍(以下「合衆国海軍」という。)の第5空母航空団を厚木飛行場から岩国飛行場に移駐することなどが盛り込まれた。
また、ロードマップによれば、これらの在日米軍の再編案の実施における施設整備に要する建設費等は、特に明示されない限り日本国政府が負担することとされた。一方、グアム移転計画に関しては、必要となる施設及び基盤の整備に係る費用の見積額102.7億米ドル(注5)のうち、日本国政府が60.9億米ドル(注6)を提供することとされ、そのうち日本国政府が分担する直接的な財政支援(以下「グアム移転資金」という。)は、28億米ドル(注7)を上限とすることとされた。その結果、残額の32.9億米ドル(注8)は出融資で対応することとなった。
そして、これらの措置に必要となる経費については、同年5月の閣議決定「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」において「経費面を含め、再編関連措置を的確かつ迅速に実施するための措置を講ずること」とされ、「米軍再編関係経費」として平成18年度補正予算以降の予算に計上されている。
なお、SACO最終報告に記載された事項のうち、ロードマップにおいて上書きされたSACO最終報告の①、②及び⑤の3事項については、在日米軍の再編に係る事業(以下「在日米軍再編事業」という。)の一部に引き継がれて取り組まれることとされた(以下、これらを合わせて「SACO再編引継3事項」という。)。
SACO最終報告に記載された主な事項についてその経緯を示すと、図表4のとおりである。
図表4 SACO最終報告に記載された主な事項の経緯
年月 | 経緯 |
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平成7年11月 | SACOの設置 |
8年12月 | SACO最終報告の取りまとめ及び公表
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9年7月 | SACO最終報告に基づく③の沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練の沖縄県外への移転の開始 |
12年7月 | SACO最終報告に基づく④の伊江島補助飛行場におけるパラシュート降下訓練の開始 |
18年5月 | ロードマップの取りまとめ及び公表SACO最終報告のうち、次のSACO再編引継3事項が在日米軍再編事業としてロードマップに引き継がれた。
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12月 | SACO最終報告に基づく②の一部(楚辺通信所及び読谷補助飛行場の全面返還)の実施 |
23年7月 | SACO最終報告に基づく②の一部(ギンバル訓練場の全面返還)の実施 |
26年8月 | SACO最終報告及びSACO最終報告を引き継いだロードマップに基づく⑤普天間飛行場の空中給油機KC-130の岩国飛行場への移駐の完了 |
28年12月 | SACO最終報告に基づく②の一部(北部訓練場の過半の返還)の実施 |
29年3月 |
SACO最終報告に基づく⑥嘉手納飛行場における海軍駐機場の移転の完了 |
ロードマップを受け、21年2月に、日米両政府は、グアム移転計画に係る日米両政府が分担する財源等に関して、「第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(以下「グアム協定」という。)に署名した。グアム協定第1条第2項の規定に基づき、日本国政府によるグアム移転計画に係る各年度のグアム移転資金の提供額については、日本国の各会計年度において日米両政府が締結する別途の取極(交換公文)に記載されること、グアム協定第4条の規定に基づき、合衆国政府は、日本国政府が提供したグアム移転資金及び当該資金から生じた利子を、グアムにおける施設等を整備する移転のための事業にのみ使用することとされた。また、グアム協定第7条の規定に基づき、①グアム移転資金から日本国の同一の会計年度中に拠出された全ての個別の事業に係る全ての契約終了後に未使用残額がある場合、合衆国政府は、日本国政府に対して未使用残額を返還すること、②合衆国政府は、日本国政府に対して、毎月、グアム移転資金の提供を受けた合衆国政府財務省勘定の取引に関する報告書(以下「グアム移転資金取引報告」という。)を提出することなどとされた。
その後、24年4月の日米安全保障協議委員会(注9)の共同発表において、約9,000人の在沖縄米海兵隊の要員がその家族とともに沖縄から日本国外に移転すること、日本国政府が負担することとされた経費のうち出融資を利用しないことなどが確認され、グアム移転計画が見直された。これらを踏まえ、日米両政府は、25年10月に、①グアム移転の施設及び基盤の整備に係る費用の暫定的な見積額を合衆国の2012会計年度米ドル(注10)で86億米ドル(注11)とし、このうち日本国政府が分担するグアム移転資金の上限額を合衆国の2008会計年度米ドルで28億米ドルとすること、②グアム移転資金の使用目的に、北マリアナ諸島連邦における施設及び基盤の整備を追加すること(以下、米海兵隊の第3海兵機動展開部隊等のグアム移転計画に係る一連の事業を「グアム移転事業」という。)などのグアム協定を改正する議定書に署名した。
ロードマップにおける在沖縄駐留米軍の提供施設等の統合を具体的に実施するために、日米両政府は、25年4月に、その詳細な計画について合意した上で、「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」(以下「統合計画」という。)を公表した。
統合計画には、在沖縄駐留米軍のうち、移設の対象とする在日米軍の提供施設等名、移設先、移設手順、移設後に不要となる土地等の返還条件、返還目標年度等が記載されている。これらのうち移設手順には、日米合同委員会による合意、当該土地に対する文化財の発掘調査、当該施設等の移設工事等の返還に至るまでの工程が記載されている。