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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 平成30年12月

中心市街地の活性化に関する施策に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況

(1) 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制

ア 国における施策の実施及び支援の体制
(ア) 中心市街地活性化本部の会議の開催状況等

第1の2(2)イのとおり、国は、中心市街地の活性化に関する施策を総合的かつ効果的に推進するために、18年8月に、内閣に内閣総理大臣を本部長とする中心市街地活性化本部を設置している。そして、同本部と内閣総理大臣を本部長とした都市再生本部、構造改革特別区域推進本部、地域再生本部及び総合特別区域推進本部は、地域から見て分かりやすく、より効果的な取組を実施するために、19年10月の閣議決定において、特段の事情がない限り地域活性化統合本部会合として合同で開催することとされた(総合特別区域推進本部は24年7月の閣議決定の一部改正により追加された。)。中心市街地活性化本部の会議及び地域活性化統合本部会合の28年度末までの開催状況は、図表2-1-1のとおり、計11回となっている。

図表2-1-1 中心市街地活性化本部の会議及び地域活性化統合本部会合の開催状況

(単位:回)
年度
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
開催回数 1 3 2 1 0 1 0 0 2 0 1 11

(注) 平成19年度から21年度までは、地域活性化統合本部会合の開催状況を示している。

(イ) 内閣府地方創生推進事務局

国は、各府省庁の縦割りを排し、ワンストップで施策を推進するために、基本計画の作成から認定基本計画の実施までを内閣府が一元的に支援することとしている。このため、地方支分部局を含めた各府省庁との緊密な連携の下、一元的な窓口として内閣府地方創生推進事務局を設け、基本計画の作成や認定申請等について事前相談を受け付けている。

内閣府地方創生推進事務局における業務は、一元的な対応をより効率化するために都道府県等ごとに担当職員を決めて行われている。28年度においては、内閣府地方創生推進事務局の職員のうち、10人が中心市街地の活性化に係る業務を行っている。

(ウ) 国の支援措置

a 国の支援措置の概要及び所管府省庁

基本方針等によれば、国は、中心市街地の活性化を効果的かつ効率的に推進するために、認定基本計画に基づく取組に対して、地域の幅広い選択が可能となるよう、様々な支援措置の整備を行うこととされている。これらの支援措置は、第1の2(3)オのとおり、法定措置、拡大支援措置、通常支援措置及びその他の措置に区分されている。

このほか、市町村では、中心市街地の活性化を図るために、8府省庁(注6)が国の支援措置として示している事業以外の独自の事業についても認定基本計画に盛り込み、実施している。

(注6)
8府省庁  内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省

b 各支援措置の継続期間

基本方針等では、中心市街地の活性化を実現するための取組期間を計画期間として定めなければならないこととなっていることから、市町村は、おおむね5年程度の実施期間とされている基本計画について、基本計画期間中のどの時点でどの支援措置を活用するのが効果的なものとなるか検討した上で基本計画を作成することになる。そこで、市町村が計画的かつ効果的に支援措置を活用しやすいように、各府省庁の支援措置が継続して基本方針等に設定されているかみたところ、図表2-1-2のとおり、各年度において、支援措置の名称や内容を修正しながらも5年以上継続して設定されている支援措置が6省で95措置見受けられた。なお、所管府省の事業の見直しや予算上の制約等により、単年度のみの実施となり継続して設定されていない支援措置が4府省で10措置見受けられた。

図表2-1-2 支援措置の継続状況

(単位:措置)
府省名
区分
内閣府 総務省 文部科学省 厚生労働省 農林水産省 経済産業省 国土交通省
5年以上継続している支援措置数 0 2 3 7 4 20 59 95
単年度のみの実施となり継続していない支援措置数 2 0 1 0 2 5 0 10
イ 都道府県における施策の実施及び支援の体制

中心市街地活性化法によれば、都道府県は、市町村に対して認定基本計画の円滑かつ確実な実施に関して必要な助言をすることができるとされている。そして、基本方針等によれば、都道府県は、中心市街地の活性化の重要性に鑑み、必要な体制整備を行い、広域的な観点から市町村が作成する基本計画に基づく取組の効果が広範囲に及ぶよう市町村への適切な支援や助言を行うことが望ましいとされている。

会計実地検査を行った24道県の市町村に対する助言の実施状況をみたところ、24道県のうち8道県においては、協議会の協議の場とは別に、基本計画に関する市からの相談に対応したり、道県の要望等について意見を述べたりなどして、市が基本計画の認定を申請する前に助言を行っていた。一方、中心市街地活性化法に基づいて認定基本計画の送付を市から受けた後に認定基本計画の円滑かつ確実な実施に関して助言を行っていた道県は見受けられなかった。

また、24道県の中心市街地の活性化のための組織編成等の実施体制については、市町村への支援や助言を行うために中心市街地の活性化を担当する関係部局を統括する組織を設置しているのは22道県、中心市街地の活性化を担当する関係部局間の連絡調整等を行うための庁内の連絡会議やプロジェクトチーム等(以下「都道府県連絡調整会議」という。)を設置しているのは15道県となっていた。

さらに、15道県における18年度以降の都道府県連絡調整会議の開催状況についてみたところ、図表2-1-3のとおり、全く開催していなかったのは、18年度においては開催状況が不明であった4道県を除き2県であったのに対して、中心市街地活性化法が改正された26年度においては8道県、28年度においては12道県となっており、開催している道県は減少していた。

図表2-1-3 都道府県連絡調整会議の開催状況

(単位:道、県)
開催回数
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
3回 1 2 1 1 0 0 0 0 0 0 0
2回 3 2 2 2 3 2 1 2 2 2 1
1回 5 4 6 3 3 3 4 5 5 2 2
0回 2 4 3 6 6 8 8 7 8 11 12
平均 1.2回 1.1回 1.0回 0.8回 0.7回 0.5回 0.4回 0.6回 0.6回 0.4回 0.2回
不明 4 3 3 3 3 2 2 1 0 0 0

(注) 平均は、開催状況が不明であった道県を除いて算出している。

ウ 市町村における施策の実施体制
(ア) 市町村の推進体制の整備

多数の認定事業を実施する場合には、中活課室のほか、認定事業の実施を担当する課室(以下「事業実施課室」という。)が多数にわたることとなる。そして、基本方針等によれば、認定事業を円滑かつ確実に行うためには、基本計画を作成する段階から市町村内の関係部局間で情報交換等を行い連携を図ることが必要とされ、この連携は、市町村の関係部局間のみならず、民間事業者も含めて計画期間にかかわらず継続的に行っていくことが必要とされている。

a 中活課室の設置状況等

会計実地検査を行った90市の134計画(同一の市が複数期に実施している認定基本計画については、それぞれ1計画と整理している。以下同じ。)に係る中活課室の設置状況をみたところ、中心市街地の活性化を専門的に担当する課室が必要であるとの判断から認定時点で専担課室を設置していたのは、44市の61計画となっており、54市の73計画では人的体制を整えることなどが困難であるなどとして設置されていなかった(注7)

(注7)
複数期の認定基本計画を実施している市では、I期計画では専担課室を設置していないが、II期計画では専担課室を設置している場合があるため、専担課室を設置している市と設置していない市の合計は90市とならない。

そして、基本計画の認定時点で専担課室を設置していた44市の61計画について、28年度末における専担課室の存続状況をみたところ、図表2-1-4のとおり、26市の42計画では専担課室を存続して業務を行っており、11市の11計画では認定基本計画期間中に専担課室を廃止し、兼務課室に業務を引き継いでいた。一方、8市の8計画は認定基本計画期間終了後に専担課室が廃止されていた。

図表2-1-4 平成28年度末の専担課室の存続状況

存続状況 市数 計画
計画数 割合(%)
廃止している 認定基本計画期間中に廃止 11 11 18.0
認定基本計画期間終了後に廃止 8 8 13.1
小計 18 19 31.1
廃止していない 26 42 68.8
44 61
  • 注(1) 61計画を対象としている。
  • 注(2) 認定基本計画期間中に廃止されていた11計画は、認定基本計画期間中に業務が兼務課室に引き継がれている。
  • 注(3) I期計画の認定基本計画期間終了後のII期計画の認定基本計画期間中に専担課室を廃止した市が1市あるため、廃止している小計は18市となる。

また、専担課室を設置していない前記の54市について、28年度末における兼務状況をみたところ、都市機能の増進が重要なことなどから市街地の整備改善事業担当課が兼務している市が14市、経済活力の向上が重要なことなどから商業の活性化事業担当課が兼務している市が30市、両者で兼務している市が7市となっており、3市についてはその後の必要性に伴い認定後に専担課室を設置していた。また、複数課が兼務課室となっている市の中には、4課室が兼務している市も見受けられた。

b 中活課室の職員数

認定基本計画では広範な分野にわたって認定事業が多数位置付けられていることから、認定事業に関係する事業実施課室や職員が多く、これらの事業実施課室等を含めて市町村の関係部局間における連携が必要である。そして、市では、中心市街地の活性化に係る業務を担当する関係部局を統括するために、中活課室を設置して職員を配置している。

中活課室には、専担課室と兼務課室とがあることから、90市の134計画について認定時点の1計画当たりの専担課室と兼務課室のそれぞれの職員数をみたところ、図表2-1-5のとおり、44市の61計画に係る専担課室では3人から4人の計画が21計画(61計画に占める割合34.4%)と最も多く、次いで5人から6人の計画及び7人から8人の計画がそれぞれ11計画(同18.0%)となっており、平均すると1計画当たり6.0人となっていたのに対して、54市の73計画に係る兼務課室では1人から2人の計画及び3人から4人の計画がそれぞれ27計画(73計画に占める割合36.9%)と最も多く、平均すると1計画当たり3.9人となっていた。

図表2-1-5

図表2-1-5 画像

c 事業実施課室の課室数及び職員数

90市の134計画の認定時点の1計画当たりの事業実施課室数や職員数をみたところ、課室数については、図表2-1-6のとおり、1計画当たりの認定事業に関わった課室数は、11課室から15課室までが51計画(134計画に占める割合38.0%)と最も多く、次いで6課室から10課室までが41計画(同30.5%)となっており、平均すると1計画当たり13.1課室となっていた。職員数については、図表2-1-7のとおり、1計画当たりの認定事業に携わった職員数は、21人から30人までが35計画(125計画に占める割合28.0%)と最も多く、次いで11人から20人までが24計画(同19.2%)となっており、平均すると1計画当たり41.0人となっていた。

図表2-1-6 事業実施課室数別の計画数

図表2-1-6 事業実施課室数別の計画数 画像

図表2-1-7 事業実施課室職員数別の計画数

図表2-1-7 事業実施課室職員数別の計画数 画像

(イ) 協議会の人的体制等

協議会は、第1の2(3)エのとおり、市町村が作成しようとする基本計画や認定基本計画に基づく事業の実施に関して必要な事項その他中心市街地の活性化の総合的かつ一体的な推進に関して必要な事項を協議する重要な場であることから、都市機能の増進を総合的に推進するための調整を図るまちづくり会社等、経済活力の向上を総合的に推進するための調整を図る商工会議所等、認定事業を実施する事業者等、認定基本計画に基づく事業の実施に関して密接な関係を有する者、当該中心市街地をその区域に含む市町村等の多様な主体が構成員として参加している。特に、まちづくり会社は、認定基本計画において、自らイベント等の認定事業を数多く実施するなど中心市街地の活性化に寄与する重要な構成員となっている。そして、内閣府は、認定基本計画期間終了後についても、中心市街地の活性化の取組を行う際には協議会が継続されることが望ましいとしている。

また、基本方針等によれば、協議会は、意見調整を円滑に進める観点から、まちづくりについて専門的なノウハウを有するタウンマネージャーを配置して組織の強化を図るよう努めることとされ、さらに、部会等の専門的事項を検討する場を設けて、積極的に議論を行える環境づくりをすることが協議会を実質的な議論の場として活用するために有効であるとされている。

a 人的体制

(a) 協議会の構成員の種類等

90市の134計画に係る協議会の構成員数をみたところ、最多51者、最少10者、平均すると25.4者となっていた。そして、構成員の種類ごとの参加状況は、図表2-1-8のとおり、共同で協議会を設立できるとされているまちづくり会社や商工会又は商工会議所以外に、市もほとんどが協議会に参加していて、最も多い商工会又は商工会議所は90市の134計画、市は89市の133計画に係る協議会に参加していた。

図表2-1-8 協議会の構成員の種類ごとの参加状況

構成員の種類 中心市街地活性化法の根拠条項 構成員の参加状況
市数
(注)
計画数
(注)
中心市街地整備推進機構 15条1項1号イ 23 32
まちづくり会社 15条1項1号ロ 67 102
商工会又は商工会議所 15条1項2号イ 90 134
商業等の活性化を図る事業活動を行うことを目的として設立された一般社団法人等又は特定会社 15条1項2号ロ 7 11
認定事業を実施しようとする事業者 15条4項1号 72 106
認定基本計画及びその実施に関し密接な関係を有する者 15条4項2号 79 115
15条4項3号 89 133
独立行政法人中小企業基盤整備機構 15条7項 22 35
その他 15条8項 77 108

(注) 90市の134計画のうち該当する構成員が参加している市数、計画数である。

協議会の事務局は、商工会又は商工会議所やまちづくり会社が単独で担っているものが、それぞれ65市の93計画、12市の22計画、商工会又は商工会議所やまちづくり会社等が共同で事務局を担っているものが10市の16計画となっており、商工会又は商工会議所やまちづくり会社が協議会の事務局を担っているのは87市の131計画となっていた。

また、90市の134計画に係る協議会における部会等の設置状況をみたところ、 60市の80計画に係る協議会において部会等が設置されていたのに対して、42市の54計画に係る協議会では部会等は設置されていなかった。

上記に関して、認定基本計画期間中に協議会の部会等において積極的な議論が行われていた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例1> 協議会の部会等における積極的な議論が行われていた事例

計画期間 摘要
平成20年11月から
26年3月まで
栃木県大田原市
空き店舗活用研究会等8部会

大田原市の認定基本計画等によると、同市は、人口78,360人(平成20年4月)の都市であり、同市の中心市街地が位置する大田原地区は、交通機関の発達や市民の生活様式の変化等に伴い、人口や商業施設の減少等の中心市街地の空洞化が進んでおり、同市は、中心市街地の衰退は市域全体の衰退にもつながるとしている。

そこで、同市は、基本計画(20年11月から26年3月まで)を作成し、中心市街地活性化について、「多様な市民活動の更なる集積と発信によるにぎわいの創出」「「ひとにやさしい」街なか居住の推進」及び「地域特性を踏まえた商業の振興」を目標として掲げ、39事業(事業費134億円、国庫負担額52億円)を実施している。

同市の協議会は、事業の実施に当たって、部会等の専門的事項を検討する場を設け、積極的に議論を行える環境づくりをすることが協議会を実質的な議論の場として活用するために有効であるとされていることを踏まえて、中心市街地の活性化を達成するために基本計画の作成段階から各事業に密接に関係する市、事業者、地権者、市民等による部会を設置して事業の検討を行っていた。

そして、上記の部会による検討会は、基本計画の作成期間中の19年4月から20年11月までの間に50回、認定基本計画期間中の20年11月から26年3月までの間に132回実施されていた。このような中、部会の一つである空き店舗活用研究会は、空き店舗解消のための空き店舗流動化対策事業の実施前から貸し手と借り手のマッチングシステムの調査や、空き店舗を活用して創業する者の支援の取組を行っていて、当該事業による空き店舗を活用した店舗の開店数は、当初の目標を上回る結果となっていた。

(b) タウンマネージャーの配置状況

90市の134計画に係るタウンマネージャーの配置状況をみたところ、タウンマネージャーが配置されていたのは39市の51計画(134計画に占める割合38.0%)で67人となっており、残りの56市の83計画(同61.9%)では配置されていなかった。タウンマネージャーを配置していない理由は、図表2-1-9のとおり、タウンマネージャーを配置する必要がないとしているものが27市の40計画と最も多く、次いでタウンマネージャーに適した人材が見つからないとしているものが17市の24計画となっていた。

図表2-1-9 タウンマネージャーを配置していない理由

図表2-1-9 タウンマネージャーを配置していない理由 画像

タウンマネージャーを配置している39市の51計画のうち、6市の7計画(51計画に占める割合13.7%)は、タウンマネージャーの募集に当たって、タウンマネージャーの実務経験やまちづくりに関する専門的知見等の採用の条件を明確にしている一方、33市の44計画(同86.2%)は、必要な資格や要件を設定しないで、どのような業務や知識に精通したタウンマネージャーが必要なのか明確にしないままタウンマネージャーを募集している状況となっていた。

そして、上記33市の44計画に係る60人のタウンマネージャーの実務経験の有無をみたところ、実務経験を有している者の割合は50.0%となっていた。

また、前記39市の51計画に係る協議会においては、関連団体との意見調整等認定事業への指導や助言のほか、中心市街地の活性化のための企画・立案、情報発信等の多様な業務のためにタウンマネージャーを配置しているとしているが、これらの中には、タウンマネージャーとしての実務経験が乏しかったことなどから、議案の追認行為等を行う程度であり、協議会において、認定基本計画期間中に、タウンマネージャーの配置を取りやめていて、タウンマネージャーの配置による組織の強化が十分図られていない状況が見受けられた。

上記の事態に関して、認定基本計画期間中に、タウンマネージャーの配置を取りやめている事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 認定基本計画期間中に、タウンマネージャーの配置を取りやめている事例

計画期間 摘要
平成20年7月から
25年3月まで
高知県四万十市
定期フォローアップ 22年3月、23年4月、24年3月
最終フォローアップ 25年6月
タウンマネージャーの配置時期 20年7月から22年3月まで

四万十市の認定基本計画等によると、同市は、日本最後の清流として知られる四万十川の流域に位置する人口33,400人(平成19年)の都市である。同市は、中心市街地が少子高齢化や郊外部への市街地拡大による空き店舗の増加等、にぎわいの低下により危機に直面しているとしている。

そこで、同市は、基本計画(20年7月から25年3月まで)を作成し、「清流に笑顔がかよう小京都中村」という基本コンセプトの下、「にぎわいと回遊性のあるまちづくり」「安心・安全 住みやすいまちづくり」及び「商店街の再生による魅力あるまちづくり」を目標として、28事業(事業費63億円、国庫負担額11億円)を実施している。

同市は、基本計画の作成に当たり、基本計画庁内策定委員会の下部組織である商工会議所や各商店街振興組合等で組織した民間事業者作業部会や協議会での協議の結果、認定事業の実施に当たっては、専門的な知見に基づく意見が必要であるとして、タウンマネージャーを経済産業省の国庫補助事業を活用して協議会に配置することとしていた。しかし、協議会は、タウンマネージャーの募集に当たり、業務内容は示していたものの、採用のための資格や要件を設定しないで募集を行っていた。

また、協議会は、当該タウンマネージャーが22年度以降に行う業務内容が補助金の公募要領で定める中心市街地の活性化に関する専門的な知見に基づく業務に当たらないなどと判断し、認定基本計画期間中の22年3月の当該タウンマネージャーの任期終了後更新は行わず、タウンマネージャーの新規の募集や活用も行っていなかった。

そして、計画どおり実施できなかった認定事業もあり、同市は、最終フォローアップにおいて、中心市街地の活性化は図られなかったとしていた。

(c) まちづくり会社

前記のとおり、まちづくり会社は協議会の重要な構成員となっている。一方、まちづくり会社の経営は市町村から独立した主体として自らの主体的な判断と責任に基づいて行われるべきであるが、まちづくり会社が中心市街地の活性化を図る上で重要な役割を果たしている公益性に鑑み、市町村において、財務状況等を適時適切に把握しておく必要がある。

そこで、90市の134計画の認定時点において、まちづくり会社がどの程度協議会の構成員となっているか、また、協議会の構成員として、重要な役割を継続して果たすことができるよう健全な運営がなされているかみたところ、67市の102計画の協議会で111まちづくり会社が構成員となっており、このうち28年度末までに認定基本計画期間が終了している58市の63計画の65まちづくり会社に係る認定基本計画期間終了時の財務状況は、31まちづくり会社において繰越利益剰余金がマイナスとなっており、このうち5まちづくり会社は債務超過となっていた。このような中、18年度から28年度末までの間に破綻したまちづくり会社が3社あり、このうち2まちづくり会社は認定基本計画期間中に破綻していた。

上記の事態に関して、認定基本計画期間中において、まちづくり会社が破綻した事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 認定基本計画期間中において、まちづくり会社が破綻していた事例

計画期間 摘要
平成20年7月から
25年3月まで
高知県四万十市
定期フォローアップ 22年3月、23年4月、24年3月
最終フォローアップ 25年6月
タウンマネージャーの配置時期 20年7月から22年3月まで

宝塚市の認定基本計画等によると、同市は、阪神間に通勤又は通学する人々が多く居住するベッドタウンであり、鉄道駅周辺に人々の生活に必要な商業施設等が立地して、鉄道駅を核とする生活圏を複数持つ都市構造を形成しており、平成19年の市域全体の人口は22万人となっている。同市の中心市街地では、昭和62年に完成した商業施設「アピア」がしゅん工後しばらくの間は広い圏域から多くの顧客を集めたものの、平成18年には大型核テナントが撤退して大規模な空き床が発生するなど、商業・サービス機能が低下していた。

そこで、同市は、認定基本計画(20年3月から24年3月まで)において、「商業、サービスが充実した「暮らしやすい」コンパクトなまち」等を目標に中心市街地の活性化に取り組むこととし、宝塚まちづくり株式会社(以下「会社」という。)を中心市街地の活性化の担い手として主要な役割を果たすまちづくり会社として位置付け、アピアテナントミックス事業等の5事業を実施するなどして、商業・サービス機能の充実を図ることとしていた。

しかし、会社は認定基本計画開始後1年も経過しない21年2月に破産手続開始の決定を受け、これにより、同市は、出資金8500万円のほか、会社が融資を受けるに当たって同市が民間金融機関と締結した損失補償契約に基づく損失補償額6億0413万余円、計6億8913万余円の財政負担をすることとなった。

そして、同市長が、会社の破綻原因を究明し、アピアの再生方策に関する提言を行うことを目的として設置した調査専門委員会による調査報告書(21年12月)によると、主な破綻原因として、会社に対しては、事業計画等を慎重に検討するための体制が存在せず、計画の途中段階で事業の中止を含めた見直しをすべき事態が発生したにもかかわらず、見直しが行われなかったこと、同市に対しては、会社の事業計画等の検討が十分でないまま会社への出資を決定し、その後も、各局面における事業計画の監査、指導等が十分でなかったことなどが指摘された。

また、同市に保存されていた関係書類等により、会社のアピアテナントミックス事業に対する同市の検討状況等についてみたところ、基本計画作成時の市連絡調整会議において、事業計画や資金計画、財務状況等の情報を関係部局間で十分に共有するなどしていなかったり、認定基本計画期間中は一度も市連絡調整会議が開催されていなかったりしているなど、会社の財務状況等について適時適切な把握が行われていなかった。

b 協議会の開催状況

90市の134計画に係る協議会の1計画ごとの期間別平均開催回数をみたところ、図表2-1-10のとおり、基本計画の作成期間中は4.4回、認定基本計画期間中は8.2回であるのに対して、認定基本計画期間終了後は2.9回と活動実績に減少傾向が見受けられた。

図表2-1-10 協議会の開催状況

 画像

認定基本計画期間終了後においても中心市街地の活性化への取組について継続して意見を述べることが必要であるなどとして、認定基本計画期間終了後も開催されている協議会がある一方、認定基本計画期間終了時までの活動を想定していたり、協議会の構成員を招集する調整等が困難であったりしていたため、18市の18計画(72計画に占める割合25.0%)において、認定基本計画期間終了後に協議会が1回も開催されていなかった。

(ウ) 市連絡調整会議の設置及び開催状況

第1の2(3)ウのとおり、基本方針等によれば、市町村の関係部局間の連携を密に図ることが必要とされている。

そこで、90市の134計画に係る市連絡調整会議の設置状況をみたところ、67市の99計画(134計画に占める割合73.8%)において基本計画認定時点で設置していたが、24市の35計画(同26.1%)においては設置されていなかった。

そして、上記67市の99計画に係る市連絡調整会議についてみると、事業実施課室の全てが構成員となっているのは49市の68計画、一部の課室が構成員となっているのは20市の31計画となっており、また、特別交付税の担当部局である財政担当課が構成員となっているのは53市の74計画(99計画に占める割合74.7%)、構成員となっていないのは16市の25計画(同25.2%)となっていた。

基本計画認定時点で市連絡調整会議を設置していた67市の99計画について、1計画当たりの期間別の平均開催回数をみたところ、図表2-1-11のとおり、基本計画の作成期間中は平均6.6回、認定基本計画期間中は平均5.1回、認定基本計画期間終了後は平均0.7回と減少傾向が見受けられた。

図表2-1-11 市連絡調整会議の開催状況

図表2-1-11 市連絡調整会議の開催状況 画像

また、市連絡調整会議の活動を基本計画の作成までと想定していたり、中心市街地の活性化の推進は中活課室が行えば十分と考えていたりしていて、30市の41計画において認定基本計画期間中に市連絡調整会議を1回も開催しておらず、38市の40計画において認定基本計画期間終了後に市連絡調整会議を1回も開催していなかった。

エ 国、都道府県及び市町村間の連携状況

国は、第1の2(3)オのとおり、(ア)法定措置、(イ)拡大支援措置、(ウ)通常支援措置及び(エ)その他の措置として多数の支援措置を設定している。市町村は、これら多数の支援措置の中から、それぞれの中心市街地の活性化に資する支援措置を選択して実施することとなるが、認定事業を効率的かつ効果的に実施するためには、支援措置の内容、活用方法、活用事例等を十分理解することが必要であり、そのためには、国及び都道府県から必要な情報の提供を受けることが重要となる。そして、様々な認定事業の実施に当たっては、中活課室ばかりでなく市町村の多くの事業実施課室及び認定事業を所掌する国や都道府県の担当部局が関係することから、基本方針等においても、中心市街地の活性化を図るには、国、地方公共団体等における連携が重要であるとしている。

基本方針等によると、基本計画を作成する際は、市町村が定める都市計画等との適合又は調和の確認が必要であり、また、法定措置や拡大支援措置は、基本計画が認定される際に内閣総理大臣が関係行政機関の長の同意を得た上で措置されることになっている。

そこで、市町村が取り組んでいる各種計画との適合又は調和については、市町村が「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号)に基づき、旅客施設を中心とした地区や高齢者、障害者等が利用する施設が集まった地区について作成している「移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想」(以下「バリアフリー基本構想」という。)に関して、また、法定措置や拡大支援措置の実施については、活用実績が多く、かつ、認定基本計画において位置付けた市町村のみ活用できる支援措置のうち、①大店立地法の特例措置及び②中心市街地の活性化のために行うソフト事業の経費の一部に特別交付税を交付する拡大支援措置それぞれに関して、関係部局間における連携状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) バリアフリー化に係る連携状況

市町村は、バリアフリー基本構想を作成し、高齢者等が日常生活等において利用する公共施設、商業施設等の生活関連施設間の道路等(以下「生活関連道路等」という。)のバリアフリー化を図ることにより、高齢者等の移動等の円滑化を通じて誰もが暮らしやすいまちづくりに資することとしている。

バリアフリー基本構想に基づく中心市街地区域内の生活関連道路等においてバリアフリー化を図る事業(以下「バリアフリー事業」という。)を実施した場合、中心市街地区域内の通行量の増加等に寄与することから、中活課室は、基本計画において通行量の増加等を目標にしている場合、これに寄与するバリアフリー事業の基本計画への記載の要否の検討を行っているが、実施箇所等のバリアフリー事業の具体的な内容については、中活課室がバリアフリー事業の担当課室でない場合には把握できないことになる。

そこで、バリアフリー基本構想が作成されている41市の62計画におけるバリアフリー事業の実施状況をみたところ、図表2-1-12のとおり、38市の59計画に係る中心市街地区域内における生活関連道路等716か所のうち、28年度末までにバリアフリー事業が完了していたのは349か所となっており、25市の39計画における354か所(716か所に占める割合49.4%)ではバリアフリー事業が完了していなかった。

バリアフリー基本構想は、生活関連道路等でバリアフリー化を必要とする箇所を示しているが、全ての箇所についてバリアフリー化の具体的な実施時期を定めているものではないことから、基本計画作成時点においては事業実施の予定が具体化していないものも含まれていて、28年度末時点においても事業実施の予定が具体化していないものが354か所のうち150か所となっていた。そして、認定基本計画に記載されている331か所についても184か所が未完了となっていた。

しかし、歩道の設置、拡幅等が行われるバリアフリー事業を基本計画に位置付ける場合、できるだけ早期の事業実施によって、その効果が認定基本計画期間中に発現することが重要であることから、バリアフリー事業を基本計画に位置付けるに当たっては、バリアフリー事業の担当課室と十分連携して、事業の具体的な実施時期等について検討した上で取り組む必要があると認められた。

図表2-1-12 バリアフリー事業の実施状況

バリアフリー事業の実施状況 市数 計画数 生活関連道路等
合計
(箇所数)
構成比率
(%)
認定基本計画へ記載
(箇所数)
認定基本計画へ未記載
(箇所数)
事業完了 35 54 349 48.7 147 202
事業未完了 25 39 354
(150)
49.4 184 170
その他 2 3 13 1.8 0 13
image 38 59 716 /  331 385
  • 注(1) 38市の59計画に係る生活関連道路等716か所を対象としている。
  • 注(2) ( )内の数字は、平成28年度末時点で事業実施の予定が具体化していない箇所数である。
  • 注(3) その他の合計13か所は、市がバリアフリー事業の実施状況を把握していないなどの箇所数である。
(イ) 大店立地法の特例措置に係る連携状況

大店立地法の特例措置は、認定基本計画を実施する市町村の中心市街地区域の一部又は全部において、図表2-1-13のとおり、市町村が特例区域の必要性を検討した上で都道府県に要請し、都道府県が特例区域を設定した場合、それ以降、特例区域に大型店の新設を行おうとする者に対して、大店立地法における新設の届出を不要として、中心市街地における大型店の立地を促進し中心市街地の商業等の活性化を図るものである。

90市の134計画について、大店立地法の特例措置の活用状況をみたところ、25市では活用していたものの、65市では活用していなかった。

大店立地法の特例措置は、市町村からの要請を受け、都道府県において区域を定めていて、都道府県において市町村に対して助言等が可能である。

そこで、大店立地法の特例措置を活用していなかった65市が所在する21道県において、基本計画の作成時に道県が市町村に対して、文書の発出や説明会の開催又は協議会の場を通じて、大店立地法の特例措置について、制度内容、大店立地法の特例措置の実施による中心市街地の活性化への影響、管内及び他都道府県の市町村における活用状況等の情報提供を行うなどしているかをみたところ、情報提供等を実施していたのは21道県中6県となっており、15道県においては情報提供等を実施していなかった。

図表2-1-13 大型店の開店までの流れ

図表2-1-13 大型店の開店までの流れ 画像

(ウ) 中活ソフト特別交付税の交付に係る連携状況等

a 中活ソフト特別交付税の概要

国は、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号)等に基づき、認定基本計画に位置付けられた空き店舗対策、お祭りその他イベント等のソフト事業(商店街振興組合、市民団体、第三セクター等が実施するものに対して助成する場合を含む。)に対して市町村が一般財源の予算措置をしている場合に特別交付税を交付している(以下、この特別交付税を「中活ソフト特別交付税」という。)。

そして、毎年度、都道府県に「中心市街地再活性化対策のために実施するイベント等のソフト事業の実施状況について」(総務省自治行政局地域振興室長通知)を発して中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業や留意事項等を通知している。

同通知によれば、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業は、市町村の負担する額(一般財源所要額)が100万円を超えるもので、図表2-1-14のいずれかに該当するものとされている。ただし、一般財源所要額が1億円を超える事業については、当該事業に要する経費は1億円とするとされ、また、国庫補助金、交付金等(地域活性化交付金を除く。)を伴う事業及び過疎対策事業債の充当予定事業は対象とならないとされている。

図表2-1-14 中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業

番号 事業の内容
市町村全域又はより広域的な範囲を対象としたイベント事業で、その内容、規模等に鑑みて中心市街地の活性化を主目的とするイベント事業(商業ベースのものを除く。)の実施又は助成
市町村全域又はより広域的な範囲の住民を対象とした中心市街地活性化に関する講演会、シンポジウム等の事業の実施又は助成
中心市街地活性化のためのまちづくりリーダー等の中心市街地活性化のための後継者育成研修事業への助成
基本計画に位置付けられた事業の具体化に必要な詳細調査、資金計画、事業性評価、合意形成等の事業
中心市街地における空き店舗対策事業
その他中心市街地の再活性化のために特に重要なソフト事業

都道府県の交付税担当課は、市町村の財政担当課に算定対象となるソフト事業の有無を照会し、市町村の財政担当課は、中活課室、事業実施課室に中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の有無、ソフト事業の財源内訳及び認定基本計画における位置付けを確認して、ソフト事業が記載された認定基本計画の写しなどの中活ソフト特別交付税の額の算定に用いる資料と合わせて算定対象となるソフト事業の有無の回答(以下、中活ソフト特別交付税の額の算定に用いる資料とソフト事業の有無の回答を合わせて「算定資料等」という。)を都道府県に提出している。そして、都道府県は、市町村から提出された算定資料等に基づいて中活ソフト特別交付税の額を算定している(図表2-1-15参照)。

中活ソフト特別交付税の交付額の決定及び交付の時期は毎年度12月となっていることから、市町村から都道府県への算定資料等の提出は8月から9月までの間に行われており、算定資料等には、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の事業費として見込額が計上されることとなっている。そして、見込額に基づいて中活ソフト特別交付税が算定される仕組みとなっている。市町村は、一般財源による予算措置がなされているソフト事業については中活ソフト特別交付税の算定対象として算定資料等を都道府県に提出していて、交付額の決定及び交付の時期において、算定対象となるソフト事業が未実施や実施中である場合でも中活ソフト特別交付税は交付されている。

図表2-1-15 中活ソフト特別交付税の交付に係る事務の流れ

図表2-1-15 中活ソフト特別交付税の交付に係る事務の流れ 画像

b 中活ソフト特別交付税の交付に係る連携状況

中活ソフト特別交付税の交付に当たっては、aのとおり、国から都道府県の交付税担当課、市町村の財政担当課に照会され、市町村は、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業や算定資料等を財政担当課が中活課室及び事業実施課室に照会するなどして取りまとめて都道府県に提出している。また、中活ソフト特別交付税は、認定基本計画に位置付けられたソフト事業を算定対象としているが、基本計画で実施するとしている拡大支援措置を活用する事業等については、内閣総理大臣が基本計画の認定を行うに当たって、総務大臣等の関係行政機関の長の同意を得ることとされている。そして、都道府県等は、中活ソフト特別交付税が適切に算定されているかの確認を行っている。

そこで、90市の134計画において中活ソフト特別交付税が交付されているソフト事業について認定基本計画における位置付けをみたところ、43市の53計画における432事業については、認定基本計画において拡大支援措置である中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業に位置付けられていなかった。

これは、上記の43市において、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業について財政担当課の理解が十分でなく、また、中活ソフト特別交付税について中活課室等の理解が十分でないまま、財政担当課と中活課室等との連携が十分図られていないことによるものと思料された。このため、43市は、上記ソフト事業の認定基本計画における位置付けの確認等をしないまま21道県に対して中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業として回答し、その回答に基づき算定された中活ソフト特別交付税の交付を国から受けていた。

上記の事態に関して、認定基本計画期間中において、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業として認定基本計画に位置付けていないのに中活ソフト特別交付税の交付を受けている事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業に位置付けられていない事例

計画期間 摘要
平成21年12月から
27年3月まで
山口県下関市
市関係課 市街地開発課、各事業実施課室
県関係課 都市計画課
国関係課 総務省自治行政局地域振興室

下関市の認定基本計画等によると、同市は、古くから九州や大陸方面を結ぶ内外交通の要衝として発展した港町で、人口約29万人の都市であるとされ、同市の認定基本計画において、「歩きたくなる、回遊したくなる街」「多彩な魅力が備わり、ゆっくり訪れたい街」及び「愛着を持って、いきいきと暮らせる街」を目標として、既存商店街の再生を含めて市民活動やまちなか居住の促進等のための各事業に取り組んでいる。認定基本計画によると、同市の商店街は、一定地域に集中せず、生活エリアごとに集積しており、それぞれの地域に根づき、地元の生活に必要とされて発展してきた。しかし、中心商店街がないため、多くの購買力が北九州市に移動していた。そこで、官民プロジェクトとして、昭和52年に「シーモール下関ショッピングセンター」を整備したところ、北九州市への流出は減少したものの、下関駅周辺にある店舗が同ショッピングセンターへ入店するために商店街から転出するなどして、周辺商店街への来街者が減少することにもなった。また、スーパーマーケット等の郊外への進出等によりスプロール化が進むなど、自然発生的に成長してきた商店街は、衰退が進行しており、既存商店街では、空き店舗の増加や販売額の減少、通行量の減少等、活力の停滞が問題となっている。

このような状況を踏まえて、同市は、認定基本計画に基づき、あきんど活性化(空き店舗等活用)支援事業を実施している。この事業は、空き店舗を使って新たに商売等を始める新規創業(予定)者に対して、同市及び下関商工会議所が、店舗賃借料、店舗改装費及び経営相談費用の一部を補助し、商店街を活性化するもので、平成21年度から26年度までの間に総事業費3024万円(一般財源所要額同額。中活ソフト特別交付税1512万円)で実施されていた。

しかし、同事業は、認定基本計画において「国の支援がないその他の事業」として位置付けて認定を受けており、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業となっていないのに、中活ソフト特別交付税の交付を受けていた。

また、90市の134計画において中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の実施状況をみたところ、24市の25計画における56事業は、イベント開催事業や空き店舗対策事業等を実施するとしていたが、利用者がいなかったり、事業者の都合により事業を取りやめていて実績がなかったりしていた。

基本方針等によると、国は、認定基本計画に位置付けられたソフト事業に要する経費の一部について中活ソフト特別交付税を交付することとしているが、aのとおり、事業が未着手や実施途中である場合でも、市町村において一般財源による予算措置がなされていれば対象とされ、市町村が都道府県に提出した見込額に基づいて算定されている。また、中活ソフト特別交付税は、都道府県や国において、事業の実績を確認することとなっていないため、市は、道県に対して実績を報告しておらず、市が当初の予算で算定した見込額に基づいて交付額が算定されたまま、交付されている状況となっていた。

上記の事態に関して、認定基本計画期間中において、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の実績がないのに特別交付税が交付されている事例を示すと次のとおりである。

<事例4> 中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の実績がないのに特別交付税が交付されている事例

計画期間 摘要
平成27年4月から
32年3月まで
埼玉県蕨市
市関係課 商工生活室、財政課

蕨市の認定基本計画等によると、同市は埼玉県の中央地域に位置し、市域全体がおおむね平坦で、周辺市の市街地と連続する形で住宅市街地が形成されており、全国の市の中で最も人口密度(平成26年1月1日現在約14,163人/km2)が高く、首都圏の拡大と共に住宅都市として発展してきた。蕨駅周辺の商店街は、戸田市等周辺市からも多くの買物客が来街していたが、昭和60年のJR埼京線の開通や周辺での大規模小売店舗の立地等により、商圏の縮小や小規模商店の減少が顕著になっているとされている。

このような状況を踏まえ、同市は、認定基本計画に基づき、空き店舗有効活用事業を実施している。空き店舗有効活用事業は、空き店舗への新規商業機能の立地により、来街目的の多様化によるにぎわい創出に貢献するものであり、空き店舗の有効活用を促進するために、一般社団法人蕨市にぎわいまちづくり連合会が、蕨市空き店舗有効活用事業補助金の受け皿団体となり、同連合会が指定した市内商店街の空き店舗を借り受けて営業する場合等の店舗の改装に要する経費や開店時の広告宣伝費等を助成するものである。

同市は、平成27年度に「空き店舗有効活用事業」を実施するとして一般財源により240万円の予算措置を行い、これに対して、国は、中活ソフト特別交付税の算定を行い、当該事業費の2分の1相当の120万円を交付している。

そこで、当該年度の同事業の実施状況を確認したところ、事業についてのPRが十分でなかったことなどから、同事業で新規開店を行う者の利用はなく、27年度に同事業は全く実施されていなかった。

(2) 中心市街地の活性化に関する施策の実施状況

ア 認定基本計画に係る事業費等の執行及び基本計画の認定状況等
(ア) 18年度以降の認定基本計画の事業費執行額

a 事業主体別事業費、府省庁別事業費及び国庫負担額

18年8月の中心市街地活性化法の施行後、28年度末までに認定を受けた141市の211計画に係る18年度から28年度末までの間の総事業費は、図表2-1-16のとおり、3兆0847億余円(国庫負担額8700億余円)(注8)となっていた。これを事業主体別にみると、市が事業主体となっている事業に係る事業費が1兆6333億余円(国庫負担額4711億余円)と最も多くなっていた。また、民間事業者等が事業主体となっている事業に係る事業費は1兆0076億余円(国庫負担額1660億余円)と事業費ベースで総事業費の32.6%を占めており、中心市街地の活性化に当たり、市が実施する事業のほか、民間事業者等の実施する事業が与える影響は多大になっている状況が見受けられた。

(注8)
事業費及び国庫負担額は、市からの報告を基に集計しており、市において把握していない民間事業者等に係る事業費等や書類が保存されておらず確認ができない事業費等については含めていない(以下同じ。)。

図表2-1-16 事業主体別の事業費及び国庫負担額の推移

上段:事業費
下段:国庫負担額
単位:百万円
事業主体
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 割合
- 5,340 7,424 8,297 4,741 5,340 5,433 3,137 16,901 24,861 17,854 99,330 3.2%
- 5,340 7,424 8,200 4,503 4,968 5,312 3,134 16,838 24,744 17,745 98,211 11.2%
都道府県 363 19,231 33,143 30,862 32,288 34,595 32,204 34,098 42,125 36,432 49,122 344,467 11.1%
176 9,006 13,380 15,375 14,091 12,124 8,789 12,422 14,993 14,146 20,141 134,649 15.4%
3,744 63,009 135,545 204,229 195,833 181,602 183,326 162,121 180,621 152,928 170,352 1,633,314 52.9%
1,203 20,471 41,940 59,415 55,997 56,362 54,813 50,741 46,526 39,896 43,809 471,179 54.1%
民間事業者等 7,116 41,603 73,887 134,659 105,006 126,347 85,543 93,816 72,502 121,959 145,218 1,007,661 32.6%
897 7,382 13,463 21,005 13,824 16,506 13,642 15,683 12,990 23,298 27,341 166,034 19.0%
11,223 129,184 250,000 378,048 337,869 347,885 306,507 293,174 312,150 336,180 382,548 3,084,773 100%
2,276 42,201 76,208 103,997 88,416 89,962 82,559 81,981 91,348 102,085 109,038 870,075 100%
  • 注(1) 141市の211計画を対象としている。
  • 注(2) 事業主体は、認定事業に係る主たる事業主体として、市が区分整理したものである。

また、府省庁別に事業費及び国庫負担額をみると、図表2-1-17のとおり、事業費は計2兆6364億余円(国庫負担額8700億余円)となっており、国土交通省に係る事業費2兆2874億余円(国庫負担額7965億余円)が最も多く、次いで総務省に係る事業費1049億余円(国庫負担額46億余円)、経済産業省に係る事業費970億余円(国庫負担額335億余円)の順となっていた。

図表2-1-17 府省庁別の事業費及び国庫負担額の推移

上段:事業費
下段:国庫負担額
単位:百万円
府省庁名
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 割合
内閣府 6 8,224 966 1,581 2,069 561 1,680 4,363 5,597 4,070 29,121 1.1%
804 371 705 143 46 338 403 1,681 1,413 5,909 0.6%
  内閣府本府 6 94 947 1,581 2,069 561 1,680 4,363 5,597 4,070 20,972 0.7%
34 352 705 143 46 338 403 1,681 1,413 5,120 0.5%
警察庁 8,130 18 8,148 0.3%
770 18 788 0.0%
総務省 179 3,084 6,921 13,289 7,873 9,221 9,948 12,850 12,583 10,645 18,323 104,921 3.9%
100 287 367 124 41 2,882 60 43 767 4,675 0.5%
文部科学省 1,872 4,739 7,045 3,986 4,687 3,746 2,357 4,374 7,300 7,953 48,064 1.8%
750 1,327 1,711 1,669 2,618 1,338 848 2,006 1,888 2,702 16,862 1.9%
厚生労働省 3,592 1,079 6,801 10,319 5,971 9,234 7,515 2,248 641 6,717 54,121 2.0%
565 261 411 551 633 695 691 554 191 236 4,793 0.5%
農林水産省 15 388 314 334 439 339 424 9 2,265 0.0%
15 89 52 62 112 45 128 4 509 0.0%
経済産業省 699 7,332 11,777 16,541 7,347 14,416 5,932 7,903 7,468 14,347 3,243 97,008 3.6%
262 2,692 4,368 6,483 4,033 3,170 2,070 2,105 2,597 4,593 1,177 33,555 3.8%
国土交通省 9,568 95,691 175,632 270,302 251,027 269,441 243,175 212,953 236,056 242,365 281,255 2,287,469 86.7%
2,013 37,582 69,007 92,891 80,712 82,920 77,133 73,895 85,151 93,498 101,696 796,502 91.5%
復興庁 9 9 0.0%
9 9 0.0%
法務省 400 400 800 0.0%
400 400 800 0.0%
環境省 2,292 137 8 64 3 4 0 6 618 3,137 0.1%
135 133 2 58 5 197 532 0.0%
防衛省 1,052 315 2,157 649 400 2,007 1,138 124 201 1,439 9,483 0.3%
611 186 1,618 321 229 1,120 775 35 178 847 5,924 0.6%
10,447 112,630 210,997 317,629 283,107 306,606 275,049 247,142 268,055 281,114 323,620 2,636,402 100%
2,276 42,201 76,208 103,997 88,416 89,962 82,559 81,981 91,348 102,085 109,038 870,075 100%
  • 注(1) 141市の211計画を対象としている。
  • 注(2) 復興庁、法務省、環境省及び防衛省は、参議院から要請を受けた検査の対象には含まれていないが、中心市街地の活性化に資する事業として市において認定基本計画に位置付けて実施された事業に係る省庁である。
  • 注(3) 各事業費には、認定と連携した支援措置等として基本方針等に示されている事業ではないが、中心市街地の活性化に資する事業として市において認定基本計画に位置付けて実施された事業に係る事業費を含めている。
  • 注(4) 図表2-1-16の事業費計3兆0847億余円と本図表の事業費計2兆6364億余円の差額4483億余円は、民間事業者等が認定と連携した支援措置等を活用せずに実施した事業等に係る事業費である。

b 事業数並びに事業種別の事業費及び国庫負担額

141市の211計画に係る総事業費3兆0847億余円(総事業数12,703事業、国庫負担額8700億余円)の執行状況を事業種別ごとにみたところ、図表2-1-18のとおり、ハード事業は4,638事業、事業費2兆7142億余円(国庫負担額8445億余円)、ソフト事業は8,364事業、事業費3705億余円(国庫負担額254億余円)となっていて、事業数ではソフト事業が、事業費ではハード事業が過半を占めており、1事業当たりの事業費は、ハード事業5億余円、ソフト事業0.4億余円となっていた。

図表2-1-18 事業種別の事業費及び国庫負担額

(単位:百万円)
総事業数 事業種別 事業数 事業費(上段)
国庫負担額(下段)
1事業当たり事業費(上段)
国庫負担額(下段)
A 割合 B 割合 B/A
12,703 ハード事業 4,638 35.6% 2,714,236 87.9% 585
844,579 97.0% 182
ソフト事業 8,364 64.3% 370,536 12.0% 44
25,495 2.9% 3
13,002 100% 3,084,773 100% 237
870,075 100% 66
  • 注(1) 141市の211計画を対象としている。
  • 注(2) ハード事業とソフト事業の両方を含む事業があるため、事業数の計は総事業数12,703事業とは一致しない。
(イ) 18年度以降の基本計画の認定状況等

a 基本計画の認定状況

141市の211計画に係る認定状況をみたところ、図表2-1-19のとおり、78市の79計画がI期計画のみの認定を受けており、I期計画の実施に伴い浮き彫りとなった新たな課題の解消が必要であるなどとして59市の119計画がII期計画まで、4市の13計画がIII期計画までそれぞれ認定を受けていた。そして、211計画を計画期別にみると、I期計画は計144計画(141市)、II期計画は計63計画(63市)、III期計画は計4計画(4市)となっていた。

図表2-1-19 基本計画の計画期別の認定状況

計画期別 I期計画のみ認定を受けている市 I期及びII期両計画の認定を受けている市 I期、II期及びIII期各計画の認定を受けている市
I期 78市 59市 4市 141市
(79計画) (60計画) (5計画) (144計画)
注(3) 注(3) 注(3)  
II期 59市 4市 63市
(59計画) (4計画) (63計画)
III期 4市 4市
(4計画) (4計画)

注(2)
78市 59市 4市 141市
(79計画) (119計画) (13計画) (211計画)
  • 注(1) 141市の211計画を対象としている。
  • 注(2) 市数は純計である。
  • 注(3) 1市で2計画を作成して、認定を受けているものがあるため、市数と計画数は一致しない。

b 基本計画の認定を受けた市町村の人口規模

141市を都市規模別に分類すると、政令指定都市は9市、中核市は44市、その他の市は88市となっており(これらの141市には3大都市圏の19市が含まれている。)、141市の基本計画認定時点の市域全体人口の規模をみると、図表2-1-20のとおり、最大が名古屋市の223.6万人、最小が砂川市の1.9万人となっていて、10万人以上20万人未満が42市の64計画と最も多く、全体の29.7%となっていた。

図表2-1-20 基本計画認定時点の市域全体人口規模別の市数

図表2-1-20 基本計画認定時点の市域全体人口規模別の市数 画像

都市計画法によれば、都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができるとされており、市街化区域は既に市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされ、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とされている。また、第1の2(2)ア(ア)のとおり、中心市街地活性化法によれば、中心市街地は、相当数の小売商業者が集積し、及び都市機能が相当程度集積しており、その存在している市町村の中心としての役割を果たしているなどの市街地とされている。そして、基本方針等では、中心市街地の活性化の目標として、多様な都市機能がコンパクトに集積した、歩いて暮らせる生活空間を実現することを追求することが掲げられており、中心市街地の活性化のために、中心市街地の居住人口の増加を目標としている。

そこで、141市について市街化区域の設定状況をみたところ、93市において市街化区域が設定されており、市街化区域人口及び中心市街地区域内人口の分布状況は、市街化区域人口が最大222.8万人、最小1.9万人、中心市街地区域内人口が最大5.9万人、最小1,278人となっていた。

また、141市における市街化区域の設定状況と市域全体人口に占める市街化区域人口の割合をみたところ、図表2-1-21のとおり、141市のうち市街化区域が設定されていた93市(141市に占める割合65.9%)においては、市域全体人口に占める市街化区域人口の割合は最大で100%、最小で37.8%となっていて、50%以上の市が88市(93市に占める割合94.6%)となっていた。

図表2-1-21 市街化区域の設定状況及び市域全体人口に占める市街化区域人口の割合

図表2-1-21 市街化区域の設定状況及び市域全体人口に占める市街化区域人口の割合 画像

一方、市街化区域人口に占める中心市街地区域内人口の割合をみると、図表2-1-22のとおり、最大で30.8%、最小で0.7%となっていて、90市(同96.7%)では25%未満となっていた。

図表2-1-22 市街化区域人口に占める中心市街地区域内人口の割合

図表2-1-22 市街化区域人口に占める中心市街地区域内人口の割合 画像

c 基本計画の認定を受けた市町村の面積規模

141市の基本計画認定時点の市域全体面積の規模をみたところ、図表2-1-23のとおり、最大が高山市の21.7万ha、最小が蕨市の511haとなっていて、 1万ha以上5万ha未満が69市の103計画と最も多く、全体の48.9%となっていた。

図表2-1-23 基本計画認定時点の市域全体面積規模別の市数

図表2-1-23 基本計画認定時点の市域全体面積規模別の市数 画像

基本方針等によれば、中心市街地の規模は、土地利用や諸機能の集積の実態、事業の実施範囲等から、居住人口や都市機能等において市町村の他の地域に比べて高い密度が保持されているなど各種取組が総合的かつ一体的に実施することが可能な範囲となるよう設定しなければならないとされている。

そこで、141市のうち市街化区域が設定されていた93市における市街化区域面積及び中心市街地区域面積の分布状況をみたところ、市街化区域面積は最大3.0万ha、最小510ha、中心市街地区域面積は最大860ha、最小50haとなっていた。

また、141市における市街化区域の設定状況と市域全体面積に占める市街化区域面積の割合についてみたところ、図表2-1-24のとおり、市街化区域が設定されていた93市(141市に占める割合65.9%)においては、市域全体面積に占める市街化区域面積の割合は最大で99.8%、最小で1.5%となっていて、85市(93市に占める割合91.3%)で、その占める割合が50%未満となっていた。そして、このうち69市(同74.1%)においては、市域全体面積に占める市街化区域面積の割合が25%未満となっていた。

図表2-1-24 市街化区域の設定状況及び市域全体面積に占める市街化区域面積の割合

図表2-1-24 市街化区域の設定状況及び市域全体面積に占める市街化区域面積の割合 画像

一方、市街化区域面積に占める中心市街地区域面積の割合をみると、図表2-1-25のとおり、最大で14.1%、最小で0.5%となっていて、83市(同89.2%)では10%未満となっていた。

図表2-1-25 市街化区域面積に占める中心市街地区域面積の割合

図表2-1-25 市街化区域面積に占める中心市街地区域面積の割合 画像

aのとおり、141市のうち59市がI期、II期両計画の認定を受けているが、I期計画の認定時点とII期計画の認定時点の市街化区域面積及び中心市街地区域面積をみたところ、図表2-1-26のとおり、43市において市街化区域面積又は中心市街地区域面積が変化していた。そして、基本方針等によると、都市機能の無秩序な拡散に歯止めをかけ、多様な都市機能がコンパクトに集積したまちづくりが中心市街地の活性化の目標の一つとされているが、市街化区域面積が変化している28市のうち24市では市街化区域面積が増加し、中心市街地区域面積が変化している26市のうち18市では中心市街地区域面積が増加していた。さらに、これらの中には、市街化区域人口が減少しているにもかかわらず市街化区域面積が増加していた8市、中心市街地区域内人口が減少しているにもかかわらず中心市街地区域面積が増加していた11市が含まれていた。

図表2-1-26 I期計画の認定時点とII期計画の認定時点の市街化区域面積及び中心市街地区域面積の変化

図表2-1-26 I期計画の認定時点とII期計画の認定時点の市街化区域面積及び中心市街地区域面積の変化 画像

d 認定基本計画における事業数及び事業費

211計画について、認定事業の事業数をみたところ、図表2-1-27のとおり、総事業数は12,703事業、1計画当たりの平均事業数は60.2事業(1計画当たりの最大事業数:171事業、同最小事業数:16事業)となっていた。

図表2-1-27 総事業数及び1計画当たりの事業数

図表2-1-27 総事業数及び1計画当たりの事業数 画像

211計画について、計画単位で認定事業の総数に占めるハード事業の割合をみたところ、図表2-1-28のとおり、1計画当たりのハード事業の占める割合は最大69.2%、最小6.5%となっており、ハード事業の占める割合が50%以上となっている認定基本計画は30計画となっていた。そして、この30計画の内訳は、I期計画が25計画、II期計画が5計画となっていた。

図表2-1-28 1計画当たりの認定事業の総数に占めるハード事業の割合

図表2-1-28 1計画当たりの認定事業の総数に占めるハード事業の割合 画像

一方、認定事業の総数に占めるソフト事業の割合をみると、図表2-1-29のとおり、1計画当たりのソフト事業の占める割合は最大93.4%、最小30.7%となっており、ソフト事業の占める割合が50%以上となっている認定基本計画は186計画となっていた。そして、この186計画の内訳は、I期計画が123計画(I期144計画全体に占める割合85.4%)、II期計画が59計画(II期63計画全体に占める割合93.6%)、III期計画が4計画(III期4計画全体に占める割合100%)となっており、I期計画からII期計画、そしてIII期計画へと移行していくにつれて、事業実施の重点がハード事業からソフト事業へと移行していく状況が見受けられた。

図表2-1-29 1計画当たりの認定事業の総数に占めるソフト事業の割合

図表2-1-29 1計画当たりの認定事業の総数に占めるソフト事業の割合 画像

認定基本計画の総事業費は、(ア)aのとおり3兆0847億余円となっているが、これらには28年度末時点で認定基本計画期間が終了していない認定基本計画に係る事業費も含まれている。そこで、141市の211計画のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した109市の118計画(事業費2兆2965億余円(国庫負担額6427億余円))について、1計画当たりの事業費をみたところ、図表2-1-30のとおり、10億円未満が1計画、10億円以上50億円未満が18計画、50億円以上100億円未満が27計画、100億円以上500億円未満が66計画、500億円以上が6計画となっていて、100億円以上500億円未満の計画が最も多くなっていた。

そして、118計画について、事業種別の事業数及び事業費をみたところ、ハード事業の事業数は最大56事業、最小5事業で、事業費は最大921億余円、最小4億余円、ソフト事業の事業数は最大135事業、最小11事業で、事業費は最大121億余円、最小0.8億余円となっていた。

図表2-1-30 平成28年度末までに認定基本計画期間が終了した認定基本計画の事業費と事業種別の規模

上段:事業費
下段:国庫負担額
単位:百万円
事業費区分 計画数 事業費区分別の事業費合計額 ハード事業 ソフト事業
事業数 事業費 事業数 事業費
500億円以上 6 498,270 27~ 56 62,524 92,158 25~ 49 2,068 12,123
168,659 9,895 52,747 555
100億円以上500億円未満 66 1,545,677 5 52 5,259 47,347 11 135 124 10,901
410,519 350 16,242 1,948
50億円以上100億円未満 27 194,759 10~ 32 3,373 9,228 11 71 85 3,323
50,037 613 3,182 1 226
10億円以上50億円未満 18 56,990 8~ 31 442 4,404 14~ 67 119 3,119
13,241 134 1,273 314
10億円未満 1 839 6 606 20 233
324 324
118 2,296,537 2,729 2,039,563 4,407 256,974
642,782 626,632 16,149

(注) 141市の211計画のうち、平成28年度末までに認定基本計画期間が終了した109市の118計画を対象としている。

e 人口1人当たりの事業費及び国庫負担額

bのとおり、都市計画区域について市街化区域を設定していない市があることから、118計画について、人口1人当たりの事業費を市域全体人口と中心市街地区域内人口でみたところ、図表2-1-31のとおり、市域全体人口1人当たりの事業費は最大807,332円、最小4,931円で、10万円未満の計画が74計画(118計画に占める割合62.7%)、10万円以上20万円未満の計画が35計画(同29.6%)、20万円以上の計画が9計画(同7.6%)となっていた。また、中心市街地区域内人口1人当たりの事業費は最大1255万余円、最小23万余円で、200万円未満の計画が75計画(同63.5%)、200万円以上400万円未満の計画が21計画(同17.7%)、400万円以上の計画が22計画(同18.6%)となっていた。

図表2-1-31 人口1人当たりの事業費

図表2-1-31 人口1人当たりの事業費 画像

また、118計画について、人口1人当たりの国庫負担額を市域全体人口と中心市街地区域内人口でみたところ、図表2-1-32のとおり、市域全体人口1人当たりの国庫負担額は最大122,892円、最小1,104円で、2万円未満の計画が57計画(同48.3%)、2万円以上5万円未満の計画が49計画(同41.5%)、5万円以上の計画が12計画(同10.1%)となっていた。また、中心市街地区域内人口1人当たりの国庫負担額は最大435万余円、最小2万余円で、20万円未満の計画が28計画(同23.7%)、20万円以上40万円未満の計画が36計画(同30.5%)、40万円以上の計画が54計画(同45.7%)となっていた。

図表2-1-32 人口1人当たりの国庫負担額

図表2-1-32 人口1人当たりの国庫負担額 画像

イ 認定事業の実施状況等

第1の2(1)のとおり、基本方針等によれば、人口減少・少子高齢社会を迎えている中で、都市機能の無秩序な拡散に歯止めをかけ、多様な都市機能がコンパクトに集積した、多くの人にとって暮らしやすい、にぎわいあふれるまちづくりを進めていくことが必要であるとされている。そして、中心市街地の活性化は、地域の創意工夫をいかしながら、地域が必要とする事業等を、総合的かつ一体的に推進することにより、地域が主体となって行われるべきものであるとされている。このような中で、各市は、認定基本計画において、様々な認定事業を実施することを計画している。

(ア) 認定事業の分類等

基本方針等において、認定事業は次のとおり分類されている。

  • ① 土地区画整理事業、市街地再開発事業、道路、公園、駐車場等の公共の用に供する施設の整備その他の市街地の整備改善のための事業(以下「市街地整備改善事業」という。)
  • ② 居住者等の共同の福祉又は利便のため必要な施設を整備する事業(以下「都市福利施設整備事業」という。)
  • ③ 公営住宅等を整備する事業、中心市街地共同住宅供給事業その他の住宅の供給のための事業及び当該事業と一体として行う居住環境の向上のための事業(以下「居住環境向上事業」という。)
  • ④ 中小小売商業高度化事業、特定商業施設等整備事業、民間中心市街地商業活性化事業その他の中心市街地における経済活力の向上のための事業及び措置(以下「経済活力向上事業」という。)
  • ⑤ 市街地整備改善事業、都市福利施設整備事業、居住環境向上事業及び経済活力向上事業と一体的に推進する公共交通機関の利用者の利便の増進を図るためなどの事業(以下「公共交通利便増進等事業」という。)

各市は、中心市街地の活性化の目標を達成するために①から⑤までの認定事業を実施することとしており、認定事業の分類ごとの主な具体例は、図表2-1-33のとおりとなっている。

そして、会計実地検査を行った90市の134計画における認定事業の事業費をみると、市街地整備改善事業に係る事業費1兆1320億余円(国庫負担額3830億余円)、都市福利施設整備事業に係る事業費6394億余円(国庫負担額1184億余円)、居住環境向上事業に係る事業費3922億余円(国庫負担額819億余円)、経済活力向上事業に係る事業費3886億余円(国庫負担額675億余円)、公共交通利便増進等事業に係る事業費2033億余円(国庫負担額621億余円)となっていた。

また、認定事業8,594事業のうち経済活力向上事業が3,843事業と全体の44.7%を占めており、事業費は市街地整備改善事業が1兆1320億余円と全体の41.0%を占める状況となっていた。

図表2-1-33 認定事業の分類別の事業費

(単位:百万円)
分類 主な事業例 事業種別 事業数 事業費 国庫負担額
  割合   割合   割合
市街地整備改善事業 再開発ビルの建設事業、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図る土地区画整理事業、バリアフリー化事業等 ハード事業 2,040 23.7% 1,132,071 41.0% 383,002 53.7%
都市福利施設整備事業 教育文化施設や社会福祉施設の建設事業等 ハード事業 942 10.9% 639,419 23.2% 118,491 16.6%
公共施設等を活用したイベント等 ソフト事業
居住環境向上事業 公営住宅や民間事業者の住宅建設事業等 ハード事業 796 9.2% 392,273 14.2% 81,972 11.4%
中心市街地への居住支援等 ソフト事業
経済活力向上事業 商業施設の建設事業等 ハード事業 3,843 44.7% 388,613 14.1% 67,545 9.4%
商業の活性化に資するフェスティバル等のイベント、空き店舗対策、商業者への支援等 ソフト事業
公共交通利便増進等事業 コミュニティバスの運行等 ソフト事業 973 11.3% 203,393 7.3% 62,158 8.7%
8,594 100% 2,755,772 100% 713,170 100%

(注) 90市の134計画を対象としている。

ハード事業は再開発ビルのしゅん工等の事業の完了により効果を一定程度発現することになるのに対して、イベントの開催、空き店舗対策等といったソフト事業は、認定基本計画期間中に一度行えば効果を発現するという事業ではなく、認定基本計画期間を通じて、更に認定基本計画期間終了後も継続して実施していくことにより、中心市街地の活性化に寄与することになる事業である。そして、内閣府は、上記イベントの開催等のソフト事業は、認定基本計画期間終了後も継続的に実施されることが望ましいとしている。

(イ) 認定事業の完了又は継続の状況

会計実地検査を行った90市の134計画のうち28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における4,901事業(ハード事業1,874事業、ソフト事業3,027事業)の認定基本計画期間終了時点の実施状況についてみたところ、図表2-1-34のとおり、実施済(継続して実施するイベント等の事業を含む。)の認定事業が4,270事業、実施中の認定事業が331事業等となっていた。

図表2-1-34 平成28年度末までに認定基本計画期間が終了した認定事業の実施状況

(単位:事業)
平成28年度末までに認定基本計画期間が終了した80計画に定められた4,901事業 実施状況別事業数
事業種別 事業数 実施済 実施中 中止 未実施
ハード
事業
1,874 1,379 324 22 149
100% 73.5% 17.2% 1.1% 7.9%
ソフト
事業
3,027 2,891 7 18 111
100% 95.5% 0.2% 0.5% 3.6%
4,901 4,270 331 40 260
100% 87.1% 6.7% 0.8% 5.3%

(注) 74市の80計画を対象としている。

a ハード事業の完了状況

(ア)のとおり、ハード事業は事業の完了により効果を一定程度発現することになる。しかし、80計画のうち、全てのハード事業が完了しているのは4計画で、残りの76計画では一部のハード事業が完了していなかった。

特に、主要事業の場合は、認定基本計画期間中に事業が完了しないと目標値を達成できなくなる可能性が高くなるため、事業が完了していることが更に重要となる。そして、完了していないハード事業がある76計画をみたところ、60計画において関係者の合意形成が図られていなかったことなどにより主要事業とされているハード事業の全部又は一部が認定基本計画期間終了時点で完了していなかった。

b ソフト事業の継続状況

(ア)のとおり、ソフト事業は、認定基本計画期間終了後も継続して実施していくことにより、中心市街地の活性化に寄与するものである。そこで、74市の80計画のうち、 28年度末に認定基本計画期間が終了した8市の8計画を除いた70市の72計画(8市のうち、II期計画の認定基本計画期間が終了した4市についてはI期計画の認定基本計画を対象とできるため市数は70市となる。)について、認定基本計画の全てのソフト事業の継続状況をみたところ、継続して実施されているのは1,682事業となっていた。このうち、認定基本計画において市が主要事業を含め目標に寄与するソフト事業として整理していたのは、66市の68計画で1,007事業となっており、これらのソフト事業のうち、経済活力向上事業は668事業であり、1,007事業に占める割合は66.3%となっていた。

また、74市の80計画について、主要事業とされているソフト事業の認定基本計画期間終了後の継続状況をみたところ、53計画においては、市の補助事業等による財政的な支援等の体制が整わないことなどにより一部が継続されていなかった。

そして、前記のソフト事業を継続している66市が認定基本計画期間中に整備した推進体制の継続状況をみたところ、図表2-1-35のとおり、協議会の活動を継続しているのは49市の783事業、タウンマネージャーの配置を継続しているのは12市の151事業、市連絡調整会議の活動を継続しているのは13市の215事業、事業の実施状況の把握を継続しているのは23市の287事業となっていた。

図表2-1-35 認定基本計画期間終了後に継続しているソフト事業の推進体制

項目 認定基本計画期間中に体制整備済 認定基本計画期間中に体制未整備
認定基本計画期間終了後継続 認定基本計画期間終了後未継続 小計
市数 事業数 市数 事業数 市数 事業数
市数 割合
(%)
事業数 割合
(%)
市数 割合
(%)
事業数 割合
(%)
協議会の活動 49 74.2 783 77.7 17 25.7 224 22.2 66 1,007 0 0 66 1,007
タウンマネージャーの配置 12 41.3 151 32.9 17 58.6 307 67.0 29 458 37 549 66 1,007
市連絡調整会議の活動 13 26.5 215 26.4 36 73.4 598 73.5 49 813 17 194 66 1,007
事業の実施状況の把握 23 34.8 287 28.5 43 65.1 720 71.4 66 1,007 0 0 66 1,007

(注) ソフト事業が継続されている66市を対象としている。

(ウ) 都市計画手法の活用及び経済活力向上事業の実施状況

市町村は、中心市街地の商業地域が顧客、住民のニーズに十分対応できていないことが中心市街地の衰退の原因の一つであるとして、中心市街地の商業地域の活性化に取り組んでいる。

商業地域の活性化の手法としては、準工業地域に特別用途地区を設定するなどの用途地域の見直しを行ったり、都道府県が広域的な調整を行ったりするなどして、中心市街地区域外での大型店の立地を抑制する都市計画手法の活用によるものや、大店立地法の特例措置により中心市街地区域内への大型店の立地について手続を簡素化したり、中心市街地の空き店舗対策を実施したりするなどして、経済活力向上事業を実施するものがある。

a 都市計画手法の活用による商業地域の活性化

(a) 中心市街地区域外への大型店の立地状況

中心市街地区域外には大型店の立地が可能な土地が多いことから、多くの市町村で大型店が中心市街地区域外に立地している。第1の2(2)ア(イ)のとおり、用途地域のうち、大型店が店舗面積の制限なく立地できるのは、近隣商業地域、商業地域及び準工業地域の3用途地域のみとされている。

そこで、90市について、18年度から28年度までの間に中心市街地区域外の上記3用途地域に立地した大型店の店舗数及び店舗面積をみたところ、18年の中心市街地活性化法の改正以降も、大型店が中心市街地区域外に立地しており、図表2-1-36のとおり、近隣商業地域には計176店舗(店舗面積計936,919m2)、商業地域には計99店舗(同757,319m2)、準工業地域には計382店舗(同1,559,537m2)が立地していた。そして、上記3用途地域の中では準工業地域における店舗数及び店舗面積が最も増加していた。

図表2-1-36 平成18年度から28年度までの間における大型店の中心市街地区域外への立地状況

(単位:店舗、m2
店舗立地場所
(用途地域別)
10,000m2 7,000m2
10,000m2以下
5,000m2
7,000m2以下
3,000m2
5,000m2以下
3,000m2以下
店舗数 店舗面積 店舗数 店舗面積 店舗数 店舗面積 店舗数 店舗面積 店舗数 店舗面積 店舗数 店舗面積
近隣商業地域 22 452,287 11 88,935 20 116,959 27 106,631 96 172,107 176 936,919
商業地域 20 477,207 3 25,341 15 93,385 19 78,235 42 83,151 99 757,319
準工業地域 20 374,758 28 228,165 44 255,238 73 281,679 217 419,697 382 1,559,537

(注) 90市を対象としている。

(b) 特別用途地区の設定状況等

建築基準法によると、都市計画区域の用途地域のうち、準工業地域は多様な用途を許容する地域となっているが、地方都市の準工業地域に大型店が立地した場合には、中心市街地への影響が大きいと考えられていることから、国は、基本方針等において、基本計画の認定に当たっては、3大都市圏等を除き、市町村が都市計画法に基づき準工業地域に特別用途地区を設定して、店舗面積が10,000m2超の大型店の立地を制限することを認定の要件としている。

建設省建設経済局長建設省都市局長通達(平成10年建設省経民発第67号・建設省都計発第118号)によれば、特別用途地区の設定は、市町村が多様なニーズに応じて定めることができるとされており、上記の準工業地域への大型店の立地の制限については、対象面積を10,000m2以下にしたり、近隣商業地域、商業地域等の準工業地域以外の用途地域に設定したりすること(以下「多重制限」という。)も可能となっている。また、市町村によっては、条例や指針等を制定して地域に即した土地利用の状況を踏まえた大型店の立地の制限を行っている。

そこで、90市について、中心市街地区域外における多重制限の実施状況等をみたところ、図表2-1-37のとおり、12市において立地制限の対象となる大型店に関して多重制限等を行っていた(以下、このような市を「多重制限市」という。)が、78市においては、多重制限等を行っていなかった(以下、このような市を「多重制限未実施市」という。)。

そして、多重制限市12市が中心市街地区域外の近隣商業地域、商業地域又は準工業地域について、どのように大型店の立地を制限しているかをみたところ、近隣商業地域を制限している市が6市、商業地域を制限している市が4市、準工業地域を制限している市が8市となっており、複数の用途地域を制限している市も見受けられた。

図表2-1-37 中心市街地区域外における多重制限等による大型店の立地の制限面積

(単位:市)
実地検査実施市 多重制限未実施市 多重制限市  
用途地域の別 制限を行っていた面積
10,000m2 7,000m2
10,000m2以下
5,000m2
7,000m2以下
3,000m2
5,000m2以下
3,000m2以下
90 78
12
内訳
準工業地域を制限
5
近隣商業、商業及び準工業地域を制限
2
近隣商業地域を制限
2
近隣商業及び商業地域を制限
1
近隣商業及び準工業地域を制限
1
商業地域を制限
1
近隣商業地域 4 0 1 0 1 6
商業地域 2 0 0 1 1 4
準工業地域 1 3 1 3 8

上記に関して、認定基本計画期間中において、多重制限により中心市街地区域外へ立地する大型店の店舗面積の制限を行って大型店の立地の抑制を図っていた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例2> 準工業地域への多重制限を行って中心市街地区域外への大型店の立地の抑制を図っていた事例

計画期間 摘要
平成20年7月から
25年3月まで
山形県鶴岡市
中活課室名 商工課、都市計画課

鶴岡市の認定基本計画等によると、同市は、古くから庄内地方の政治、経済及び文化の中心として栄えてきた人口14万人(平成18年時点)の都市である。

同市は、基本計画(20年7月から25年3月まで)を作成して、中心市街地の人口減少や商業等の衰退等の課題に対応するために、「交流の拡大」「中心商店街の活性化」及び「まちなか居住の環境づくり」を目標として、認定基本計画期間において、34事業(事業費71億円、国庫負担額9億円)を実施している。

認定基本計画によると、同市は、商業施設等の都市機能について、13年に策定した都市計画マスタープランに基づいて、中心市街地への集積等を進めている。

そして、同市は、中心市街地への商業施設等の都市機能の集積には、都市機能の無秩序な拡散を防止し、都市機能がコンパクトに集積した都市構造の実現を図る必要があるとして、広域的に都市構造等に大きな影響を及ぼす大型店の立地を制限することとし、郊外に立地する大型店については10,000m2に満たないものであっても、市内の実情を考慮して、中心市街地区域外の準工業地域に特別用途地区を設定し、店舗面積が5,000m2を超える大型店を制限の対象として、認定基本計画の期間前の20年4月から実施している。

そこで、18年度から28年度までの中心市街地区域外の大型店の立地状況をみると、5,000m2を超える大型店は、増加していなかった。

中心市街地区域外に立地している大型店には、ドラッグストア等の比較的店舗面積が小さいものから、ショッピングモール等の店舗面積が大きいものまであり、業種により1店舗当たりの面積は異なっていたり、同業種の大型店であっても店舗面積は異なっていたりしている。

そこで、多重制限市12市と多重制限未実施市78市について、18年度から28年度までの間に中心市街地区域外に立地した大型店の店舗面積の変化を比較したところ、図表2-1-38のとおり、1,000m2を超える大型店の店舗面積が増加していたのは、多重制限未実施市では74市(78市に占める割合94.8%)、多重制限市では10市(12市に占める割合83.3%)となっていた。

また、中心市街地への影響が大きいとされる店舗面積が10,000m2以上の大型店の店舗面積が増加していたのは、多重制限未実施市では24市(78市に占める割合30.7%)、多重制限市では2市(12市に占める割合16.6%)となっていた。

図表2-1-38 中心市街地区域外に立地した大型店の店舗面積の変化

図表2-1-38 中心市街地区域外に立地した大型店の店舗面積の変化 画像

(c) 都道府県における大型店の立地のための広域的な調整の実施状況

大型店については、中心市街地の活性化のために郊外への立地を抑制している市町村がある一方で、地域雇用創出等のために郊外に誘致している市町村もあり、このような場合には、立地の抑制の効果が限定的となる。そして、基本方針等によれば、都道府県は、広域的な観点から、市町村相互間の整合性の確保と連携の促進を図るために指導及び助言を行うなど、大型店の立地について適切な誘導を行うことが重要であるとされ、また、市町村の求めに応じて、積極的に広域的な調整を行うことが望ましいとされている。

また、都市計画法によれば、市町村は、大型店の立地が可能となる用途地域を設定するなどの都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならないとされており、都道府県知事は、市町村の区域を越える広域の見地からの調整を図るための協議を行うものとされている。そして、協議に当たって、都道府県知事は、関係市町村に意見の開陳等を求めることができることとされている。この協議において、都道府県は、関係市町村に都市計画の内容や関係資料を提供して、都市計画に対する関係市町村の意見を踏まえて、都市計画を決定しようとする市町村へ回答を行うなどしているが、直接的に大型店の立地の抑制のための意見を述べることとはしていないとしている。

そして、大店立地法では、大型店の新設をする者は、都道府県に新設に関する届出を行うこととなっているが、この届出があった場合、都道府県は、大型店の立地予定市町村から、交通渋滞、騒音等の生活環境の保持の見地からの意見を聴取した上で、届出に係る大型店の周辺の地域の生活環境の保持の見地から大型店を新設しようとする者に意見を書面で述べることとなっている。

そこで、会計実地検査を行った24道県について、基本方針等を踏まえて、大型店の立地に関して広域的な調整を図るための条例等を定めているかをみたところ、広域的な土地利用や地域における商業機能の維持等の見地から、条例等において、大型店を立地できる市町村の地域や店舗面積を定めたり、大型店の立地予定の市町村及び隣接する市町村に店舗面積等を通知して中心市街地の活性化の見地から意見等を聴取したりなどしていたのは、9道県にとどまっていた。

上記に関して、基本計画の作成時において、都道府県が大型店の立地に関して広域的な調整を図るための条例等を定めていた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例3> 都道府県が広域的な土地利用を目的として、市町村において、大型店の立地できる地域や立地できる大型店の店舗面積を定めていた事例

計画期間 摘要
市計画期間
平成20年以降
兵庫県
広域土地利用プログラムの作成 18年9月

兵庫県では、大型店の立地に際して、大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例(平成17年兵庫県条例第40号)及び大規模集客施設影響調査指針(17年策定)に基づき、「大規模な集客施設の立地誘導・抑制に係る広域土地利用プログラム(18年9月)」(以下「プログラム」という。)との整合性を条例の手続において求めている。

プログラムは、広域的な土地の利活用を目的として、郊外での大型店の立地が雇用の促進、娯楽の場の提供、消費者ニーズの充足等の効果がある一方、中心市街地の衰退につながるなどとして、都市構造に広域的な影響を与える大型店の適正な立地を図るために定められたものである。

プログラムによると、臨海部を中心とした尼崎市等の22市町を対象として、市町において、大型店の立地を誘導する地域を「商業ゾーン」として指定し、立地が可能な大型店の店舗面積の制限のないゾーン、上限20,000m2のゾーン、10,000m2のゾーンに区分している。そして、商業ゾーン以外の地域では大型店の立地を抑制するために、立地できる店舗面積の上限を6,000m2にしている。

そして、プログラムは、県及び市町が目指す都市づくりの方向との整合性を図るために、県の都市計画区域マスタープラン及び市町の都市計画マスタープランを踏まえて作成されており、県は、市町において、プログラムを市町の都市計画マスタープランに位置付けるなどして、市町が大型店の立地の誘導や抑制を図るべき区域について定めるなど、地域の実情に応じたきめ細かな土地の利活用が行われることを期待しているとしている。

そこで、認定基本計画を実施する8市のうち、プログラムの対象区域とされている6市についてみたところ、各市ともにプログラムに基づいた大型店の立地の誘導や抑制を図ることとしていた。

b 経済活力向上事業の実施による商業地域の活性化

(a) 中心市街地区域内への大型店の立地状況

中心市街地区域内への大型店の立地は、商業集積による中心市街地の商業機能の強化や地域商店街との相乗効果によるにぎわいの創出をもたらすなど、中心市街地の活性化への効果が期待されるため、中心市街地への大型店の立地の促進は認定基本計画の実施に当たり重要な取組として位置付けられることが多い。

そして、90市において認定基本計画期間中に中心市街地区域内に開店するなどした大型店は、32市で55店舗となっていた。

(b) 大店立地法の特例措置の活用状況

a(c)のとおり、大店立地法によると、大型店の周辺の地域の生活環境の保持のために、都道府県は、大型店が立地する市町村から交通渋滞、騒音等の生活環境の保持の見地からの意見を聴き、聴取した意見に配意するなどして、大型店を新設する者に、届出に係る大型店の周辺の地域の生活環境の保持の見地からの意見を書面で述べることとなっている。

一方、市町村では、商業機能の郊外移転が中心市街地の商業機能の低下の要因となっていることから、1(1)エ(イ)のとおり、中心市街地区域内への大型店の迅速な立地の促進のために、大店立地法の特例措置を活用している。大店立地法の特例措置によると、大型店の新設の際の届出が不要となるほか、届出から開店までの8か月間の開店制限(注9)を不要とするなどの大店立地法の規制を緩和する特例区域を設定することが可能となっている。

(注9)
8か月間の開店制限  大店立地法第5条第4項の規定によれば、第1項の規定による届出をした者は、当該届出の日から8月を経過した後でなければ、当該届出に係る大規模小売店舗の設置をしてはならないとされている。

そこで、90市について、認定基本計画における大店立地法の特例措置の活用状況をみたところ、図表2-1-39のとおり、25市は大店立地法の特例措置を活用していたが、65市は活用していなかった。

そして、活用していなかった65市と活用していた25市の別に、認定基本計画期間中の中心市街地区域内への大型店の立地状況をみたところ、活用していなかった65市では、認定基本計画期間中に34店舗が中心市街地区域内に新設の届出を行っていた。これらの34店舗は、大店立地法の特例措置が受けられなかったため、このうち6店舗は認定基本計画期間中に新設の届出を行っていたものの、認定基本計画期間が終了してから2か月から9か月後に開店していて、立地による集客効果が現れたのが認定基本計画期間終了後となっていた。一方、活用していた25市では、21店舗が中心市街地区域内に認定基本計画期間中に開店しており、立地による集客効果が認定基本計画期間中に発現できる状況となっていた。

図表2-1-39 大店立地法の特例措置の活用状況と中心市街地区域内への大型店の立地状況

(単位:市、店舗))
実地検査実施市  
大店立地法の特例措置を活用していた市   大店立地法の特例措置を活用していなかった市  
認定基本計画期間中に新設の届出をした店舗  
認定基本計画期間中に開店した店舗 認定基本計画期間終了後に開店した店舗
90 25 21(15) 65 34 6

(注) ( )内の数字は中心市街地区域内のうち、特例区域に立地した店舗数である。

そして、大店立地法の特例措置を活用していた25市と活用していなかった65市について、18年度から28年度までの間に中心市街地区域内に立地した大型店の店舗面積の変化を比較したところ、図表2-1-40のとおり、1,000m2を超える大型店の店舗面積が増加していたのは、大店立地法の特例措置を活用していた市では14市(25市に占める割合56.0%)となっていたのに対して、大店立地法の特例措置を活用していなかった市では22市(65市に占める割合33.8%)にとどまっていた。

また、中心市街地への集客効果が大きいと考えられる店舗面積5,000m2以上の大型店の店舗面積は、大店立地法の特例措置を活用していた市では8市(25市に占める割合32.0%)において増加していた一方、大店立地法の特例措置を活用していなかった市で増加していたのは11市(65市に占める割合16.9%)にとどまっていた。

図表2-1-40 中心市街地区域内に立地した大型店の店舗面積の変化

図表2-1-40 中心市街地区域内に立地した大型店の店舗面積の変化 画像

(c) 空き店舗対策事業の実施状況

基本方針等によれば、中心市街地の活性化のためには、中心市街地における商業施設等の整備、空き店舗の活用、商店街のリニューアル等の経済活力向上事業を地域の実情に合わせて選択し、集中的に実施することが重要で、これらの事業が一体として相乗効果を生み出すように行うことが必要とされている。

そして、90市が基本計画の認定申請を行った要因をみたところ、図表2-1-41のとおり、87市は、中心市街地における商業集積の低下や空洞化の進行又は中心市街地の商店街の空き店舗の増加があったとしていて、中心市街地における商業集積や空き店舗の解消は中心市街地の活性化において重要な取組となっている。

図表2-1-41 基本計画の認定申請の要因

基本計画の認定申請の要因 市数
ア 商業集積の低下や空洞化の進行及び中心市街地の商店街の空き店舗の増加
65
イ 商業集積の低下や空洞化の進行
15
ウ 中心市街地の商店街の空き店舗の増加
7
エ ア~ウ以外
3
90

また、90市における18年度から28年度までの商業活性化の事業等の実施状況をみたところ、出店した事業者に対して店舗の賃借料の一部を補助するなどの商業活性化に係る事業を81市で計621事業、事業者が出店する際にその開業資金の融資を行うなどの金融支援事業を68市で計244事業実施していた。

このような状況の下、各市は基本計画の認定を受けており、90市の134計画をみたところ、図表2-1-33のとおり、認定事業8,594事業中、3,843事業が経済活力向上事業として位置付けられており、これらの事業は、市が実施している上記商業活性化の事業等のほか、地域の商店街や民間事業者が実施するイベント等の多様な事業となっていた。

そこで、90市の134計画について空き店舗対策のための事業の有無をみたところ、84市の126計画において、1計画当たり1事業から16事業、計509事業の空き店舗対策のための事業が位置付けられていた。

空き店舗対策のための事業を認定基本計画に位置付けていた84市の126計画について、認定基本計画の開始年度から28年度までの空き店舗数の把握状況をみたところ、図表2-1-42のとおり、空き店舗数を毎年度把握していたのは、61市の79計画となっていて、29市の42計画は、毎年度は把握しておらず、このうち9市の14計画は、空き店舗数について一度も把握していなかった。

図表2-1-42 84市の126計画に係る空き店舗数の把握状況

空き店舗数の把握状況 市数 計画数
毎年度把握していたもの 61 79
毎年度は把握していなかったもの 29 42
  一度も把握していなかったもの 9 14
  • 注(1) 平成29年3月に認定を受けて、認定基本計画の開始が29年4月となっているものが5計画あるため、上記計画数の合計は121計画となっている。
  • 注(2) 複数期の計画を実施している市があるため、上記の市数を合計しても84市にならない。

(d) 多重制限等の活用の有無による空き店舗数の状況

中心市街地の空洞化の要因とされている大型店の郊外への立地や、中心市街地からの撤退を抑制するための取組が、中心市街地の空き店舗数に与えている影響をみるために、中心市街地の空き店舗数を18年度から28年度までの間に複数年で把握していた73市について、空き店舗数の増減の状況をみたところ、図表2-1-43のとおり、多重制限等又は大店立地法の特例措置のいずれかを活用していた27市では半数以上の16市において空き店舗数が減少していたのに対して、どちらも活用していなかった46市において減少していたのは13市となっていて、多重制限等又は大店立地法の特例措置の活用が、中心市街地区域内の空き店舗数の減少に寄与している状況が見受けられた。

図表2-1-43 多重制限等又は大店立地法の特例措置の活用の有無による空き店舗数の状況

図表2-1-43 多重制限等又は大店立地法の特例措置の活用の有無による空き店舗数の状況 画像

ウ 評価の実施状況

第1の2(3)カのとおり、市町村が、認定基本計画の実施の効果を着実に発現し、中心市街地の活性化を達成するためには、認定基本計画の実施状況についてフォローアップを実施し、当該結果に基づき認定基本計画期間中及び認定基本計画期間終了後に、認定事業の効果の検証、改善及び実施を行い、PDCAサイクルを確立することが重要である。

基本方針等によれば、市町村は、フォローアップの実施に当たっては、認定基本計画の目標の達成状況について、定量的に評価することが望ましいとされ、最終フォローアップにおいては、認定事業が予定どおり進捗して完了したか評価を行い、中心市街地の活性化が図られたかについても評価を行うこととなっている。そして、最終フォローアップに係る報告書には、市町村による評価に加え、協議会の意見や市民意識の変化を記載することとなっている。

(ア) 認定基本計画における指標の設定状況

基本方針等によれば、中心市街地の活性化の目標は、①人口減少・少子高齢社会の到来に対応した、高齢者も含めた多くの人にとって暮らしやすい、多様な都市機能がコンパクトに集積した、歩いて暮らせる生活空間を実現すること、②地域住民、事業者等の社会的、経済的及び文化的活動が活発に行われることにより、より活力ある地域経済社会を確立することであるとされており、これらを踏まえて、市町村は、認定基本計画において、活性化に係る目標を定めることとなっている。

そして、基本方針等では、「にぎわいの創出」「街なか居住の推進」「経済活力の向上」及び「公共交通の利便の増進」といった4種類の目標分類が示されており、また、設定された定性的な目標の達成状況を定量的に把握することを目的として、目標の達成度合を測定するための指標を設定することとされている。この指標は、「通行量」等の7種類に大別することができる。

会計実地検査を行った90市の134計画のうち、1回以上フォローアップが実施された88市の129計画について目標及び指標の設定状況をみたところ、図表2-1-44のとおり、上記の「にぎわいの創出」等4種類の目標分類で計354目標が設定されており、これらの目標の達成状況を把握するために上記の「通行量」等7種類の指標分類で計404指標が設定されていた。

図表2-1-44 目標及び指標の設定状況

目標分類 指標分類
  設定数   設定数
にぎわいの創出 169 ①通行量 125
②居住人口 0
③販売額 3
④空き店舗数 7
⑤施設入込数 44
⑥公共交通機関の利用者数 3
⑦その他 24
小計 206
街なか居住の推進 96 ①通行量 0
②居住人口 84
③販売額 0
④空き店舗数 0
⑤施設入込数 11
⑥公共交通機関の利用者数 0
⑦その他 2
小計 97
経済活力の向上 74 ①通行量 12
②居住人口 0
③販売額 19
④空き店舗数 29
⑤施設入込数 6
⑥公共交通機関の利用者数 0
⑦その他 26
小計 92
公共交通の利便の増進 15 ①通行量 1
②居住人口 0
③販売額 0
④空き店舗数 0
⑤施設入込数 3
⑥公共交通機関の利用者数 11
⑦その他 0
小計 15
354 404
  • 注(1) 88市の129計画を対象としている。
  • 注(2) 二つの異なる目標に寄与するとされている同一の指標が重複して設定数に計上されているため、小計を合計しても404指標とは一致しない。

市は、これらの指標について、目標値を算定している。そして、基本方針等によれば、目標値は、主要事業の効果を踏まえて合理的な方法で算定することとされている。

そこで、88市の129計画に係る404指標のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、目標値の達成状況をみたところ、図表2-1-45のとおり、168指標(239指標に占める割合70.2%)が目標値を達成しておらず、このうち114指標(168指標に占める割合67.8%)については、基準値に達していない状況となっていた。

さらに、目標値の達成状況を指標分類ごとにみると、通行量や居住人口、販売額に分類される指標の達成割合は25.0%以下と、他の指標と比較して目標値の達成状況が低調となっており、特に販売額に係る達成割合は5.0%にとどまっていた。

図表2-1-45 指標分類ごとの目標値の達成状況

指標分類 最終フォローアップの対象となった指標数
(①)
最終フォローアップの評価結果
目標値達成の指標数(②) 目標値未達成の指標数(③)
  達成割合
(%)
(②÷①)
評価結果の内訳   未達成割合
(%)
(③÷①)
評価結果の内訳
基準値以上の指標数 基準値未満の指標数(④) 目標値未達成の指標数に占める割合(%)
(④÷③)
A a   B b   C c
①通行量 84 21 25.0 17 4 63 75.0 18 15 3 45 38 7 71.4
②居住人口 54 13 24.0 13 0 41 75.9 10 7 3 31 19 12 75.6
③販売額 20 1 5.0 0 1 19 95.0 1 0 1 18 14 4 94.7
④空き店舗数 14 5 35.7 4 1 9 64.2 5 5 0 4 2 2 44.4
⑤施設入込数 37 15 40.5 15 0 22 59.4 14 12 2 8 5 3 36.3
⑥公共交通機関の利用者数 9 4 44.4 3 1 5 55.5 3 1 2 2 2 0 40.0
⑦その他 21 12 57.1 9 3 9 42.8 3 2 1 6 6 0 66.6
239 71 29.7 61 10 168 70.2 54 42 12 114 86 28 67.8
  • 注(1) 74市の80計画に係る239指標を対象としている。
  • 注(2) 最終フォローアップにおける評価結果は次のとおりである。
    • A:計画した事業はおおむね予定どおり進捗・完了。さらに、最新の実績でも目標値を超えることができた。
    • a:計画した事業は予定どおり進捗・完了しなかった。一方、最新の実績では目標値を超えることができた。
    • B:計画した事業はおおむね予定どおり進捗・完了。一方、最新の実績では基準値は超えることができたが、目標値には及ばなかった。
    • b:計画した事業は予定どおり進捗・完了しなかった。また、最新の実績では基準値を超えることができたが、目標値には及ばなかった。
    • C:計画した事業はおおむね予定どおり進捗・完了。一方、最新の実績では目標値及び基準値にも及ばなかった。
    • c:計画した事業は予定どおり進捗・完了しなかった。また、最新の実績では目標値及び基準値にも及ばなかった。

そして、市は、目標値の算定の合理性を確保するために、図表2-1-46の③のとおり、基準値が社会経済情勢により認定基本計画期間終了時点までにどのように変動するかを推計(以下、推計した指標値を「推計値」という。)し、推計値に目標値の達成に寄与する全ての主要事業に係る指標値の改善量の見込み(以下「見込み改善量」という。)を合算するなどして目標値を算定している。なお、見込み改善量は、1事業単位で算定されている場合(図表2-1-46中のA)と、複数事業を総合して算定されている場合(図表2-1-46中のB)がある。

図表2-1-46 指標の設定から中心市街地の活性化に係る取組における評価結果の反映に至る一連の流れ

図表2-1-46 指標の設定から中心市街地の活性化に係る取組における評価結果の反映に至る一連の流れ 画像

88市の129計画に係る404指標について、主要事業の選定状況及び当該主要事業の見込み改善量の算定状況をみたところ、図表2-1-47のとおり、ハード事業やソフト事業計2,533事業(注10)が選定されており、これらの主要事業に係る見込み改善量は、1,204事業では1事業単位で算定され、1,329事業では複数事業を総合して算定されていた。

さらに、見込み改善量の算定状況を主要事業の事業種別でみてみると、見込み改善量が1事業単位で算定されていた1,204事業のうち759事業(1,204事業に占める割合63.0%)がハード事業、445事業(同36.9%)がソフト事業となっていたのに対して、見込み改善量が複数事業を総合して算定されていた1,329事業のうち、558事業(1,329事業に占める割合41.9%)がハード事業、771事業(同58.0%)がソフト事業となっており、ソフト事業では見込み改善量を1事業単位で算定することが必ずしも容易でない状況が見受けられた。

(注10)
2,533事業  同一の主要事業が複数の指標に対応している場合、同一の主要事業を重複して計上しているため、主要事業は延べ事業数となっている(以下同じ。)。

図表2-1-47 主要事業に係る見込み改善量の算定状況等

指標分類 設定数 対応する主要事業数
  見込み改善量が1事業単位で算定されていた主要事業数 見込み改善量が複数事業を総合して算定されていた主要事業数
  ハード事業 ソフト事業   ハード事業 ソフト事業
  割合
(%)
  割合
(%)
  割合
(%)
  割合
(%)
①通行量 135 1,144 516 365 70.7 151 29.2 628 282 44.9 346 55.0
②居住人口 84 345 198 147 74.2 51 25.7 147 69 46.9 78 53.0
③販売額 22 142 49 31 63.2 18 36.7 93 35 37.6 58 62.3
④空き店舗数 36 135 73 27 36.9 46 63.0 62 17 27.4 45 72.5
⑤施設入込数 64 368 176 93 52.8 83 47.1 192 66 34.3 126 65.6
⑥公共交通機関の利用者数 14 125 39 25 64.1 14 35.8 86 31 36.0 55 63.9
⑦その他 49 274 153 71 46.4 82 53.5 121 58 47.9 63 52.0
404 2,533 1,204 759 63.0 445 36.9 1,329 558 41.9 771 58.0

(注) 88市の129計画に係る404指標を対象としている。

また、(1)エのとおり、基本方針等では、基本計画の作成に当たり、市町村が定める都市計画等との適合又は調和を確認することが必要であるとされていることから、認定基本計画と「都市再生特別措置法」(平成14年法律第22号)等に基づき都市の再生を実現するために作成された都市再生整備計画との調和が図られているかみたところ、次のような状況となっていた。

88市の129計画のうち、59市の81計画において、都市再生整備計画で定められた指標と共通する指標が設定されていた。このうち45市の63計画は、都市再生整備計画の事業による効果を含めて目標値を算定していたが、16市の18計画は、当該効果を含めることなく目標値を算定しており、認定基本計画と都市再生整備計画との調和が十分図られていない状況となっていた。

上記の事態に関して、基本計画の作成時に設定した指標の目標値に、都市再生整備計画の事業による効果を含めていなかった事例を示すと次のとおりである。

<事例5> 基本計画の作成時に設定した指標の目標値に、都市再生整備計画の事業による効果を含めていなかった事例

計画期間 摘要
平成22年3月から
27年3月まで
青森県十和田市
指標 歩行者・自転車通行量
目標値 2,700人

十和田市は、認定基本計画(平成22年3月から27年3月まで)において、「芸術・歴史・文化を活かした魅力的な市街の形成を図る」ことを目標の一つとして掲げ、当該目標の達成状況を測定するための指標として「歩行者・自転車通行量」を設定していた。そして、目標値を推計値である1,748人から2,700人に増加させるために、観光情報の提供や観光プログラムの開発、観光情報施設の整備、さらには、アートを取り入れた景観づくりや商業施設の整備等の主要事業7事業を実施し、認定基本計画期間終了後の27年5月に公表した最終フォローアップにおいては、実績値が2,665人となっており、当該指標についての評価はB評価、認定基本計画についての市の最終評価は、若干の活性化が図られたとしていた。

一方、認定基本計画には、上記7主要事業のほかに歩道の段差解消等の回遊性を向上させるために道路を整備する都市再生整備計画に基づく事業も位置付けられており、都市再生整備計画によると、当該事業を実施することにより商業コアゾーンの歩行者・自転車通行量が114人増加することが見込まれるとしていた。

しかし、同市は、認定基本計画で設定した「歩行者・自転車通行量」の目標値に、都市再生整備計画に基づく事業の実施による歩行者・自転車通行量の増加分を含めていなかった。

(イ) フォローアップにおける実績の評価状況

前記のとおり、フォローアップの実施に関して、市町村は、実績値を測定して当該実績値を評価することとなっている。そして、市町村は、フォローアップにおいて、当該実績値に係る評価を踏まえて、完了した主要事業に係る見込み改善量と実績改善量を比較することなどを通じて主要事業の効果を事業単位で評価して、認定基本計画期間中又は認定基本計画期間終了後に、当該事業の実施方法を変更したり、必要に応じて新規事業を追加したりすることで、評価の結果を中心市街地の活性化に係る取組に反映することとしている。

このため、市町村は、フォローアップにおいて、実績値の測定を正確に行い、当該実績値を合理的に評価した上で、主要事業の事業単位での効果を正確に評価することが重要となっている。

a 実績値の評価

基本方針等によれば、市町村は、定期フォローアップにおける実績値に係る評価について、測定した実績値に基づき、次の五つの分類から、認定基本計画期間終了時点での目標値の達成に関する見通しを選択することとされている。

  • ①取組(事業等)の進捗状況が順調であり、目標達成可能であると見込まれる
  • ②取組の進捗状況はおおむね予定どおりだが、このままでは目標達成可能とは見込まれず、今後対策を講じる必要がある
  • ③取組の進捗状況は予定どおりではないものの、目標達成可能と見込まれ、引き続き最大限努力していく
  • ④取組の進捗に支障が生じているなど、このままでは目標達成可能とは見込まれず、今後対策を講じる必要がある
  • ⑤取組が実施されていないため、今回は評価対象外(26年3月の基本方針等の改正により分類から削除されている。)

そこで、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、最終フォローアップの直前の定期フォローアップ(注11)における認定基本計画期間終了時点での目標達成の見通しの選択状況と目標値の達成状況をみたところ、図表2-1-48のとおり、上記の①又は③が選択され認定基本計画期間終了時点での目標達成が可能であるとされていた152指標のうち、81指標(152指標に占める割合53.2%)は、最終フォローアップにおいて目標値が達成されていなかった。

そして、目標値が達成されていなかった81指標のうち26指標は、定期フォローアップ時点で実績値が基準値を下回っており、かつ、対応する主要事業の一部が認定基本計画期間中に着手されない又は完了しないことが判明していたにもかかわらず、認定基本計画期間中に目標値は達成可能であると判断されており、市による実績値の評価が合理的であったとは認められない状況となっていた。

(注11)
定期フォローアップには、市が独自に実施してその結果を内閣府に報告しなかったものを含む。

図表2-1-48 定期フォローアップにおいて認定基本計画期間終了時点での目標達成が可能とされた指標の最終フォローアップにおける目標値の達成状況

最終フォローアップの対象となった指標数
  最終フォローアップの直前の定期フォローアップにおいて、認定基本計画期間終了時点での目標達成が困難とされた指標数 最終フォローアップの直前の定期フォローアップにおいて、認定基本計画期間終了時点での目標達成が可能であるとされていた指標数
  最終フォローアップで目標値が達成されていた指標数 最終フォローアップで目標値が達成されていなかった指標数
  定期フォローアップ時点で実績値が基準値未満となっていた指標数
  定期フォローアップ時点で、主要事業の一部が認定基本計画期間中に着手されない又は完了しないことが判明していた指標数
  割合
(%)
  割合
(%)
  割合
(%)
239 82 152 71 46.7 81 53.2 43 53.0 26
  • 注(1) 74市の80計画に係る239指標を対象としている。
  • 注(2) 平成21年度以降の定期フォローアップにおいて実績値の測定が実施されなかった指標が5指標あるため、認定基本計画期間終了時点での目標達成が困難とされた指標数(82指標)と認定基本計画期間終了時点での目標達成が可能であるとされていた指標数(152指標)を合計しても74市の80計画に係る指標数(239指標)と一致しない。

また、実績値の評価の合理性を確保するためには、正確な実績値の測定が不可欠であり、基本方針等によれば、フォローアップにおいて、基準値を測定した条件と同一の条件で実績値を測定することが必要であるとされている。しかし、定期フォローアップや最終フォローアップにおいて、実績値が基準値と異なる条件で測定されている指標も見受けられた。

上記の事態に関して、市が、定期フォローアップにおいて基準値と異なる条件で測定を行った実績値に基づき、認定基本計画期間終了時点での目標達成は可能であると評価していたが、最終フォローアップにおいて基準値と同様の条件で実績値をみたところ目標値を達成していなかった事例を示すと次のとおりである。

<事例6> 定期フォローアップにおいて基準値と異なる条件で実績値を測定しており、最終フォローアップにおいて目標値を達成していなかった事例

計画期間 摘要
平成21年3月から
26年3月まで
静岡県静岡市<清水地区>
指標 歩行者通行量
定期フォローアップ 24年3月
最終フォローアップ 26年5月

静岡市は、認定基本計画<清水地区>(平成21年3月から26年3月まで)において、「魅力がつながるみなとまち(つながりの強化)」を目標の一つとして掲げ、当該目標の達成状況を測定するための指標として「歩行者通行量」を設定し、目標値を推計値の5,116人/日から8,400人/日に増加させることとしていた。

同市は、24年3月に公表した定期フォローアップにおいて、実績値が15,698人/日となっていたことから、取組の進捗状況が順調であり、目標達成が可能であるとし、追加事業の実施等の方策を講じていなかった。

しかし、上記の定期フォローアップにおける実績値は、測定時の近傍において実績値に影響を与えるイベントが開催されており、イベントの開催のない日に測定された基準値とは異なる条件で測定されたものとなっていた。そして、当該指標について、実績値に影響を与えるイベントと重ならない日に歩行者通行量を測定した26年5月に公表した最終フォローアップでは、実績値は7,395人/日となり、目標値を達成できていなかった。

b 主要事業の評価

基本方針等によると、市町村は、実績値の測定に基づく指標の評価とは別に、新規事業の追加や事業の実施方法の見直しなどに反映するため、主要事業の効果を事業単位で評価することとしている。

そして、市町村は、図表2-1-49のとおり、見込み改善量が1事業単位で算定されている主要事業については、見込み改善量と実績改善量を比較することによりその効果の検証を行うこととなっている。一方、見込み改善量が複数事業を総合して算定され、このような比較ができない場合については、基本方針等において、目標全体からみた達成状況をフォローアップに係る報告書に記載することとされているが、効果の定量的な評価方法は具体的に定められていない。このように、見込み改善量と実績改善量を比較することができない場合の代替としての主要事業の評価には、イベントの実施回数や来場者数等の実績(以下「直接的事業実績」という。)の把握に基づく評価がある。

図表2-1-49 フォローアップにおける主要事業の効果の評価の流れ(概念図)

図表2-1-49 フォローアップにおける主要事業の効果の評価の流れ(概念図) 画像

そこで、見込み改善量が1事業単位で算定されている主要事業のうち、定期フォローアップの実施時点で完了していた1,135事業及び最終フォローアップの実施時点で完了していた494事業について、実績改善量と見込み改善量の比較が基本方針等に基づいて実施されているかをみたところ、定期フォローアップにおいては321事業(1,135事業に占める割合28.2%)で、最終フォローアップにおいては333事業(494事業に占める割合67.4%)で比較が実施されていた。

しかし、定期フォローアップにおいては、814事業(1,135事業に占める割合71.7%)で、最終フォローアップにおいては161事業(494事業に占める割合32.5%)で比較が実施されておらず、これらの主要事業は、その効果が事業単位で十分に評価されていない状況となっていた。

また、見込み改善量が複数事業を総合して算定されている主要事業のうち、定期フォローアップの実施時点で完了していた1,534事業及び最終フォローアップの実施時点で完了していた786事業について、市による直接的事業実績の把握状況をみたところ、図表2-1-50のとおり、市が直接的事業実績を把握していた主要事業は定期フォローアップにおいては317事業(1,534事業に占める割合20.6%)、最終フォローアップにおいては216事業(786事業に占める割合27.4%)となっていた。そして、その中には、市が直接的事業実績と実績値を比較して事業単位での効果を評価していて、主要事業の実施方法や継続の要否が検討されていたものも見受けられた。

そして、市が直接的事業実績を把握していなかった主要事業が全体に占める割合は、定期フォローアップで79.3%(1,217事業)、最終フォローアップで72.5%(570事業)となっており、これらの主要事業については、直接的事業実績が把握されておらず、その効果が事業単位で十分に評価されていない状況となっていた。

図表2-1-50 見込み改善量が複数事業を総合して算定されている主要事業の定期フォローアップ及び最終フォローアップにおける効果の評価状況

フォローアップの分類 フォローアップの対象となった指標数 左記の指標数に対応する主要事業数
  見込み改善量が複数事業を総合して算定されている主要事業数
  フォローアップ時点で完了していた主要事業数
  市が直接的事業実績を把握していなかった主要事業数 市が直接的事業実績を把握していた主要事業数
  把握された直接的事業実績と実績値との比較が行われていた主要事業数
 
割合
(%)
 
割合
(%)
定期フォローアップ 958 5,889 3,000 1,534 1,217 79.3 317 20.6 33
最終フォローアップ 239 1,662 971 786 570 72.5 216 27.4 53
  • 注(1) 定期フォローアップは、88市の129計画を対象としている。
  • 注(2) 最終フォローアップは、74市の80計画を対象としている。
  • 注(3) 定期フォローアップについては、複数回実施している市があるため、対象となった指標数及び指標数に対応する主要事業数は、延べ数となっている。
(ウ) 中心市街地の活性化に係る取組における評価結果の反映状況

前記のとおり、評価結果の中心市街地の活性化に係る取組への反映は、市町村において事業効果の検証、改善及び実施というPDCAサイクルを確立する上で不可欠となっており、旧法の改正や基本方針等によって創設された評価制度の中で重要な位置を占めている。

そこで、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標のうち、全ての定期フォローアップにおいて認定基本計画期間終了時点での目標達成が困難であるとされていた50指標について、定期フォローアップの評価結果の反映状況をみたところ、次のような状況となっていた。

50指標のうち26指標については、市が認定基本計画の変更に相当程度の時間を要すると判断したり、適当な改善策がないと判断したりするなどしていて、認定基本計画の見直しが実施されていなかった。そして、これらの認定基本計画の見直しが実施されていなかった26指標については、全ての指標が最終フォローアップにおいて目標値を達成していなかった。

また、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標のうち、II期の認定基本計画で継続して測定することとしているなどの指標116指標を除いた123指標について、市による最終フォローアップ後の実績値の測定状況及び測定されている場合の実績値の状況をみたところ、図表2-1-51のとおり、43指標については、最終フォローアップ後に実績値の測定が実施されておらず、実績値の評価に基づく主要事業の評価や、評価結果を中心市街地の活性化に係る取組に反映することができなくなっていた。一方、123指標のうちの80指標については、継続的に実績値を測定しており、中には、実績値に基づく主要事業の評価を反映した取組を行っているものも見受けられ、 80指標のうち26指標は、28年度末時点での実績値が目標値を達成していた。

図表2-1-51 最終フォローアップ後の実績値の状況

最終フォローアップの対象となった指標数
  II期の認定基本計画で継続して測定することとしているなどの指標数 左記以外の指標数
  市による継続的な測定が実施されていなかった指標数 市による継続的な測定が実施されていた指標数
  平成28年度末時点での実績値が、目標値を達成していた指標数 28年度末時点での実績値が、目標値を達成していなかった指標数
239 116 123 43 80 26 54
  • 注(1) 74市の80計画に係る239指標を対象としている。
  • 注(2) 指標によっては、統計調査の周期の関係等の理由で、平成28年度末に最新のデータを得られていない場合は、28年度末の近傍での実績値に基づき、目標値の達成状況を記載している。
(エ) 内閣府における中心市街地活性化施策に対する評価の実施状況

市による評価の実施状況は、(ア)から(ウ)のとおりとなっている一方、内閣府による評価については、定期的な評価の一つとして、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づく政策の評価(以下「政策評価」という。)が実施されている。同法によれば、行政機関は、所掌する政策について、適時に、その政策効果を政策の特性に応じた合理的な方法を用いてできる限り定量的に把握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価結果を当該政策に適切に反映させることとされている。

内閣府における政策評価は、「地方創生の推進」という政策の下に「基本計画の認定」を施策として位置付けて実施されている。

政策評価の測定指標は、実績値が基準値よりも改善された認定基本計画の指標の割合となっている。このため、市町村が実施した認定基本計画で設定されている目標値が達成されていない指標が多数あった場合でも、実績値が基準値よりも改善された指標が60%を超えた場合には国として目標達成という評価結果になる。そして、内閣府の28年度の実施施策に係る政策評価では、測定指標に基づく目標達成度合の測定結果は70%となっていて目標を達成したと評価されていた。一方、市町村が行う認定基本計画の最終フォローアップでは、実績値が目標値を超えた場合に目標を達成したと評価することとなっている。また、認定基本計画に位置付けられた取組の実績額については公表されていなかった。

2 中心市街地の活性化に関する施策の有効性

国は、中心市街地の活性化を効果的かつ効率的に推進するために、認定基本計画に基づく取組に対して重点的な支援を実施している。そして、市町村において幅広い選択が可能となるように、各府省庁が、法定措置、拡大支援措置、通常支援措置等の様々な支援措置を示している。

中心市街地の活性化については、中心市街地活性化法に基づき、中心市街地が地域の経済及び社会の発展に果たす役割の重要性に鑑み、国は、中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進するために、認定基本計画に基づく取組に対する支援として認定と連携した支援措置の創設に努め、市町村は、効果的に都市機能の増進及び経済活力の向上を推進するよう所要の施策を策定したり、実施したりする責務を有するとされている。

そこで、90市の認定基本計画における活用実績により国の支援措置の活用状況を分析した。そして、中心市街地の活性化の状況について、市の取組により都市機能の増進及び経済活力の向上が図られているか、中心市街地区域内人口、固定資産税収入額等の市において容易に把握可能な中心市街地の活性化に関連する一般的な指標(以下「活性化関連一般指標」という。)及び中心市街地区域内の空き店舗数等の市が独自に把握可能な中心市街地の活性化に関連する指標(以下「活性化関連独自指標」という。)の推移を分析するとともに、都市機能の増進及び経済活力の向上の状況について、会計検査院は、17、27両年度の国勢調査及び18、28両年度に総務省が公表している市町村別決算状況に基づき分析した。

(1) 国の支援措置の活用状況

認定基本計画に基づく取組に対する支援措置は、法定措置、拡大支援措置、通常支援措置及びその他の措置として基本方針等に示されており、市町村は、基本方針等に示されているこれらの支援措置を活用して、中心市街地の活性化を効果的に図ることとしている。

18年度から28年度までの間の各年度に、国が基本方針等で示している支援措置の数は、図表2-2-1のとおり、法定措置225措置、拡大支援措置193措置、通常支援措置265措置、その他の措置380措置、計1,063措置となっていた。

市町村は、これらの支援措置を活用して中心市街地の活性化を効果的に図ることとされているため、会計実地検査を行った90市の134計画で、18年度から28年度までの間の各年度に上記の1,063措置がどの程度活用されているかをみたところ、活用されていたのは法定措置26措置(支援措置として活用されていた割合11.5%)、拡大支援措置136措置(同70.4%)、通常支援措置180措置(同67.9%)、その他の措置102措置(同26.8%)となっていた。

拡大支援措置及び通常支援措置として示されている支援措置は、基本計画の認定を受けて行う事業のほか、通常の国庫補助事業として市町村が実施できる事業もあることから、活用実績は多くなっていた。

一方、活用されていなかった支援措置は1,063措置のうち619措置となっていて、このうち法定措置は199措置(活用されていなかった支援措置に占める割合32.1%)に上っていた。

また、法定措置は、18年度から28年度までの間の各年度において16措置から24措置が示されているが、活用されていた支援措置は、このうち、大店立地法の特例措置、中小小売商業高度化事業に係る特定民間中心市街地活性化事業計画の主務大臣認定、特定商業施設等整備事業に係る特定民間中心市街地活性化事業計画の主務大臣認定(18年度から20年度までの名称は、特定商業施設等整備事業に係る特定民間事業計画の主務大臣認定)、特定民間中心市街地経済活力向上事業計画の経済産業大臣認定、中心市街地共同住宅供給事業の5措置のみとなっていた。

そして、各支援措置の実施体制については、1(1)エのとおり、国、都道府県及び市町村間の連携が十分行われていない状況が見受けられた。

法定措置については、大店立地法の特例措置の実施による中心市街地活性化への影響等について大店立地法の特例措置の活用のための情報提供が15道県において十分でなかったことなどから、65市において大店立地法の特例措置が活用されていなかった。また、拡大支援措置については、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業について、留意事項の周知が十分でなく、中活課室等の中活ソフト特別交付税の内容についての理解も十分でなかったことなどから、43市において認定基本計画に適切に位置付けられていない状況となっていた。

図表2-2-1 支援措置の活用状況

(単位:措置)
府省庁名 法定措置 拡大支援措置 通常支援措置 その他の措置
府省庁別活用率
         
支援措置数
活用されていた支援措置数
活用されていなかった支援措置数
支援措置数
活用されていた支援措置数
活用されていなかった支援措置数
支援措置数
活用されていた支援措置数
活用されていなかった支援措置数
支援措置数
活用されていた支援措置数
活用されていなかった支援措置数
支援措置数
活用されていた支援措置数
活用されていなかった支援措置数
内閣府 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 6 4 10 6 4 60.0%
総務省 0 0 0 22 18 4 0 0 0 10 1 9 32 19 13 59.3%
文部科学省 0 0 0 0 0 0 0 0 0 38 26 12 38 26 12 68.4%
厚生労働省 0 0 0 0 0 0 0 0 0 70 16 54 70 16 54 22.8%
農林水産省 11 0 11 0 0 0 6 0 6 36 1 35 53 1 52 1.8%
経済産業省 85 23 62 44 22 22 28 22 6 61 12 49 218 79 139 36.2%
国土交通省 123 3 120 127 96 31 231 158 73 151 38 113 632 295 337 46.6%
警察庁
国土交通省
0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 2 2 4 2 2 50.0%
総務省
経済産業省
6 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 6 0.0%
支援措置別
225 26 199 193 136 57 265 180 85 380 102 278 1,063 444 619 41.7%
支援措置別
活用率
11.5% 70.4% 67.9% 26.8%

(注) 90市の134計画を対象としている。

(2) 中心市街地及び地域の活性化の状況

ア 市町村における中心市街地の活性化関連施策の実施状況

市町村は、認定基本計画に基づく中心市街地の活性化に取り組むとともに、都市のコンパクト化と地域の交通ネットワークの形成に取り組んでおり、都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画や都市再生整備計画、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(平成19年法律第59号)に基づく地域公共交通網形成計画、総務大臣が各都道府県知事等宛てに発した「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進について」(平成26年4月総財務第74号)に基づく公共施設等総合管理計画等に基づき、人口減少、高齢者の増加、拡散した市街地、公共施設等に対応した各種公共的サービスの効率性の向上等に取り組み、都市におけるコンパクト・プラス・ネットワークを実現することとしており、都市のコンパクト化は都市機能の増進に資するものとされている。

また、市町村は、都市計画法に基づき、市町村の都市計画に関する基本的な方針を作成していて、上記の各種計画は、都市計画に関する基本的な方針と調和を図るよう作成することとされており、さらに、基本方針等によれば、認定基本計画は、上記の各種計画と適合又は調和を図ることとされている。

(ア) 立地適正化計画

立地適正化計画では、都市機能を誘導するために都市機能誘導区域を設定しており、都市機能誘導区域内には、市域各所からの公共交通アクセス性に優れ、市民に行政中枢機能、相当程度の商業集積等の高次の都市機能を提供するとされる中心拠点区域が設定されている。

会計実地検査を行った90市のうち、立地適正化計画を作成していたのは34市となっており、34市の立地適正化計画における中心拠点区域と中心市街地区域の両区域の設定状況をみたところ、図表2-2-2のとおり、全て同一区域で設定していたのは4市、中心市街地区域が中心拠点区域を全て含む設定をしていたのは1市、中心市街地区域の一部又は全部が中心拠点区域に含まれる設定をしていたのは29市と、区域設定が区々となっていた。なお、26市は立地適正化計画を作成中で、30市は検討段階であるなどとして作成していなかった。

図表2-2-2 平成28年度末の中心市街地区域と中心拠点区域の設定状況

区域設定 市数
設定 全て同一区域で設定 4
中心市街地区域が中心拠点区域を全て含む設定 1
中心市街地区域の一部又は全部が中心拠点区域に含まれる設定 29
小計 34
未設定 立地適正化計画作成中 26
立地適正化計画未作成 30
小計 56
90
(イ) 公共施設の増減状況等

90市における公共施設の数は、図表2-2-3のとおり、認定基本計画実施前は市域全体で32,859施設、中心市街地区域内で1,869施設(全体の5.6%)であったものが、28年度末では市域全体で37,393施設、中心市街地区域内で2,188施設(同5.8%)となっていた。市域全体では32,859施設から37,393施設へと13.7%増加しているのに対して、中心市街地区域内では1,869施設から2,188施設へと17.0%の増加となっていて、公共施設数の増加率は、中心市街地区域内の方が市域全体よりも大きくなっていた。

また、中心市街地区域内の公共施設の利用状況について、利用者数を把握している94施設の認定基本計画実施前の利用者数と28年度の利用者数を比較したところ、27施設で利用者が減少していた一方で、67施設(全体の71.2%)で利用者が増加していた。

図表2-2-3 公共施設の増減状況

図表2-2-3 公共施設の増減状況 画像

イ 活性化関連一般指標の推移等

市は、認定基本計画の実施等に当たり、目標の達成状況を定量的に把握するために指標を設定し、評価して、必要に応じて認定基本計画の見直しを行い中心市街地の活性化に取り組むこととしており、1(2)ウのとおり、88市の129計画では404指標を設定するなどしている。これらを踏まえて、28年度末までに認定基本計画が終了した74市の80計画について、活性化関連一般指標である中心市街地区域内人口、都道府県地価調査価格、固定資産税収入額の指標の推移等をみたところ、次のような状況となっていた。

(ア) 人口の推移

74市の市域全体人口及び中心市街地区域内人口の推移は、図表2-2-4のとおりであり、市域全体人口は、18年度2026万人、28年度2014万人と18年度から28年度までの間の推移は微減となっていた。一方、74市の中心市街地区域内人口の合計は、18年度75万人、28年度77万人と微増となっていた。

図表2-2-4 市域全体人口及び中心市街地区域内人口の推移

(単位:千人)
年度
区分
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
市域全体人口 20,265 20,297 20,293 20,327 20,353 20,339 20,313 20,294 20,244 20,195 20,148
中心市街地区域内人口 752 756 757 759 760 761 765 769 769 769 770
  • 注(1) 74市を対象としている。
  • 注(2) 「中心市街地区域内人口」は、74市の住民基本台帳を基に算出している。
  • 注(3) 平成18年度の中心市街地区域内人口については、把握していない1市を除いている。

74市それぞれの中心市街地区域内人口について、18年度を100とした場合の28年度の状況をみると、図表2-2-5のとおり、最も増加しているのは139.2(東海市)、最も減少しているのは77.5(稚内市)、74市の平均は99.7となっていた。そして、18年度と比較して28年度に中心市街地区域内人口が増加しているのは29市(74市に占める割合39.1%)、減少しているのは45市(同60.8%)となっており、29市においては、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められる状況となっていた。

図表2-2-5 中心市街地区域内人口について、平成18年度を100とした場合の28年度の状況

市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況
小樽市 92.5 大野市 82.4 下関市 95.3
旭川市 100.0 越前市 85.2 山口市 114.9
帯広市 95.6 長野市 97.5 松山市 101.9
北見市 98.8 上田市 101.4 西条市 98.1
岩見沢市 95.3 飯田市 84.6 四万十市 93.0
稚内市 77.5 塩尻市 101.9 北九州市 124.6
滝川市 89.0 静岡市 106.0 久留米市 126.5
砂川市 88.7 浜松市 114.5 直方市 96.3
富良野市 92.4 沼津市 98.4 飯塚市 97.8
青森市 96.6 掛川市 83.4 諫早市 103.6
弘前市 93.4 藤枝市 117.7 大村市 112.7
八戸市 90.5 名古屋市 107.9 宮崎市 115.1
十和田市 84.4 豊橋市 93.6 日南市 88.6
三沢市 80.6 豊田市 106.1 日向市 109.0
山形市 98.7 東海市 139.2 74市  
鶴岡市 85.0 大津市 114.2 最大値 139.2
酒田市 85.1 長浜市 89.4 最小値 77.5
上山市 83.4 守山市 123.1 平均 99.7
日光市 84.2 神戸市 111.5 増加 29市
大田原市 82.7 姫路市 111.9 減少 45市
高崎市 115.8 尼崎市 114.2  
川越市 109.7 明石市 112.2
新潟市 121.3 伊丹市 129.9
長岡市 99.0 宝塚市 115.9
上越市 88.2 川西市 104.8
富山市 96.4 丹波市 96.7
高岡市 85.0 奈良市 96.7
金沢市 94.7 和歌山市 95.7
福井市 93.3 田辺市 81.3
敦賀市 90.2 松江市 95.9
  • 注(1) 74市を対象としている。
  • 注(2) 平成18年度の中心市街地区域内人口を把握していない市については19年度を100とした場合の状況である。
(イ) 都道府県地価調査価格の推移

18年度から28年度までの間の各年度の中心市街地区域内の都道府県地価調査価格を把握することができた74市内の217地点の都道府県地価調査価格の平均価格の推移は、図表2-2-6に示すとおりであり、18年度205,129円/m2、28年度182,433円/m2となっており、18年度から28年度までの推移は増減を繰り返しつつ、18年度と比較して28年度は下落している。

図表2-2-6 都道府県地価調査価格の推移

(単位:円/m2
年度
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
74市217地点の平均価格 205,129 212,961 218,684 197,608 185,661 178,028 173,477 172,140 173,039 176,384 182,433
  • 注(1) 74市を対象としている。
  • 注(2) 「都道府県地価調査価格」は、国土利用計画法(昭和49年法律第92号)による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するために、同法施行令(昭和49年政令第387号)に基づき、毎年1回基準地の標準価格を調査した結果を基に算出している。

74市それぞれについて中心市街地区域内の平均都道府県地価調査価格を算出し、18年度を100とした場合の28年度の状況をみると、図表2-2-7のとおり、最も上昇しているのは118.6(名古屋市)、最も下落しているのは54.4(大野市)、74市の平均は78.3となっていた。そして、18年度と比較して28年度に中心市街地区域内の都道府県地価調査価格が上昇しているのは10市(74市に占める割合13.5%)、下落しているのは64市(同86.4%)であり、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められるのは10市にとどまっていた。

図表2-2-7 都道府県地価調査価格について、平成18年度を100とした場合の28年度の状況

市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況
小樽市 59.4 大野市 54.4 下関市 57.8
旭川市 75.2 越前市 55.3 山口市 72.7
帯広市 76.5 長野市 76.6 松山市 94.2
北見市 60.6 上田市 71.0 西条市 82.3
岩見沢市 57.7 飯田市 64.3 四万十市 57.6
稚内市 73.3 塩尻市 86.4 北九州市 67.8
滝川市 57.9 静岡市 90.2 久留米市 64.7
砂川市 60.8 浜松市 101.3 直方市 70.4
富良野市 92.4 沼津市 85.2 飯塚市 60.3
青森市 57.5 掛川市 87.8 諫早市 70.3
弘前市 67.3 藤枝市 99.4 大村市 71.2
八戸市 56.2 名古屋市 118.6 宮崎市 74.4
十和田市 61.3 豊橋市 98.0 日南市 69.1
三沢市 67.0 豊田市 106.1 日向市 76.5
山形市 72.5 東海市 98.7 74市  
鶴岡市 68.2 大津市 108.9 最大値 118.6
酒田市 62.2 長浜市 93.6 最小値 54.4
上山市 61.7 守山市 114.6 平均値 78.3
日光市 62.8 神戸市 90.8 上昇 10市
大田原市 66.2 姫路市 93.6 下落 64市
高崎市 72.8 尼崎市 101.9  
川越市 110.9 明石市 86.3
新潟市 80.9 伊丹市 94.9
長岡市 72.8 宝塚市 100.0
上越市 68.0 川西市 90.8
富山市 98.6 丹波市 75.0
高岡市 63.6 奈良市 108.8
金沢市 106.9 和歌山市 82.6
福井市 71.5 田辺市 79.2
敦賀市 64.1 松江市 62.5

(注) 74市を対象としている。

(ウ) 固定資産税収入額の推移

74市においては、図表2-2-8のとおり、固定資産税収入額が地方税収入額の総額に占める割合は18年度42.3%、28年度41.2%となっており、18年度から28年度までの間の推移の中で一貫して地方税収入額の4割を占めている状況となっている。

図表2-2-8 固定資産税収入額及び地方税収入額の推移

図表2-2-8 固定資産税収入額及び地方税収入額の推移 画像

74市の固定資産税収入額の合計額の推移は、図表2-2-9に示すとおりであり、18年度の1兆3326億円から23年度の1兆3934億円まで増加した後、24年度に1兆3278億円に減少し、28年度に1兆3628億円となっており、回復基調となっている。一方、74市の住民1人当たりの固定資産税収入額の平均(以下「74市平均固定資産税収入額」という。)の推移は、18年度66,000円、28年度67,000円となっており、増減を繰り返しつつ、18年度と比較して28年度は増加している。

図表2-2-9 固定資産税収入額及び74市平均固定資産税収入額の推移

年度
区分
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
固定資産税収入額合計 1兆3326億円 1兆3520億円 1兆3706億円 1兆3707億円 1兆3869億円 1兆3934億円 1兆3278億円 1兆3380億円 1兆3541億円 1兆3445億円 1兆3628億円
74市平均固定資産税収入額 66千円 67千円 68千円 67千円 68千円 69千円 65千円 65千円 66千円 66千円 67千円
  • 注(1) 74市を対象としている。
  • 注(2) 「固定資産税収入額」は、総務省が公表している「市町村別決算状況」を基に算出している。

74市それぞれの住民1人当たりの固定資産税収入額について、18年度を100とした場合の28年度の状況をみると、図表2-2-10のとおり、最も増加しているのは140.8(上越市)、最も減少しているのは87.8(敦賀市)、74市の平均は100.8となっていた。そして、18年度と比較して28年度に住民1人当たりの固定資産税収入額が増加しているのは39市(74市に占める割合52.7%)、減少しているのは35市(同47.2%)であり、39市においては、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められる状況となっていた。

図表2-2-10 住民1人当たりの固定資産税収入額について、平成18年度を100とした場合の28年度の状況

市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況   市名 平成28年度の状況
小樽市 96.8 大野市 98.8 下関市 97.6
旭川市 99.6 越前市 94.3 山口市 91.1
帯広市 96.0 長野市 96.3 松山市 103.3
北見市 103.6 上田市 92.6 西条市 99.1
岩見沢市 99.5 飯田市 93.1 四万十市 99.1
稚内市 104.1 塩尻市 96.3 北九州市 96.2
滝川市 96.8 静岡市 101.4 久留米市 99.4
砂川市 104.1 浜松市 98.5 直方市 106.0
富良野市 109.3 沼津市 107.0 飯塚市 103.3
青森市 102.2 掛川市 101.3 諫早市 97.5
弘前市 105.2 藤枝市 103.4 大村市 100.6
八戸市 103.0 名古屋市 105.2 宮崎市 107.6
十和田市 100.9 豊橋市 98.4 日南市 100.6
三沢市 102.6 豊田市 101.1 日向市 110.7
山形市 93.4 東海市 100.3 74市  
鶴岡市 102.5 大津市 99.7 最大値 140.8
酒田市 97.4 長浜市 106.2 最小値 87.8
上山市 112.3 守山市 101.0 平均 100.8
日光市 97.2 神戸市 99.3 増加 39市
大田原市 94.8 姫路市 106.7 減少 35市
高崎市 96.9 尼崎市 102.0  
川越市 102.6 明石市 102.1
新潟市 99.0 伊丹市 95.5
長岡市 100.9 宝塚市 94.1
上越市 140.8 川西市 96.9
富山市 102.7 丹波市 107.7
高岡市 96.4 奈良市 101.1
金沢市 97.2 和歌山市 100.0
福井市 92.6 田辺市 106.8
敦賀市 87.8 松江市 101.4

(注) 74市を対象としている。

上記のとおり、活性化関連一般指標の数値が増加し、又は上昇している市においては、認定基本計画の実施が中心市街地の活性化に一定程度寄与していると思料される状況が見受けられる。一方、指標ごとに数値が増加し、又は上昇している市は区々となっていて、特定の指標だけで中心市街地の活性化の状況を評価することは困難であり、多様な指標による評価を検討することが必要であると思料された。

ウ 都市機能の増進及び経済活力の向上に関する指標の状況

イのとおり、活性化関連一般指標の推移等は、指標ごとに数値が増加し、又は上昇している市が区々となっていて、特定の指標だけで中心市街地の活性化の状況を評価することは困難な状況となっていた。そこで、会計検査院は、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における都市機能の増進及び経済活力の向上の状況について、17、27両年度の国勢調査及び18、28両年度に総務省が公表している市町村別決算状況に基づき設定した次のような指標により分析した。

① 都市コンパクト化指標

74市においては、認定基本計画の実施に当たり、都市機能の増進の状況について、人口集中地区と中心市街地の面積及び人口の分布や、居住施設の整備状況等の検討を行っている。これを踏まえて、人口集中地区の形成及び人口増加が都市のコンパクト化による都市機能の増進の状況を示す可能性が高い指標と見込まれることから、会計検査院は、都市機能の増進の状況に影響する指標(以下「都市コンパクト化指標」という。)として、人口集中地区の面積及び人口から算出される人口密度の増減率を設定した。

② 経済活力向上指標

74市においては、認定基本計画の実施に当たり、経済活力の向上の状況について、当該市の産業別の事業者数、商業等の売上高、都道府県地価調査価格及び固定資産税収入額の状況等の検討を行っている。これを踏まえて、市町村の地方税において主要な固定資産税収入額、市町村法人税収入額及び市町村住民税収入額の合算額(以下「主要地方税」という。)の増加が経済活力の向上の状況を示す可能性が高い指標と見込まれることから、会計検査院は、経済活力の向上の状況に影響する指標(以下「経済活力向上指標」という。)として主要地方税の増減率を設定した。

そして、74市の中心市街地区域内人口等の指標について、都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標を比較するなどして、分析した。

(ア) 都市コンパクト化指標の区分

17、27両年度の国勢調査の結果に基づく人口集中地区の人口密度の両年度間での増減率は、全国で2.6%、74市の所在する24道県で△6.8%から8.1%までとなっている。そこで、74市のうち同時期における人口集中地区の人口密度の増減率が全国及び当該市所在道県の増減率の両方を上回っている13市(74市に占める割合17.5%、増減率3.5%~31.0%)を都市コンパクト化指標の上位群、全国又は当該市所在道県の増減率のいずれかを上回っている20市(同27.0%、同△6.1%~4.1%)を都市コンパクト化指標の中位群、全国及び当該市所在道県の増減率の両方を下回っている41市(同55.4%、同△17.4%~2.6%)を都市コンパクト化指標の下位群として区分して人口集中地区の人口密度増減率を分析した。

上位群、中位群及び下位群のそれぞれに属する市は、図表2-2-11のとおりである。

図表2-2-11 人口集中地区の人口密度による都市コンパクト化指標の区分

区分 増減率 市数 割合
(%)
市名
上位群 3.5~31.0 13 17.5 砂川市、富山市、塩尻市、掛川市、藤枝市、東海市、守山市、姫路市、川西市、山口市、大村市、宮崎市、日南市
中位群 △6.1~4.1 20 27.0 弘前市、三沢市、山形市、高崎市、新潟市、上越市、金沢市、福井市、敦賀市、長野市、上田市、浜松市、名古屋市、大津市、伊丹市、宝塚市、和歌山市、松山市、四万十市、諫早市
下位群 △17.4~2.6 41 55.4 小樽市、旭川市、帯広市、北見市、岩見沢市、稚内市、滝川市、富良野市、青森市、八戸市、十和田市、鶴岡市、酒田市、上山市、日光市、大田原市、川越市、長岡市、高岡市、大野市、越前市、飯田市、静岡市、沼津市、豊橋市、豊田市、長浜市、神戸市、尼崎市、明石市、丹波市、奈良市、田辺市、松江市、下関市、西条市、北九州市、久留米市、直方市、飯塚市、日向市
74 100
  • 注(1) 74市を対象としている。平成17、27両年度の国勢調査において、いずれの年度も人口集中地区が掲載されていない丹波市については、全国及び同市の所在する県の増減率を下回っていると整理して、下位群に区分した。
  • 注(2) 「増減率」は、平成17、27両年度の国勢調査における人口集中地区の面積及び人口から算出される人口密度を基に算出している。

国勢調査が実施された17年度と27年度との間の74市の人口集中地区の人口密度の増減率は、図表2-2-12に示すとおりである。上位群、中位群及び下位群の別にみると、上位群の平均は8.2%、最大は31.0%(守山市)、最小は3.5%(富山市)となっており、増加しているのは13市となっていた。また、中位群の平均は0.0%、最大は4.1%(大津市)、最小は△6.1%(和歌山市)となっており、増加しているのは12市、減少しているのは8市となっていた。これに対して、下位群の平均は△4.5%、最大は2.6%(久留米市)、最小は△17.4%(大野市)となっており、増加しているのは7市にとどまっている一方、減少しているのは33市となっていた。

図表2-2-12 市別の人口集中地区の人口密度増減率

上位群   中位群   下位群
市名 平成17年度と27年度の間の人口集中地区の人口密度増減率(%) 市名 平成17年度と27年度の間の人口集中地区の人口密度増減率(%) 市名 平成17年度と27年度の間の人口集中地区の人口密度増減率(%)
砂川市 12.9 弘前市 △3.7 小樽市 △13.2
富山市 3.5 三沢市 △5.8 旭川市 △4.0
塩尻市 5.3 山形市 △0.2 帯広市 △2.1
掛川市 5.0 高崎市 2.0 北見市 △4.2
藤枝市 3.6 新潟市 1.3 岩見沢市 △4.3
東海市 7.3 上越市 △0.9 稚内市 △11.2
守山市 31.0 金沢市 2.0 滝川市 △10.8
姫路市 3.9 福井市 △0.9 富良野市 △3.9
川西市 4.3 敦賀市 0.5 青森市 △7.4
山口市 6.4 長野市 0.9 八戸市 △7.7
大村市 6.9 上田市 1.9 十和田市 △7.8
宮崎市 3.7 浜松市 1.0 鶴岡市 △4.8
日南市 13.9 名古屋市 3.5 酒田市 △11.5
13市   大津市 4.1 上山市 △4.0
平均値 8.2 伊丹市 2.3 日光市 △8.4
最大値 31.0 宝塚市 1.6 大田原市 0.5
最小値 3.5 和歌山市 △6.1 川越市 2.3
増加 13市 松山市 1.4 長岡市 △2.1
減少 0市 四万十市 △2.9 高岡市 △3.9
  諫早市 △1.5 大野市 △17.4
20市   越前市 △8.1
平均値 0.0 飯田市 △8.2
最大値 4.1 静岡市 △0.7
最小値 △6.1 沼津市 △9.2
増加 12市 豊橋市 1.0
減少 8市 豊田市 △0.7
  長浜市 △0.4
神戸市 △1.3
尼崎市 △3.6
明石市 0.7
奈良市 △2.3
田辺市 △10.8
松江市 0.5
下関市 △9.1
西条市 △4.0
北九州市 △2.2
久留米市 2.6
直方市 △2.7
飯塚市 △1.4
日向市 1.9
40市  
平均値 △4.5
最大値 2.6
最小値 △17.4
増加 7市
減少 33市

(注) 国勢調査において人口集中地区が存在しない丹波市を除く73市を対象としている。

(イ) 経済活力向上指標の区分

18、28両年度に総務省が公表している市町村別決算状況によると、主要地方税の両年度間の増減率は、全国で5.9%、74市の所在する24道県で△3.3%から16.4%までとなっている。そこで、74市のうち同時期における主要地方税の増減率が全国及び当該市所在道県の増減率の両方を上回っている15市(74市に占める割合20.2%、増減率6.1%~56.1%)を経済活力向上指標の上位群、全国又は当該市所在道県の増減率のいずれかを上回っている18市(同24.3%、同2.4%~12.8%)を経済活力向上指標の中位群、全国及び当該市所在道県の増減率の両方を下回っている41市(同55.4%、同△8.2%~5.8%)を経済活力向上指標の下位群として区分して主要地方税の増減率を分析した。

上位群、中位群及び下位群のそれぞれに属する市は、図表2-2-13のとおりである。

図表2-2-13 主要地方税による経済活力向上指標の区分

区分 増減率 市数 割合
(%)
市名
上位群 6.1~56.1 15 20.2 帯広市、北見市、富良野市、三沢市、高崎市、上越市、塩尻市、藤枝市、長浜市、守山市、明石市、松山市、大村市、宮崎市、日南市
中位群 2.4~12.8 18 24.3 弘前市、八戸市、十和田市、鶴岡市、上山市、富山市、越前市、長野市、神戸市、姫路市、伊丹市、丹波市、田辺市、松江市、山口市、直方市、飯塚市、日向市
下位群 △8.2~5.8 41 55.4 小樽市、旭川市、岩見沢市、稚内市、滝川市、砂川市、青森市、山形市、酒田市、日光市、大田原市、川越市、新潟市、長岡市、高岡市、金沢市、福井市、敦賀市、大野市、上田市、飯田市、静岡市、浜松市、沼津市、掛川市、名古屋市、豊橋市、豊田市、東海市、大津市、尼崎市、宝塚市、川西市、奈良市、和歌山市、下関市、西条市、四万十市、北九州市、久留米市、諫早市
74 100
  • 注(1) 74市を対象としている。
  • 注(2) 「増減率」は、総務省が公表している平成18、28両年度の市町村別決算状況における主要地方税を基に算出している。

18年度と28年度との間の74市の主要地方税の増減率は、図表2-2-14に示すとおりである。上位群、中位群及び下位群の別にみると、上位群の平均は16.3%、最大は56.1%(長浜市)、最小は6.1%(北見市)となっており、増加しているのは15市となっていた。また、中位群の平均は5.2%、最大は12.8%(日向市)、最小は2.4%(田辺市)となっており、増加しているのは18市となっていた。これに対して、下位群の平均は△0.6%、最大は5.8%(川越市及び久留米市)、最小は△8.2%(敦賀市)となっており、増加しているのは19市にとどまり、減少しているのは22市となっていた。

図表2-2-14 市別の主要地方税増減率

上位群   中位群   下位群
市名 平成18年度と28年度の間の主要地方税の増減率(%) 市名 平成18年度と28年度の間の主要地方税の増減率(%) 市名 平成18年度と28年度の間の主要地方税の増減率(%)
帯広市 6.4 弘前市 4.8 小樽市 △7.3
北見市 6.1 八戸市 3.2 旭川市 2.9
富良野市 9.8 十和田市 5.8 岩見沢市 0.4
三沢市 8.4 鶴岡市 5.1 稚内市 △2.8
高崎市 14.0 上山市 3.5 滝川市 1.6
上越市 18.5 富山市 5.2 砂川市 △0.8
塩尻市 7.4 越前市 3.1 青森市 △1.1
藤枝市 22.2 長野市 4.9 山形市 1.1
長浜市 56.1 神戸市 2.9 酒田市 △0.9
守山市 13.4 姫路市 5.0 日光市 △8.0
明石市 9.6 伊丹市 3.3 大田原市 △4.1
松山市 6.9 丹波市 3.6 川越市 5.8
大村市 14.4 田辺市 2.4 新潟市 4.3
宮崎市 19.7 松江市 11.8 長岡市 0.8
日南市 31.7 山口市 4.9 高岡市 △1.6
15市   直方市 6.4 金沢市 4.8
平均値 16.3 飯塚市 6.3 福井市 △1.6
最大値 56.1 日向市 12.8 敦賀市 △8.2
最小値 6.1 18市   大野市 △3.7
増加 15市 平均値 5.2 上田市 △0.2
減少 0市 最大値 12.8 飯田市 △2.0
  最小値 2.4 静岡市 2.7
増加 18市 浜松市 0.4
減少 0市 沼津市 △3.8
  掛川市 1.1
名古屋市 1.8
豊橋市 3.2
豊田市 3.4
東海市 △4.2
大津市 4.2
尼崎市 1.6
宝塚市 0.9
川西市 △3.0
奈良市 △3.9
和歌山市 △5.0
下関市 △3.3
西条市 △0.9
四万十市 0.2
北九州市 △2.6
久留米市 5.8
諫早市 △4.4
41市  
平均値 △0.6
最大値 5.8
最小値 △8.2
増加 19市
減少 22市

(注) 74市を対象としている。

(ウ) 都市コンパクト化指標と経済活力向上指標の比較

(ア)及び(イ)において都市コンパクト化指標又は経済活力向上指標により区分した74市について、それぞれの指標の上位群が他方の指標ではどの区分に該当するかみたところ、図表2-2-15のとおり、都市コンパクト化指標の区分で上位群となっていた13市のうち、6市は経済活力向上指標の区分が上位群、3市は中位群となっていた一方、4市は下位群となっていた。また、経済活力向上指標の区分で上位群となっていた15市のうち、6市は都市コンパクト化指標の区分が上位群、4市は中位群となっていた一方、5市は下位群となっていた。

図表2-2-15 都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標の区分

経済活力向上指標
上位群
15市
中位群
18市
下位群
41市
市数 市名 市数 市名 市数 市名
都市コンパクト化指標
上位群
13市
6 塩尻市、藤枝市、守山市、大村市、宮崎市、日南市 3 富山市、姫路市、山口市 4 砂川市、掛川市、東海市、川西市
中位群
20市
4 三沢市、高崎市、上越市、松山市 3 弘前市、長野市、伊丹市 13 山形市、新潟市、金沢市、福井市、敦賀市、上田市、浜松市、名古屋市、大津市、宝塚市、和歌山市、四万十市、諫早市
下位群
41市
5 帯広市、北見市、富良野市、長浜市、明石市 12 八戸市、十和田市、鶴岡市、上山市、越前市、神戸市、丹波市、田辺市、松江市、直方市、飯塚市、日向市 24 小樽市、旭川市、岩見沢市、稚内市、滝川市、青森市、酒田市、日光市、大田原市、川越市、長岡市、高岡市、大野市、飯田市、静岡市、沼津市、豊橋市、豊田市、尼崎市、奈良市、下関市、西条市、北九州市、久留米市

(注) 74市を対象としている。

このように、一方の指標で上位群に区分されたとしても、他方の指標では上位群、中位群及び下位群それぞれに区分が分散する状況が見受けられた。都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標がいずれも上位群となっている6市については、都市機能の増進と経済活力の向上がバランスよく推進されており、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められると思料された。また、都市コンパクト化指標又は経済活力向上指標の上位群のうち、いずれか一方が中位群となっていた7市(都市コンパクト化指標が上位群の3市、経済活力向上指標が上位群の4市)についても、都市機能の増進と経済活力の向上が一定程度推進されており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組を継続的に行うことが重要であると思料された。一方、一方の指標で下位群に区分されると、他方の指標についても下位群に区分される市が多くなっている状況が見受けられ、都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標がいずれも下位群となっている24市については、認定基本計画の実施の効果は限定的と考えられ、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

そして、1(2)ウのとおり、88市の129計画に係る404指標のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、目標値の達成状況をみたところ、図表2-1-45のとおり、70.2%の168指標が目標値を達成しておらず、114指標については、基準値に達していない状況となっていた。

そこで、74市が設定した指標の評価と都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標の区分についてみたところ、74市が設定した指標の評価については、図表2-2-16及び図表2-2-17のとおり、最終評価が「①かなり活性化が図られた」又は「②若干の活性化が図られた」となっている64市のうち、最終フォローアップにおける評価が基準値以上となるA評価又はB評価となっているのは9市、基準値未満となるC評価となっているのは9市となっていた。そして、基準値以上となっている9市のうち、都市コンパクト化指標の上位群となっているのは4市、このうち3市については経済活力向上指標も上位群となっていた。また、基準値未満となっている9市のうち、都市コンパクト化指標の上位群となっている市は該当がなく、下位群となっているのは8市、経済活力向上指標の上位群となっているのは2市、下位群となっているのは4市となっていた。

図表2-2-16 都市コンパクト化指標の区分と指標の達成状況

指標の達成状況 都市コンパクト化指標
上位群 中位群 下位群
区分 A B C 市数 市数 市数 市名 市数 市名 市数 市名
A、B - - 6 9 4 藤枝市、東海市、守山市、大村市 1 大津市 4 大野市、飯田市、豊田市、日向市
- 2
- - 1
C - - 9 9 0 1 上越市 8 小樽市、富良野市、八戸市、酒田市、日光市、丹波市、奈良市、直方市
  • 注(1) 最終評価が「①かなり活性化が図られた」又は「②若干の活性化が図られた」となっている64市のうち、最終フォローアップにおける評価が基準値以上となるA評価又はB評価となっている9市、基準値未満となるC評価となっている9市を対象としている。
  • 注(2) 指標の達成状況におけるA、B、Cの評価結果の内容については、図表2-1-45のとおりとなっており、Aはa、Bはb、Cはcを含んでいる。

図表2-2-17 経済活力向上指標の区分と指標の達成状況

指標の達成状況 経済活力向上指標
上位群 中位群 下位群
区分 A B C 市数 市数 市数 市名 市数 市名 市数 市名
A、B - - 6 9 3 藤枝市、守山市、大村市 1 日向市 5 大野市、飯田市、豊田市、東海市、大津市
- 2
- - 1
C - - 9 9 2 富良野市、上越市 3 八戸市、丹波市、直方市 4 小樽市、酒田市、日光市、奈良市
  • 注(1) 最終評価が「①かなり活性化が図られた」又は「②若干の活性化が図られた」となっている64市のうち、最終フォローアップにおける評価が基準値以上となるA評価又はB評価となっている9市、基準値未満となるC評価となっている9市を対象としている。
  • 注(2) 指標の達成状況におけるA、B、Cの評価結果の内容については、図表2-1-45のとおりとなっており、Aはa、Bはb、Cはcを含んでいる。

都市コンパクト化指標については、下位群12市のうち、4市では、指標の評価において基準値以上となっていて認定基本計画の実施の効果が一定程度発現しているものの、8市においては、指標の評価において基準値未満となっており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

経済活力向上指標については、下位群9市のうち、5市では、指標の評価において基準値以上となっていて認定基本計画の実施の効果が一定程度発現しているものの、4市においては、指標の評価において基準値未満となっており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

(3) 評価結果と活性化関連一般指標等との関係

評価制度の導入に伴い、市町村は、活性化関連一般指標を用いたり、活性化関連独自指標を設定したりして、指標の実績値を把握して目標値の達成状況を定量的に評価し、目標の達成に向けて中心市街地の活性化に取り組んでいる。

そこで、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における評価結果と74市の活性化関連一般指標及び74市が把握している活性化関連独自指標である中心市街地区域内の公共施設利用者数、鉄道駅乗降客数及び空き店舗数との関係について、分析した。

ア 認定基本計画の目標の達成状況

1(2)ウのとおり、88市の129計画に係る404指標のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、目標値の達成状況をみたところ、図表2-1-45のとおり、168指標(239指標に占める割合70.2%)が目標値を達成しておらず、114指標(168指標に占める割合67.8%)については、基準値に達していなかった。

74市が設定した指標の評価については、図表2-2-18のとおり、最終フォローアップ時点で、全ての指標が目標値を達成しているのは6市、全ての指標が基準値未満となっているのは13市となっていて、残りの55市はA、B又はCの評価結果が混在する形となっていた。また、基準値以上となっている指標が過半数となっているのは33市となっていた。そして、活性化関連一般指標である中心市街地区域内人口、市域全体における市推計法人所得、中心市街地区域内の都道府県地価調査価格及び市域全体における住民1人当たり固定資産税収入額の4指標の数値についてみたところ、活性化関連一般指標ごとに10市から39市がそれぞれ増加し、又は上昇しているが、28年度末時点で3指標又は4指標が向上しているのは8市となっており、指標の数値が増加し、又は上昇している市は指標ごとに区々となっていた。

また、活性化関連独自指標である中心市街地区域内の公共施設利用者数、鉄道駅乗降客数及び空き店舗の増減数についてみると、次のような状況となっていた(図表2-2-18参照)。

① 74市のうち、認定基本計画実施前と28年度の中心市街地区域内の公共施設利用者数を把握していた43市の中心市街地区域内の公共施設利用者数について、認定基本計画前を100とした場合の28年度の状況は、最も増加しているのは198.4(豊田市)、最も減少しているのは51.6(敦賀市)、43市の平均は103.4となっていた。そして、認定基本計画実施前より28年度の方が中心市街地区域内の公共施設利用者数が増加しているのは19市(43市に占める割合44.1%)、減少しているのは24市(同55.8%)となっていた。

② 74市のうち、認定基本計画実施前と28年度の中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数を把握していた52市の中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数について、認定基本計画実施前を100とした場合の28年度の状況は、最も増加しているのは160.3(金沢市)、最も減少しているのは0.0(十和田市)、52市の平均は98.6となっていた。そして、認定基本計画実施前より28年度の方が中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数が増加しているのは27市(52市に占める割合51.9%)、減少しているのは25市(同48.0%)となっていた。

③ 74市のうち、18年度と28年度の空き店舗数を把握していた43市の空き店舗数について、18年度と28年度の間の増減は、最大は69店舗(下関市)、最小は△61店舗(高崎市)、43市の平均は2.1店舗となっていた。そして、18年度より28年度の方が空き店舗数が減少しているのは22市(43市に占める割合51.1%)、増加しているのは20市(同46.5%)となっていた。

図表2-2-18 達成状況

番号 市名
指標数
達成状況 市による最終評価 活性化関連一般指標 活性化関連独自指標
平成18年度を100とした場合の28年度の状況 向上した指標数 認定基本計画実施前を100とした場合の28年度の状況 (3)平成18年度と28年度の間の中心市街地区域内の空き店舗の増減数
A又はaの指標数 B又はbの指標数 C又はcの指標数 (1)
中心市街地区域内人口
(2)
市域全体における市推計法人所得
(3)
中心市街地区域内の都道府県地価調査価格
(4)
市域全体における住民1人当たり固定資産税収入額
(1)中心市街地区域内の公共施設利用者数 (2)中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数
1 小樽市 3 0 0 3 92.5 123.4 59.4 96.8 1/4 80.5 103.7 29
2 旭川市 3 1 1 1 100.0 110.7 75.2 99.6 2/4 - 94.9 -
3 帯広市 3 1 1 1 - 95.6 122.1 76.5 96.0 1/4 106.4 66.2 △8
4 北見市 2 0 1 1 98.8 105.9 60.6 103.6 2/4 - - 0
5 岩見沢市 3 0 0 3 95.3 95.5 57.7 99.5 0/4 114.4 96.3 △35
6 稚内市 3 2 0 1 77.5 121.4 73.3 104.1 2/4 83.1 - -
7 滝川市 4 1 2 1 89.0 86.2 57.9 96.8 0/4 80.7 101.5 △13
8 砂川市 3 0 1 2 88.7 71.8 60.8 104.1 1/4 88.0 - 14
9 富良野市 2 0 0 2 92.4 139.0 92.4 109.3 2/4 111.3 90.6 △11
10 青森市 5 0 2 3 - 96.6 107.9 57.5 102.2 2/4 65.9 85.7 19
11 弘前市 3 1 1 1 93.4 132.7 67.3 105.2 2/4 89.4 96.5 △26
12 八戸市 2 0 0 2 90.5 89.1 56.2 103.0 1/4 93.9 - △5
13 十和田市 2 0 1 1 84.4 149.3 61.3 100.9 2/4 - 注(8)0.0 12
14 三沢市 3 0 1 2 80.6 119.9 67.0 102.6 2/4 95.9 - △8
15 山形市 3 1 0 2 98.7 91.2 72.5 93.4 0/4 94.8 - 14
16 鶴岡市 4 2 1 1 85.0 111.4 68.2 102.5 2/4 84.6 83.5 △23
17 酒田市 3 0 0 3 85.1 101.2 62.2 97.4 1/4 - 76.8 -
18 上山市 2 0 1 1 83.4 137.1 61.7 112.3 2/4 89.1 94.6 9
19 日光市 2 0 0 2 84.2 76.0 62.8 97.2 0/4 - 91.9 -
20 大田原市 3 0 1 2 82.7 94.7 66.2 94.8 0/4 - - △11
21 高崎市 3 0 1 2 115.8 135.1 72.8 96.9 2/4 84.9 105.8 △61
22 川越市 4 2 1 1 109.7 98.7 110.9 102.6 3/4 118.2 105.0 -
23 新潟市 3 2 0 1 121.3 110.1 80.9 99.0 2/4 - 101.3 12
24 長岡市 4 1 2 1 99.0 83.3 72.8 100.9 1/4 90.5 104.8 -
25 上越市 3 0 0 3 88.2 95.7 68.0 140.8 1/4 86.5 89.6 △3
26 富山市 6 2 2 2 96.4 114.0 98.6 102.7 2/4 151.1 125.8 -
27 高岡市 8 2 4 2 85.0 106.3 63.6 96.4 1/4 - 122.3 △12
28 金沢市 8 5 0 3 94.7 119.9 106.9 97.2 2/4 - 160.3 -
29 福井市 3 0 1 2 93.3 107.4 71.5 92.6 1/4 - - △26
30 敦賀市 2 0 1 1 90.2 74.1 64.1 87.8 0/4 51.6 - 6
31 大野市 2 2 0 0 82.4 66.1 54.4 98.8 0/4 146.2 125.4 -
32 越前市 2 1 0 1 85.2 95.9 55.3 94.3 0/4 - - -
33 長野市 9 4 3 2 97.5 113.0 76.6 96.3 1/4 111.6 96.9 -
34 上田市 2 1 0 1 101.4 87.8 71.0 92.6 1/4 121.4 98.6 -
35 飯田市 2 1 1 0 84.6 92.1 64.3 93.1 0/4 117.6 - -
36 塩尻市 3 2 0 1 101.9 137.3 86.4 96.3 2/4 96.9 110.3 -
37 静岡市 6 1 1 4 106.0 76.8 90.2 101.4 2/4 - 109.2 -
38 浜松市 4 1 1 2 - 114.5 81.1 101.3 98.5 2/4 110.9 - -
39 沼津市 2 1 0 1 98.4 80.6 85.2 107.0 1/4 - - 38
40 掛川市 3 1 0 2 83.4 74.7 87.8 101.3 1/4 102.2 93.7 -
41 藤枝市 3 3 0 0 117.7 133.6 99.4 103.4 3/4 - - -
42 名古屋市 3 1 1 1 107.9 111.4 118.6 105.2 4/4 115.3 109.1 -
43 豊橋市 4 0 2 2 93.6 91.4 98.0 98.4 0/4 154.3 102.3 -
44 豊田市 3 1 2 0 106.1 117.3 106.1 101.1 4/4 198.4 124.8 △1
45 東海市 2 2 0 0 139.2 38.1 98.7 100.3 2/4 - - -
46 大津市 2 0 2 0 114.2 77.0 108.9 99.7 2/4 - 102.5 -
47 長浜市 3 1 0 2 89.4 196.0 93.6 106.2 2/4 90.8 92.4 △5
48 守山市 2 2 0 0 123.1 100.1 114.6 101.0 4/4 - - △2
49 神戸市 3 1 1 1 111.5 111.6 90.8 99.3 2/4 - 107.6 4
50 姫路市 3 1 1 1 111.9 66.9 93.6 106.7 2/4 86.1 - 1
51 尼崎市 3 0 1 2 114.2 82.3 101.9 102.0 3/4 - 112.6 -
52 明石市 2 0 1 1 112.2 87.3 86.3 102.1 2/4 - 100.9 -
53 伊丹市 4 2 1 1 129.9 98.7 94.9 95.5 1/4 93.3 - -
54 宝塚市 4 2 0 2 - 115.9 116.0 100.0 94.1 2/4 - 105.0 △16
55 川西市 2 1 0 1 104.8 59.8 90.8 96.9 1/4 92.7 87.3 △1
56 丹波市 2 0 0 2 96.7 91.6 75.0 107.7 1/4 - - -
57 奈良市 3 0 0 3 96.7 110.8 108.8 101.1 3/4 117.6 92.6 -
58 和歌山市 3 0 0 3 - 95.7 61.2 82.6 100.0 1/4 99.2 95.4 -
59 田辺市 2 1 0 1 81.3 96.3 79.2 106.8 1/4 93.6 77.1 46
60 松江市 3 1 0 2 95.9 114.4 62.5 101.4 2/4 - 98.9 63
61 下関市 3 2 0 1 95.3 88.6 57.8 97.6 0/4 - 92.4 69
62 山口市 3 1 1 1 114.9 109.1 72.7 91.1 2/4 104.1 - 15
63 松山市 4 0 1 3 101.9 91.5 94.2 103.3 2/4 121.9 103.9 10
64 西条市 2 0 0 2 98.1 90.1 82.3 99.1 0/4 107.8 101.3 △25
65 四万十市 5 0 0 5 93.0 127.8 57.6 99.1 1/4 96.1 81.4 -
66 北九州市 8 1 4 3 124.6 51.6 67.8 96.2 1/4 - 102.1 -
67 久留米市 4 2 1 1 126.5 112.7 64.7 99.4 2/4 - 95.3 △24
68 直方市 2 0 0 2 96.3 108.6 70.4 106.0 2/4 - 102.5 31
69 飯塚市 2 0 1 1 97.8 90.1 60.3 103.3 1/4 - 109.0 16
70 諫早市 3 1 1 1 103.6 199.2 70.3 97.5 2/4 98.0 101.9 4
71 大村市 2 2 0 0 112.7 88.1 71.2 100.6 2/4 - 100.9 △24
72 宮崎市 3 2 0 1 115.1 72.2 74.4 107.6 2/4 - - 40
73 日南市 2 0 1 1 88.6 70.9 69.1 100.6 1/4 108.2 94.9 △18
74 日向市 3 3 0 0 109.0 129.3 76.5 110.7 3/4 - - -
最大値
基準値以上指標が過半数
33市
139.2 199.2 118.6 140.8 向上した指標数
3指標又は4指標
8市
198.4 160.3 69
最小値 77.5 38.1 54.4 87.8 51.6 0.0 △61
平均値 99.7 101.7 78.3 100.8 103.4 98.6 2.1
市数(改善(増加等)) 29 36 10 39 19 27 22
市数(悪化(減少等)) 45 38 64 35 24 25 20
  • 注(1) 最終フォローアップ時点で基準値以上となっている指標が過半数となっている33市については、指標数及び達成状況の欄を網掛にしている。
  • 注(2) 平成28年度末時点で向上した指標数が3指標又は4指標となっている8市については、向上した指標数の欄を網掛にしている。
  • 注(3) 「市域全体における市推計法人所得」は、74市の法人市民税を基に算出している。
  • 注(4) 富山、高岡、金沢、長野各市については、I期及びII期の各認定基本計画で設定した指標の数を合計して指標数を算出している。また、当該4市の最終評価について、各市のI期計画の最終評価は、平成25年3月の基本方針等の改正前に実施されているため、最終評価の結果については、II期計画分のみ計上している。
  • 注(5) 静岡市については、静岡地区に係る認定基本計画と清水地区に係る認定基本計画で設定した指標の数を、北九州市については、小倉地区に係る認定基本計画と黒崎地区に係る認定基本計画で設定した指標の数を合計して指標数を算出している。また、当該2市の最終評価について、各市は、地区ごとに最終評価を実施しているが、当該結果は同一の結果となっている。
  • 注(6) Aからcの各評価内容については、図表2-1-45のとおりとなっている。
  • 注(7) 市による最終評価の結果の区分は次のとおりである。
    ①かなり活性化が図られた
    ②若干の活性化が図られた
    ③活性化に至らなかった(計画策定時と変化なし)
    ④活性化に至らなかった(計画策定時より悪化)
    「-」市による最終評価が平成25年3月より前に行われている。
  • 注(8) 中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数のうち十和田市について0.0となっているのは、認定基本計画期間中に鉄道が廃線となったためである。
  • 注(9) 中心市街地区域内の公共施設利用者数及び中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数について、認定基本計画実施前と平成28年度の数値を把握できない市は「-」としている。
  • 注(10) 平成18年度と28年度の間の中心市街地区域内の空き店舗数の増減について、18年度と28年度の空き店舗数を把握できない市は「-」としている。
イ 達成状況と最終評価の関係

1(2)ウのとおり、評価の実施状況については、目標値の算定が主要事業の効果を踏まえた合理的なものとなっていなかったり、主要事業の効果が事業単位で十分に評価されていなかったり、最終フォローアップにおける実績値の評価の結果等の中心市街地の活性化に係る取組への反映が十分とはいえなかったりしている状況となっていた。

そして、内閣府は、中心市街地の活性化について、実績値に基づく定量的な評価手法だけでは必ずしもにぎわいの状況を把握し、評価することができないことを考慮して、最終評価を行うこととしている。最終評価に当たっては、25年3月の基本方針等の改正により「①かなり活性化が図られた」「②若干の活性化が図られた」「③活性化に至らなかった(計画策定時と変化なし)」又は「④活性化に至らなかった(計画策定時より悪化)」の4種類の評価から選択することとされた。また、基本方針等によれば、最終評価に当たっては、当該市町村だけではなく、協議会の意見及び市民意識の変化を記載することとされている。

そこで、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市のうち、25年3月の評価の方法の改正以降に最終フォローアップを行った69市(改正前のため選択肢による選択を行っていない5市を除いた市)の最終評価をみたところ、図表2-2-19のとおり、市による最終評価では64市(69市に占める割合92.7%)が、協議会による最終評価では65市(同94.2%)が、「活性化が図られた」としていた。一方、市民による最終評価では、57市(同82.6%)が「活性化が図られた」としていた。

図表2-2-19 中心市街地活性化の最終評価

市数 市による最終評価 協議会による最終評価 市民による最終評価
活性化が図られた 活性化に至らなかった 活性化が図られた 活性化に至らなかった 活性化が図られた 活性化に至らなかった
 
割合
(%)
 
割合
(%)
 
割合
(%)
 
割合
(%)
 
割合
(%)
 
割合
(%)
69 64 9 55 92.7 5 4 1 7.2 65 8 57 94.2 4 4 0 5.7 57 6 51 82.6 12 9 3 17.3
  • 注(1) 平成28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市のうち、25年3月の評価の方法の改正以降に最終フォローアップを行った69市を対象としている。
  • 注(2) 市、協議会及び市民による最終評価の分類は次のとおりである。
    ①かなり活性化が図られた
    ②若干の活性化が図られた
    ③活性化に至らなかった(計画策定時と変化なし)
    ④活性化に至らなかった(計画策定時より悪化)

最終フォローアップにおける市の最終評価と指標の達成状況をみたところ、図表2-2-20のとおり、64市が「①かなり活性化が図られた」又は「②若干の活性化が図られた」を選択して「活性化が図られた」としているが、指標の達成状況をみると、このうち24市は、目標値を達成しているA評価を含んでおらず、B評価又はC評価のみとなっていた。そして、これら24市のうち9市は指標の達成状況が目標値及び基準値に達していないC評価のみとなっているなど、最終評価と指標の達成状況にかい離が生じている状況となっていた。

一方、「③活性化に至らなかった(計画策定時と変化なし)」又は「④活性化に至らなかった(計画策定時より悪化)」を選択して「活性化に至らなかった」と評価している5市の中には、認定基本計画期間終了後の中心市街地の活性化への取組等により、複数の指標の数値が向上している市も見受けられた。

図表2-2-20 最終フォローアップにおける市の最終評価と指標の達成状況

市による最終評価   指標の達成状況
選択項目 市数 区分 A B C 市数 市数
①かなり活性化が図られた 9 64 A、B、C - - 6 40 64
  - 2
  - 15
②若干の活性化が図られた 55   17
  B、C - - 1 15
  - 14
  C - - 9 9
③活性化に至らなかった
(計画策定時と変化なし)
4 5   A、B、C - - 0 1 5
  - 0
  - 0
④活性化に至らなかった
(計画策定時より悪化)
1   1
  B、C - - 0 1
  - 1
  C - - 3 3
合計 69 69   合計 69 69 69
  • 注(1) 「活性化が図られた」としている64市及び「活性化に至らなかった」としている5市を対象として、市による最終評価と指標の達成状況を比較している。
  • 注(2) 指標の達成状況におけるA、B、Cの評価結果の内容については、図表2-1-45のとおりとなっており、Aはa、Bはb、Cはcを含んでいる。