租税特別措置(以下「特別措置」という。)は、所得税法(昭和40年法律第33号)、法人税法(昭和40年法律第34号)等で定められた税負担に対して、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「措置法」という。)に基づいて特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより、国による経済政策や社会政策等の特定の政策目的を実現するなどのための特別な政策手段であるとされ、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則の例外措置として設けられているものである。特別措置には、産業政策等の特定の政策目的のために税負担の軽減等を図るもの(以下「政策税制」という。)に係るもののほか、税負担を不当に減少させる行為の防止や手続の特例等に係るものがある。
平成26年6月に政府税制調査会から報告された「法人税の改革について」によれば、法人税改革の具体的な改革事項として、成長志向の法人税改革を行うに当たり、課税ベースを拡大し、法人税率の引下げ等を行うこととされている。この中で、「政策税制については経済社会環境の変化に応じて必要性と効果を検証し、真に必要なものに限定する必要がある」などとされている。そして、その見直しに当たって、期限の定めのある政策税制は、原則として、期限到来時に廃止するなどといった基準に沿って、ゼロベースでの見直しを行い、その際には、租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(平成22年法律第8号。以下「租特透明化法」という。)に基づき実施される特別措置の適用の実態の調査(以下「適用実態調査」という。)の結果等を踏まえることとされている。
租特透明化法は、特別措置に関して、適用実態調査及びその結果の国会への報告等の措置を定めることにより、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜、適切な見直しを推進し、もって国民が納得できる公平で透明性の高い税制の確立に寄与することを目的として制定され、22年4月から施行された。財務大臣は、毎会計年度、適用実態調査を実施した特別措置について、「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(以下「適用実態報告書」という。)を作成し、内閣が国会に提出することとなっている。
適用実態調査の対象となる特別措置は、法人税等の内国税の負担を軽減することなどにより、特定の政策目的を実現させるために措置法に規定されている措置又は特例である税額控除、特別償却等となっていて、税負担を不当に減少させる行為の防止に関する規定や手続の特例を定める規定等に係るものは対象となっていない。
適用実態調査には、適用額明細書(注1)を利用する調査とそれ以外の調査とがあり、適用額明細書を利用する適用実態調査については、税額又は所得の金額を減少させる法人税関係特別措置が対象となっていて(以下、適用額明細書を利用する調査の対象となる特別措置を「調査対象特別措置」という。)、財務大臣が、調査対象特別措置ごとに、適用法人数又は適用総額について、4月1日から翌年3月31日までの間に終了する事業年度又は連結事業年度(以下、4月1日から翌年3月31日までの間に終了する事業年度又は連結事業年度を、「終了事業年度」という。)の法人税確定申告書に係る適用額明細書に記載された事項を集計することにより、実態を調査することとなっている。また、上記のほか、財務大臣は、特別措置の適用の実態を調査する必要があると認めるときは、その必要の限度において、税務署長に提出される調書等を利用すること並びに行政機関その他の関係団体に対し資料の提出及び説明を求めることができることとなっている。
企業会計は株主を始めとする各種利害関係者に対して財政状態等を明らかにすることを目的としている。企業会計原則等に基づき財務諸表を作成する法人は、期末の売掛金、貸付金その他の金銭債権について、その将来における貸倒額を見積もって、これを貸倒引当金勘定に繰り入れ、その繰り入れた金額をその期の収益と対応させるため、費用として損益計算書に計上するとともに、貸借対照表上は、当該金銭債権から控除する形式で貸倒引当金として記載することとなっている。このことから、貸倒引当金は、期末金銭債権に対する貸倒見積高を意味するものとされている。
法人税法は、課税の公平原則の下で安定した税収を確保することを目的としている。法人税法第22条の規定によれば、所得の金額の計算上、損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがある場合を除き、販売費、一般管理費等については債務の確定した費用とされている。このため、債務の確定していない企業会計上の引当金等は損金の額に算入しないこととされている。ただし、貸倒引当金については、別段の定めである法人税法第52条の規定により、貸倒れ等による損失が見込まれるもののその損失の見込額として、中小企業(注2)、公益法人等、協同組合等(信用金庫等、信用組合等、農業協同組合等、漁業協同組合等の法人税法別表第3に掲げる法人(注3))、銀行等が、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入することが認められている(以下、上記の所得の金額の計算上、貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、損金の額に算入できる上限となる金額を「繰入限度額」という。)。
このように、貸倒引当金は、前記のとおり、企業会計において株主を始めとする各種利害関係者に対して財政状態等を明らかにすることを目的として計上されている一方で、繰入限度額は、法人税法において課税の公平原則の下で安定した税収を確保することを目的として設定されている。
繰入限度額は、法人の有している金銭債権を、貸倒れ等の事由による損失が見込まれる一定の要件を満たすことにより個別に評価する金銭債権(以下「個別評価金銭債権」という。)と、それ以外の一括評価金銭債権とに区分して、それぞれの金銭債権について計算することとなっている。そして、個別評価金銭債権に係る繰入限度額は、債務者が更生計画認可の決定に基づいて金銭債権の弁済を猶予されるなどした場合の当該債権に係る回収不能見込額等を合計した額とすることとなっている。
一括評価金銭債権には、売掛金、受取手形等(以下、これらを合わせて「売掛債権」という。)と、貸付金その他これらに準ずる金銭債権とがある。そして、一括評価金銭債権に係る繰入限度額は、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額(以下「期末一括評価債権額」という。)を基に、次の算式により計算することとなっている。
一括評価金銭債権に係る繰入限度額=期末一括評価債権額×貸倒実績率(注4)
措置法第57条の9第1項の規定により、中小企業、公益法人等、協同組合等及び人格のない社団等(以下、これらを合わせて「中小企業等」という。)については、一括評価金銭債権に係る繰入限度額を、次の算式のとおり、貸倒実績率に代えて、法定繰入率により計算することも認められている。
一括評価金銭債権に係る繰入限度額=(期末一括評価債権額-実質的に債権とみられないものの額)×法定繰入率
上記の「実質的に債権とみられないものの額」は、租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第33条の7の規定によれば、債務者から受け入れた金額があるため、その全部又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権の額とされている(図表1参照)。
図表1 「実質的に債権とみられないものの額」の主な例
金銭債権の額 | 左記のうち実質的に債権とみられないものの額
(「金銭債権の額」の方が債務者から受け入れた金額よりも少ない場合は「金銭債権の額」) |
---|---|
売掛金又は受取手形の金額 | 同一人に対する買掛金又は支払手形の金額 同一人に対する買掛金の支払のために他から取得した受取手形を裏書譲渡したときの当該裏書譲渡した手形の金額 同一人から受け入れた営業保証金の額 |
完成工事未収金の額 | 同一人から受け入れた未成工事に対する受入金の額 |
そして、法定繰入率については、昭和60年度以降(金融及び保険業(以下「金融保険業」という。)については56年度以降)、図表2のとおり、事業区分ごとに1000分の3から1000分の13までの範囲で定められている。
図表2 事業区分ごとの法定繰入率
事業区分 | 法定繰入率 |
---|---|
卸売及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。) | 10/1000 |
製造業(電気業、ガス業等を含む。) | 8/1000 |
金融保険業 | 3/1000 |
割賦販売小売業等 | 13/1000 |
その他の事業 | 6/1000 |
公益法人等及び協同組合等の一括評価金銭債権に係る繰入限度額については、措置法第57条の9第3項の規定によれば、次の算式のとおり、貸倒実績率により計算した場合の繰入限度額又は法定繰入率により計算した場合の繰入限度額のいずれかの110%相当額(注5)とすることとされている(以下、これにより繰入限度額を割増しする措置を「割増特例」という。また、割増特例により割増しされた率を「割増率」といい、割増特例を適用した繰入限度額を「割増限度額」という。)。
一括評価金銭債権に係る割増限度額=(貸倒実績率又は法定繰入率による繰入限度額)×(1+割増率)
そして、一括評価金銭債権に係る繰入限度額の算出方法等を法人の種類別に整理すると、図表3のとおりとなっている(平成30年4月現在)。
図表3 一括評価金銭債権に係る繰入限度額の算出方法
法人の種類 | 貸倒実績率により繰入限度額を算出する措置 | 法定繰入率により繰入限度額を算出する措置 | 割増特例 |
---|---|---|---|
大企業(銀行等を除く。) | × | × | × |
銀行等 | ○ | × | × |
中小企業 | ○ | ○ | × |
公益法人等、協同組合等 | ○ | ○ | ○ |
法定繰入率により繰入限度額を算出する措置は、図表4のとおり、昭和25年度税制改正により事務の簡素化等を目的として創設されて以降、法人税法(注6)等で規定されていた。法定繰入率は、概算で繰入率を定めているという趣旨に鑑みて、常に貸倒実績率をしんしゃくしつつ、合理的に測定された適正なものとすることが必要であるとして、制度創設以降、随時、貸倒れの実績率とのかい離がある場合には引下げ等が行われてきた。また、昭和39年度税制改正において全額洗替方式が採用され、貸倒引当金繰入額のうち損金の額に算入された額は翌期全額益金に戻し入れることとなった。さらに、昭和54年度税制改正において貸倒実績率による繰入限度額の計算が導入され、従前は法定繰入率のみが定められていたところ、貸倒実績率と法定繰入率のいずれかにより繰入限度額を計算できることとなった。
その後、政府税制調査会の法人課税小委員会報告(平成8年11月)において、法定繰入率は実務上簡便である反面、貸倒実績率と法定繰入率のいずれか高い率により貸倒引当金の繰入れができることから、法人によっては、適正な見込額を超え、過大な引当金の繰入れが行われているおそれがあるといった問題が指摘された。このことから、貸倒引当金については、不確実な損失の見積りを極力排除し恒常的に発生する損失を見込むためのものとするために、平成10年度税制改正において、法定繰入率により繰入限度額を算出する措置は法人税法等の規定から削除されることとなった。ただし、中小企業等については、事務負担を軽減するという政策的な配慮が必要なこと、及び中小企業の場合には個々の法人単位でみると貸倒損失が特定の事業年度に発生するなど、大企業に比べて事業規模が小さい分だけ貸倒れが平均的には発生しないとみられることから、措置法において、引き続き適用が認められることとなった。
割増特例は、図表4のとおり、昭和41年度税制改正により、当時の中小企業の倒産状況から貸倒れの発生率が特に大きいと考えられた中小企業の実情に即して、中小企業等における債権回収の不安を少なくして、併せてその企業の財務基盤を強化することを目的に、2年間の時限措置として創設されたものであるが、その後も1年から3年ごとに計26回延長されている。平成12年度税制改正により、前記法人課税小委員会報告の趣旨を踏まえて、割増特例の適用対象法人から中小企業が除外され、公益法人等及び協同組合等(以下、公益法人等と協同組合等とを合わせて「割増特例対象法人」という。)に限定された。
図表4 貸倒引当金に係る特例の主な沿革
改正年度等 | 法定繰入率により繰入限度額を算出する措置 | 割増特例 | |||
---|---|---|---|---|---|
昭和25年度 | 創設(準備金繰入率は一律3/1000(銀行等は6/1000))【旧法】 | ||||
27年度 | 事業区分ごとに法定繰入率を設定【旧法】 | ||||
卸売及び小売業 | 10/1000 | ||||
製造業 | 7/1000 | ||||
金融保険業 | 7/1000 | ||||
その他の事業 | 5/1000 | ||||
39年度 | 割賦販売小売業の法定繰入率を追加【旧法】 | ||||
卸売及び小売業 | 20/1000 | ||||
製造業 | 15/1000 | ||||
金融保険業 | 15/1000 | ||||
割賦販売小売業 | 25/1000 | ||||
その他の事業 | 12/1000 | ||||
41年度 | 創設(割増率20%)【措】中小企業、公益法人等及び協同組合等を対象 | ||||
47年度 | 金融保険業の法定繰入率引下げ【法】 15/1000→12/1000 |
||||
49年度 | 金融保険業の法定繰入率引下げ【法】 12/1000→10/1000 |
||||
50年度 | 金融保険業の法定繰入率引下げ【法】 10/1000→8/1000 |
||||
52年度 | 金融保険業の法定繰入率引下げ【法】 8/1000→5/1000 |
||||
54年度 | 法定繰入率引下げ【法】 | ||||
卸売及び小売業 | 16/1000 | ||||
製造業 | 12/1000 | ||||
割賦販売小売業等 | 20/1000 | ||||
その他の事業 | 10/1000 | ||||
55年度 | 割増率引下げ | 20%→16%【措】 | |||
56年度 | 金融保険業の法定繰入率引下げ【法】5/1000→3/1000 | ||||
60年度 | 法定繰入率引下げ【法】 | ||||
卸売及び小売業 | 10/1000 | ||||
製造業 | 8/1000 | ||||
割賦販売小売業等 | 13/1000 | ||||
その他の事業 | 6/1000 | ||||
平成10年度 | 廃止【法】中小企業等については措置法において法定繰入率により繰入限度額を算出する措置を存置【措】 | ||||
12年度 | 中小企業を除外【措】 | ||||
22年度 | 法定繰入率の適用対象法人から大法人による完全支配関係がある普通法人を除外【措】 | ||||
23年6月 | 法定繰入率の適用対象法人から100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている普通法人を除外【措】 | ||||
23年12月 | 割増率引下げ | 16%→12%【措】 | |||
29年度 | 割増率引下げ | 12%→10%【措】 |
売掛債権の貸借対照表価額は、企業会計上、取得価額とされており、消費税法(昭和63年法律第108号)に規定する課税資産の譲渡等に該当する場合は、当該売掛債権は消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を含めた価額となっている(以下、課税資産の譲渡等に該当する売掛債権を「課税売掛債権」という。)。また、措置法第57条の9第1項の規定に基づく法定繰入率により繰入限度額を算出する措置(以下「繰入率特例」という。)において期末一括評価債権額から控除される「実質的に債権とみられないものの額」の中には、課税売掛債権に係る消費税等に相当する額(以下「仮受消費税相当額」という。)は含まれていない。したがって、繰入率特例における繰入限度額は、仮受消費税相当額を含む期末一括評価債権額に基づき算出されることとなる。
一方、消費税法第39条等の規定によれば、消費税等の課税事業者が有する課税売掛債権が貸し倒れた場合には、当該課税売掛債権に係る消費税に相当する額は課税標準額に対する消費税額から控除することとされていることなどから、課税売掛債権に係る仮受消費税相当額は損失とはならないこととなっている。
前記のとおり、調査対象特別措置は、税額又は所得の金額を減少させる法人税関係特別措置となっているが、繰入率特例については、財務省の説明によれば、各法人にとって法定繰入率が必ずしも貸倒実績率に比べて有利となるわけではなく税負担の軽減又は繰延べを行う措置ではないとされている。このため、繰入率特例は、調査対象特別措置として定められておらず、これまで適用実態調査は行われていない。
割増特例については、適用実態報告書によると、図表5のとおり、24終了事業年度から28終了事業年度までの適用件数は9,000件程度、適用法人数は9,000法人程度、適用総額(割増限度額の総額を集計したもの)は4500億円程度で推移している。そして、27終了事業年度についてみると、適用法人数は8,846法人、適用総額は4577億余円となっている。
図表5 割増特例における5か年度の適用件数、適用法人数及び適用総額
年度 | 平成24終了事業年度 | 25終了事業年度 | 26終了事業年度 | 27終了事業年度 | 28終了事業年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
適用件数 | 8,994 | 8,745 | 8,808 | 8,857 | 9,064 | |
うち単体法人に係る適用件数 | 8,986 | 8,736 | 8,800 | 8,848 | 9,055 | |
適用法人数 | 8,981 | 8,721 | 8,800 | 8,846 | 9,056 | |
うち単体法人に係る適用法人数 | 8,973 | 8,712 | 8,792 | 8,837 | 9,047 | |
適用総額 | 4340 | 4440 | 4636 | 4577 | 4644 | |
うち単体法人に係る適用総額 | 4312 | 4414 | 4622 | 4543 | 4611 |
また、財務省は割増特例による適用総額を基に法人税の減収額を試算していて、図表6のとおり、24終了事業年度から28終了事業年度までの各終了事業年度における法人税の減収額は、61億円から73億円までの範囲で推移しており、27終了事業年度についてみると72億円と見込まれている。
図表6 財務省が試算した割増特例に係る法人税の減収額
年度 | 平成24終了事業年度 | 25終了事業年度 | 26終了事業年度 | 27終了事業年度 | 28終了事業年度 |
---|---|---|---|---|---|
法人税の減収額 | 66 | 61 | 61 | 72 | 73 |
そして、29年2月に国会に提出された適用実態報告書(以下「27年度適用実態報告書」という。)により、割増特例の業種別の適用実績等(単体法人に限る。)をみると、次のとおりである。
業種別の適用実績は、図表7のとおり、金融保険業の全体に占める割合が、適用件数では22.2%であるが、適用額では95.1%となっており、金融保険業の1件当たりの平均適用額は2億1989万余円となっている。
図表7 業種別の適用件数、適用額、適用割合及び1件当たりの平均適用額
業種 | 適用件数 | 適用額 | 1件当たりの平均適用額 | ||
---|---|---|---|---|---|
適用割合 | 適用割合 | ||||
農林水産業 | 746 | 8.4 | 6億5004 | 0.1 | 87 |
建設業 | 216 | 2.4 | 10億1002 | 0.2 | 467 |
製造業 | 487 | 5.5 | 12億1505 | 0.2 | 249 |
卸売業 | 1,169 | 13.2 | 47億4370 | 1.0 | 405 |
小売業 | 712 | 8.0 | 31億3057 | 0.6 | 439 |
金融保険業 | 1,966 | 22.2 | 4323億1168 | 95.1 | 2億1989 |
サービス業 | 1,731 | 19.5 | 25億3723 | 0.5 | 146 |
その他 | 1,821 | 20.5 | 87億4919 | 1.9 | 480 |
計 | 8,848 | 100.0 | 4543億4751 | 100.0 | 5135 |
業種別における資本金(出資金を含む。以下同じ。)階級別の適用実績についてみると、図表8のとおり、金融保険業において資本金の額が5億円を超える法人の適用額が4112億6990万余円となっており、全体の適用額の90.5%を占めている。
図表8 業種別における資本金階級別の適用件数、適用額及び適用割合
区分 | 資本金階級 | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1億円以下 | 1億円超5億円以下 | 5億円超100億円以下 | 100億円超 | 計 | |||||||||||||
適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | ||||||||
適用割合 | 適用割合 | 適用割合 | 適用割合 | 適用割合 | |||||||||||||
業種 | 農林水産業 | 555 | 2億4690 | 0.0 | 175 | 2億3378 | 0.0 | 16 | 1億6935 | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 746 | 6億5004 | 0.1 | |
建設業 | 209 | 10億0027 | 0.2 | 7 | 974 | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 216 | 10億1002 | 0.2 | ||
製造業 | 446 | 8億7129 | 0.1 | 32 | 1億7350 | 0.0 | 9 | 1億7025 | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 487 | 12億1505 | 0.2 | ||
卸売業 | 1,053 | 20億5262 | 0.4 | 93 | 6億3038 | 0.1 | 21 | 16億2862 | 0.3 | 2 | 4億3205 | 0.0 | 1,169 | 47億4370 | 1.0 | ||
小売業 | 502 | 5億4968 | 0.1 | 121 | 1億7000 | 0.0 | 76 | 10億7263 | 0.2 | 13 | 13億3824 | 0.2 | 712 | 31億3057 | 0.6 | ||
金融保険業 | 617 | 45億6606 | 1.0 | 373 | 164億7571 | 3.6 | 890 | 2493億8436 | 54.8 | 86 | 1618億8553 | 35.6 | 1,966 | 4323億1168 | 95.1 | ||
金融保険業のうち、資本金の額が5億円を超える法人 | 976 | 4112億6990 | 90.5 | ||||||||||||||
サービス業 | 1,583 | 17億7832 | 0.3 | 85 | 1億0606 | 0.0 | 63 | 6億5283 | 0.1 | 0 | - | 0.0 | 1,731 | 25億3723 | 0.5 | ||
その他 | 1,628 | 18億7715 | 0.4 | 145 | 3億6132 | 0.0 | 46 | 25億0807 | 0.5 | 2 | 40億0262 | 0.8 | 1,821 | 87億4919 | 1.9 | ||
計 | 6,593 | 129億4235 | 2.8 | 1,031 | 181億6054 | 3.9 | 1,121 | 2555億8615 | 56.2 | 103 | 1676億5846 | 36.9 | 8,848 | 4543億4751 | 100.0 |
業種別における所得階級別の適用実績についてみると、図表9のとおり、金融保険業において所得金額が10億円を超える法人の適用額が2356億9483万余円となっており、全体の適用額の51.8%を占めている。
図表9 業種別における所得階級別の適用件数、適用額及び適用割合
区分 | 所得階級 | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0円又は欠損 | 1円以上1億円以下 | 1億円超10億円以下 | 10億円超 | 計 | |||||||||||
適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | 適用件数 | 適用額 | ||||||
適用割合 | 適用割合 | 適用割合 | 適用割合 | ||||||||||||
業種 | 農林水産業 | 292 | 1億9270 | 0.0 | 436 | 3億3959 | 0.0 | 18 | 1億1773 | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 746 | 6億5004 |
建設業 | 50 | 8億9691 | 0.1 | 162 | 9489 | 0.0 | 4 | 1821 | 0.0 | 0 | - | 0.0 | 216 | 10億1002 | |
製造業 | 195 | 3億3253 | 0.0 | 261 | 2億8080 | 0.0 | 28 | 3億9041 | 0.0 | 3 | 2億1130 | 0.0 | 487 | 12億1505 | |
卸売業 | 379 | 12億0737 | 0.2 | 761 | 15億4505 | 0.3 | 26 | 4億8908 | 0.1 | 3 | 15億0218 | 0.3 | 1,169 | 47億4370 | |
小売業 | 280 | 7億9157 | 0.1 | 384 | 6億4404 | 0.1 | 40 | 8億7563 | 0.1 | 8 | 8億1930 | 0.1 | 712 | 31億3057 | |
金融保険業 | 589 | 810億3553 | 17.8 | 699 | 220億8446 | 4.8 | 518 | 934億9684 | 20.5 | 160 | 2356億9483 | 51.8 | 1,966 | 4323億1168 | |
サービス業 | 599 | 6億6298 | 0.1 | 1,036 | 8億1891 | 0.1 | 90 | 9億6679 | 0.2 | 6 | 8853 | 0.0 | 1,731 | 25億3723 | |
その他 | 577 | 14億7275 | 0.3 | 1,174 | 11億2885 | 0.2 | 64 | 12億7327 | 0.2 | 6 | 48億7430 | 1.0 | 1,821 | 87億4919 | |
計 | 2,961 | 865億9238 | 19.0 | 4,913 | 269億3665 | 5.9 | 788 | 976億2799 | 21.4 | 186 | 2431億9047 | 53.5 | 8,848 | 4543億4751 |
特別措置を特定の政策目的を実現するための手段として位置付けている行政機関(以下「関係省庁」という。)は、税負担の軽減又は繰延べを行う特別措置のうち、一定の要件を満たす法人税に係る特別措置の期限の延長等に係る政策を決定しようとする場合には、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号。以下「政策評価法」という。)に基づいて政策の事前評価及び事後評価を行うことが義務付けられている。また、政策評価法によれば、政策効果は、政策の特性に応じた合理的な手法を用いて、できる限り定量的に把握することなどとされており、「租税特別措置等に係る政策評価の実施に関するガイドライン」(平成22年5月政策評価各府省連絡会議了承。以下「租特ガイドライン」という。)によれば、特別措置等による効果については、直接的効果を把握することなどとされている。
関係省庁は、財務省に提出する「税制改正要望書」(以下「要望書」という。)において、特別措置による減収見込額や政策目標の達成状況を提示することなどにより、当該特別措置の効果等の検証を行っている。また、特別措置には、課税の公平原則に照らし、国民の納得できる必要最小限の特別措置であることが要請されていることを踏まえて、関係省庁は、要望書にこのような要請を満たしているか否かを記載することとなっている。そして、財務省は、関係省庁から提出を受けた要望書等を参考にして、特別措置の効果等の検証を行っている。