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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
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  • 令和2年7月|

低金利の状況下における政府出資法人の業務及び財務の状況について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

前記のとおり、25年4月の量的・質的金融緩和の導入以降、市場における長期金利の代表的な指標である10年国債の市場金利は、同月には一時0.4%台まで低下し、さらに、28年1月のマイナス金利政策の導入決定後の同年2月には0%を下回ってマイナスの水準となるなど、近年、低金利の状況が続いている。

そして、前記のとおり、近年の低金利の状況下において、民間企業や個人の借入金残高等は増加している。一方で、銀行の当期純利益は減少している。

このように、近年の低金利の状況下において、民間企業等の資金調達や資金運用の環境に変化が見られる中、政府出資法人における資金調達や資金運用の状況にも変化が生じていることが想定される。また、このような状況の変化は、各法人の設置根拠法に基づき法人の目的を達成するために行っている法人の業務の状況や、当該業務を実施する上での基盤となる法人の財務の状況、更にはこれに対する国の財政支援の状況等にも影響を及ぼしていることが考えられる。

そこで、会計検査院は、近年の低金利の状況下における政府出資法人の業務及び財務の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 政府出資法人における資金調達及び資金運用の状況はどのようになっているか。

イ 低金利により政府出資法人の業務及び財務にどのような影響が生じているか。

ウ 政府出資法人の資金調達及び資金運用に対する国の財政支援の状況はどのようになっているか。

エ 将来の金利の変動に対する政府出資法人の対応等の状況はどのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

前記政府出資法人204法人のうち、30年度末において借入金等の残高が1兆円以上又は有価証券等の残高が3000億円以上である26法人(前記同年度末の借入金等の残高が1兆円以上の13法人及び有価証券等の残高が3000億円以上の24法人の純計)を対象として(以下、検査の対象とした上記の法人を「検査対象法人」という。)、量的・質的金融緩和の導入以降の25年度から30年度までの間の状況について、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき各法人から提出された財務諸表等のほか、近年の低金利の状況下における各法人の業務及び財務の状況に係る調書等の提出を求めて、これらを分析するとともに、検査対象法人26法人及びこれらの所管府省庁のうち3省(注9)において会計実地検査を行った(図表0-5参照)。

(注9)
3省  農林水産、国土交通、環境各省

図表0-5 検査対象法人26法人(平成30年度末)

組織形態 所管府省庁名 法人名 借入金等の残高
注(1)
有価証券等の残高
注(2)
特殊法人等
(11法人)
内閣府、財務省 沖縄振興開発金融公庫
財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省 株式会社日本政策金融公庫
財務省 株式会社国際協力銀行
文部科学省 日本私立学校振興・共済事業団
農林水産省 日本中央競馬会 -
金融庁、財務省 預金保険機構
厚生労働省 全国健康保険協会 -
財務省、国土交通省 株式会社日本政策投資銀行
内閣府、文部科学省、経済産業省 原子力損害賠償・廃炉等支援機構注(3)
農林水産省、金融庁、財務省 農水産業協同組合貯金保険機構 -
経済産業省 株式会社日本貿易保険注(4) -
独立行政法人
(15法人)
農林水産省 独立行政法人農畜産業振興機構
外務省、財務省 独立行政法人国際協力機構
厚生労働省 独立行政法人福祉医療機構
国土交通省 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
経済産業省 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 独立行政法人環境再生保全機構 -
文部科学省 独立行政法人日本学生支援機構
文部科学省 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構注(5)
経済産業省、財務省 独立行政法人中小企業基盤整備機構
国土交通省 独立行政法人都市再生機構
国土交通省 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
厚生労働省 年金積立金管理運用独立行政法人 -
国土交通省、財務省 独立行政法人住宅金融支援機構
総務省 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構注(6)
厚生労働省 独立行政法人勤労者退職金共済機構
計26法人 13法人 24法人
  • 注(1) 「借入金等の残高」の欄は、検査対象法人のうち平成30年度末に借入金等の残高が1兆円以上の法人を「◎」、1兆円未満の法人を「○」とし、当該残高がない法人を「-」としている。
  • 注(2) 「有価証券等の残高」の欄は、検査対象法人のうち平成30年度末に有価証券等の残高が3000億円以上の法人を「◎」、3000億円未満の法人を「○」としている。
  • 注(3) 「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は、平成26年8月に「原子力損害賠償支援機構」から移行した。
  • 注(4) 「株式会社日本貿易保険」は、平成29年4月1日に解散した「独立行政法人日本貿易保険」の権利及び義務を承継した。
  • 注(5) 「独立行政法人大学改革支援・学位授与機構」は、平成28年4月1日に「独立行政法人大学評価・学位授与機構」から移行して、同日に解散した「独立行政法人国立大学財務・経営センター」の権利及び義務を承継した。
  • 注(6) 「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構」は、平成31年4月1日に「独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」に移行した。

 (以下、各検査対象法人の名称中、「株式会社」及び「独立行政法人」は記載を省略した。)