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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[55税務署](34)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
55税務署
納税者
84人
徴収過不足額
徴収不足額 237,854,563円(平成29年度~令和4年度) 徴収過大額 3,007,100円(令和2年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

令和4年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は96兆2123億余円となっている。このうち源泉所得税及復興特別所得税(注1)(以下「源泉所得税」という。)は21兆6271億余円、申告所得税及復興特別所得税(以下「申告所得税」という。)は4兆1724億余円、法人税は16兆7042億余円、相続税・贈与税は3兆1164億余円、消費税及地方消費税(以下「消費税等」という。)は40兆3776億余円となっていて、これら各税の合計額は85兆9979億余円となり、全体の89.3%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から令和19年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で課税するもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び70税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行うとともに、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき、上記の524税務署から提出された証拠書類等により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収過不足の事態

検査の結果、55税務署において、納税者84人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、85事項計237,854,563円(平成29年度から令和4年度まで)不足していたり、1事項3,007,100円(2年度)過大になっていたりしていて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収過不足額等

税目 事項数 徴収不足額 事項数 徴収過大額(△)
     
源泉所得税 1 1,943,263 - -
申告所得税 22 71,007,100 - -
法人税 46 136,273,600 - -
相続税・贈与税 3 4,158,600 - -
消費税 12 23,772,100 1 △3,007,100
地方法人税 1 699,900 - -
85 237,854,563 1 △3,007,100
(注)
地方法人税  地方法人税法(平成26年法律第11号)に基づく税目であり、地方交付税の財源を確保するために、平成26年10月1日以後に開始する事業年度から、法人税額の4.4%相当額(令和元年10月1日以後に開始する事業年度からは10.3%相当額)を課税するもの

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の55税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この86事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関する事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が1事項あった。これは、配当に関する事態である。

配当の支払者は、支払の際に、源泉所得税を徴収して法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっており、法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。また、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。以下同じ。)に際し、その対価として金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額は、配当とみなされることとなっている。

この配当に関して、自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税額が納付されていないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額が納付されないままとなっており、徴収不足になっていた事態が1事項1,943,263円あった。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が22事項あった。この内訳は、不動産所得に関する事態が8事項、譲渡所得に関する事態が6事項及びその他に関する事態が8事項である。

(ア) 不動産所得に関する事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が、不動産所得について、収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っている場合には、不動産所得の計算上、経費に係る消費税等の額が収入に係る消費税等の額を上回るときに生ずる消費税等の還付金を総収入金額に算入することとなっている。

この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計41,419,100円あった。その主な内容は、収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っている場合の消費税等の還付金を総収入金額に算入していないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 消費税等の還付金を総収入金額に算入していなかった事態

納税者Aは、令和元年分の申告に当たり、不動産所得の総収入金額を43,691,056円とし、この金額の中に消費税等の還付金はないとしていた。そして、この金額から必要経費等を差し引き不動産所得の金額を10,830,891円としていた。

しかし、納税者Aは不動産所得に係る収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っており、平成31年4月に納税者Aに対して消費税等の還付金10,354,118円が支払われていた。したがって、この消費税等の還付金を不動産所得の総収入金額に算入すると、不動産所得の金額は21,185,009円となり、10,354,118円過小となっているのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、申告所得税額3,476,600円が徴収不足になっていた。

(イ) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち譲渡した資産ごとに所定の方法により計算した金額について、当該資産ごとに譲渡所得に係る収入金額(以下「譲渡収入金額」という。)から取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額(以下「取得費等の合計額」という。)を控除した残額に相当する金額を限度として取得費に加算できることとなっている。また、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たない場合には、取得費に加算できる相続税額はないものとすることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計14,338,800円あった。その主な内容は、譲渡した建物について、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たないことから、取得費に加算できる相続税額はないこととなるのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、事業所得等に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計15,249,200円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足になっていた事態が46事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が26事項、交際費等の損金不算入に関する事態が7事項及びその他に関する事態が13事項である。

(ア) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額の算定に当たり、法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。これらの特別控除の一つとして、青色申告書を提出する法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「雇用者給与等支給額」という。)が前事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「比較雇用者給与等支給額」という。)を上回ることなどの要件を満たすときは、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額又は雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(以下「雇用者給与等支給増加額」という。)の100分の15相当額等のいずれか少ない金額を法人税額から控除できることとなっている。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が26事項計79,664,500円あった。その主な内容は、雇用者給与等支給額から控除する比較雇用者給与等支給額の金額を誤っていたため、雇用者給与等支給増加額が適正でなく、法人税額の特別控除額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 給与等の引上げを行った場合等の法人税額の特別控除額の算定を誤ったため、法人税額から控除する金額が過大となっていた事態

B会社は、平成31年4月から令和2年3月までの事業年度分の申告に当たり、雇用者給与等支給額38,805,428,974円が比較雇用者給与等支給額36,378,685,373円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額2,426,743,601円の100分の15相当額364,011,540円を法人税額から控除していた。

しかし、B会社の前事業年度分の申告書に添付された明細書等によれば、雇用者給与等支給額から控除すべき適正な比較雇用者給与等支給額は36,484,732,989円であった。したがって、適正な雇用者給与等支給増加額は2,320,695,985円と算出され、法人税額の特別控除額はその100分の15相当額の348,104,397円となり、15,907,143円過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額15,907,200円が徴収不足になっていた。

(イ) 交際費等の損金不算入に関する事態

法人が支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の100分の50に相当する金額(以下「接待飲食費損金算入基準額」という。)を超える部分の金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととなっている。ただし、投資法人等を除く法人のうち事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人等にあっては所定の方法で計算した金額(以下「資本相当額」という。))が1億円以下であるもの(一定の法人を除く。)については、接待飲食費損金算入基準額に代えて、交際費等の額のうち年当たり800万円の定額控除限度額までの金額を損金の額に算入するとともに、これを超える部分の金額を損金の額に算入しないことができることとなっている。

そして、資本相当額については、資本又は出資を有しない法人の場合、事業年度終了の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除するなどした金額の100分の60に相当する金額等とすることとなっている。

この交際費等の損金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計17,187,400円あった。その内容は、資本又は出資を有しない法人が、資本相当額が1億円以下である場合の規定を適用して、交際費等の額のうち定額控除限度額までの金額を損金の額に算入していたが、資本相当額を計算すると1億円を超えるため、交際費等の額のうち接待飲食費損金算入基準額を超える部分の金額が損金に算入しない額となって、損金に算入する額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 交際費等の損金不算入額の計算を誤っていた事態

C法人は、平成31年1月から令和2年12月までの2事業年度分の申告に当たり、支出する交際費等の額元年12月期10,256,417円及び2年12月期13,859,297円のうち両期とも定額控除限度額800万円を損金の額に算入し、これを超える額元年12月期2,256,417円及び2年12月期5,859,297円を損金に算入しない額としていた。

しかし、C法人は資本又は出資を有しない法人であり、C法人の貸借対照表等に基づいて資本相当額を計算すると両期とも1億円を超えるため、資本相当額が1億円以下である場合の規定は適用できず、交際費等の額のうち接待飲食費損金算入基準額を超える部分の金額が損金に算入しない額となる。そして、C法人の両期における交際費等の額のうち、接待飲食費の額はいずれも0円であることから、接待飲食費損金算入基準額は0円となり、当該交際費等の額は全額損金の額に算入しないこととなるのに、これを見過ごしたため、所得の金額は両期とも8,000,000円過小となり、法人税額元年12月期1,856,000円、2年12月期1,856,000円、計3,712,000円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、減価償却費の計算等に関して、徴収不足になっていた事態が13事項計39,421,700円あった。

エ 相続税・贈与税

相続税・贈与税に関して徴収不足になっていた事態が3事項あった。この内訳は、有価証券の価額に関する事態が、相続税について2事項、贈与税について1事項である。

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっている。また、個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して贈与税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続、遺贈又は贈与により取得した時の時価とすることとなっていて、有価証券のうち取引相場のない株式の価額については、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)の総資産価額、従業員数等によって評価会社を大会社、中会社又は小会社に区分し、この区分に応じて定められた方式(以下「一般の評価会社の原則的評価方式」という。)により計算した金額によって評価することとなっている。ただし、評価しようとする株式が特定の評価会社の株式(注2)に該当する場合は、一般の評価会社の原則的評価方式とは異なる方法で計算した金額によって評価することとなっている。

この有価証券の価額に関して、徴収不足になっていた事態が相続税について2事項計3,196,600円、贈与税について1事項962,000円あった。その内容は、取引相場のない株式について、特定の評価会社の株式に該当する株式を一般の評価会社の原則的評価方式で計算した金額によって評価しているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものなどである。

(注2)
特定の評価会社の株式  1株当たりの年配当金額、年利益金額及び純資産価額の三つの要素のうち、いずれか二つの要素が0円であるなどの会社の株式

オ 消費税

消費税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が13事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が9事項及びその他に関する事態が4事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間(注3)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額は、一定の要件に該当して全額控除できる場合を除き、課税仕入れに係る消費税額等の合計額に課税売上割合(非課税売上高等を含めた総売上高に占める課税売上高の割合。以下同じ。)を乗ずるなどして計算することとなっている。

(注3)
課税期間  納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計18,217,900円あった。その内容は、非課税売上高である土地の譲渡収入を総売上高に含めないで課税売上割合を計算しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4> 課税仕入れに係る消費税額の控除額の計算を誤っていた事態

D会社は、平成31年4月から令和2年3月までの課税期間分の申告に当たり、課税売上高を2,787,753,365円、総売上高を2,789,745,365円として、課税売上割合を99.92%としていた。

しかし、D会社の法人税の申告書に添付された書類によれば、非課税売上高である土地の譲渡収入があり、これを総売上高に含めて適正に計算すると、課税売上高は2,787,753,365円、総売上高は2,866,745,365円、課税売上割合97.24%となるのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額が過大となり、消費税額4,523,600円が徴収不足になっていた。

(イ) その他に関する事態

(ア)のほか、簡易課税制度の適用等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計5,554,200円、徴収過大になっていた事態が1事項3,007,100円あった。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

国税局等
税務署数
源泉所得税
申告所得税
法人税
相続税
贈与税
消費税
地方法人税
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
      千円   千円   千円   千円   千円   千円   千円
札幌国税局 3 1 2,471 1 639 1 962
1

△ 3,007
3
1
4,072
△ 3,007
仙台国税局 3 2 3,200 1 1,653 3 4,854
関東信越国税局 6 5 16,656 4 7,196 1 2,509 10 26,362
東京国税局 31 1 1,943 12 46,001 30 95,370 2 3,196 7 13,429 1 699 53 160,641
金沢国税局 1 1 9,323 1 9,323
名古屋国税局 1 1 821 1 821
大阪国税局 2 1 3,392 1 915 2 4,307
福岡国税局 5 1 1,855 5 12,289 3 6,917 9 21,062
熊本国税局 1 1 907 1 907
沖縄国税事務局 2 2 5,500 2 5,500
55 1 1,943 22 71,007 46 136,273 3 4,158 12
1
23,772
△ 3,007
1 699 85
1
237,854
△ 3,007