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(2) 義務教育費国庫負担金が過大に交付されていたもの[2県](41)(42)


2件 不当と認める国庫補助金 44,779,084円

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県又は政令指定都市(以下「都道府県等」という。)に対して交付するものである。

負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県等の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書及び第三条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県等ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている(次式参照)。

(負担金交付額の算定式)

負担金交付額の算定式 画像

このうち、算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部(以下「小中学部」という。)の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。

また、算定基礎定数は、都道府県等ごとに当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注1)等を基礎として教職員の定数(以下「標準定数」という。)を算定し、更に産休代替教職員等の実数を加えるなどして算定することとなっている。

そして、算定基礎定数の算定に必要な標準学級数は、次のように算定することとなっている。

① 学校教育法(昭和22年法律第26号)第81条に規定する小中学校の特別支援学級の標準学級数は、二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定する。

② 特別支援学校の標準学級数の算定に当たり、小中学部の1学級の児童生徒数の基準は、重複障害学級(注2)に編制する場合にあっては、3人とする。

また、寄宿舎を置く特別支援学校については、標準定数の算定に当たって、寄宿する小中学部の児童生徒(以下「寄宿児童生徒」という。)がいる特別支援学校数に応じた舎監(注3)の定数(以下「舎監定数」という。)及び寄宿児童生徒数に応じた寄宿舎指導員(注4)の定数(以下「寄宿舎指導員定数」という。)をそれぞれ算定することとなっている。

(注1)
標準学級数  標準法に規定する学級編制の標準により算定した学級数
(注2)
重複障害学級  文部科学大臣が定める障害を二つ以上併せ有する児童生徒で編制する学級
(注3)
舎監  校長の監督を受け、寄宿舎の管理及び寄宿舎における児童等の教育に当たる者
(注4)
寄宿舎指導員  寄宿舎における児童等の日常生活上の世話及び生活指導に従事する者

本院が、21府県及び6市において会計実地検査を行ったところ、2県において、算定総額の算定に当たり、小学校の特別支援学級や特別支援学校の標準学級数を誤って多く算定していたほか、寄宿児童生徒がいないのに舎監定数及び寄宿舎指導員定数を算定していたため、算定基礎定数の算定が過大となっていた。この結果、負担金計44,779,084円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2県において、算定基礎定数の算定方法についての理解及び算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

長野県は、令和元年度において、特別支援学校の教職員の算定基礎定数を1,234人とするなどとし、これに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に28,834,715,460円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同県は、上記算定基礎定数の算定に当たり、特別支援学校の小中学部の標準学級数を487学級とすべきところ、重複障害学級に編制する場合の1学級の生徒数の基準は3人であるのにこれにより編制していなかったため、488学級と算定していた。また、寄宿舎を置く特別支援学校について、舎監定数を28人、寄宿舎指導員定数を168人とすべきところ、寄宿児童生徒がいない1校に係る分を含めていたため、舎監定数を30人、寄宿舎指導員定数を180人と算定していた。

したがって、適正な標準学級数並びに舎監定数及び寄宿舎指導員定数により適正な算定基礎定数を算定すると1,217人となり、これに基づき適正な負担金の額を算定すると28,800,127,968円となることから、34,587,492円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
算定総額
左に対する負担金交付額
不当と認める算定総額
不当と認める負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(41)
長野県
長野県
86,504,146 28,834,715 103,762 34,587
標準学級数、舎監定数等を誤って算定して、算定基礎定数の算定が過大となっていたもの
(42)
佐賀県
佐賀県
30 39,302,682 13,100,894 30,574 10,191
標準学級数を誤って算定して、算定基礎定数の算定が過大となっていたもの
(41)(42)の計 125,806,828 41,935,609 134,337 44,779