1件 不当と認める国庫補助金 1,077,101円
公立諸学校建物其他災害復旧費負担金(以下「負担金」という。)は、公立学校施設災害復旧費国庫負担法(昭和28年法律第247号)に基づき、公立学校の施設の災害復旧に要する経費について、学校教育の円滑な実施を確保することを目的として、国が地方公共団体に対して交付するものである。
本院が、千葉県の1町において会計実地検査を行ったところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等
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補助事業者
(事業主体) |
補助事業
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年度
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負担金の交付額
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不当と認める負担金相当額
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摘要
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千円 | 千円 | ||||||
(49) | 千葉県 |
夷隅郡大多喜町 |
令和元年発生災害復旧 |
元 | 1,210 | 1,077 |
設置した空調設備の設計が適切でなかったもの
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この負担金事業は、大多喜町内の中学校1校において、令和元年房総半島台風により転倒した室外機2機等の空調設備を復旧するために、室外機2機を鉄骨架台に載せて設置する工事を、工事費1,815,000円(国庫負担対象工事費同額)で大多喜町が実施したものである。
本件工事は災害復旧事業であり、同町は、原形に復旧することを踏まえて、平成30、令和元両年度に実施した空調設備の設置工事の特記仕様書に基づくこととしており、特記仕様書によれば、空調設備の設置に当たっては、「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)によることとされている。
そして、耐震設計指針によると、鉄骨架台については、設備機器に作用している機器の重量(以下「機器重量」という。)、設計用水平地震力(注1)及び設計用鉛直地震力(注2)を考慮した検討を行うこととなっている。
同町は、本件工事について、設計を含めて請負業者に行わせることとして契約を締結して、契約締結後に請負業者から提出された図面等を承諾していた。
しかし、本件工事の請負業者は、耐震設計指針に基づく鉄骨架台に係る耐震性を満たしているかについて必要な検討を行っていなかった。また、同町においても、請負業者から提出された図面等を承諾する際に、請負業者において耐震設計指針に基づく必要な検討が行われているかを確認していなかった。
そこで、鉄骨架台の形状、機器重量、設計用水平地震力、設計用鉛直地震力等に基づき、地震時に鉄骨架台に作用する反力等について確認したところ、地震時に鉄骨架台に水平方向に作用する力により滑動するおそれ及び鉄骨架台に鉛直上向きに作用する反力により鉄骨架台が浮き上がるおそれがある状態となっていた(参考図参照)。
したがって、本件工事で設置した鉄骨架台等(これらに係る工事費相当額計1,615,652円)は、設計が適切でなかったため耐震性が確保されていない状態となっていて、これらに係る負担金相当額1,077,101円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、耐震設計指針の理解が十分でなかったことなどによると認められる。