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(7) 学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの[5県](50)―(54)


5件 不当と認める国庫補助金 16,696,000円

学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。

学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等によれば、上記の施設整備計画に記載された事業のうち交付金の算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)の種別は、小学校、中学校等の建物で構造上危険な状態にあるもの(危険建物)の改築事業(以下「危険改築事業」という。)、小学校、中学校等の建物等の大規模改造で、教育内容及び方法の多様化等に適合させるための建物の内部改造に係る工事等の質的整備を行う事業(以下「大規模改造(質的整備)事業」という。)等とされている。

交付金の交付額は、交付要綱等に基づき、交付対象事業ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額の合計額と、交付対象事業に要する経費の額に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することなどとなっている。このうち、配分基礎額については、配分基礎額を算定する際の基礎となる面積(以下「配分基礎面積」という。)を算定して、これに交付対象事業の種別に応じて定められた単価を乗ずるなどの方法により算定することとなっている(次式参照)。

(交付額の算定式)

交付額の算定式 画像

そして、危険改築事業及び大規模改造(質的整備)事業における配分基礎額等については、「学校施設環境改善交付金の配分基礎額の算定方法等について」(平成29年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によれば、次のように算定することとされている。

① 危険改築事業において、施設の解体及び撤去事業を実施する場合は、都道府県等で公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算する。そして、交付申請時に概算額等により施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算したものについては、実績報告時に契約後の金額を反映する。

② 大規模改造(質的整備)事業として実施する工事のうち、トイレ改修工事に係る配分基礎面積は、改修工事を実施する部分の床面積の計とする。

本院が、21府県及び143市町の計164地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、5県の5市町において、契約後の金額を反映せずに配分基礎額を算定していたほか、適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたため、配分基礎額が過大に算定されており、交付金計16,696,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5市町において交付金の交付額の算定方法についての理解が十分でなかったこと、5県において5市町から提出された実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1

岩手県花巻市は、平成28、29両年度に、湯口中学校校舎の危険改築事業等5事業を実施して、交付金計198,631,000円の交付を受けていた。

同市は、上記5事業のうち、同校校舎の危険改築事業等2事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去事業を併せて実施することから、交付申請時に、設計業者による概算額等により算定した施設の解体及び撤去費計121,000,000円を配分基礎額に加算しており、実績報告時も上記の概算額をそのまま加算していた。

しかし、配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時には、交付申請時に用いた概算額によるのではなく、契約後の金額を反映する必要があり、これによると計94,251,000円となる。

したがって、施設の解体及び撤去費を94,251,000円に修正するなどして適正な配分基礎額により交付金の交付額を算定すると計193,782,000円となることから、交付金計4,849,000円が過大に交付されていた。

事例2

和歌山県有田市は、令和元年度から3年度までの間に、田鶴小学校校舎の大規模改造(質的整備)事業等3事業を実施して、交付金計8,715,000円の交付を受けていた。

同市は、上記の3事業においてトイレ改修工事を実施するに当たり、配分基礎面積は計604㎡であるとしていた。

しかし、上記の604㎡には、改修工事を実施していない部分の床面積が含まれており、トイレ改修工事に係る適正な配分基礎面積は、この床面積を除いた計43㎡となる。

したがって、適正な配分基礎面積に基づく配分基礎額により交付金の交付額を算定すると計4,490,000円となることから、交付金計4,225,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付対象事業
の種別
年度
交付金の交付額
不当と認める交付金の交付額
摘要
          千円 千円  
(50)
岩手県
花巻市
危険改築事業
28、29 198,631 4,849
施設の解体及び撤去費について契約後の金額を反映せずに配分基礎額を算定していたもの
(51)
宮城県
亘理郡山元町
大規模改造
(質的整備)事業
2 25,611 3,062
適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたもの
(52)
新潟県
五泉市
平成30、
令和元 
14,283 1,216
(53)
長野県
佐久市
平成30、
令和元 
69,414 3,344
(54)
和歌山県
有田市
元~3 8,715 4,225
(50)―(54)の計 316,654 16,696