3件 不当と認める国庫補助金 25,125,159円
ブロック塀・冷房設備対応臨時特例交付金(以下「交付金」という。)は、ブロック塀・冷房設備対応臨時特例交付金交付要綱(平成30年文部科学大臣決定。以下「交付要綱」という。)に基づき、地方公共団体が緊急的に整備を実施する、公立の小学校、中学校等の敷地内にある倒壊の危険性があるブロック塀等の安全対策(以下「ブロック塀等安全対策事業」という。)及び公立の小学校、中学校等の校舎等に行う児童生徒等の熱中症対策として必要な空調設置(以下「空調設置事業」という。)に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。
本院が、15府県及び39市町の計54地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、2府県の3市町において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 塀の長さの算定を誤るなどしていた事態
部局等
|
補助事業者
(事業主体) |
交付対象事業の種別
|
年度
|
交付金の交付額
|
不当と認める交付金の交付額
|
摘要
|
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | ||||||
(55) | 千葉県 |
千葉市 |
空調設置事業 |
平成30、 令和元 |
512,474 | 1,023 |
空調面積の算定を誤っていたもの
|
(56) | 大阪府 |
大阪市 |
ブロック塀等安全対策事業、空調設置事業 |
平成30、 令和元 |
212,129 | 15,289 |
塀の長さの算定を誤るなどしていたもの
|
(55)(56)の計 | 724,603 | 16,312 |
これらの交付金事業は、ブロック塀等安全対策事業等を2事業主体が実施したものである。
交付金の交付額は、交付要綱等によれば、交付申請に当たり、ブロック塀等安全対策事業及び空調設置事業のそれぞれについて、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗じて得た額(以下「算定後配分基礎額」という。)の合計額と、交付対象事業に要する経費の額に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない方の額を選定し、上記により選定された額を合わせた額を基礎として算定することとされている。このうち、配分基礎額については、交付対象事業において安全対策を実施するブロック塀等の長さ(以下「塀の長さ」という。)又は空調設置事業の対象となる室等の床面積の計(以下「空調面積」という。)を算定して、これにブロック塀等安全対策事業及び空調設置事業のそれぞれについて定められた単価を乗じて算定することとされている(次式参照)。
(交付額の算定式)
そして、上記の交付額については、実績報告時にも配分基礎額等の変更を反映して算定することとなっている。
2府県の2市において、配分基礎額の算定に当たり塀の長さの算定を誤るなどしていた。このため、交付金計16,312,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2市において塀の長さなどの確認が十分でなかったこと、2府県において2市から提出された実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
大阪市は、平成30、令和元両年度に、ブロック塀等安全対策事業77事業等を実施して、交付金212,129,000円の交付を受けていた。
同市は、ブロック塀等安全対策事業77事業のうち37事業における塀の長さを計2,533mであるとしていた。
しかし、上記の37事業における2,533mには、安全対策を実施すべきブロック塀がない箇所等の長さ計603mが含まれており、適正な塀の長さは計1,930mであった。また、上記37事業のうち1事業の算定後配分基礎額は、実績報告時に配分基礎額の変更を反映せず、交付決定時の配分基礎額に算定割合を乗じた額であった。
したがって、上記の誤りを修正して適正な塀の長さに基づく配分基礎額によるなどして交付金の交付額を算定すると196,840,000円となることから、交付金15,289,000円が過大に交付されていた。
イ 空調設備の設計が適切でなかった事態
部局等
|
補助事業者
(事業主体) |
交付対象事業の種別
|
年度
|
交付金の交付額
|
不当と認める
交付金相当額 |
摘要
|
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | ||||||
(57) | 千葉県 |
夷隅郡大多喜町 |
空調設置事業 |
平成30、 令和元 |
17,362 | 8,813 |
設置した空調設備の設計が適切でなかったもの
|
この交付金事業は、大多喜町内の小学校2校及び中学校1校において、空調設置事業として新規に室外機22機等の冷房機能を有する空調設備を設置するなどする工事を、工事費105,570,000円(交付対象事業費51,573,000円)で大多喜町が実施したものである。
本件工事の特記仕様書によれば、空調設備の設置に当たっては、「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)によることとされている。
耐震設計指針等によれば、設備機器に生ずる水平地震力を求めるための設計用水平震度については、設備機器の設置階等に応じて定められた設計用標準震度に、地域ごとに定められた地域係数を乗じて求めることとされている。
そして、耐震設計指針によれば、基礎の形状が床スラブ等の主要構造躯体に固定されていない梁型の基礎(以下「梁型基礎」という。)の場合は、次のような地震によって生ずる力に耐えるための条件を満たしているか検討することとされている。
① 設備機器に生じた水平地震力を床スラブ等の主要構造躯体に円滑に伝達する必要がある。伝達方法のうち水平地震力を基礎底面の摩擦のみにより伝達する方法を適用できるのは、設計用水平震度が1.0以下の場合等に限る。
② 設計用水平震度が1.0以下の場合であっても、設備機器の重心高さと設備機器を固定している両端のアンカーボルト間の長さ(以下「ボルトスパン」という。)の比に制限が設けられており、設計用水平震度が0.6の場合は、設備機器の重心高さはボルトスパンの0.58倍以下となっている。
同町は、本件工事について、設計を含めて請負業者に行わせることとして契約を締結して、契約締結後に請負業者から提出された図面等を承諾していた。
しかし、本件工事の請負業者は、耐震設計指針に基づく耐震設計計算を行っていなかった。また、同町においても、請負業者から提出された図面等を承諾する際に、請負業者において耐震設計指針に基づく耐震設計計算が行われているかを確認していなかった。
そこで、本件工事で設置された室外機22機のうち、小学校1校及び中学校1校で梁型基礎により設置された室外機7機について、耐震設計指針に基づいて耐震設計計算を行ったところ、中学校1校に設置された室外機3機の設計用水平震度は、3階建ての2階屋上に設置されていることなどから1.2となっていて、前記条件の1.0を上回っていた。また、小学校1校及び中学校1校に設置された残りの4機は、設計用水平震度が0.6であったものの、室外機の重心高さがボルトスパンの約0.86倍等となっていて、いずれも前記条件の0.58倍を上回っていた。このように、小学校1校及び中学校1校で梁型基礎により設置された室外機7機は、いずれも地震によって生ずる力に耐えるための条件を満たしていなかった(参考図参照)。
したがって、本件工事で設置された室外機計7機、梁型基礎等(これらに係る工事費相当額計52,611,273円)は、設計が適切でなかったため耐震性が確保されておらず、これらに係る交付金相当額計8,813,159円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、耐震設計指針の理解が十分でなかったことなどによると認められる。
部局等
|
補助事業者
(事業主体) |
交付対象事業の種別
|
年度
|
交付金の交付額
|
不当と認める交付金の交付(相当)額
|
摘要
|
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | ||||||
(55)―(57)の計 | 741,965 | 25,125 |