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(9) 文化資源活用事業費補助金が過大に交付されていたもの[京都府](58)


1件 不当と認める国庫補助金 1,738,000円

文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)(以下「補助金」という。)は、文化財に関する先進的、高次元な多言語解説を整備し、訪日外国人旅行者の地域での体験滞在の満足度を向上させることなどを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。

文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)交付要綱(平成30年文化庁長官決定)等によれば、補助事業の補助対象経費は、国指定等文化財に関する先進的、高次元な技術を利用した多言語解説を行うためのコンテンツ制作に係る経費とされている。また、補助金の額は、補助対象経費の3分の1を限度とすることとされている。ただし、所定の各要件を満たす場合には、補助率を加算することができる(以下、各要件に係る加算分の補助率を「加算率」という。)などとされている。上記要件のうち、観光庁が推薦する人材(以下「推薦人材」という。)による英語解説文の監修を受けるという加算要件について、文化庁は、質の高い英語解説文を制作するには推薦人材による監修が有効であるためなどとしている。

本院が、1県、3市、15法人等計19事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円  
(58)
京都府
宗教法人妙法院
文化財多言語解説整備
2 11,817 1,738
要件を満たしていない加算率を加えた補助率を乗ずるなどして補助金交付額を算定していたもの

この補助事業は、令和2年度に「国宝千手観音立像等デジタルコンテンツ整備事業」(以下「コンテンツ整備事業」という。)を宗教法人妙法院が実施したものである。

同法人は、コンテンツ制作に係る委託費等17,380,000円を補助対象経費とした上で、その3分の1の限度額に係る補助率を33%としてこれに推薦人材による英語解説文の監修に係る加算率10%を含む各種の加算率計35%を加えて計68%とした補助率を乗ずるなどして、補助金11,817,000円の交付を申請していた。そして、同法人は、総事業費17,380,000円(補助対象経費同額)でコンテンツ整備事業を実施し、交付申請時と同じ補助率により補助金交付額を11,817,000円と算定した実績報告書等を京都府に提出して、同額で額の確定を受けて、補助金の交付を受けていた。

しかし、実際には、同法人は、英語解説文の制作に当たり、推薦人材ではない者による監修を受けてコンテンツを制作しており、推薦人材による英語解説文の監修に係る補助率の加算要件を満たしていなかった。

したがって、前記68%の補助率から、要件を満たしていない上記の10%を除いた計58%の補助率を乗ずるなどして適正な補助金交付額を算定すると10,079,000円となり、前記の補助金交付額11,817,000円との差額1,738,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同法人において補助率の加算要件についての理解が十分でなかったこと、京都府において実績報告書等の審査が十分でなかったことによると認められる。