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健康保険及び厚生年金保険の保険料等の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの[厚生労働本省](60)


所管、会計名及び科目
内閣府及び厚生労働省所管
年金特別会計
(健康勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
(厚生年金勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
(子ども・子育て支援勘定)
(款)拠出金収入 (項)事業主拠出金収入
部局等
厚生労働本省
健康保険及び厚生年金保険の事業並びに拠出金の徴収に関する事務の一部を委任し、又は委託している相手方
日本年金機構
保険料等納付義務者
616事業主
徴収不足額
健康保険保険料 231,117,491円(平成30年度~令和4年度)
厚生年金保険保険料 305,471,230円(平成30年度~令和4年度)
子ども・子育て拠出金 5,974,988円(平成30年度~令和4年度)
 542,563,709円

1 保険料等の概要

(1) 健康保険及び厚生年金保険並びに子ども・子育て拠出金

厚生労働省は、健康保険及び厚生年金保険の事業並びに子ども・子育て拠出金(以下「拠出金」という。)の徴収に関する事務を所掌しており、当該事業等に関する事務の一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に委任し、又は委託している。そして、機構は、同省の監督の下に、本部、312年金事務所等において、当該委任され、又は委託された事務を実施している。

健康保険は、業務災害以外の疾病、負傷等に関して療養の給付、療養費の支給、傷病手当金の支給等を行う保険であり、常時一定人数以上の従業員を使用する事業所の従業員が被保険者となる。厚生年金保険は、老齢、死亡等に関して年金等の給付を行う保険であり、常時一定人数以上の従業員を使用する事業所の70歳未満の従業員が被保険者となる。また、拠出金は、児童手当の支給に要する費用、子どものための教育・保育給付に要する費用等に充てるために、厚生年金保険の被保険者を使用する事業所の事業主から徴収することとなっている。

そして、事業所に使用される従業員のうち、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者については、労働時間、労働日数等からみて当該事業所に常用的に使用されている場合には被保険者とすることとなっている。

(2) 保険料等の徴収

保険料は被保険者と事業所の事業主とが折半して負担し、また、拠出金は事業主が負担して、いずれも事業主が納付することとなっている。

そして、事業主は、年金事務所に対して、健康保険及び厚生年金保険に係る次の届け書を提出することとなっている。

① 新たに従業員を使用したときなどには、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届

② 被保険者が退職等により資格を喪失したときには、資格喪失年月日等を記載した被保険者資格喪失届

③ 毎年7月には、同月1日現在において使用している被保険者の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額算定基礎届

④ 被保険者の報酬月額が所定の範囲以上に増減したときには、変更後の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額変更届

⑤ 賞与を支給したときには、被保険者の賞与額等を記載した被保険者賞与支払届

これらの届け書の提出を受けた年金事務所は、その記載内容を点検し確認するとともに、届け書に記載された被保険者の報酬月額に基づいて標準報酬月額(注1)を、また、被保険者の賞与額に基づいて標準賞与額(注2)を、それぞれ決定してこれらに保険料率又は拠出金率を乗じて得た額を保険料又は拠出金(以下、これらを合わせて「保険料等」という。)として算定している。厚生労働本省(以下「本省」という。)は、その算定した額を保険料等として調査し決定するなどして徴収している。

さらに、年金事務所は、必要に応じて、事業所に健康保険法(大正11年法律第70号)等に基づく立入検査を行うなどして、被保険者の資格等について調査確認や指導を行っている。

保険料等の令和4年度の収納済額は、健康保険保険料10兆9875億余円、厚生年金保険保険料34兆0582億余円、拠出金6703億余円、計45兆7161億余円に上っている。

(注1)
標準報酬月額  健康保険では第1級58,000円から第50級1,390,000円まで、厚生年金保険では第1級88,000円から第32級650,000円までの等級にそれぞれ区分されている。被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。
(注2)
標準賞与額  各被保険者の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた額で、健康保険では1か年度の支給累計額で573万円、厚生年金保険では1か月の支給につき150万円がそれぞれ上限とされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、健康保険及び厚生年金保険に係る届け書の提出が適正になされているかなどに着眼して、9地域部(注3)(4年3月31日以前は12地域部)の管轄区域内に所在する132年金事務所が管轄する事業所の約142万事業主のうち、短時間就労者を多数使用していると見込まれるなどの1,426事業主を選定するなどして、平成30年度から令和4年度までの間における保険料等の徴収の適否について検査した。

検査に当たっては、本省において機構本部から提出された保険料等の調査決定等の基礎となる書類により、また、上記の132年金事務所において事業主から提出された健康保険及び厚生年金保険に係る届け書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に年金事務所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注3)
地域部  機構の本部に11(令和4年3月31日以前は15)の地域部が置かれており、管轄区域内における年金事務所の行う健康保険及び厚生年金保険の適用及び保険料の徴収、拠出金の徴収、厚生年金保険の保険給付等に係る管理及び指導等に関する事務を所掌している。

(2) 検査の結果

検査したところ、事業主が、被保険者資格取得届等を提出していなかったり、被保険者資格取得届の資格取得年月日について事実と相違した年月日を記載したりなどしている事態が見受けられた。

このため、前記1,426事業主のうち、9地域部(4年3月31日以前は12地域部)の管轄区域内に所在する121年金事務所が管轄する616事業主について、徴収額が542,563,709円(健康保険保険料231,117,491円、厚生年金保険保険料305,471,230円、拠出金5,974,988円)不足していて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が制度を十分に理解していなかったなどのため、届出を適正に行っていなかったのに、上記の121年金事務所においてこれについての調査確認及び指導が十分でなかったこと、また、本省において機構に対する監督が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

A会社は、医療業の業務に従事する従業員663人を使用していた。同会社の事業主は、これらの従業員のうち24人については労働時間が短く常用的な使用でないとして、年金事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。

しかし、上記の24人について調査したところ、同会社は24人全員を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。

このため、健康保険保険料11,534,711円、厚生年金保険保険料18,959,898円、拠出金372,975円、計30,867,584円が徴収不足となっていた。

なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、全て徴収決定の処置が執られた。

これらの徴収不足額を地域部ごとに示すと次のとおりである。

地域部名
年金事務所
本院の調査に係る事業主数
徴収不足があった事業主数
徴収不足額
健康保険
保険料
厚生年金
保険保険料
子ども・子育て拠出金
          千円 千円 千円 千円
東北
青森
19 258 135 41,693 61,160 1,198 104,052
北関東・
信越
水戸南
27 405 172 51,556 61,685 1,213 114,456
南関東
第一
千代田
19 173 90 72,100 105,176 2,039 179,316
南関東
第二
横須賀
1 7 2 96 398 7 503
中部
岐阜北
18 162 55 17,860 21,800 428 40,089
近畿第一
天満
16 89 39 18,598 20,527 403 39,529
近畿第二
大津
3 44 23 7,029 8,758 172 15,960
中国
松江
9 130 52 7,075 8,893 173 16,142
九州
熊本東
9 115 48 15,106 17,069 335 32,511
121か所 1,383 616 231,117 305,471 5,974 542,563