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雇用保険の産業雇用安定助成金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、2労働局](62)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)地域雇用機会創出等対策費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
2労働局(支給決定庁)
支給の相手方
4事業主
産業雇用安定助成金の支給額の合計
33,756,800円(令和3、4両年度)
不当と認める支給額
3,443,900円(令和3、4両年度)

1 保険給付の概要

(1) 産業雇用安定助成金

産業雇用安定助成金のうち雇用維持支援コース奨励金(令和4年12月1日以前は産業雇用安定助成金。以下「助成金」という。)は、雇用保険で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされ、労働者の雇用を在籍型出向(注1)(以下「出向」という。)により維持するために、労働者を送り出す事業主(以下「出向元事業主」という。)及び当該労働者を受け入れる事業主(以下「出向先事業主」という。)に対して、国が出向期間中の労働者(以下「出向労働者」という。)の賃金の一部等を助成するものである。

(注1)
在籍型出向  労働者が事業所の従業員たる地位を保有しつつ、当該事業所から他の事業主の事業所において勤務すること

(2) 助成金の支給

雇用関係助成金支給要領(令和3年2月5日職発0205第2号・雇均発0205第1号・開発0205第1号等)によれば、助成金の支給額は、出向元事業主及び出向先事業主がそれぞれ負担する出向労働者の出向期間中の賃金の額(以下「賃金負担額」という。)、出向に伴う初期経費等について、それぞれ所定の算定方法により算定した合計額とされている。そして、このうち賃金負担額に係る支給額は、出向元事業主分と出向先事業主分を合わせて出向労働者1人1日当たり12,000円を上限額として、原則としてそれぞれの賃金負担額に3分の2(中小企業事業主は5分の4)を乗じて算出した額となっている。

また、年度ごとの支給の対象となる出向労働者の人数については、初回の出向実施計画届(以下「計画届」という。)の提出日の前日において出向先事業所で雇用する雇用保険被保険者数を上限とすることなどとなっている。

助成金の支給手続は、次のとおりとされている。

① 出向元事業主及び出向先事業主が助成金の支給を受けようとするときは、出向元事業主が出向開始日の前日までに計画届及び添付書類を出向先事業主が作成した分も含めて、都道府県労働局(以下「労働局」という。)等に提出し、労働局は計画届の記載内容や添付書類を確認した上で受理する。

② 計画届に記載の出向を実施した場合、出向元事業主は、一定の期間ごとに、当該期間の末日の翌日から2か月以内に支給申請書及び添付書類を出向先事業主が作成した分も含めて、労働局等に提出する。

③ 労働局は、支給申請書等に記載されている出向労働者数が支給の対象となる人数の上限を超えていないかなどを審査した上で支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省は、助成金の支給を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主に対する助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47労働局のうち12労働局(注2)が3、4両年度に支給決定を行った事業主から、支給実績等を基に251事業主を選定して、助成金の支給の適否について、上記の12労働局において支給申請書等の関係書類を確認するとともに、上記251事業主のうち98事業主に赴くなどして、会計実地検査を行った。

(注2)
12労働局  茨城、東京、神奈川、新潟、石川、山梨、岐阜、大阪、兵庫、広島、熊本、沖縄各労働局

(2) 検査の結果

検査の結果、2労働局が支給決定を行い3、4両年度に助成金の支給を受けた4事業主は、助成金の支給申請に当たり、出向労働者数について、誤って年度ごとの支給の対象となる人数の上限を超えて追加した人数分を計上するなどして助成金の支給を申請していた。このため、これらの4事業主に対する助成金の支給額計33,756,800円のうち計3,443,900円は支給の要件を満たしていないなどしていたもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主において、制度を十分に理解しておらず支給申請書等の記載内容が支給の要件を満たしていないなどしていたにもかかわらず、上記の2労働局において、これに対する審査が十分に行われないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

新潟労働局は、事業主Aから、事業主Aを出向元事業主、事業主Bを出向先事業主として、令和4年5月9日から5年5月31日までを出向期間とし、出向労働者を10人とする計画届の提出を4年4月に受けて、その内容を確認して受理していた。また、同年7月に、同年9月1日から5年8月31日までを出向期間とし、出向労働者を新たに4人追加する計画届の提出を受けて、その内容を確認して受理していた。

そして、同労働局は、事業主Aから、上記の出向期間に事業主Bへ労働者14人を出向させて、事業主Bがその賃金を負担したとする支給申請書等の提出を受けて、これらの書類に基づき審査した上で、4年7月から5年2月までに事業主Bに対して助成金計10,844,400円の支給決定を行い、この支給決定に基づき、厚生労働本省は4年7月から5年2月までに同額を事業主Bに支給した。

しかし、事業主Bは初回の計画届の提出日の前日において雇用する雇用保険被保険者数が10人であり、助成金の支給の対象となる出向労働者数の上限は10人であるにもかかわらず、4年9月以降に追加した出向労働者4人分も含めて助成金の支給申請を行っていたことから、追加した4人分に係る助成金計2,460,700円は支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
本院の調査に係る事業主数
不適正受給事業主数
左の事業主に支給した助成金
左のうち不当と認める助成金
      千円 千円
新潟
14 1 10,844 2,460
沖縄
28 3 22,912 983
42 4 33,756 3,443