1件 不当と認める国庫補助金 6,071,000円
インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)(以下「支援補助金」という。)は、先行して交付決定を受けたインフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業)(以下「確保補助金」という。)の交付決定額では体制確保に要する費用が不足した場合に限り、その不足分を国が補助するものである。
確保補助金は、インフルエンザ流行期に備えて、インフルエンザ流行の規模が予測できない中で、多数の発熱患者等が地域の医療機関において適切に診療・検査を受けられる体制を確保することにより、感染症対策の強化を図ることを目的として、都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関が、発熱患者等専用の診察室(時間的・空間的分離を行い、プレハブ、簡易テント、駐車場等で診療する場合を含む。)を設けるなどして発熱患者等を受け入れる体制を確保した場合に、その外来診療・検査体制確保に要する経費を国が補助するものである。
確保補助金は、発熱患者等専用の診察室を設けたにもかかわらず、診察室で受け入れる発熱患者等の想定受診患者数(注)より、実際に診察室で診療を行った発熱患者等の受診患者数(以下「実際の発熱患者数(注)」という。)が少なかった場合に、所定の計算方法により算出された額を補助することにより、外来診療・検査体制確保に要した経費を補塡する性格のものである。「令和2年度インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業)の交付について」(令和2年厚生労働省発健0915第8号)等によれば、確保補助金の交付額は、想定受診患者数から実際の発熱患者数を差し引いた人数に、発熱患者等1人当たりに想定される診療報酬点数を踏まえた単価13,447円を乗じた額(以下「事業費」という。)を基にするなどして算出することとされている。
このうち想定受診患者数は、1日当たり20人を上限として、20人を7時間で除した数値に、診療・検査医療機関が発熱患者等専用の診察室を設けて発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間数を乗じた人数とすることとなっている。ただし、実際の発熱患者数が想定受診患者数以上となった日がある場合は、交付額の算出上、当該日の想定受診患者数及び実際の発熱患者数を除外することとなっている。また、発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間帯に、発熱患者等専用の診察室とは別の診察室で、同一の医師が他の疾患等の患者の診療を行った場合は、発熱患者等を受け入れる体制が縮小していると考えられることから、交付額の算出上、他の疾患等の受診患者数に2分の1を乗じた人数を実際の発熱患者数に加えることとなっている(図参照)。
図 確保補助金の交付対象の概念図
支援補助金は、既に確保補助金の交付決定を受けた診療・検査医療機関において、想定よりも実際の発熱患者数が下回るなどしたことにより、確保補助金の交付決定額だけでは体制確保に要する費用が不足した場合に限り、不足分を支援するために、確保補助金の実績報告書による事業費が確保補助金の交付決定額を上回る場合の経費を国が補助するものである。
「令和3年度(令和2年度からの繰越分)インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)の交付について」(令和3年厚生労働省発健0408第3号)によれば、支援補助金の交付額は、確保補助金の実績報告書の事業費から確保補助金の交付決定額を差し引いた額を基にするなどして算出することとされている。
本院が、厚生労働本省(以下「本省」という。)及び20事業主体において会計実地検査を行ったところ、社会医療法人厚生会中部国際医療センター(令和3年12月31日以前は社会医療法人厚生会木沢記念病院。以下「センター」という。)において、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
部局等
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補助事業者
(事業主体) |
年度
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国庫補助金交付額
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不当と認める国庫
補助金交付額 |
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千円 | 千円 | ||||
(68) | 厚生労働本省 |
社会医療法人厚生会中部国際医療センター |
4 | 13,689 | 6,071 |
センターは、令和2年度に、確保補助金について、診察室の開設予定日数142日に係る想定受診患者数(いずれの日も20人)を2,840人、実際の発熱患者数を2,130人とそれぞれ見込み、交付申請額を9,547,000円とする交付申請書を本省に提出しており、本省は、同額を交付決定額としていた。その後、センターは、実際に診察室を開設した日数142日に係る想定受診患者数を2,840人、実際の発熱患者数を1,112人であったとして、事業費を23,236,416円とする実績報告書を本省に提出していたが、上記のとおり交付決定額が9,547,000円であったことから、本省は、これと同額の9,547,000円を確保補助金の交付額としていた。
また、センターは、確保補助金の実績報告書の事業費23,236,416円が確保補助金の交付決定額9,547,000円を上回ったことから、4年度に、その差額に基づき支援補助金を13,689,000円とする精算交付申請書を本省に提出しており、本省は、これと同額の13,689,000円を支援補助金の交付額としていた。
しかし、センターが記録していた「帰国者・接触者外来日誌」等により実際の発熱患者数を確認したところ、センターは、誤って①診察室を開設した日数142日のうち31日分については、各日の実際の発熱患者数が当該各日の想定受診患者数(いずれの日も20人)以上となっていたにもかかわらず、当該各日の想定受診患者数等を除外していなかった。また、②発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間帯に、発熱患者等専用の診察室とは別の診察室で、同一の医師が他の疾患等の患者の診療を行っていたことがあったにもかかわらず、これら他の疾患等の受診患者数に2分の1を乗じた人数を実際の発熱患者数に加えていなかった。
したがって、上記の①及び②を踏まえるなどすると、想定受診患者数は2,220人、実際の発熱患者数は943.5人となり、適正な確保補助金の事業費は17,165,096円となることから、前記の事業費23,236,416円はこれと比べて6,071,320円過大に算定されていた。
そして、上記適正な確保補助金の事業費17,165,096円と確保補助金の交付決定額9,547,000円との差額を基にするなどして、適正な支援補助金の交付額を算出すると7,618,000円となり、前記支援補助金の交付額13,689,000円との差額6,071,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて制度の理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。