ページトップ
  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(2) 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症対策事業に係る分)が過大に交付されていたもの[5県](69)―(74)


6件 不当と認める国庫補助金 233,110,000円

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症対策事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、新型コロナウイルス感染症患者(以下「コロナ患者」という。)等の入院病床の確保等について支援を行うことにより、公衆衛生の向上を図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。

交付要綱等によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び市区町村や民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされており、交付金の交付率は10分の10とされている。

また、本件事業の内容は、都道府県、政令市(注1)、特別区等が実施者となり、①コロナ患者等の病床確保、②宿泊療養及び自宅療養の対応、③病床確保等に必要な対策を行うものとされている。このうち②宿泊療養及び自宅療養の対応は、コロナ患者等のうち、高齢者や基礎疾患を有する者等以外の者で症状がない又は医学的に症状が軽い者が宿泊療養及び自宅療養を行う場合、それに関連して、(i)移送、(ii)健康管理、(iii)宿泊療養が可能な施設等の確保、(iv)宿泊施設における運営等を行うものであり、上記のコロナ患者等が宿泊療養及び自宅療養を行う場合の移送費は、交付金の対象経費となるとされている。

(注1)
政令市  地域保健法(昭和22年法律第101号)において保健所を設置するとされている市

一方、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)の規定によれば、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区の長を含む。)は、新型コロナウイルス感染症を含む感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対して、特定感染症指定医療機関(注2)等に入院すべきことを勧告することができるなどとされており、当該患者を入院に係る医療機関に移送することができることとされている。そして、都道府県(保健所を設置する市又は特別区を含む。以下同じ。)は、当該移送に要する費用を支弁しなければならないとされており、さらに、国は、都道府県が支弁した当該移送に要する費用の2分の1を負担することとされている。これらの規定に基づき、コロナ患者等を含む感染症患者の入院に係る医療機関への移送に要する費用は、感染症予防事業費等負担金(以下「負担金」という。)の対象経費(補助率2分の1)とされている。

(注2)
特定感染症指定医療機関  新感染症の所見がある者又は一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として厚生労働大臣が指定した病院

なお、厚生労働省は、感染症法の規定に基づく移送に要する費用のような、感染症法において都道府県が支弁することとされている費用に対して国が負担する割合が規定されているものは、負担金の対象経費として申請することとしており、コロナ患者等の移送に要する費用の取扱いを次のとおり整理するなどして都道府県に示している。

① 宿泊療養施設への移送に要する費用:交付金の対象経費(補助率10分の10)

② 入院に係る医療機関への移送に要する費用:感染症法の規定に基づく移送に要する費用に該当することから、負担金の対象経費(補助率2分の1)

本院が、19道府県(注3)及び2事業主体において会計実地検査を行ったところ、5県及び1県の1事業主体において、負担金の対象経費とされていて交付金の対象経費とならない費用であるコロナ患者等の入院に係る医療機関への移送に要した費用等を交付金の対象経費の実支出額に含めていたため、交付金計233,110,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5県及び1県の1事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、厚生労働省において5県から提出された事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注3)
19道府県  北海道、京都府、青森、宮城、福島、茨城、埼玉、千葉、新潟、石川、長野、岐阜、兵庫、岡山、広島、徳島、長崎、熊本、沖縄各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

埼玉県は、令和2年度に、本件事業を実施して、国から交付金15,933,765,000円の交付を受けていた。同県は、交付金の交付額の算定に当たり、タクシー事業者等を利用して実施したコロナ患者等の移送に要する費用301,883,635円の全額を対象経費の実支出額に含めていた。

しかし、同県は、上記の301,883,635円に、誤って、負担金の対象経費とされていて交付金の対象経費とならないコロナ患者等の入院に係る医療機関への移送に要した費用等139,453,529円を含めていた。

したがって、交付金の対象経費とならない費用を除いて適正な交付金の交付額を算定すると15,794,311,000円となり、前記交付金の交付額15,933,765,000円との差額139,454,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業
年度
交付金交付額
不当と認める交付金交付額
摘要
          千円 千円  
(69)
埼玉県
埼玉県
(事業主体)
2 15,933,765 139,454
感染症法の規定に基づく移送に要した費用等を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(70)
岐阜県
岐阜県
(事業主体)
2 4,130,342 6,434
(71)
兵庫県
兵庫県
(事業主体)
2 7,315,048 22,433
感染症法の規定に基づく移送に要した費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(72)
兵庫県
神戸市
(事業主体)
2 28,588 25,677
感染症法の規定に基づく移送に要した費用等を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(73)
岡山県
岡山県
(事業主体)
2 5,318,160 19,697
感染症法の規定に基づく移送に要した費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(74)
広島県
広島県
(事業主体)
2 7,318,753 19,415
感染症法の規定に基づく移送に要した費用等を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(69)―(74)の計 40,016,068 233,110
  • (注) 計欄の交付金交付額は、兵庫県及び神戸市が事業主体である二つの事業において重複している交付額28,588千円を控除した合計額である。