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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(3) 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたなどのもの[5道県](75)―(80)


6件 不当と認める国庫補助金 27,888,250円

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等により、国の依頼に基づき都道府県が確保した新型コロナウイルス感染症患者等の入院医療を提供する医療機関において、入院患者に対する医療を提供する中で病床及び医療資器材の不足が生じ、迅速かつ適切な医療の提供ができなくならないようにするために、必要な病床及び医療資器材等についてあらかじめ整備し、医療体制の強化を図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。

交付要綱等によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。

① 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に交付金の交付率(10分の10)を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を交付額とする。

また、本件事業の整備対象設備等は、新設・増設に伴う初度設備を購入するために必要な需要品(消耗品)及び備品購入費、人工呼吸器及び附帯する備品、個人防護具(マスク等)、簡易陰圧装置(注1)、簡易ベッド、体外式膜型人工肺及び附帯する備品並びに簡易病室及び附帯する備品とされており、整備対象設備等の種類ごとに、補助上限額(人工呼吸器及び附帯する備品については1台当たり5,000,000円など)が定められている。

(注1)
簡易陰圧装置  ウイルスが室外に漏れないよう、室内の空気を集じん性の高いフィルターを通じて取り込み、ダクトを通じて排気することなどで室内を陰圧化するための装置

本院が、19道府県(注2)及び129事業主体において会計実地検査を行ったところ、2県及び2道県の2事業主体において、1台当たりの補助上限額を超えて交付金が交付されるなどしていた。また、2県の2事業主体において、整備した簡易陰圧装置が装置の目的である病室を陰圧化することができない状況となっていた。これらのため、交付金計19,476,000円が過大に交付されており、また、交付金相当額計8,412,250円が補助の目的を達しておらず、計27,888,250円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、青森県及び1事業主体において交付金の交付額の算定に当たり確認が十分でなかったこと、岐阜県及び3事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、4道県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注2)
19道府県  北海道、京都府、青森、宮城、福島、茨城、埼玉、千葉、新潟、石川、長野、岐阜、兵庫、岡山、広島、徳島、長崎、熊本、沖縄各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

青森県は、令和2年度に、本件事業について、同県が定めた県が補助する事業の交付要綱等に基づき、事業主体である18医療機関に対して、交付金を原資とする同県の補助金(以下「県補助金」という。)を交付しており、これに係る分として、国から交付金403,403,000円の交付を受けていた。同県は、県補助金の交付額の算定について、人工呼吸器及び附帯する備品に係る補助上限額を「知事が必要と認めた額」としていた。

しかし、同県は、交付金の交付額の算定に当たっては、交付金の交付要綱等に基づき人工呼吸器及び附帯する備品1台ごとに対象経費の実支出額と1台当たりの補助上限額を比較する方法によるべきであったのに、誤って、県補助金の交付額と同様に算定していた。このため、3医療機関については、1台当たりの補助上限額を超えて交付金が交付される人工呼吸器及び附帯する備品が生ずるなどの結果となっていた。

したがって、人工呼吸器及び附帯する備品1台ごとに対象経費の実支出額と1台当たりの補助上限額とを比較するなどして、適正な交付金の交付額を算定すると392,023,000円となり、前記交付金の交付額403,403,000円との差額11,380,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業
年度
交付金交付額
不当と認める交付金交付額
摘要
          千円 千円  
(75)
北海道
北海道
社会医療法人北斗(北斗病院)
(事業主体)
2 29,469 2,044
事業実績報告書の記載を誤って交付金を過大に算定していたなどのもの
(76)
青森県
青森県
(事業主体)
2 403,403 11,380
1台当たりの補助上限額を超えて交付金が交付されていたなどのもの
(77)
青森県
北部上北広域事務組合(公立野辺地病院)
(事業主体)
2 22,501 4,737
交付の対象とならない設備に係る費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
(78)
岐阜県
岐阜県
(事業主体)
2 472,444 1,315
1台当たりの補助上限額を超えて交付金が交付されていたもの
(79)
広島県
広島県
医療法人JR広島病院
(事業主体)
2 9,595 2,772
整備した簡易陰圧装置が補助の目的を達していなかったもの
(80)
徳島県
徳島県
徳島市(徳島市民病院)
(事業主体)
2 39,802 5,640
(75)―(80)の計 954,713 27,888
  • (注) 計欄の交付金交付額は、重複する青森県の交付金交付額22,501千円を控除した合計額である。