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(5) 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(感染症検査機関等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの[4道県](84)―(88)


5件 不当と認める国庫補助金 21,484,000円

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(感染症検査機関等設備整備事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、地方衛生研究所(注1)等における検査機器の導入を支援することにより、新型コロナウイルス感染症の検査体制を整備することを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。

交付要綱によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び市区町村や民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。

① 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に交付金の交付率(10分の10)を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を交付額とする。

また、交付要綱等によれば、本件事業は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)の規定により都道府県、政令市(注2)及び特別区が行う検査に必要な設備を整備するものであるとされている。本件事業の整備対象設備は、次世代シークエンサー(注3)、リアルタイムPCR装置(全自動PCR検査装置を含む。)、等温遺伝子増幅装置及び全自動化学発光酵素免疫測定装置の四つの検査機器とされており、これらの整備対象設備のほか、検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品は、交付金の交付対象とされている。

さらに、本件事業に係る対象経費は、使用料及び賃借料、備品購入費、補助金及び交付金に限られており、消耗品費については、交付の対象とならないこととなっている。

(注1)
地方衛生研究所  地域保健対策を効果的に推進し、公衆衛生の向上及び増進を図るため、都道府県等における科学的かつ技術的中核として、関係行政部局、保健所等と緊密な連携の下に、調査研究、試験検査、公衆衛生情報等の収集・解析・提供等を行うことを目的として、都道府県等に設置される機関
(注2)
政令市  地域保健法(昭和22年法律第101号)において保健所を設置するとされている市
(注3)
次世代シークエンサー  DNAの塩基配列を高速かつ大量に解読する検査機器。同機器を使用して新型コロナウイルスの全ゲノム解析を実施することでウイルスに生じた全ての変異を検出できることから、感染経路の特定や変異株の発生動向の監視等のために使用される。

本院が、19道府県(注4)及び131事業主体において会計実地検査を行ったところ、4道県の5事業主体において、交付の対象とならない経費である①検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品とは認められない備品の整備費用、②整備対象設備に該当しない検査機器の整備費用及び③検査用試薬等の消耗品費を対象経費の実支出額に含めたり、整備対象設備の購入費用を対象経費の実支出額に誤って二重に計上したりしていたため、これに係る交付金計21,484,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、4事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、1事業主体において交付金の交付額の算定に当たり確認が十分でなかったこと、4道県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注4)
19道府県  北海道、京都府、青森、宮城、福島、茨城、埼玉、千葉、新潟、石川、長野、岐阜、兵庫、岡山、広島、徳島、長崎、熊本、沖縄各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

国立大学法人千葉大学(以下「大学」という。)は、令和2年度に、本件事業により次世代シークエンサー1台、リアルタイムPCR装置等3台を計36,313,200円で千葉大学医学部附属病院に整備したとして、千葉県から交付金を原資とする同県の補助金(以下「県補助金」という。)33,951,000円(交付金交付額同額)の交付を受けていた。

上記のうち次世代シークエンサー1台に係る対象経費の実支出額12,333,200円についてみたところ、大学は、整備対象設備の本体である次世代シークエンサーの整備費用計3,852,200円のほかに、当該次世代シークエンサーと一体的に利用する備品であるとして、次世代シークエンサーではないシークエンサーの整備費用計8,481,000円を含めていた。

しかし、当該シークエンサーは、検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品とは認められず、交付の対象とならないものであった。

したがって、交付の対象とならない備品の整備費用を対象経費の実支出額から除くなどして適正な県補助金の交付額を算定すると25,470,000円となり、前記県補助金の交付額33,951,000円との差額8,481,000円が過大となっていて、これに係る交付金8,481,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業

(事業主体)
年度
交付金交付額
不当と認める交付金交付額
摘要
          千円 千円  
(84)
北海道
北海道
有限会社サンコーメディカルセンター
3 11,564 1,227
整備対象設備の購入費用を対象経費の実支出額に誤って二重に計上していたもの
(85)
宮城県
宮城県
公益財団法人仙台市医療センター(仙台オープン病院)
2 14,210 2,815
消耗品費を対象経費の実支出額に含めていたもの
(86)
千葉県
千葉県
国立大学法人千葉大学(千葉大学医学部附属病院)
2 33,951 8,481
検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品とは認められない備品の整備費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(87)
岡山県
岡山県
地方独立行政法人岡山市立総合医療センター(岡山市立市民病院)
3 55,880 2,080
消耗品費を対象経費の実支出額に含めていたもの
(88)
学校法人川崎学園(川崎医科大学附属病院)
3 13,800 6,881
整備対象設備に該当しない検査機器の整備費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(84)―(88)の計 129,405 21,484