1件 不当と認める国庫補助金 19,457,000円
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、新型コロナウイルス感染症患者が増加し、通常の都道府県内の医療提供体制において当該患者への対応が困難な場合又はその状況が見込まれる場合に、新型コロナウイルス感染症患者に円滑に対応できる医療提供体制を確保することを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。
交付要綱によれば、本件事業は、都道府県の調整の下、医療機関がDMAT・DPAT(注1)等の医療チームを都道府県調整本部(注2)等へ派遣して、新型コロナウイルス感染症患者に係る搬送先医療機関の選定や搬送手段の調整の支援等を行うものや、新型コロナウイルス感染症患者が増加している他の医療機関等へ医療チームを派遣して、医療提供等を行うものであるとされている。
また、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び市区町村や民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。
本院が、6道府県(注3)及び4事業主体において会計実地検査を行ったところ、1県において、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
部局等
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補助事業者
(事業主体) |
年度
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交付金交付額
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不当と認める交付
金交付額 |
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千円 | 千円 | ||||
(89) | 宮城県 |
宮城県 |
2 | 19,457 | 19,457 |
宮城県は、A法人に対して仙台市内にPCR検査を実施するための臨時診療所を新たに開設するよう依頼し、これを受けて、A法人は同臨時診療所を開設した。そして、同県は、令和2年度に、同臨時診療所の運営に係るA法人の人件費及び物件費を対象として、交付金を原資とする同県の補助金(以下「県補助金」という。)19,457,000円をA法人に交付しており、これに係る分として、国から交付金19,457,000円の交付を受けていた。
前記のとおり、本件事業の内容は、都道府県の調整の下、医療機関が医療チームを都道府県調整本部等へ派遣して、新型コロナウイルス感染症患者に係る搬送先医療機関の選定や搬送手段の調整の支援等を行うものや、新型コロナウイルス感染症患者が増加している他の医療機関等へ医療チームを派遣して、医療提供等を行うものであるとされている。
しかし、前記の臨時診療所は、A法人が運営主体となり、A法人に附属する医療機関に勤務する医師、看護師等によって運営されていて、他の医療機関等への医療チーム派遣により医療提供を行うものではないため、運営に係るA法人の人件費及び物件費は本件事業の対象とはならないものであった。
したがって、同県がA法人に対して交付した県補助金19,457,000円は交付金の交付の対象とは認められず、これに係る交付金19,457,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、制度の理解が十分でなかったことなどによると認められる。