1件 不当と認める国庫補助金 10,969,000円
医療提供体制推進事業費補助金(日中一時支援事業に係る分)(以下「国庫補助金」という。)は、「医療提供体制推進事業費補助金交付要綱」(平成21年厚生労働省発医政第0513001号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、新生児集中治療室(NICU)等に長期入院していた又は同等の病状を有する気管切開以上の呼吸管理を必要とする小児について、在宅医療中の定期的医学管理及び保護者の労力の一時支援を目的として、一定の診療機能を有する医療機関が、保護者の要請に応じて、在宅医療中のこれらの小児の入院を一時的に受け入れる日中一時支援事業に要する経費の一部を国が補助するものである。
交付要綱等によれば、日中一時支援事業の補助対象は、都道府県が実施する事業及び市町村や厚生労働大臣が適当と認める者等が実施する事業に対して都道府県が補助する事業とされており、このうち、都道府県が補助する事業に係る国庫補助金の交付額は、次の①から③までによるなどして算定することとされている。
① 日中一時支援事業のための病床の確保及び看護師等の確保に係るものとして設定された単価を基に算出した基準額と、職員基本給等の対象経費の実支出額とを比較して、少ない方の額を選定する。
② ①により選定された額と、総事業費から診療収入額及び寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額を選定する。
③ ②により選定された額に補助率(3分の1)を乗じて得た額と、都道府県が補助する額とを比較して、少ない方の額を選定する。
千葉県は、交付要綱、同県が定めた要綱等に基づき、日中一時支援事業を実施する医療機関に対して、国庫補助金を原資とした補助金(以下「県補助金」という。)を交付しており、県補助金の交付額は、国庫補助金の交付額の算定方法と同様に算定することとされている。
本院が、千葉県の1事業主体において会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
部局等
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補助事業者
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間接補助事業
者 (事業主体) |
年度
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国庫補助金交付額
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不当と認める国庫補助金交付額
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千円 | 千円 | |||||
(98) | 千葉県 |
千葉県 |
独立行政法人国立病院機構下志津病院 |
平成29~ 令和2 |
10,969 | 10,969 |
独立行政法人国立病院機構下志津病院(以下「病院」という。)は、平成29年度から令和2年度までの各年度に、小児病棟の全病床数50床のうち4床を日中一時支援事業のために確保した病床とした上で、県補助金計10,969,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。
病院は、上記の各年度とも、県補助金の交付額を次のとおり算定していた。
① 小児病棟に勤務している医師、看護師等の職員基本給等を全病床数に占める日中一時支援事業のために確保した病床の割合を用いて案分する方法により算出した金額を対象経費の実支出額とした上で、基準額と対象経費の実支出額とを比較して、少ない方の額である対象経費の実支出額を選定した。
② 総事業費から控除する診療収入額及び寄附金その他の収入額はないとした上で、①で選定した額と総事業費から診療収入額及び寄附金その他の収入額を控除した額は同額であるとした。
③ ②で同額であるとした額に補助率3分の1を乗じて得た額と、同県が補助する額とを比較して、少ない方の額である同県が補助する額を交付額としていた。
しかし、病院は、前記の各年度において、日中一時支援事業により受け入れた小児に対する診療を実施していて当該診療に係る診療収入が発生しているにもかかわらず、②のとおり、控除すべき診療収入額はないとしていて、総事業費から当該診療収入額を控除していなかった。
したがって、日中一時支援事業に係る診療収入額を総事業費から控除した上で国庫補助金の交付額を算定すると、前記いずれの年度においても、診療収入額及び寄附金その他の収入額が総事業費を上回ることとなり、総事業費から診療収入額及び寄附金その他の収入額を控除した額は0円となることから、前記の国庫補助金10,969,000円は交付の必要がなかったものであり、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、病院において県補助金の交付額の算定に当たり確認が十分でなかったこと、千葉県において病院から提出された事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。